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プロローグ



地球の周りには数百基の巨大なスペースコロニーが浮かび、人々がその内壁を第二の故郷として半世紀
人類の半数が宇宙生活者となった、宇宙世紀0079・・・・・・・
サイド3がジオン公国を名乗り連邦政府に独立戦争を挑んできた、大戦当初に総人口の半数は死に自らの行為に恐怖した。

ジオンのブリティッシュ作戦により地球規模の災害が起こり、
東亜、日本関東地区横浜基地を中心にあった連邦軍のニュートーキョーベースは、津波などによって被害を被り
その混乱に乗じて攻撃をしかけてきたジオン軍により壊滅した。

地球連邦軍極東方面士官学校日本支部煌校舎の生存者は響校舎の生徒と合流して、ジャブローに逃れる。
土地柄日系の訓練兵の割合が多いのが特徴だった士官学校である。

地球連邦軍総本部ジャブロー 
南米の天然の地下大空洞を利用して作られた、地球上の軍事施設としては最大級の物である。
その総敷地面積は42平方km。通常45万人もの人員が生活する、ちょっとした市に匹敵するサイズなのだ。
ここには連邦軍最高指令本部が置かれ、さらに軍工廠、宇宙艦艇建造ドックなどがひしめきあっている。
そんな大規模な施設だった。
そんなジャブローの端にいかにも小規模基地ですと言わんばかりな風景な航空基地があった。
その空港に、一機の輸送機と護衛戦闘機が着陸した。

「結構風が強いな・・・・今日は・・・・」

タラップを降りてきた地球連邦軍中尉、コウ・ヌシビトは呟く。
連邦軍の量産型モビルスーツ、RGM−79 ジムの実戦テストでオデッサ作戦に参加していたコウは、
その後の残敵掃討を終えて参謀本部に呼ばれ、麾下の小隊人員ごとジャブローに戻って来たのだった。

「暑さを感じないですむから良かったじゃないですか、先輩。」

同じくタラップを降りてきたウェーブの女性、
見た目はまだ高校生で通るくらいに童顔だが、24歳の准尉
スズネ・ミサキが風にあおられる髪を押さえながら聞いた。

「少しは休暇を貰えるんですか?先輩。」
「無くても奪うさ、」

ミデアより搬出されるRGM−79Xを眺めていたが振り返り、笑顔で答えるコウ。

「そうですよねっ、」

小走りにコウに追いついたスズネは、コウの左腕に腕をからませる、

「お買い物に付き合って下さいねっ、」

ジャブローは軍属、家族も居住する基地である、故にPXみたいな売店レベルではなく商店街ブロックも存在する。
非番の兵士が溢れる一瞬でも戦争を忘れる事が出来る希有な空間である。
逆を言えば後方で甘く考える連邦軍の堕落かもしれない・・・

「あぁ、そうだね・・・いいよ。」

同じく試験部隊の仲間もタラップで降りてくる前で、寄り添って建物へ入っていった。

「ふぅ・・・侘びしい独り者にはやってらんないなぁ・・・」

タラップを降りてきた少尉の階級章を付けている兵士が一緒に降りてきた兵士に呟く。
彼らも転属の為に戻って来ていたのだ、

「あはは・・・・やけ酒に付き合ってやるよ、」
「飲み比べだな、アイザワ、負けた方が奢るってヤツで。」
「受けたっ」

4人は建物の中に入りエレベータに乗り込み地下に降りていった。





新型試作戦闘機「FF−X−7bst コアブースター」のパイロットになった地球連邦空軍マサキ・ゴトウ中尉は
確実にジオンのMSを葬っていったが、
一人の勝利は全体の勝利にならないのは、いつの時代も同じであった。

「自分がMSのパイロットに、でありますか?」
「そうだ、マサキ・ゴトウ中尉、本日1200をもって昇進、マサキ・ゴトウ大尉に連邦宇宙軍ヘスペロス級強襲揚陸艦ハイペリオンへの転属を命ずる。
「拝命します。」
「移動はコアブースターで自力移動だ、残念だがデータなどの問題で回収するそうだ。」
「空輸も兼ねてと言う事ですね?」

再構成されつつあるとはいえ、ジオンのブリティッシュ作戦の影響で連邦空軍は壊滅状態のままである。
ほぼ壊滅だった連邦軍は、陸軍と海軍を合併して「連邦地上軍」、海軍と宇宙軍とで「航空宇宙軍」と一時的に再編され、
各旧国家(行政区として各国家は一応存続してはいる)の州政府直轄の州軍が正規軍として格上げされた。
ヘスペロス級は開戦前に建造開始された簡易ペガサス級とも言える艦である、設計自体はペガサス級よりも先に提出されたマゼラン級の強化プランで、
その後の初期構想としては61式などを搭載してコロニーへの強襲揚陸であったがTMM構想により新型宇宙戦闘機専用母艦、
MSの存在がMS強襲揚陸艦と設計が変更になった。
建造は連邦軍ギリシア基地の宇宙船造船所とノルウェー基地の宇宙船造船所、ジオン侵攻後はノルウェーのみで建造された。
ネームシップのヘスペロスは艤装途中でギリシアを脱出、連邦海軍ベルファスト基地で補修後ジャブローで艤装を完了させた。
随伴艦として再設計されたサラミス級はヘスペロスの子供の意も含めてヘスペリスと命名、以後同型艦をヘスペリス級と呼称
宇宙戦闘機中隊搭載の防空巡洋艦として計画され、開戦後はMS搭載に変更された、ヘスペリスなどの既存艦も全て改装。
双方奇数艦がギリシア神話、偶数艦が北欧神話より命名されたが、ギリシア、ノルウェー造船所以外で建造された艦は独自に命名、
竣工引き渡し時に改名された艦もある。

オデッサ作戦の頃には連邦軍再編も終了し、4軍体勢は整っていた。
反抗作戦は宇宙であるという考えから、陸、海、空軍から、
MSパイロットの適正がある将兵はどんどん引き抜かれて、陸、空軍の共同作戦であるオデッサ作戦において、
戦闘機でMSを7機撃破したマサキ中尉は宇宙軍に引き抜かれ、MSのパイロットとなることになったのである。

「宇宙軍か・・・」

自室の荷物をまとめて、マサキはもらった資料に目を通していた。

「ティアンム中将麾下、第二連合艦隊、13戦隊か・・・」

そのとき来訪を告げるブザーが鳴った。

「マサキ大尉、いらっしゃいますか?」
「開いている、はいりたまえ。」
「大尉、昇進おめでとうございます、」
「フランチェスカか、CICはどうした?」

そこにいたのは小柄な、少女の面影を残す女性、フランチェスカ・シャトー伍長だった
この基地で情報管理センターのオペレーションをしている。
マサキが着任そうそう昼寝用の場所を探していたときに知り合い
非番にデートしたりしていた。


「もう勤務時間は終わりました、あの・・・転属されるのですね・・・それで・・・その・・・」
「フランチェスカ・・・」
「・・・」

涙、男から見れば好きな女性の涙は最強の精神攻撃といえるかも知れない
マサキは胸の中で泣く彼女の左手の薬指に隠し持っていた指輪をはめた。
驚くフランチェスカ。
そのまま二人は唇を重ね、マサキはフランチェスカを無言で抱きしめベットへ倒れていった

「待てるか?」
「ハイ?」

自分の胸の中に微睡むフランチェスカの髪を撫でながら
マサキは言った

「戦争が終わるまで待っていられるか?」
「は、ハイ!」

翌日、敬礼し合い、マサキのコアブースターは離陸していった。




ベルファスト海軍軍港ではマサキ達MSのパイロットに選抜されたメンバーが連日激しい訓練を重ねていた
この基地でジャブローからのMSを受領して、ノルウェーに向かう予定だったのだが
MSの到着は遅れていた

「大尉!我々はいつまでここにいるのでありましょうか?」

ハイペリオンMS中隊第三小隊隊長のリィ・ハンシュー少尉は一週間のシュミレーターずくめに
もう飽きているのか、搬入されないMSにイラだちを隠せないでいた。

「そうあせるな、さすがのミナセ准将もそう簡単に事が進まないのだろう。」

そうなだめるマサキだがジオンへの反攻に燃えるパイロット達には
速くMSに乗って戦いたいという思いにかられ焦りも見えていた

「たいいー!」
「ん?」

何度も転びそうになりながら、赤い制服がこちらに走ってくる、

「コラ!ファイレックス軍曹!あわてるんじゃない!!」
「ハンシュー、まあいいではないか。」
「エヘヘ、」

チェリーは汗だくになりながらも笑みを浮かべる。

「で?軍曹、どうした?」
「ハイ!本日 1800ミデアが到着します!」
「おい!それは・・」
「ハイ!!モビルスーツの到着です!!!」
「隊長!小隊長を集めます!!」

いうやいなや、ハンシューは駆け出していってしまった、よほど嬉しかったのだろう
しかしそれは前線に出る事になることだ。

「ここの生活もそれなりに楽しかったのだがな・・・」
「そんなに適応力の高いのは大尉だけです、あたしは速く宇宙に帰りたいです、」
「ほう・・・なら生き残れる様に、思いっきりシゴいてやるぞ!!」
「ふみゅー!」

マサキの反射速度を鍛える為のシゴキは容赦がなかったが彼自身も一緒にメニューをこなすので
誰も不満は無かった。

「模擬戦を開始する、各機、バルーン弾装備、総当たりで行くぞペアを組みたければ好きにしろ!」

空間戦に地上での模擬戦がどれだけ有効か、それでもクタクタになるまで続けるのは焦りからなのか
隊長だけに許された識別マーカー表示でマサキは各員の動きを見ていた。

「フム、オオガミ、ファイレックスでペアを組んだか、公私ともにいいコンビだからな、」

足下に着弾、真っ先に彼をねらえるパイロットは一人しかいない。

「ハンシューか?」

とっさに回避させたマサキのジムに、物陰から一機のジムが現れた

「大尉!先にかたずけさせてもらいますよ!」
「一番嫌なヤツが来たな、」

リ・ハンシューは 連邦空軍においてマサキと戦術・戦技団でペアを組んでいた
戦争で別々の部隊に配属されていたが、お互いの手の内を知り尽くしているというマサキにとって厄介な相手である

双方走りまくり有効打があたらない、しかもその間に他機を次々と撃破するという二人ともかなりのベテランぶりだ、ホントに乗りこなすのが速い。

「大尉!現在残数4機、1−1、2−1、2−3、3−1です」

CPよりの入電

「オオガミとファイレックスか、ハンシュー!奴らはペアだこちらもペアでやるぞ!」
「了解!」
「オオガミさん!」
「マイッタな今まで二人に勝った事無いんだ」
「あたしがいます!オオガミさん!!」
「よし!チェリーくん!行くぞ!」
「ハイ!」

信頼がもたらす自信、それはベテラン二人にとっても手強い相手となった、結果
オオガミ少尉の囮でチェリーがハンシューを撃破、マサキとオオガミが相打ちとなり
模擬戦は終了した。

「ファイレックス軍曹、確か甘いものが好きだったな、帰ったらケーキを食べ放題させてやる、」
「ありがとうございます、大尉、オオガミ少尉のおかげです、」
「そうだな、オオガミには秘蔵の酒を飲ませてやる、」
「あの・・・自分は酒が飲めないのですが・・・」


ミデア数機がノルウェー基地に向けて発進している機中から、
ベルファストに向かう一隻の白い艦が見え、

「大尉!一時の方向にペガサス級が見えます、」
「我々と入れ違いか、会ってみたかったな、パイロット達に、」

機種転換訓練を終えて18名はノルウェーに向かう、
ミデアに積載したのはEタイプジムとジムキャノン、Bタイプジムはすでに艦にも用意してあるので残してゆく
せっかく残して行った機体も、支給前のオーバーホールでWBに絡む戦闘に参加できなかった

「大尉、知ってましたか?」
「何をだ?」
「大尉は基地のウェーブに人気があったんですよ、空軍のエースパイロットでリベラル派
堅っ苦しさを嫌いふつうにしゃべらせる、気楽な雰囲気がいいってね。」
「知らなかったな、うーむ惜しかったなそれは、」
「大尉がそれだからな、かなりモーション掛けられていたのもわからないのですからね、」
「おまえら、シゴキ決定。」
「「そんなー」」
「ラスター准尉にスタンレー曹長、大尉にはちゃんと婚約者がいるんですからね!」

さすが女の子、情報が早い。ハイペリオン隊には女性パイロットが二人いるが
チェリーの他もう一人のレイン・タイラント曹長は陸軍出身でこの気楽な雰囲気にいまだ
なじめずにいた。


ノルウェー宇宙軍宇宙船ドック 早朝

「マサキ・ゴトウ大尉以下18名、
RGM−79E 4機、RGC−79G 1機、RGC−80 2機、
と共に着任いたしました、乗船許可願います!」
「許可する、私が艦長のフリードリヒ・タキマだ期待している、大尉、」

第二連合艦隊 第十戦隊 、ホワイトベースの遅れにより予定していた十三戦隊は再編
ハイペリオン以下の艦艇は第十戦隊として編成された。それにより第十一〜十四戦隊より
一足先に出港することとなった。

「ペンタで全艦集結、1122 0400発進」

タキマ大佐の言葉は簡単であったが全員に緊張を走らせるに十分だった。

「メインエンジン始動、各部装甲最終チェック、」
「エンジン始動、機関、赤!」
「装甲チェックOK」
「発進位置固定、進路クリアー、カタパルト電源入りました、」
「ハイペリオン発進!」
「ハイペリオン発進します。」
「ついに宇宙ですね、あぁ、やっと帰れるんだ・・・」

待機シートの窓側に座るチェリーが外を見ながら呟いた



ジャブローの宿舎、腕をスズネの枕に貸していたコウはベットの中でインターフォンを取った。

ジャブローに戻って二週間がすぎ、週末の3日を休暇に貰った(奪った)コウは3日目に情報部に勤務する友人サオトメ少尉と会っていた。
ティーラウンジでコーヒーを飲むコウとヨシオ、コウの隣りには
パフェをほおばるスズネもいた。

「コウ、横浜基地の煌校舎は完全に破壊されたみたいだ・・・」

失った母校の現状、懐かしい場所が失われその象徴だったものを気にかける。

「そうか・・・樹はどうなったんだろう?」
「流石に情報がはいらないな・・」

何が書いてあるのか不明な分厚い手帳を見ながらサオトメはコウに答える。

「ヨシオでもだめか・・・」

コウ・ヌシビト中尉は地球連邦軍極東横浜基地士官学校を卒業したあと、TMM専科コースを出て新兵器MSの実働試験を行っていて
RX−78の起動テスト、RX−79でのジブラルタル上陸作戦などに参加、
先日もオデッサにおいて正規量産型RGM−79ジムのデータ収集機で戦闘に参加していた。
サオトメは情報部と言っても戦場での情報管制などを任務とする部署に配属されており、
普通思いつくスパイ活動の様な行為はしておらず、今は志願してMSパイロット課程も終えている。
士官学校の後輩、スズネ・ミサキ准尉は部隊のCPとして指揮戦闘車両のオペレーターをしている。
軍務だけでなく、私的に行動する時にもスズネはコウの側にいる。
本人達は否定しているが、端からみれば恋人の様な二人だった。

「イジュウインが何かやらかしたみたいだぜ、」
「ふぅん?」

士官学校卒業以後会っていない仲間の名前ではあるが、あまり気にとめず、いつもの事とコウは軽く返す。

「573戦隊って知ってるか?」
「あぁ、今度新編される部隊だろ?名前は広報で知ってる」
「司令はイジュウインだ、」
「そうなのか、」

それがどうした?といった表情でコウはコーヒーカップを口にする。

「そうなのかって、俺達もそこの所属になるんだぜ!」
「ホントなのか?」

今回、ジャブローに転属命令で呼ばれたもののまだ辞令が降りていない情報に少し驚きを隠せないでいるコウ。

「あぁ、煌校舎と響校舎の出身者だけで編成される、唯一と言って良い日系だけの部隊だ。MSパイロットは各地から招集中だからだとかで編成式はとっくに終わってるらしいぞ」
「いつのまに・・・・ん?と、言うことは・・・」

コウの言いたい事をさっちしたサオトメは、ニヤリと笑ってコウが気にした事を伝えた 。

「当然、参謀本部のシオリちゃんも所属になる。」
「そうか・・・」

もう半年も会っては居ない、心に住み着く幼なじみを想い笑みをこぼした。
そんなコウを横目で見て少し寂しそうな表情を見せるスズネ。

「うれしそうだな・・・」
「まぁね。」
「ハイハイ・・・」

カップに残る珈琲を飲み干してサオトメはこの後の予定を尋ねた。

「で、コウはこれからどこに行くんだい?」
「例のホワイトベースさ、」
「お、俺もつきあうぜ、スズネちゃんも行くでしょ?」
「ハイ!!当然です、ヨシオ先輩!」

会話内容に参加せず、ストロベリーサンデーを美味しく食べたスズネはこれ以上は無い笑顔で答えた。
今コウに一番近いのは自分だとの意図を見せる様に。




ジャブロー最大の宇宙船ドック、A−1号ドックには素人だけで、戦火をくぐり抜けてきた
ペガサス級強襲揚陸艦ホワイトベースがその体を休めていた・・・

「こりゃあすごいな・・・」
「竣工僅かながら歴戦の艦だからな・・・」

その傷だらけの巨艦を見上げて三人は息を飲む

「コラ!貴様!!そこでなにをやっている!!」

ロープを乗り越えて側に来ていた三人に怒声が響く。

「ウ、ウッディ大尉・・・」

慌てて三人は敬礼をした

「ん?ヌシビト中尉じゃないか、ははぁガンダムを見に来たな?」
「はは・・・そんなとこです。」
「残念だがダメだ、それよりBブロック1号ドックを見てこい、貴様らの乗るヘスペロスが竣工しているぞ。」
「本当でありますか?大尉。」
「あぁ、昨日まで俺が点検の指揮をしていたんだ、嘘を言ってどうする?」
「わかりました、見てきます」

ごまかしも兼ねてサオトメは即答し、コウの背中を押してその場から逃げた。

「お、おい!ヨシオ・・・」

実戦を乗り越えて来たガンダムを見たい、と思っていたコウの足は鈍く、繕ってから追いかけてきたスズネに腕を引きずるようにその場をはなれた。

「おまえ、夕べのジオンの侵入があった様にスクランブルがかかったらガンダムに乗ってしまおうと考えていただろ。」
「まぁね、ま、アレの起動試験をしたのは俺だぜ?どれだけ成長したのか確認もしたかったからな。」
「フフ、先輩らしいです。」
「さあ、我が家となる艦を見にいきますか、ブリッジや整備クルーはもう居るだろ。」
「そうだな・・・・?」

どこからか大きな爆発の音がすると、サイレンが鳴り響く

「何っ?」

とっさにコウは通りすがりのエレカを止めた。

「貴様達、そのエレカを貸してくれ、」
「ハ!中尉殿、今の爆発と何か関係があるのでしょうか?」
「今の爆発はMS工場の方角だ、様子を見に行く!」
「了解であります!あの、自分達も同行してもよろしいでしょうか?」

コウは二人を良く見た、どうやら士官学校の生徒らしい、しかもTMM専科(MSパイロット訓練課程)の部隊章を着けている。

「よし乗れ、貴様ら名前は?」
「リン・ツチミ士官候補生であります。」
「カリスト・マノメノン士官候補生であります。」

コウ達はエレカを発進させ工廠の方に向かった

「何処の訓練兵だ?」
「バーベナ士官学校です。」
「キャリホルニア士官学校です。」
「そうか・・・」

キャリホルニアはジオンに占領されジオン地球攻撃軍の拠点となり。
バーベナはジオンが侵攻した際に壊滅している、つまり二人も母校を失っているのだ、

「俺とコイツの母校もジオンに潰されている、君達の気持ちは解るよ。」
「口が軽いなぁヨシオは・・・」

今このジャブローに居ると言う事はジオンの攻撃に撤退して来たからこその事だ
その戦場の悲惨さは三人とも解っていた

「おっと、俺の名を言ってなかったな。コウ・ヌシビト中尉だ。」
「スズネ・ミサキ准尉よ」
「ヨシオ・サオトメ少尉だ、女の子の情報ならまかしと・・・」

ガスッ!

「うぐぅ・・・」
「二人とも、気にするな。」
「あの、中尉殿はあのコウ・ヌシビト中尉なのですか?」
「お、おいやめろよカリスト・・・」
「このジャブローではコウ・ヌシビトというのは先輩だけです。」

誇らしげに横からスズネが答えた。

「ちゅ中尉は我々TMM専科のあこがれです、・・・」
「さて、おしゃべりはここまでだ、着いたぞ」

MS工場は休息していた作業員があわただしく駆け回り、コウはそのうちの一人を捕まえた。

「どうなっている?!!」
「ジオンに爆弾を仕掛けられましたがホワイトベースのレイ少尉に除去していただき、今は点検をしています。」
「解った、行っていいぞ。ヨシオ、ヘスペロスと連絡できるか?」

整備員を作業に戻らせるとMSに向かおうとしていたヨシオを呼び止めた。

「繰艦メンバーはもう乗船しているハズだ、おい!ここの通信機借りるぞ!」
「空襲の警報まで鳴りやがる、くそぅ情報が欲しい・・・」

ヨシオは慣れた手つきで艦への直通回線をひらいた。

「出たぞ、コウ」
「OK」

爆撃の影響かノイズの走るモニターに通信士の少女が写った。

「はい、こちらヘスペロス・・・コ、コウくん?」
「サキちゃんか、ひさしぶり・・・じゃなくって、ニジノ少尉、ジャブローに潜入した工作員と空襲の情報を回してくれ。」
「・・・了解です、ヌシビト大尉。」

コウとサキは士官学校の頃に使っていた”またあとで”の合図をかわすと軍人の顔になった。

「工作員はドックで交戦中、空襲はガウ18機他航空機多数の爆撃中、MS約30が降下しました。」
「お・・おい、コウ?どうする?」

戦闘が始めてのヨシオが不安気味にコウに聞く。

「そこのメカニック!!ジムは出撃できるな?」
「ただいま起動中です。」

コウと整備員が問答してる間に他のパイロット達がエレカで駆けつけて来た
エレカから飛び降りたケイ・シジョウ中尉がコウに声をかける。

「さすがに速いな、コウ。」
「行けるな?」
「当たり前だろ?」
「とても大怪我で後方送りになったヤツの言葉じゃ無いな。」
「言ってろっ、」

二人は拳をたたき合い、シジョウはリフトに乗り作業員に装備の話を始めていた

「・・・・広いジャブローなのに知ってるのが集まるとは・・・・」
「みんなホワイトベースを見に来ていたんじゃないかな?」

スズネは手早く端末から情報をディスクに写して片方をコウに渡した。
コウ達は各々そばのMSに走った、

「中尉!自分達も出撃します!!」

ツチミとマノメノンの志願に、コウは二人の目を見て

「そうだな、よし!!連いて来い!!」
「ハイ!!」

慌ただしく準備するコウを、スズネは不安げに見つめながら自分もホバートラックに乗る準備を進めている。

「心配するな、大丈夫だよ、スズネちゃん!・・・そうだな、天使の祝福でも貰おうかな?」
「えっ?」

言うがやな、コウはスズネの唇を奪うとそのままMSのタラップを駆け上っていった。

「もう!!センパイったら!!」

真っ赤になり叫ぶスズネだが、表情は嬉しそうだった

「コウ、シオリちゃんに言いつけるぞ?」
「そう言うことを言うか〜?ヨシオ、・・・後ろからの攻撃に注意しろよ・・・」
「ジョ〜ダンだってば、(笑)」

コウは慣れた手つきでジムをチェックして動かした。

「これがB型量産タイプか・・・陸ジムより非力だな、オデッサでのトラブルが直っていれば良いが・・・出力から言ってビームライフルはどうにか使えるな。」

スズネから貰ったディスクをインストールすると機体パラメータが次々と陸戦に適化していった

「流石、でもどこからデータを引っ張り出したのやら・・・・」

コウはジムの手にガンダムと同タイプのビームライフルと100ミリマシンガンを持たせ、機体を動かした。
シジョウはマシンガンを両手に装備、ヨシオとリン、カリストはビームライフルを装備していた。
スズネは指揮車両に乗り込みインカムを取った。
遅れて参上したセリザワ少尉は指揮車両のコックピットに座る。

「行くぞ!!この部隊は俺が預かるっ!!コールは各自のファーストネーム、573臨時中隊出撃!」
「「「了解!!!!」」」
「ヘスペロス!本部は混乱しているので情報を頼む!こちらのCPは59号移動指揮車」
「了解です、大尉、」

サキはコウを先ほども「大尉」と呼んだ。

「俺はまだ中尉だぜ?」
「まだ辞令を受け取ってないのですね?わかりました、中尉」
「敵の目標は、解るか?」
「Aブロックの第一宇宙ドックと思われます。」
「ホワイトベースか・・・」
「敵さんの評価はかなり高そうだな、コウ。」

モニターにスズネが写る

「本部より指令、573臨時中隊承認、Aブロックに侵入した敵を迎撃後追撃せよです。」
「了解、Aブロックへ行くぞ」

Aブロックに向かう途中、コウは一人で行動しようとする一機のRGM−79X−eG ジム・エッグに声をかけた

「貴様の官姓名は?」
「ユウイチ・アイザワ少尉です。」
「なんだ貴様か・・・俺達に付いて来い、ジムは単独戦に向かない。」
「了解です、しかしなんだは酷いじゃないですか、先輩。」
「そうか?」
「そうですよ。」
「ようし、ユウイチとリンは俺とA小隊、ケイ、ヨシオ、カリストでB小隊だ」
「了解!」

TMM専科での二年後輩のユーイチ・アイザワ少尉はコウに散々シゴかれたパイロットの一人であり
オデッサでのRGM−79Aの実働試験部隊のメンバーでもあった。

「いいか?リンとカリストは出来るだけ援護に専念しろ、接近戦は避けろ。」
「了解」

6機のジムと一台の指揮車両は展開しながらAブロックへ急いだ。

「CPより573リーダー!二時、地下水路方面に敵、音紋で3機確認です!!」

開けた場所に出るとホバートラックのスズネから通信が入った。
スズネの声にコウが確認すると
そこには脱出しようとしている3機のジオンMSが1機の白いMSに追われていた

「赤いMS?」
「中尉、行きます!!」
「ま、待てカリスト!!」

カリストはビームを連射して展開したが不運にも赤いMSの進行方向となってしまい、ズゴックに素早い動きでコックピットを貫かれた。

「は、速い・・・うわぁ!!!!!!!!!」
「カリスト!!!」
「リン!出るな!!」

コウはシールドでリンの動きを封じる

「しかし・・・」
「貴様は離れた位置で狙撃しろ!」
「・・・了解・・・」

コウはビームでアッガイを撃破するが、赤いMSはガンダムに追われ姿を消していた。

「ガンダムか・・・そしておそらくあれが赤い彗星・・・」
「赤い彗星・・・」
「潜水艦隊に所属したって噂は本当だったよ〜だな。」
「CPより573リーダー、配置変更、リフト使用で地上のMSを迎撃して下さい。」
「カリストは後続にまかせるぞ、573リーダーから全機、俺達は地上の敵を迎撃する。」
「了解」

物資搬入用のリフトを使いコウ達5機とホバートラックは地上に出る。

「一番近い敵は?」
「5時の方向、熱源探知不可、音紋でザクとグフらしき音を確認です。」
「全員兵器使用自由、各個撃破しろ!!」

コウが振り向きざまにビームを放つと同時にユーイチもビームを放つ、
そのビームはそこに姿を出したザクとグフに直撃し、光球と変える

「鈍ってはいないみたいだな、ユーイチ。」
「とーぜんですよ先輩、って、一週間で鈍ってたまりますかっ、」
「「そこっ!!」」

二人の放ったビームが一機のズゴックを貫いた。

「はぇ〜、俺達の出番はなさそうだな、ツチミ。」
「そうですね。」
「喋ってないで貴様らも撃て!」

あっけに取られていた二人にマシンガンでザクを粉砕したシジョウが叫ぶ。

コウ達以外は初めてMSでの戦闘故に苦戦を強いられた連邦軍のMS部隊だがコウ達は獅子奮迅の働きでMSを10機は撃墜した
戦闘終結の信号にリンはドムに突き刺したビームサーベルのビームを切った

「よくやったな、リン。」
「ありがとうございます。しかし・・・」

初撃墜の興奮も醒め、友人であるカリストの死にリンは表情を落とした。

「運がなかった、としか言えないな、」
「・・・」

そんあリンの肩を力強く叩くと

「カリストの為にも生き残れ、」

戦時中によくある無責任な勝ての言葉でなく、未来を繋げと意味を込めてコウはリンに生き残れと伝えた。

「ハイ・・・」
「生きていたら酒でも飲もうぜ、」
「はい、サオトメ少尉」
「エースになれたらお茶にでもさそってね、」
「はい。」

戦闘終了後、戻ってゆくリン・ツチミを見送るとコウとその仲間達
リンにとって理想とも出来るパイロット達との出会いは、この戦争を終わらせたいという決意の力にもなった

「リン様!無事だったのですね?」

生き残ったリンを士官学校の仲間達が出迎えてくれた

「ネリネも、みんなも無事で良かった・・・」
「私達は避難組だったんだよ〜リン君、
「リンちゃん、MSで戦ったんだって?その話聞かせてよ〜」


573−1へ
あとがきへ

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