クリックで設定に飛びます









「コウ・ヌシビト中尉以下、第一MS起動実験小隊出頭致しました。」

ジャブローの地球連邦軍統括本部、予告されていた出頭命令にコウ達はオフィスのドアを開いた。

「ご苦労、私は統括本部人事のジャック・ホーソン大佐だ、楽にしたまえ。」
「全員休めっ、」

ずらっと並ぶ面々、こういう場での規律はしっかりしてるメンバーに大佐は苦笑してソファーを薦めた。

「まぁ、とりあえず座ってくれ。」

促され座るコウ達、スズネはちゃっかりコウの隣に座っていた。

「まず、クロッカ・オリハラ少尉は連邦陸軍に所属する事になるので辞令はこの後別棟の方で受け取る事になる。」
「了解しました。」

大佐は次に持っていた書類の一つをユーイチ・アイザワ少尉に渡した。

「何ですか?是は・・・」
「まぁ・・・見て見れば解る・・・・」

そこにはユウイチが士官学校で仲が良かったメンバーの状況が書いてあった、
例をたとえれば、マイ・カワスミ少尉が命令無視で降格、軍曹に、ナユキ・ミナセ少尉が上官反攻、服務規程違反などでやはり降格、伍長に、
シオリ・ミサカ少尉が偽証罪で降格、上等兵に、など良い内容では無かったが・・・・

「何故にこれを私に?」」

ユーイチの疑問ももっともだっただろう
大佐は肩をすくめて一言言った。

「宇宙軍のミナセ准将からだ。」

ユーイチはその一言で納得してしまった、納得せざる得なかった。

「さてコウ・ヌシビト中尉は大尉に昇進、スズネ・ミサキ准尉は少尉に昇進してそれぞれ新編された第五七三遊撃戦隊のMS大隊隊長とCPとして着任して貰う。」
「了解しました」
「了解です」
「表のデスクから書類を受け取ってくれ、量は多いぞ。」
「はい。」

コウの横で、ヨシオに聞いていたとはいえ、実際に一緒の部隊への転属命令にスズネは安堵していた。

「さて、ユーイチ・アイザワ少尉。」
「はい。」
「少尉も宇宙軍に所属となり、第二一宙雷戦隊所属のMS小隊に配属となる。」
「了解致しました。」
「以上だ、各自辞令と書類の受け取りを忘れずに。」
「敬礼!」





ホワイトベースが出港した当日。

「コウ・ヌシビト大尉以下MSパイロット10名、強襲揚陸艦ヘスペロスに配属になりました。乗船許可を。」
「許可します。・・・お久しぶりですね、コウ・ヌシビト大尉」

返礼を返し司令兼艦長のレイ・イジュウイン少佐は微笑んだ。

「おいおい、しおらしいなイジュウイン。」
「あいかわらずだな!・・・フフフ、この口調の方が良かったかしら?」

士官学校を男装で通っていたレイはその当時に無理に使用していた言葉遣いを少ししてみる
コウも懐かしさに笑いが出てくるのだった。
が、今は女性用の士官服である。

「いや、その格好だと最初の方がいいぞ、イジュウイン。」
「戦闘中でなければ、学校の時と同じでいいですからね、」
「じゃあ、イジュウイン、俺達のねぐらはどこだい?」
「サオトメくんも変わらないわね。」

荷物を持ってエレベータに埜炉込むヨシオを見て、レイは懐かしげに微笑んだ。

「出港は明日だ、モビルスーツの搬入とチェックを急がせろ!」

搬入後固定されるMSをチェックしているとコウは後ろに視線を感じた

「コウ・・・」
「シオリか・・・」
「又、一緒になれたね。」
「そうだな、士官学校以来だからもう二年か・・・」
「なんか、言葉が出ないね・・・いっぱいいっぱい話したい事があったのに・・・」
「俺もそうだよ、シオリ・・・」

最後のジムが搬入された頃にレイの放送が準備中の各艦に流れた。

「573遊撃艦隊司令、レイ・イジュウイン少佐である
我が部隊は来るジオンへの反攻作戦の先駆けとして明朝0500抜錨、宇宙へ上がるものである、
残念な事に僚艦であるレジェンドスロープが先日のジオンの攻撃によって大破し、我々は3艦で任務に当たる事となった。
同行出来ない戦友に誇れる様、一層の努力を期待する。」



翌日
「スペースゲートへ移動」
「リニアカタパルト、システムチェック」
「進路クリアー」
「ヘスペロス、主機関1番、2番、3番始動、各部装甲最終チェック、」
「主機関始動します。機関、赤!」
「装甲チェックOK」
「主機関始動確認、機関赤まで60秒。」
「係留フック、ロックオープン」
「ミノフスキークラフト起動、出力安定。」
「全乗員着座固定。」
「ミノフスキークラフト出力全開!」
「ヘスペリス浮上します」
「カタパルトスタンバイ!」
「カタパルト電源入りました、」
「発進位置固定、進路クリアー、」
「カタパルトスタートまで10、9、8、・・・」
「主動力解放、噴射係数安定、ヘスペロス出港します。」
「4,3,2,1・・・」
「ヘスペロス、発進!!」

ホワイトベースを追うように573戦隊強襲揚陸艦ヘスペロスは、ジャブローを後にした、その20分後には同僚の
防空巡洋艦レジェンドベルとレジェンドウッドもブースターで宇宙へ出撃した。

コウが宇宙に出てすぐに行ったのは鬼のような空間戦闘の特訓だった。

「ヨシオ〜〜!!この後腕立て300!!」
「うげっ・・・」





ミデアタイプの大型輸送機の窓から少尉の階級をつけている士官は霧の空を眺めていた
オデッサ作戦で、TMM専科〜

(タクティカル・モビル・マニュピレータ、MS登場以前の次期宇宙用機動兵器開発とそのパイロット育成の
スペシャルエリートコース、のちにモビルスーツ教導団と改名MSパイロット養成機関となる。)

〜の戦友と共に新兵器モビルスーツの実働試験と実戦を終えて、隊長のヌシビト中尉と共にジャブローに戻り
アフリカ戦線でのMS小隊の隊長の辞令を貰い、部下と合流するために、彼らの乗るMSとともに機上の人になっていた。
・・・・・が。

「失敗だ・・・・」

その少尉は辞令を受け取った時に

「会ってテストしますから大丈夫ですよ。MSは新兵器ですから過去の戦闘記録はあまり役にたちませんので。」
「そうか、解った。戦果を期待している、クロッカ・オリハラ少尉。」

失敗だった、カッコつけないで素直にメンバーのファイルを貰っておけば良かった・・・
暇でしょうがない・・・・と暇をもてあましていた。
地中海のバレアレス基地において小隊のメンバーと合流しアフリカ戦線に向かう。
アフリカで最初に配備されるMS隊だからなのか、機内で俺はVIPみたいな扱いを受け何もする事が無かった。

「あはは〜っ少尉さん、もうすぐ到着ですよ〜」
「あと3世紀寝かせてくれ〜」
「はぇ〜、300年も生きてられませんよ〜」

テーブルの向こうから聞こえるのは他の部隊に配属になる予定のウェーブのパイロットだ、
クロッカがTMM専科出身と聞いて色々と話を聞いてきていたのだ。
彼女の笑顔を見ると故郷で士官学校に入る為に街をでる俺を見送ってくれた少女達の顔を思い出す・・・
ジオンの爆撃でその街はもう無いと話に聞いた・・・

「どうしました?〜」
「あぁ、今行く。」

クロッカはウェーブにうながされラウンジから自分のシートへと向かった




到着の報告をする為に担当事務官の所に行こうと廊下の角を曲がった・・・
何かが俺の背中にしがみつき・・・

ごいん!!!!

クロッカは唐突に目の前が真っ暗になり、ものすごい衝撃を顔に受けた。

「ううっ、いたいよ〜眼がちかちかする・・・」

?????なんか懐かしい衝撃と声・・・・
そこには眼に涙を浮かべて額に手を当てている漆黒の髪の女性がいた

「ひどいよ〜・・・・?????」
「あ・・・えっとごめ・・・ひょっとして・・・エルザ先輩?」
「あ〜!クロッカ君!!」

・・・何か懐かしい・・・・
と、いうことは・・・

 ぶん!!

背中に乗っているものが体を振ったが離れない

 ぶん!!!

さらに強く振っても離れない
おそらくこの後ろにしがみついているのは・・・・

「やっぱり・・・ミオ、・・・」
「・・・・・」

しゃべれないミオは俺にしがみついているから返事が出来ない・・・
戦場に散らばり、もう会えないと思っていた軍学校での友人が目の前にいる。
うれしさにクロッカの目から涙がこぼれたが気にしなかった

『めがまわったの』

指で背中にそう書きつつ、ミオはぽてっ、と背中から転げた




「そうか・・・あのあとみんなパイロット志願したのか・・・」

食堂で軽く食事を取りながら3人は談笑している

「うん、でもみんなバラバラだから、輸送部隊でミオちゃんと一緒だったのが奇跡だよ〜、」
「って、しゃべれないのによく審査に通ったものだ・・・」
「本当なら書類審査で落ちてるはずだと思うよ、でも・・・」
『面接がミナセ准将さんだったの。』
「なるほど、一秒で了承されたのか。」
『どうしてわかったの?』
「俺もそうだったからな。」
「でもミオちゃんはパイロットでは無く、ホバートラックの運転と整備担当だよ。」
「まぁ、それは無理も無いなぁ・・・」

ミナセ准将は連邦軍の中でもイジュウイン、クラタ、デューダーなどの財閥系とパイプを持つ謎な人だ、
人物を見る直感は外れた事が無いそうな・・・
ミオは入隊後の訓練課程中に起こったジオンのシンパによるテロで民間人を誘導中、至近弾と、その被害を目の前で見てから声を失った。
車両の運転技術の点数など優秀な方の成績であったが為特別に後方輸送隊勤務で任官できたのだ。
一期下で、すぐ背中に飛び乗ってくる可愛い妹分だったのだ。
クロッカは到着の挨拶を済ますと明日にの部隊結成式までの時間が貰えたので二人と食堂で昼食をとっていて、
士官学校の面接時、専科の希望を聴かれ、答えたクロッカに一秒で返事をした不思議な女性士官を思い出していた。

「謎な人だったな・・・」
「そうなんだ。」

すでにエルザの横にはカツカレーの皿が5枚重なってる

「・・・しかし・・・相変わらずだね・・・でもそれでこそエルザ先輩だ。」
『補給がいつも足りなくなるの。』
「・・・なんか酷い事言われた気がするよ・・・」
「気のせいだ。」
「う〜」
「そういえば二人は今はこの基地の所属なのか?」
「違うよっ、今度新編される部隊に配属されたんだよ〜、ミオちゃんも一緒に。」
『そうなの』
「へぇ、なんて部隊だい?」
「え〜とね、第1機甲師団機械化機動中隊第2小隊だよ。」
「えっ?」

それって俺の小隊じゃないか・・・

「クロッカ君は?」
「俺は・・・まだ聴いて無い・・・」
「そうなんだ〜」

内緒にしていたほうが面白そうだ、その時クロッカはそう思ったのだったが・・・

「コーヘイ・オリハラ少尉入ります」

呼ばれて入った部屋には俺の叔母、ユキコ・マーヴェル中佐がいた。

「ユ、ユキコさん、何故ここに・・・」
「クロッカ、公私をわきまえなさい、ま、ここには二人だけですからいいですが。」
「すいません、中佐、で、貴官に何の用でありましょうか?」
「普通でいいと言ったでしょ・・・まったく・・・」
「久しぶりです、叔母さん。」
「・・・」
「・・・」

マーヴェルは「おばさん」と呼ばれる事を嫌う、一触即発な空気が流れた。

「今度新編される機械化機動中隊隊長に私が任命されました。ただいまよりクロッカは私の部下、となりますからね。」
「ユキコさんが上司なら賛成こそすれ文句などないですよ。」
「ありがとう、結成式前ですがあなたの部下を呼んでありますから、紹介しましょう。」
「二人は知ってますけどね。」
「あら、ファイルを受け取らなかったと聴いていたのですが。」
「先ほど会いましたよ。」
「では、クロッカが隊長というのは・・・」
「言ってません、驚かしたいから。」
「驚くのはどっちかしらね。」

クスリと含み笑いをするユキコ。

「へ?」
「あ、来たみたいね。」

ノックの音と声が聞こえる

「エルザ・ロウアース曹長以下、入ります。」

そこに入ってきた面々は十二分に俺を驚かせた。
知ってるもなにもそこには軍学校以来の少女達、いや今は立派な女性と言うべきか、
とにかく彼女達がいた。

「クロッカ!!!!」
「見事なカウンターだ・・・」

クロッカは嬉しそうな声でつぶやいた

「副隊長を拝命したスノゥ・ミャマ曹長です。」
「エルザ・ロウアース曹長、ソナー手担当だよ〜」
「・・・アカネ・グロワール軍曹・・・MSパイロットです。」
「ミズカ・ミルキーウェイ軍曹だよ、CP担当だよ、」
「ルミナ・ゼイヴィン軍曹、MSパイロットよ。」
「リタ・ファーメイ軍曹、MSパイロットだからよろしく〜」
『ミオ・ルゥフォン上等兵なの。』

ユキコさんが号令をかけると彼女達は一人一人きちんと敬礼してゆく

「俺が第二小隊隊長になったクロッカ・オリハラ少尉だ、しっかり着いてこいよ。」

クロッカはぴしっと陸軍式敬礼で俺は彼女達に返礼した

「と、形式的にはこんなもんでいいでしょ?ユキコさん。」
「そうね、明日結成式が済んだら装備確認と輸送艦への搬入、早速明後日の朝0500出発だから、休んでおいてね。以上解散!」
「了解」

5時か・・・起きれるかね?

結局起こしに来た全員が誰が起こすかを目の前で大騒ぎしたものだからどうにか目覚めて遅刻は免れたクロッカだった。




「クルップラーだ、第5地区に敵影無し。」
「了解、そのまま偵察を続行せよ・・・」

アラメインに進軍したクロッカ達はそのまま部隊を展開し、砂漠のオアシスにキャンプを張り、
随行してきたヘリ部隊の偵察による情報を待つ。

「こちらマンゴスチン、第4地区に野営の跡を発見、前回確認されていないから近場にジオンが潜んでいるぞ。」
「了解、」
「師団長、どうします?」
「第2小隊を向かわせろ。」

師団本部でそういった事が起こっている事も知らずに、俺達はメンバー全員でモビルスーツの整備をしていた。

「こんな、地道な掃除なんて・・・乙女のなせる技よね〜」
「ふぅ・・・油まみれだよ、終わったらシャワー浴びるんだもん・・・」
「だ〜〜〜〜〜試作機なんて嫌いだ〜〜〜〜」
「・・・・・クロッカ、手を進めて下さい。」

いくら、防塵仕様にしてあっても、MSの関節部には砂が入り込む、
特にコーヘイの機体は実験機という事もあって、機構が複雑故、その作業は難航していた。
砂の除去作業に一息ついた所に出撃の指令がクロッカ達に送られて来た。

「みんな出撃だ、」

こうしてクロッカ達は激戦のまっただ中に突入する事になった。





ジオン公国ズムシティ

「ツキムラぁ〜」

卒業式を終えたケイ・ツキムラが校舎を眺めていると、親友のエリチャフツ・ミヤウチが声をかけてきた

「なに?」
「何?って・・・みんな待ってるぞ、俺らTOP10はグラナダに決まってるけど他の連中はバラバラだからな、」
「そうだね・・・・あ〜〜〜・・・」
「どうした?」
「エミリにプロム誘われていたんだ・・・」
「・・・相手はオマエだったのか・・・」





13独立戦隊の様に陽動を主任務とする部隊は10にも及び、
東亜地区にあった士官学校の同期生を中心とする573機動戦隊もその一つであり、現在サイド2方面にオンステージ中であった。
編成は強襲揚陸艦ヘスペロス、防空巡洋艦レジェンドウッド、レジェンドベルの3艦、
一年戦争の最中、連邦寄りだったサイド2は政庁コロニーの破壊、G2ガスや核の攻撃で全滅と言われてはいたが、
実際は通信手段を遮断されただけで、生き残ってるコロニーも存在していたのだ、
ジオン統治下に置かれたコロニーはその工場ブロックなどでモビルスーツの生産を行っており、その目的の為の労働力確保が理由だ。
サイド2残存コロニーでは開戦直後からMS−06Fの生産ラインを構築し、リック・ドムへの生産ライン換装を計画していた。
ルナUに帰還したウロボロス隊の情報によりジオンのMS工場の存在をキャッチした連邦軍は、
オンステージ中の573戦隊へ偵察とソロモンへの強行偵察任務を終えた、第10戦隊に攻略を命じた。

しかしジオンにすでに捕捉されていた573戦隊は先制攻撃をされることになった。

「第一種戦闘体勢発令!」

カタパルトデッキよりモニターにMS隊隊長の声が聞こえた。

「レイ、ジオンか?」
「そのようだな、新型だらけだ10機すべてアンノウンの表示だな。」
「10戦隊はあとどのくらいで合流する?」

ヘスペロスの艦長、レイ・イジュウイン少佐はオペレーターのミオ・キサラギ少尉に聞いた

「あと約一時間です」

ミオの声にシオリが苦渋に満ちた声を発する

「間に合わないわね」
「573戦隊のモビルスーツだけで行くぞ、、ヌシビト大尉!!」

レイはモニターのコウに向かって指示を出した。

「了解、」

すでにコウ・ヌシビト大尉とカツマ・セリザワ少尉、ジュン・エビスダニ少尉など、
TMM専科出身のメンバーはジムのコックピットで暖気運転を開始していた。

「アサヒナ少尉、コシキ少尉、準備はいいか?」
「もち、オーケー」
「だいじょうぶでございます。」
「ようし出るぞ!!2機連携を忘れるな!!」

コウ達第一陣はモビルスーツをカタパルトに運んだ。

「シジョウ大尉達は第二陣として待機。」
「了解」
「直援はベルから出ろ!」

右舷デッキカタパルトにせり上がって来たジムが発進の姿勢をとった。

「みんな!根性でがんばって!!」
「わかってるよ、サキちゃん!」

コウは通信オペレーターのサキ・ニジノ少尉に向かってウインクと輝く白い歯をみせた
・・・一瞬にして真っ赤になるサキ・・・

(もう・・・コウくんったら、照れちゃうじゃない・・・)

カウントダウンと共に射出されて行くMS。

6機のジムのノズル光を見ながら傍らにいるシオリ・フジサキ大尉にレイは聞いた

「どう見る?フジサキ大尉、」
「・・・・(もう、コウったら・・・)」
「ん?!」
「や、やはりジオンは占拠した工業コロニーでMSを生産していた様ですね・・・。」

コウへのヤキモチで一瞬軍務を忘れていたシオリは焦ってうろたえた。

「提督の読みは当たったということか・・・」
「サキ、直援を急ぎ展開させるんだ。」

「艦長、わかりました。レジェンドベルレジェンドウッド直援MS隊展開を急いでください」

直援をメインとしてMSが配備されているヘスペリス級レジェンドベルやレジェンドウッドはMSを発進させているが、
慣れていないパイロット達の展開は遅い。

加速をしながらコウはつぶやいた。

「ドムタイプ3、ザクタイプ3、あれは完全新型か・・・3機、支援機1・・・ちょっと荷が重いか・・・」

すべてがデータの無い新型、しかもビーム兵器を装備していた。

「どうだ状況は?・・・やはり数がちがうからな・・・」

レイは隣りのシオリに聞いた。

「新型相手に6機でよくもってますね・・・」

(コウくんすごい、もう3機落としてる。)

「サオトメ中尉にも発進させるんだ、メンバーはカタギリ少尉、キヨカワ少尉、サワタリ少尉」
「了解、第三小隊、発進です!」
「あいよ!」

もともとコウは士官学校卒業直前に新たに開設されるTMM(タクティカルモビルマニュピレーター)講座に参加
するために卒業を半年遅らせたのだ、主席卒業という肩書きをシオリに譲ってまで。
それだけに操縦技術は並外れたものがある、

「さすがにジオンの新型、ザクとは全然違う、」

そうコウが呟いたとき、スピーカーに悲鳴が聞こえた。

「キャア!!」
「ユウコ!!」

ガルバルディと白兵戦を行っていたユウコの機体は右腕を失っていた。
その死角を狙ってガルバルディのビームサーベルがコックピットに肉薄する
やられる、そうユウコが思った時一機のジムが眼前に躍り出てユウコのジムを突き飛ばす。

「させない!!」

そのジムはガルバルディのビームサーベルをシールドで受けると至近距離からビームスプレーガンを発射した。
爆発、
そして至近距離の爆発と、ビームサーベルに触れてしまったビームスプレーガンの誘爆によりボロボロになったジムがそこにいた。
ビームスプレーガンの爆発はM粒子をメガ粒子に押さえていたE−CAP崩壊もあってその電磁波がヨシオのジムをフリーズさせていた。

「アサヒナ、だいじょうぶか?・・・あっちゃあ動かないぜこのジムは」
「ヨッシー・・・」

コウとタテバヤシ少尉が二人の前にカバーする

「ヨシオ、動けるか?」
「ダメだこりゃ、スマン増援にならなくて。」

左腕をシールドごと失い、右腕からはスパークを発しているジムはショートし、操作を受け入れずに動く気配が無い

「十分だよ、ユウコ、二人で艦に戻れるね?」
「うん・・・」
「じゃあコイツを引きずっていってくれるかい?」
「ん、わかった。」
「ユカリはノゾミとペアを組め。」」
「はい、わかりましたぁ〜」

シオリやサキ達が戦況を見守る中ミオの声がきこえた

「サオトメ機、アサヒナ機、損傷により帰還します。戦力後退、あ!!!一機こちらに向かってきます!」

レイよりもシオリが早くに反応した

「直援部隊!迎撃して!!」

レジェンドベル所属のボールの砲口が火を放つ、ボール8機に紛れて一機のガンタンクがいた。
ジャブローに残されていた試作機の一つだが後方支援用として部隊に配備されていたのだ。

「ヒカリ、落ち着いて狙うんだよ。」

ガンタンクの胴体部のコアブロックから操縦担当のコウジが頭部のヒカリに声をかける

「うん、コウジ、了解、了解!!」

接近するガルバルディの攻撃にボール部隊は一機を残して大破してしまう、

「あぁっ!ユカ!アイ!!」
「落ち着け!ヒカリ!!」

コウジの声に励まされたヒカリと、2機のガンキャノンから攻撃にガルバルディは四散した。

「当たった?」
「やったネ!ヒカリ、」

しかし第二派も予想出来る現状では対空に対する防衛力は低い、敵が高性能な新型ならなおさらであった。
モニターに大破した機体から脱出出来たパイロットが近づいて来るのが見えた。

「勝手に殺さないでよねっ、ヒカリ。」
「そうよ〜ヒカリと同じで私達もしぶといのよ♪」

コウジはそのボールの側に寄ってパイロットをガンタンクに取り付かせる。

「ユカとアイはガンタンクに捕まって、数が足りないな・・・一度戻るか、カスミさん!僕はジムに乗り換える」

ベルに通信したコウジは案を伝えた。

「いいわよ、MSデッキ用意してちょうだい。」

待機していたコトコも交えてコウジはヒカリのジムとコトコのガンキャノンとで再度編隊を組んだ、生き残ったボールパイロットのユカとアイもガンタンクに乗り換えて再び発進する。




ヘスペロスの中央にある作業デッキでは・・・

「サオトメ中尉、又アナタの機体はボロボロね、もっと大事に乗れない?」
「うぐぅ・・・」
「アナタ自信を改造しないとダメかしら。」
「・・・・・・・・」
「あの・・・中尉・・・」
「なにかしら?アサヒナ少尉」
「・・・・」

メカニックのチーフ、ユイナ・ヒモオ中尉は一瞬だけ優しい目をするといつもの様なニラミをきかせて

「サオトメ中尉、敵新型機撃墜と彼女を救出したことに免じて今回は多目に見てあげるわ」
「すまない」
「ジムの右腕は組あがっている?その、中破したジムはC整備するから後回しよ!!」
「中尉!右肩部品が融解してるので、交換出来ませんっ!!」
「解ったわ、そのジムからC整備入って!!」
「了解!」

ユイナは二人から離れて、忙しく動き回っているメカマン達の方へ体を動かした

「ヨッシー、待機BOXへ行こ、」
「あぁ」

二人はリフトをつかんでその場から流れた

ジュンとカズマが牽制をかけ、ユカリのビームサーベルが最後の一機、ペズンドワッジを沈めた。




「MS隊、全滅」
「練度の差だな、連邦にも腕の良いパイロットがいるようだ・・・全スタッフと新型MSはトラキアに乗せ終わってるな?、この基地を放棄する」
「了解」




「艦長、ザンジバル級とパプア級と思われる熱源確認、2バンチのあった区域です、」

オペレーターのメグミ・ミキハラ少尉の声がブリッジを流れ続けてミオが、

「2バンチはガスにより住民が全滅、人は存在していないはずです。」
「実験場にはもってこいね、サイド7と同じで。」

シオリが続く

「よし、ベルは外で警戒、ウッドは反対側のベイブロックから、ヘスペロスはザンジバルの使ったベイブロックへ!MSは先行して偵察、潜入の人選はフジサキ大尉にまかせる。」
「了解。」

「こちらA00コウ、以下4機は補給に帰還したいが、」
「OK、第四小隊発進、シジョウ中尉、MS隊の指揮をヌシビト大尉と交代。」
「こちらシジョウ、了解、D00ジム発進します。」

左舷のデッキからケイ・シジョウ中尉とミラ・カガミ少尉、マサオ・オオコウチ准尉、が発進すると
待機していたユカリ、ジュン、カツマ、コウは右舷のデッキに着艦した。

「全機の被弾状況チェック、プロペラントは9割、弾薬はFULLで、E−CAP充電開始、
大尉の機体は・・・何?!これビームによる小さい穴だらけじゃない、装甲一式用意しておいて!」
「そんなにひどいか?」
「出撃には問題ないけど、装甲の耐久値は半分ね、もうジオンにもビーム兵器が存在するのは大変ね」
「受け止めるでなきゃ避ける方向で改修プランを頼む。戦術としても使えるなこれは・・・・」
「了解。」

突然アラートブザーが鳴る

「何だ?中尉、整備を頼む!!」
「それが私の仕事よ、」

待機BOXへ駆け込むコウ

「なにがあった?」
「トラップだ、ウッドの艦首がもぎ取られた。」
「ジュン、確かだな?」
「ああ、ハッチに爆薬が仕掛けてあったようだな。」
「補給は?」
「あと3分ってトコだな、」

「ウッド、聞こえますか?被害状況を教えて下さい。」

マイクに叫ぶサキに応信がはいった。

「こちらレジェンドウッドアカギだ、MSデッキ損壊、現状での修理不能。人員の被害が大きい、MSは2機小破残存のみ。」

ブロックビルドだった事が幸いして沈没するほどの被害にはどうにかならなかった。

「近くにいるベルの偵察隊にウッドに向かわせろ。」

レジェンド・ベルより発進して偵察していたコウジは、ウッドに一番近い位置にいた。

「ジュン、タクミ、ウッドに合流するぞ」
「わかった。」
「了解」


[PR]動画