「 あ……あゆちゃん!? 」
「 うぐぅ!? 」

あゆが吃驚して、 七瀬達の方を向いた。

「 留美さん! 誰か、 手伝って!! 早くしないと、 祐一くんが!! 」

あゆの必死な形相に、 すかさず七瀬とフェリシア、 佐祐理が駆け寄った。











          


第二章
第17話 「暴走!!!」











「 あゆちゃん!! 何で宝珠の外に…。 それにその大きさ…。 」
「 話は後だよ!! 一度目の暴走……、 うぐっ!! あとちょっとで、 一度終息するから、今は全力で祐一くんを押さえて!! 」
「 わ…、 解ったわ!! 」

あゆの、必死な叫びに、七瀬は気圧されたのか、七瀬以外のフェリシア、佐祐理も、祐一の体を押さえる事に加わった。
秋子は、これ以上廻りに被害が及ばない様、魔術結界を展開し、全面的にサポートに廻った。
もがき苦しむ祐一。
溢れ出る魔力はドス黒く、禍々しく、少しでも気を抜けば、気を失いそうだった。

 「 後…少し…ンッ……アッ…ン…アウッ!! 」

あゆが、上半身を仰け反らせた。
と同時に、祐一から魔力の放出が止まり、スーッと力が抜けて行く。
あゆは、そのまま祐一の上に、覆い被さる様に前へと倒れた。

「 あゆちゃん!? 」

七瀬があゆの上半身を起こし、 揺さぶる。

「 ………う…ぐぅ……、大丈夫。 …いっきに大量の精と魔力を受け入れたから、 ショックが大きかっただけ…。 」

そう言って、 あゆが動こうとしたが、 廻りを見て、 男性兵士を見て、 顔を真っ赤にした。

「兵士の方々、少しの間、ココは女性だけにして貰えませんか? 」

秋子が、 兵士に願う。

「 しかし… 」
「 いいわ、 この方の言う通りにして。 」

七瀬に言われて、 兵士達は畏まりましたと一礼して、 部屋から離れた。









「 もう結合を解いてもいいですよ、 あゆさん? 」

秋子が頃合いを見計らって、 あゆに言葉をかける。

「 う…うん…。 」

あゆは、おずおずと体を起こし、 祐一から離れた。

瞬間、 秋子以外の女性一同が、 顔を背けるか、 真っ赤にした。
あゆはすぐに、 掛け布団を掛ける。 そして、 秋子や皆の方に振り返った。

「 これで…、 少しの間は大丈夫だよ。 ボクは、 あゆ。 七瀬さんとは、一度会った事、 有るよね? 」
「 え… ええ…。 でも、 その大きさは? 何故、 相沢 祐一 と…、 その…、 そんな行為を? 」
「 私や皆さんに、 御説明頂けますか? あゆさん。 」
「 うぐぅ? 貴女は? 」
「 私は、 水瀬 秋子。 祐一さんの叔母に当たります。 」
「 血縁の人だね。 …うん、 もう黙ってる事は、 無理だもんね。 」
「 では、 一番手近の、 無事な部屋へ… 」










 「 …て、 何で私の部屋なのよ…。 」

一番近くに有った、 無事な部屋は、 七瀬の私室だった。
性格や言動とはおよそ正反対の、 人形やヒラヒラレースの物で飾られた、 女の子女の子した部屋。
七瀬は一人、 恥しさで茹蛸になっていた。

「 では、 お願いします。 」

秋子の言葉に、 あゆが頷く。

「 ボクはあゆ。七瀬さんは知ってるけど、ボクはすでに死んでいる存在。
だけど、ボクのお父さんの力で、魂だけの存在として、祐一くんが身につけているペンダントの宝珠に封じられ、共に祐一くんと歩いて行く願いを叶えて貰ったんだ。 」

あゆの自己紹介に、 七瀬以外が、 驚きを露わにする。

「 あゆさんのお父さんとは? 」

秋子が、 当然の質問をする。

「 ルシフェル。 ルーシェ・ ルーンファスト・ ルシフェル。 ボクの本当の名は、アユアリィ・ ルシフェル。 」
「 やはり、 そうですか…。 」

秋子は、 自分の導き出した結論と、 ピッタリ一致した事に、 少し驚き、 又少しホッとした。

「 でも、 何でそんなに大きいのよ? 初めて会った時は、 10cm位だったじゃない!? 」

七瀬も、 疑問を投げかける。

「 …それは、 祐一くんの膨大な魔力を、 受け入れたから…。 ボクが、 祐一くんの魔力を注がれると、 宝珠の外に出てこれるのは、 七瀬さんは知ってるよね? 」

 あゆの言葉に、 七瀬はコクンと頷いた。

「 それは、 注がれる魔力量によって、 変化するんだよ。 今のボクは、 この状態のまま、一ヶ月は外に出ていられるよ。 」

あゆは、 嬉しそうに話す。

「 ……あゆさん。 あゆさんには、 他にも役目が有りますね? 」
「…うん。ボクは、もし祐一くんが、お父さんの血の力に抗いきれなくなって、暴走しそうになった時、魔力を吸収し、それを体力や生命エネルギーの回復に廻す。
簡単に言うと、 祐一くんの暴走ストッパーなんだよ。 」

あゆは、 幸せそうな表情をした。
どんな事でも、 祐一と共にいて、 祐一の為に何か出来る事が、 嬉しいのであろう。
そんなあゆを、 秋子はスッと抱き締めた。

「 あ…、 秋子さん… 」
「 いいのよ…。 貴女はきっと、 魔族の国で、 祐一さんと常に、 傍にいてくれたのでしょうから。 」
「……うぐ ……うう ……。でも、ボクは何も出来なかったよ…。
魔力を無理矢理吸収されたり、死ぬより酷い拷問を受ける祐一くんを、ボクは助ける事も出来なかった…。
ただ、 ボロボロになって返される祐一くんの、看護する事しか……。
祐一くんが殺された時だって!! ボクは…、ボクは…、ただ目の前で解体されていく祐一くんを、見ている事しか……、出来なかったんだよ…。 」
「 解…… 体……? ……殺された? … 」

二つの、 およそ聞きたくない言葉を、 秋子が反芻する。
思考が追いつかず、 言葉が出ない。

「 …祐一くんは、一度死んでるんだよ…。体を全パーツに解体されて、脳と心臓のみを保存して……。
お父さんの研究の結果、人間の魔力を発生する部位は、その二つの器官だって、解ったから。だから、大魔王はその二つを保存し、後は全部消却する決定を出したんだ。 」

「 …… 」 × 9

あまりにもの、 驚愕な告白に、一同は皆、言葉を失っていた。だが、それでも秋子は、一番早く我を取り戻し、心を落ち着けた。 

「では……、今の祐一さんは?あの、先程まであゆさんと交わっていた祐一さんは? 」
「……お父さんが、大魔王に願い出て、払い下げて貰った心臓と脳を元に、
魔族が攫って来て、パンデモニウム内で殺された人間の死体から、祐一くんのそれに近い組織を集めて、 
お父さんの能力で、生き返らせた……、それが、 今の祐一くんだよ。 」

 「 …… 」 × 9

 あまりにものおぞましい現実に、秋子ですら言葉を失くす。
フェリシアや佐祐理ですら、 顔を蒼褪めさせていた。 
秋子は、流石に外見は平常を保っているが、内心はあまりにもの残酷な現実に、心を乱していた。










「…もう一度、今度は封印の働きが戻る為に、反動で再び魔力が溢れてくるよ。
でも、もうボクじゃ、これ以上受け入れられないんだ。だから、誰かにボクと同じ事をして貰わなきゃならないんだけど…。 」

あゆは、 部屋にいる女性達を見た。
秋子以外、 皆顔を真っ赤にしている。

「 私には、 独自の魔力吸収 ・ 放出方法が有りますが… 」
「 秋子さん一人だけじゃ、とてもじゃないけど、足りないと思うんだ。
秋子さんなら知ってると思うけど、魔力の受け渡しは、性行為が一番、大量に受け渡し出来るんだよ。だから……。 」
「 私がやります!! 」

あゆと秋子が、 叫んだ人の方を向く。 そこには、顔を真っ赤にしながらも、 決意し、清清しい顔をした、フェリシアがいた。

「 フェリシア… 」
「 秋子さん…、 私は喜んで、祐一さんを受け入れます。祐一さんを、私は愛していますから…。祐一さんを助けるのに、それしか方法がないのなら、 私は…。 」
「 私も協力します! 」

続いて、 佐祐理も決意を表明した。

「 王女様!? 」
「 秋子さん、 私もフェリシアさんと、同じ気持ちです。祐一さんが苦しんでいる今、女として愛する人の為に出来る事が有るなら、私はどんな事でもします。 」
「 ……解りました。 私はもう何も言いません。 お二人に、 お任せします。 」


























そして数時間後、あゆの言う通り、反動での魔力の暴走が起こり、
秋子の指示の下、佐祐理とフェリシアの身を捧げた献身的な行動のお蔭で、祐一のルシフェルの血の力の封印は、 元に戻った。
全ての事が終わった頃、浩平と茜が、朝倉夫婦達3人を同行して戻って来て、城の壊滅振りに驚いたとか何とか……。
佐祐理とフェリシアは、行為後二日間眠り続け、 三日目に目を覚ました。











祐一は、 その後5日目に目を覚まし、等身大のあゆが傍にいる事で、 おおよその出来事を悟った。
あゆはすぐに皆に祐一の目覚めを知らせ、華音メンバーの秋子、フェリシア、茜、佐祐理が、すぐに祐一の下に集まった。
佐祐理とフェリシアに、あゆから事の全てを聞いた祐一は、済まない…っと、 謝った。
が、二人は、首を横に振り、祐一さんが助かるのなら…と、堂々と想いを告白した。
そして六日目、秋子と茜に迎えに行って貰い、志貴達も集まり、華音&アルテミスメンバーが、久々に全員揃った。









そして、 国主会議の日を迎える。






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