第一章
第6話「アルテミスでの出会い」






 (4日後)

私や主だった人が、久瀬君にロビーへと呼ばれた。
ここに今いるのは、私、栞、真琴ちゃん、そして私達を呼んだ久瀬君の4人よ。

「…アルテミスの国境封鎖に関する情報が、3つ入った。 」
「3つ? 」
「ああ」
「どんな情報なんですか? 」

栞は凄く興味津々ね。 …まったく、ドラマとかの見過ぎよ…。 でも、ドラマって何?

「まず一つ目。 どうやら内乱が起こり、国王側が他国の応援等を反乱軍が要請出来ない様にする為の処置だそうだ。 」
「…当然ね。 」

栞や真琴ちゃんも、コクコク頷いてるわね。
…でも栞…、そんなに夢見る少女みたいに、目を輝かせるのは、やめなさい。

「2つ目は、これは御音が絡んでくるんだが、どうやらアルテミスは、御音にかなり不平等な条約案を、

半ば強制的に結ばさせられようとしていたらしい。 これを突っぱねたのが国王側、受け入れ賛成派が反乱軍、そう言う図式だそうだ。 」

正確なとこは解らんがね…。そう久瀬君は呟いたわ。 まだまだ何かの事情は有りそうね。

「条約の内容は、解ってないんですか? 」
「そこまでは、流石に調べられなかったそうだ。 そこは小さくても国、 情報管理が、御音よりは徹底している。 」

それには、私も同感ね。 御音は、帝国の割には、情報が結構駄々漏れしているし…。 

「えぅ〜、そうなんですか…。 内容が解れば、私達の今後の動きや、華音の対応なんかも、ある程度目度がつくんですけど…。 」

以外と考えてるわね。 でも、お姉ちゃんとしては、嬉しい限りだわ。

「3つ目だが、真偽の程は解らないが、国王側には、一人魔族がいるらしい。 」
「魔族ですって!? 」

思わず大声出してしまったわ。

「そうだ」

久瀬くんが頷いたわ。

「それが本当なら、アルテミスは今後、帝国や他の国にとっても脅威になるわね。 」
「?…何故なんですか?お姉ちゃん。 」
「いい? 栞。 魔族は私達の敵よね。だから今までずっと戦って来た。 
でも魔族を仲間にしようと言う国は、 今まで何処にも無かったの。 だけど、アルテミスは今現在、それをしているのかもしれないの。
考えて御覧なさい。 魔族は魔族だからこそ、私達人間は情も無く、魔族と戦えるのよ。 
でも、アルテミスは、その非情を捨て、共存する道を選んだのかも知れない。 脅威にならない筈がないじゃない。 」
「…そうですか? 私は、仲良く共存出来るのなら、 みんな仲良くしていたいですけど…」
「あぅ〜〜〜、真琴も〜〜〜 」
「馬鹿言わないで。 もしそんな事公の場で言ったら、 他人に何されるか解らないのよ。 」

まったく……、その考えは正しいと思うわ。 でも、今の世の中、その考えは異端でしかないのよ。 
今までの歴史がそうなってるんだから…。 今を生きる人々には、魔族に恨み憎しみは有っても、仲良くしようと言う考えなんて、まったく無いのよ…。






人々の歴史は、正に魔族との戦いの歴史、お互い相手に深い憎悪しか抱いていない。 
今更関係を修復しようなんて……、 可能性は殆ど0に近い。 
どちらかが滅びるまで、戦い続けるしか、 道はないのかしらね。






「で、これからどうする? 美坂君。 」
「そうね……。 後一ヶ月程の間、出来る限りの情報を収集しましょう。 
そして、一度華音へ帰還。 
秋子さんとも相談し、何とかアルテミスへ向かう段取りをしましょう。 みんな、いいわね? 」
「「「  了解  」」」

















 《 アルテミスランド 王都・遠野 アルテミス城内 》



「ねぇ〜〜〜、志貴〜〜〜♪ 私が反乱軍、潰して来てあげようか? 」
「…ハァ…、馬鹿言うな、アルクェイド…。お前が戦ったら、それこそマズいだろうが…。 人間の戦いは、人間でカタをつける。 秋葉もそう言ってただろう? 」

…ったく、いつも脳天気な奴だな、コイツ…。 
僕は遠野 志貴。 
アルテミスの王子だが、主権は妹の秋葉が握っている。 
幼い頃、僕は病弱で、親戚の家に預けられていたので、王位継承が妹になされたからだ。

で、俺の腕に抱きついて離れないのが、アルクェイド・ブリュンスタッド。 
見た目は金髪を肩程で切り揃え、白のタートルネックのセーターに、紫のロングスカートと、容姿端麗な、おしとやかなお姉さん…なんだが…。 
いや、出会った頃はそうだった。 
確かに今よりは、おしとやかだったんだ…。
だけど、こいつの因縁の戦いに巻き込まれて、2体の吸血鬼と、共に戦ってる内に、
俺はアルクェイドに、アルクェイドは俺に恋に落ち、気が付いたら、こんな……こんなオープンであーぱーな性格になってしまっていた。
……しかも、アルクェイドも吸血鬼で、更に神や精霊に近い存在の、真祖だったんだ…。
国が内乱になったのも、実はアルクェイドの存在が原因で、簡単に言えば、魔族に類するヴァンパイアの国内の居住を認めるかどうかで、真っ二つになったんだ。 
まあ、華音の諜報部がこんなにも早く嗅ぎつけてくるとは、思いもしなかったけど。 
とりあえず、部の長とは話しをつけたから、当分、ホントの事は話さないでくれる筈だ。
それでも、家臣の半分が、アルクェイドの事を認めてくれた事は、嬉しかった。 本当に…、嬉しかったんだ。

「もぉ〜〜〜♪ 私なら、簡単に終わるのに〜… 」
「アルクェイド、俺は出来れば誰の血も流さずに、解決したい。 ほぼ無理だとしても、僕はそれを目指したいんだ。 」
「…解ったわよ〜…」

アルクェイドは、つまらなそうに城の窓から空へと出て行った。……又、あの森か…。
…つくづく、俺もアルクェイドに惚れてるなと、最近は強く思うよ。















 《 遠野近郊 北側 妖精の森 エルフェルム・フォレスト 》



もう、志貴ってば…、少しでも志貴や妹の手を煩わせたくないだけなのに…。 
どうして行って来いって、言ってくれないのかな〜? あ、私はアルクェイド・ブリュンスタッド。 
こう見えても、れっきとした吸血鬼で真祖よ。 
その辺の知識は、 『月姫』 をやった事ある人は、知ってるからいいわよね?
私は今、エルフェルム・フォレストに来てるのよ。 ここはいいわ。 
静かで、空気も美味しいし、何より、この森には妖精も住んでるし♪これで印度とか来なければ、ホント最高の場所♪

あら?………どうやら、今日は先客がいるみたいね…。いつも私が寝そべる場所に、黒い服の…あれは男ね…がいたわ。 
もう、あそこは私がいつも寝そべってるのに〜。
そうだ。ちょっと近付いてみようっと。

コソコソ………只今10メートル……。

起きないなぁ……。も少し近付いてみようっと……。

コソコソ……コソコソ……只今5メートル……。




 ビクゥッ!!!

男の膝に、雀が留まったわ……。あ、男が起きた!!

……上体を起こし、雀を見た後、キョロキョロと辺りを見回して、視線が合った私の方を向いたわ。

あら? 私見つかっちゃった?

男が無表情で、私を見ている…。

「…お……おはよう……」
「………」

あら?

「…ちゃ……ちゃお♪……」
「………………」

うう……かわいこぶっても駄目?

「……お目覚め、ぱっちり?……」
「………」
「…私って、もしかして……邪魔? 」

男は、ただ首を横に振ったわ。
そして、雀を見ている。 
と、2羽のオナガが、彼の腕や肩に留まったわ。
私は、その光景を、神聖な物を見る様な気持ちで見つめていたわ。







気が付いたら、彼の傍には、ウサギやリス、キツネや、そして彼等の天敵である筈のクマまでが、仲良く彼の傍に集まっていたわ。 
私ははただその神聖でほのぼのとした光景に見惚れていたわ。










しばらくして、動物達がいなくなった後、男は立ち上がり、出発の支度を始めたわ。

「ねぇ…」
「……」

男は私を見る。 …何て寂しそうな眼差しなんだろう……。

「何で、ここにいたの?」
「……」
「じゃあ、どうしてこの国に来たのよ? 」
「……」
「…何か話してくれてもいいと思うけど? 」
「…ある魔法修得の為、その試練の洞窟を求めて、ここまで来た。 」
「やっと返事してくれた。 ねぇ、名前は?」
「……祐一…」
「祐一ね。…ねぇ祐一。 」
「……」
「その試練の洞窟って……、禁呪の? 」
「…知っているのか?」
「うん…。 でも、王族の許可がないと、確か入れないわよ。 」
「……」
「会って見る? 」
「…王族に知り合いがいるのか? 真祖が…… 」

私は思わず吃驚してしまったわ。祐一、私が真祖だって事、見抜いていたから…。

「私を知ってるの? 」
「………知り合いに、特徴を聞いていたから……。髪の長さだけは、違っていたが……」
「そう……」

私は、少し祐一に対して警戒心を持った。
でも、それはすぐに霧散してしまったわ。

「……警戒しないでくれ。 少なくとも、悪意のない魔族は、俺は戦わないし、敵じゃない。 」
「………」

そんな事言われたのは、志貴の他にはいなかった。 私は、凄く嬉しかったのよ。

「ありがとう。 そう言う風に言ってくれたの、志貴に続いて、二人目よ♪ で、会って見る? 」
「王族の関係者なのか? 」
「うん、まあ…ね。」

何故か解らないけど、祐一は信用出来ると、直感だけど確信した。 だって、普通の人には絶対近付かない
動物達が、自然に…祐一の事を慕っている様に、集まってくる人なんて、初めて見たし…。

「解った、よろしく頼む。 」
「うん、頼まれたわ。 」

私は祐一を連れて、遠野への帰途についたわ。 でも、祐一、ずっと無表情だったなぁ?
少しは笑ったりしてくれても、いいと思うけど…。















 《 アルテミス城 志貴の私室 》



 「ただいま〜♪ 志貴〜♪ 」

 …アルクェイド…、頼むから、窓から入ってこないでくれ…。

 「何度注意したら解るんだ………って、アルクェイド、その男は?」

 僕は、アルクェイドの隣にいる男を指差す。

 「ん? 彼は祐一。 エルフェルム・フォレストで、さっき会ったばっかの人。 」

 会ったばっかの人を、簡単に城につれてくるなんて…。

 「で?ここに連れて来た理由は?」

 僕は、駄目もとで聞いて見た。

「祐一は、禁呪魔法を修得した…… 」
「何だって!!??」

思わず大声が出てしまった。禁呪魔法を修得したいだって?
ん?ちょっと待て……祐一?どっかで聞いた名前…………………そうか。

「志貴? 」

ん? あ…、思わず取り乱してしまった。 取りあえず、落ち着こう。 スーハー…スー…ハー……よし。

「何故に禁呪の試練を受けたいんだ? え〜と…」
「……」
「祐一よ、志貴♪ 」
「ああ、祐一。 」

 そう言って、僕は密かに小刀『四季』を抜く。
アルクェイドは、僕の雰囲気が変わったのに気付いたんだろう。 
僕と祐一をキョロキョロと見比べている。
僕に、戦闘意思があるのを、見抜いているんだろう。

「……言わなければ、駄目なのか? 」

祐一の表情は変わらない。

「ああ、アレは、使い方次第では、一国を簡単に滅ぼす事が出来るシロモノだ。 
実際見た事はないが、代々の日記に、幾度か使用された事が、記載されている。 
そんなものを、信用出来るかどうか解らない男に、そう簡単に受けさせる訳にはいかない。 
特に、人々に災いをもたらす者、 『災いを招く者』相沢 祐一には!!」




志貴が、一瞬で間合いを詰め、祐一の懐に入り、四季で喉を狙う。 
祐一はそれを上半身のみを少し後ろへ逸らす事で避け、そのまま後ろへと2〜3歩下がる。
志貴はすかさず祐一の方へと駆け寄り、今度は脇腹から右肩へと斬り上げを狙い、四季を斜めに流す。
祐一は、それを人差し指と中指だけで、止めてしまった。

「ちょっと!いきなり何してるの? 志貴!? 」
「コイツは、殺さなければならない。 」
「何故? 」

私は、志貴の言葉にショックを受けた。 

「コイツは、ハンターや教会の退魔機関から、SSの指名手配を受けている。 
コイツが訪れる街は、必ず魔族に襲われ、壊滅的なダメージを受ける。 ついた2つ名が、『災いを招く者』だ! 」

僕がアルクェイドに叫ぶと、アルクェイドは、又祐一を見た。 
そして又僕を見る。 
そして…。
アルクェイドは、祐一の前に、立ちはだかった。

「何故、そいつを庇う? 」

アルクェイドは、僕の前に立ち塞がった。

「何故? それは志貴、貴方が間違ってるから。 」
「…僕が? 」
「そうよ。 」
「…何処が間違っている? そいつがいる限り、この国は、明日にでも魔族の襲撃を受けるかも知れないのに? 」

僕は、アルクェイドの肩を掴み揺さ振りながら言った。 だが、アルクェイドは、泣いていたんだ。

「……おかしいよ、志貴…。私だって、魔族なんだよ? でも、私はこの国の人達に…、全員じゃないけど受け入れられてる…。
幸せよ、私は。 でも祐一は、志貴と同じ人間なのに、何故受け入れられないの?
私も志貴も、祐一の事、まだ何も知らないのよ? どういう人なのか、何の為に禁呪の試練を受けに来たのかも…。 
それなのに、志貴は印度のいる組織が出した手配の記述のみを鵜呑みにして、信じて、一方的な見方しかしないの?」

僕は、アルクェイドに、そっと抱き締められた。

「それに…、さっき見たのよ…。彼の傍に、色々な動物達が、何の警戒心もなく、喧嘩もなく慕う様に集まって来たの……。
そんな事が出来る人が、私には教会が言う様な悪い人間には見えない。 」

僕は、しばらく呆然としていたが、四季をしまい、アルクェイドの体を離した。

「…何故禁呪を求める? これだけは、話してくれないか? 」
「……」

彼・祐一は、近くに有った椅子に座った。 僕とアルクェイドも、椅子に座る。



「……長い話になる……。 信じるも信じないも、自分で判断してくれ。 」

彼はずっと表情を変えない。 僕も、アルクェイドも、頷いて、祐一の話に耳を傾けた。















悲しき運命の道を、ただまっすぐ進む、それだけの為に、祐一が背負っているものの話を………















その果てに待つものが何であるのか、それを聞いた時………………















もう、祐一に対して、僕は敵意なんて、持っていなかった………………















今は語らない………………………その、あまりにも悲しすぎる運命は………………
















今は、語る時じゃないから………………………………。





















    エロガキ

 皆さん、こんにちは。阿修蛇廬斗です。第6話です。いっきに話が進みました。
 なにぶん、つたない文章力ですので、伝わり難い部分も有ると思いますが、
 色々ご指導・ご鞭撻の程、よろしくお願いします。近々、後書きに管理人さんが
 出演されるかも?しれません。(現在交渉中)
 今後も、よろしくお願いします。

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