「もうすぐ戦闘空域だ、シオリ、どうだ?」
[大丈夫よ、コウ。」

ガンダムの加速力ではもう到達していても良いのだが、不慣れなシオリを気遣いコウは加速を控えていたが、
相手がエース部隊な事に内心焦りを感じていた。
そんなコウを気遣ってシオリはガンダムを加速した。

「・・・シオリ・・・」

コウはフっと微笑むとフットペダルをさらに踏み込んだ。
ズウンとガンダムの加速が上がってゆく

「さすがに反応がいい、ハヤカワ中尉の言葉信じるか・・・」

戦場にたどり着いたコウとシオリが見たのは行動不能にされた、マホ、ミホ、ノゾミ、トオル、アヤコ、ミラの機体だった。

「何?!みんな!!無事か?」
「・・・・・」

シオリも言葉が出ない、はじめてでいきなりこんな状況なのだから無理もないが・・・

「ソーリー、どうにか無事よ、みんな行動不能にされただけだから・・・」

沈んだアヤコの声だが、無事な様子に二人は安堵した。
ジュンから通信が入る

「スマン、コウ!一機のザクにやられた・・・赤いザクだ・・・」
「赤?まさか彗星か?」
「違う、だがエースには違いない・・・」

接近してきたジュンの機体もよくみるとかなり被弾している、かなりの凄腕のようだ。

「一撃離脱で一気にこれだ・・・俺は装甲が良かったおかげで一端引き上げさせることができたが・・・」

シオリはセンサーにMSの影を発見した。

「コウ!敵影を発見、1機がこちらに向かってくる!!」
「わかった、ジュンはみんなを連れて戻れ!シオリ、行くぞ!!ミハルとカオリはヨシオを援護してくれ!」
「ハイ!!」
「了解!」

「こちらに向かって来るのは2機ね・・・この熱反応はグースじゃないわ、まさか?ガンダム?」

チャイカは向かって来るMSが自分達でジムに付けたコード、「グース」でない事に気がついた。

「あれは木馬だけではなかったの?・・・兵器だから当たり前か・・・」

チャイカはためしに軽く斉射したが簡単に避けられた。

「さすがに動きがいいわね・・・動きについてこれるかしら?」

チャイカはザクを限界近くまで加速させる、エンジンの振動がビリビリとコクピットに響き、チャイカはその
振動のハーモニーを楽しんでいた。


ヨシオ、ミハル、カオリはMS−06RZ3機と交戦していたがお互いに有効打を与えられずにいた

「くっそー、うろちょろしやがって!」
「04!そっちに追い込むから狙撃して!!」
「簡単に言うなよミハル!」
「黙ってやるの!!」
「えぇい、やってやる!!」

ヨシオの機体はスナイパータイプなので強力なビームライフルを装備しているが接近戦だと
無用の長物となる、だから連携プレーが必要なのだが、カオリがザクキャノンと牽制しあって
それが出来ず、ミハルの負担は大きい。

「当たれ!!!」

ヨシオの撃ったビームは見事にミハルに気を取られたザクに直撃した。

「やればできるじゃん。」
「まぐれだよ、まぐれ。」
「わかっているよ。」
「がくぅ・・・」


「コウ!ビームが当たらない!!」
「慌てるなシオリ、動きを予測するんだ!」

シオリの射撃が下手なのではなく、正確なのだがそれ故に避けられてしまうのだ。
いつしかコウとチャイカの高機動な戦闘にシオリはついていけなくなっていた。

「さすがエースということか・・・」

コウは相手のパイロットを誉めると意識を全開にした、ライフルの残弾はあと一回、
移動するザクに照準を定めるとちょっとずらして発射したあと、ライフルを腰のラックに付け、ビームサーベルを引き抜く。
ビームは見事、避けたザクの左腕に当たり破壊した。


「うっ・・・私の動きを読んだの?・・・まさか、ニュータイプ?そんな馬鹿なことって、」

素早く機体をチェックするが左半身は警告灯の赤ランプで埋まっている。
距離を縮めたコウのビームサーベルがザクのアサルトライフルを破壊する。
まだやれる!と思ったチャイカだが、本隊の撤退の信号弾を確認するやきびすをかえす様に素早く撤退した。

「ガンダム・・・次に会った時には・・・」


「撤退したの?コウ・・・」
「その様だな・・・」

同じ様に敵が撤退したヨシオ達がコウに合流してきた。

「コウ・・・」
「ヨシオ、一機撃墜おめでとう。」
「よせやい、三機の共同戦果だぜ、」

同じ区域にいた他のメンバーも次々に合流してきた、

「敵機一機撃墜、一機中破、こちらが六機大破か・・・」
「コウ・・・」
「ここではしょうがない、ヘスペロスと合流するぞ!」
「了解!!」

MS空母タイホウ、そのブリッジでは

「敵MS、敵艦隊撤退していきます」
「周辺に反応ナシ」
「艦隊はほぼ無事だが、我が方の負けだな・・・」
「司令・・・」
「MSの半分が撃破されたのだ・・・」
「573戦隊が全機残存しております。破損した機体も有る様ですが現状では練度の高い部隊と言えるでしょう。」
「・・・予備の機体を573戦隊に回せ、艦隊のMSも急いで再編するんだ。」
「了解であります。」
「10戦隊と19中隊主導で新規パイロットを短期養育させるか・・・・」

573戦隊のMSで大破した機体はユイナ達の努力の結果、4機は完全に修理できたが
ホムラのRB−79は使用不能、しかもホムラは重傷で戦線から離脱する事になった。

「Oh!Good!!これが私の機体ね?」

機体が修理不可能だったアヤコには新たにRGM−79GSジムコマンドが与えられた。
ジムの最新鋭機である、艦隊でも19中隊や133戦隊にしか配備されていない機体であるが、その予備機の一機がアヤコが乗る事になったのだ。

「以外とつかれたな・・・」

気分転換の為に、展望室にやってきたシオリだったが、そこにコウの姿を見つけた。

「コウ!」
「・・・シオリか・・・」
「どうしたの?」
「ちょっとね・・・」

シオリはすっとコウの横に来た。

「私に話して楽になるなら話して?」

さっきから展望室の影でこそこそしている二人がいた

「ほら、スズネ、ボヤボヤしてるから、フジサキ大尉が来ちゃったじゃない。」
「だぁってぇ、ミノリちゃん・・・」
「つきあってって言ったのはスズネだよ?」
「うぅ・・・」
「は〜しょうがないなぁ・・・」
「な・・・何をするつもり?」
「私が大尉を連れ出すから、後はうまくやんなさいよ!」
「いいよ、今日はやめるから・・・」
「ホントにいいの?」
「うん・・・あの二人の間には入れそうも無いから・・・」

シオリはコウの肩に頭を傾けると呟いた。

「コウの隣っていつも私が元気になれるな、」
「そうかな?俺はシオリがいると勇気が沸いてくるよ。」

君が(あなたが)いるから前に進んでいける、この戦争という極限状態でも。
そう伝えたくとも言ってしまえば死ぬかもしれない・・・そんな思いが言い出せなくなっていた。
浮き名を馳せたコウも、本命には奥手であった・・・・が。

「シオリ・・・」
「何?コウ」
「シュミレーションルームへ行くぞ。」
「え?」
「みっちりシゴいてあげるよ。」

今の雰囲気は何?と言いたげなシオリだがコウの

「シオリに死んで欲しくないからな。」

の一言で従うことにした。

「今出来ることをやらなくっちゃね。」



チャイカ中尉らMS隊を回収したディマンシュは第三連隊の艦隊と合流していた。

「ソロモンへは行かないのですか?」
「私達はこのままグラナダへ向かいます。」

ノーマルスーツのままブリッジに上がって来たチャイカは開口一番オリビアに聞いた、
このままソロモンで連邦の迎撃に出ると思っていたからだ。

「オリビア大尉、ソロモンを本国は捨てるつもりなんですか?」
「配備状況を見ると総帥はその様ね。」

ディマンシュはア・バオア・クーに向かうキマイラらと別れグラナダへ進路を取っていた。





地球連邦軍アラスカ基地
アフリカでの激戦をくぐり抜けたクロッカ・オリハラ少尉は麾下の小隊と共に第1機甲師団機械化機動中隊を離れ、
キャリホルニアベース奪還の為にアラスカ基地に入った。

「熱い所から今度は極寒かよ・・・忙しいなぁ・・・・」
「命令だからしょうがないでしょ?隊長。」

エルザ軍曹も寒さに震えながらタラップを降りた。

「隊長、早速ですけど司令部への出頭命令が出ていますよ。」
「わ〜った、行って来る。ミオ、運転頼むな〜」

スノゥ曹長の伝言にクロッカは手をひらひらさせて司令部へと向かった。

「エルザとミズカでクロッカのMSの改修チェックして頂戴、アカネ、ルミナ、リタはMSの受領があるから一緒に連いてきて。」
「りょ〜かい、」
「・・・・甘いものが欲しい・・・・」
「ほらほら、さっさと受け取ればPX行く時間も増えるからぁ〜」

残りメンバーはエルザとジープで倉庫へ向かった。

「第一機甲師団機械化機動大隊ですか・・・」
「そうだ、すでに先発したそのうちの一個中隊へと増援で合流して欲しい。」
「その中隊とは別働隊の方が良いのでは無いでしょうか?」
「ふむ、少尉がそう思うのは当然だが、その中隊の進路上に大隊規模のMSを有するジオンの基地が発見されたのだ。」
「なるほど・・・編成が終わった本隊から増援出来ないという事ですね?」
「そういう事だ、行ってくれ。」
「了解しました、してその中隊の名称は?」
「単純に北米南下走破中隊と呼んでいる。中隊指揮はトーマス・ホイットレー中尉だ。」
「我が小隊の編成は同じで良いのでしょうか?」
「任せる。」

こうしてクロッカ以下はアラスカを出発して雪のカナダへと向かった。







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