第一章
第4話「会議」






「…さて、今ここに居る皆様には、先程国王様から下された命令に関して、私の指揮の下、動いて頂く事になります。 
ですが、今回の件に関しては、芹名さん以外の方達には、些か不可解な事が多い筈……。 説明をしますので、知りたい事、解らない事は、今ここで聞いて下さい。 」

皆さん、私の言葉に頷いてくれました。 あら、早速香里さんが手を挙げていますね。

「どうぞ、香里さん 」
「はい…。 さっきの招集の時、御高齢の方々は、皆さん驚いていました。 今回の命令で捜索する人は、それ程重要な方なんですか? 」
「それはどう言う意味でですか?」
「例えば、とても高貴な出の方なのか、そう意味でですが。 」
「身分や役職で言うなら、一切そんなものは持っていません。 ですが、この華音にとっては、特に国王様にとっては、その命を投げ出してでも、保護しなければなりません。 」
「なっ…」

私の言葉に、香里さんは目を見開いて驚いています。 …あら?名雪が悲しそうな表情をしていますね。
あらあら、手をあげました。

「どうぞ、名雪 」
「うん……。 お母さん、私達が今回捜索する人って、もしかして……祐一なの!? 」

……もしかしてとは思いましたが、正直、吃驚しました。 この子は、時々恐ろしい位、するどいですから。

「ええ、そうよ。 正しくは、祐一さんである可能性が高い情報が、入ってきたのよ…。 」
「……そうなんだ……」

名雪は今にも泣き出しそうですね。 仕方有りません。 娘の唯一の従兄弟ですから。 
あれからずっと心配していましたからね。 誰にもそれをうち明けてない様ですけど…。

「失礼…。 祐一って…誰ですか? 」

北川さんですか。 彼は魔族大急襲の後に、この国に来たのですから、知らないのも無理有りませんね。 」

「北川さん、貴方は、人魔戦争の英雄を知っていますね? 」
「知識だけは…。 確か、連合軍を指揮した相沢 祐貴。 この国の誇る、世界の英雄ですよね。」
「はい、その通りです。 祐一さんは、私の甥で有り、名雪の従兄弟にあたり、
…そして世界連合軍統一戦闘戦略指揮将軍・相沢 祐貴と、世界三賢者の一人だった相沢 夏美の、たった一人の忘れ形見なんですよ。 」

芹名さん以外、皆さん、口をポカーンとしています。余程の驚きだったのでしょう。 
ですが、これで国王様がその命を投げ出してでも保護しようと言うのにも、納得して頂けたみたいですね。

「しかし…、彼はあの時に行方不明となっていますが…… 」

久瀬さんですね。 さすがに情報戦を一手に引き受けてるだけ有りますね。 あの時の情報も、すでに手に入れてますか……。

「ですが、久瀬さん自身、祐一さんが生きている可能性は高いと見てるのでは有りませんか? 」
「……ええ……」
「たまたま魔族に遭遇して、襲われると言う話は、幾つも聞いていますが、
集団で組織的に動く魔族に、人が狙われるなんて、祐一さんの父親、祐貴さんしか聞いた事有りません。 
なら、何らかの方法で逃げ出した祐一さんを、
英雄と最強の魔導士の血を引いたサラブレッドである祐一さんの存在を危惧し、脅威となる可能性の有る祐一さんを狙っていると見た方が、筋が通っていると思いませんか? 」

「…同感です…。 」

久瀬さんも、どうやら同じ見解だった様ですね。

「他に有りませんか? 」

皆さんに尋ねますが、皆さん納得して頂けた様です。 では、早速動きましょうか。

「香里さん」
「はい」
「香里さんは、久瀬さん、栞さん、真琴を連れて、彼の足取りを追って下さい。 
必要でしたら、小隊で行っても構いません。 今回の件に関しましては、資金は有限の限り、使用を許可されてますから。」
「了解しました。 では早速、これより準備に入り、明日出発します。 」

そう言って、香里さんは出て行きました。 いつも行動が迅速ですね。

「名雪、貴方は残りのメンバーで香里さん達のサポートよ。 
物資の補給ルートの確保や、その物資の仕入れや他様々な事に関して、貴女がリーダーシップを取り、皆をまとめなさい。 」

「う…はい、了解。 」
「宰相殿、私は何をすればいいのかな? 」

芹名さんですか……。

「芹名さんは、対御音に対する対策をお願いします。 」
「……それはあらゆる可能性に対して…と、捉えていいのかな? 」
「はい」
「了解した。 ついでに国内の声も取り纏めておこう。 」
「助かります。 」

芹名さんも、部屋から出て行きました。 彼をこちらに引き入れたのは正解でしたね。 彼なら、国内の
反水瀬派の方達も、黙らせる事が出来ますから。 芹名さんは、祐貴さんと親友でしたし、祐一さんの事も可愛がっていましたから。 
全幅の信頼が置けます。

さて、後は時間との勝負です。 皆さん、頑張って下さいね。






(翌日)

「では、出発します。 」

香里さん達の隊、計30名が、国王様に出発の挨拶をしています。 いよいよですね。 
国王様も激励の言葉を述べ、香里さん達を送り出します。 私はスッと香里さんに近付き、一通の手紙を渡しました。

「解りました。お預かりします。 」

香里さんはそう言って城から出発して行きました。出来れば再び出会えますよう、今は心から祈りましょう。

 














「今更あの男の生きてるかどうかも解らん息子を捜してどうするんだ!!」

ある館の一室で、初老の男が一人叫んだ。

「国王も国王なら、あの女もあの女だ。 御音を敵に回すつもりか…」

男の顔は怒りで真っ赤になっていた。

「宰相たちの好きにはさせん。……今に見ていろ…」

男は何事か思いついたのであろう。 部屋から出て行った。








 初後書き

 始めまして。阿修蛇廬斗です。読んで頂けた皆さん、如何でしたでしょうか?
 何分初めての投稿ですので、至らない点も多々有ると思いますが、どうかこれからも
 よろしくお願いします。
 それでは、そろそろ一向に出てこない彼を、そろそろ出しますので、楽しみにしていて下さい。
 ですが、その前にあのあーぱー吸血鬼が先に出てくる予定ですけど。

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