第一章
第8話「アルテミス入国2」





アルテミスへ同盟の書を送ってから、 今日で丁度10日が経ちました。
今日、 私は王女様と近衛士団長と共に、 アルテミスへ向かいます。
私は今、 国王様に呼ばれ、 謁見の間にいます。



「 では、 宰相 水瀬 秋子、 よろしく頼んだぞ。 」
「 はい。 しかと承知致しました。 」

私は一礼すると、 後ろへ数歩下がりました。

「 お父様、 佐祐理も行って参ります。 」
「 ……行ってきます。 」

王女様と舞さんも挨拶を済ませ、 私の傍へと来ます。

「 それでは行きましょう。 王女様、 舞さん。 」
「 はい 」
「 ……(コクッ) 」

私達はお互いに手を繋ぎ、 そして……



【 我 望む 彼方の大地へ   罷り通るは 蒼の望み   ディパーティーション!! 】


謁見の間から、 3人の姿が、 瞬時に消えた。







 《 アルテミス 城内 会議室 》

「 会談の準備は万全だな? 」
「 大丈夫ですわ、 お兄様。 そろそろ見えられる筈ですわ。 」

僕は今、 会談会場である、 小会議室にいる。 準備はおとといから始めていたものの、
何分反体制派に気付かれない様、 細心の注意を払わなければならない。
色々と調整するのに、 手間取りっ放しだった。
今日出席するのは、 僕、 秋葉、 アルクェイド、 騎士団長、 シエル先輩の5人と、華音側の3人の、 計8人。
室内4人と、 ドア前に2人の近衛兵を配備させてのものとなった。
何分、 こういった事は、 今まで殆ど秋葉がやっていた為、 初めての僕は、オロオロしっ放しだった。
と、 兵達が使者の到着を告げに来た。
いよいよだ。 ……心して望もう。







「 始めまして、 秋葉女王様。 華音王国宰相  水瀬 秋子と申します。 」

そう言って宰相は、 握手を求め、 手を差し出した。
秋葉も手を差し出して、 お互いに軽く握手を交わす。

「 こちらこそ始めまして。 アルテミス女王、 遠野 秋葉ですわ。 貴女のお噂は、良く聞き及んでいます。 
そして、 私の隣にいるのが、 兄の志貴ですわ。 順に、アルクェイド、 シエル、 騎士団長ですわ。 」
「 よろしく 」
「 始めまして 」
「 ちゃお♪ 」
「 お初にお目にかかります。 」

僕を始めに、 順に挨拶を交わす。

「 始めまして、 皆さん。 私の隣にいらっしゃるのが、 華音王国王女、 倉田 佐祐理様、その隣が、 近衛士団長 川澄 舞 です。 」
「 あはは〜♪ 皆様、 始めまして。 倉田 佐祐理 です。 」
「 ……川澄 舞 …… 」

……王女様が来るとは聞いていたが……、 本当に来るとは思わなかった。

一通りお互いの自己紹介が済んだので、 皆着席する。

「 それでは、 会談を始めたいと思います。 」

秋葉が宣言し、 議長はシエル先輩が勤める様だ。

「 では、 同盟について。 水瀬様、 華音の御意志は、 今も変わり有りませんでしょうか? 」
「 変わり有りません、 シエルさん。 」
「 解りました。 女王陛下、 お気持ちの方は? 」

取りあえず礼儀を弁えてるけど……、先輩……、 コメカミに十字の青筋立ててたら、
あまり意味ないのでは? 秋葉に対して、 敬語を使うのに抵抗が有るの、 誰の目に見ても、はっきりと解るし……。

「 同盟を結び、 御音を牽制しようと言う案には、 私は賛同する意思が有りますわ。
ですが、 その為には、 いくつか華音の方に、 質問したい事が有ります。 」
「 ……何でしょうか? 女王様。 」

水瀬様が、 何の質問かお聞きになったな。 やっぱり気になるか……。

「 まず、 私達アルテミスは、 もし同盟を結ぶ事が決まった時は、 以後一般兵以下国民に至るまで、 過去の遺恨を忘れ、 新たに友として、 迎え入れる決意が有ります。 
では、 華音は?華音側に、 その御意志が有りますでしょうか? 兵や国民達に、 それをさせる事が出来ますか? 」

これは結構重要な事だ。 国のトップ同士が納得しても、 その国に住む民同士が納得し、 相互理解に努めなかったら、 まったくの無意味でしかない。
秋葉は自国の状況の嘘をつきつつも、 何より国民の為に、 今の質問をした。

「 …今は、 確約は出来ません。 ですが、 この同盟がお互いの国の為になる事は、理解して頂けると思います。 」
「 それでは、 アルテミスとしても、 安心して手を結べませんわ。 」
「 それは華音も同じです。 先程の女王様の言には、 一つ嘘が有ります。 」
「 …… 」
「 兵や国民に至るまで……と、 お言いになりました。 が、 今は国内で内乱が起こっている状況では有りませんか? 」
 
……そこまで知っていたか。 さっきの嘘が無駄になったな。 流石は華音の諜報部、 伊達に大陸一と、 言われてるだけの事は有る。

「 ……お互いに、 今一つ決め手に欠けている様ですわね。 」
「 そうですね。 」

………沈黙が続く。 華音は、 確約が出来ず、 アルテミスも、 反体制派の問題が有る。
そんな沈黙を破ったのは……、何ともお気楽で明るい、 アルクェイドの声だった。

「 ねぇねぇ、 こんなのはどうかな? 」

アルクェイドが、 のんきそうに、 ニコニコしながら、 手を挙げた。

「 何ですの? アルクェイドさん。 」
「 どっちも決め手がないなら、 お互いに自国の問題を、 早急に解決して、 何も問題がなくなったその時こそ、 手を結べばいいんじゃないかな? 」

一理有るな。 
と言うか、 むしろそれが一番ベストな考えだと、 僕も思う。

「 秋葉… 」
「 解っていますわ、 お兄様。 アルクェイドの言った事が、 一番お互いにとって、良い解決方法と、 私も思いますから。 」
「 そうですね。 では、 真祖の 『白き姫』 さんの解決案に、華音ものりましょう。 」
「 !! 」
 ……アルクェイドの事まで、 知っていたのか。

「 あら? 私の事、 知ってるの? 」
「 はい、 知ってますよ。 貴女は、 トップクラスのハンターの間では、一番有名な存在ですから。 」
「 で、 どうするの? 」

少しアルクェイドが殺気立ってる。

「 何もしませんよ。 敵意のない魔族の方とは、 私は戦う事を望みませんから。 
それに、知り合いも何人かいますし。 むしろ、 味方になる予定の方を、 敵に廻す様な事はしません。 」
「 ……そっか♪ ならいいや♪ 」

緊張が取れた。 アルクェイドの殺気に、 水瀬 秋子以外、 皆中てられていた様だ。

「 それにアルクェイドさん、 貴女のお姉様と私は、 ライバルであり、 親友でもありますから。 」
「 アルトルージュを知ってるの? 」
「 はい。 だからでしょう。 昔の私は、 魔族に対する偏見が、 凄く強く有りましたが、彼女と出会い、 心を許し合う様になってからは、 一切の偏見はなくなりました。 」
「 そう♪ 」

アルクェイドは、 凄く嬉しそうに微笑んだ。 本当に、 心から嬉しいんだろう。
ここにも、 こう言う人がいた事が。

「 では、 私達は一度華音に帰ります。 そして、 問題を早期解決し、又再び来訪致します。 」
「 手を結び、 共に戦う方向で、 アルテミスも動きますわ。 」

水瀬 秋子と、 秋葉の二人が、 再び握手を交わした。

「 それと秋葉様、 もし内乱で紛争が起こった時は、 迷わず華音に連絡して下さい。援軍を必ず送りますから。 」
「 それは有り難いお申し出ですわ。 もしもの時は、 ご一報致します。 」
「 それでは 」



華音の3人は、 ディパーティーションで、華音へと帰って行った。




「 流石は 水瀬 秋子 ですわね。 よもや、 アルクェイドの事まで知っているとは、思いもしませんでしたわ。 」
「 諜報部は大陸一と言われてるからな。 伝聞通りと言う事だ。 」
「 祐一の身内かぁ♪ ホントにいい人ばかりだよ♪ 」
「 ええ 」







そして、 更に一週間が過ぎ、 再び華音の3人がアルテミスに来訪した。
華音は問題を解決し、 反対派だったジャミル候も納得、 国全体の意思も、
国内初の国民投票により統一され、 アルテミスとの同盟への準備は整った。
一方、 アルテミス側は、 国内での小さな争いが続き、 益々国内情勢が悪化していた。
そこで秋子が華音からの援軍を提案し、 決戦時までに、 第一、 第二騎士団から、それぞれ3000づつ、 魔術師団から2000を派兵する事で合意した。
見返りは、 『 災いを招く者 』 に関する情報、 それだけで。






そして、国王派と反体制派の、 決戦の時がやってきた。
最初の会談から、 僅か2週間後の出来事だった。
華音軍は、 合意から2日で、 アルテミスへと入国した。


 この内戦で、 運命に選ばれし者達の、 線と線が、 少なからず交差する。






一人は、 甥の生存を信じながら。






一人は、 自国の事を考えながら。






一人は、 愛する人の事を、 思いながら。






そして、 一人は、 やがてくる自分の運命を、 その強き心で、 真っ正面から向き合いながら……。









 あとがき

 皆さん、こんばんは。これを書いてるのが夜なので。
如何でしたでしょうか?
次回は決戦……、ではなく、試練の洞窟でのお話になります。
それでは、読んで下さり、ありがとうございます。

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