佐祐理とフェリシアに、 あゆから事の全てを聞いた祐一は、 済まない…っと、 謝った。
が、 二人は、 首を横に振り、 祐一さんが助かるのなら…と、 堂々と想いを告白した。
そして六日目、 秋子と茜に迎えに行って貰い、 志貴達も集まり、 華音&アルテミスメンバーが、久々に全員揃った。
そして、 国主会議の日を迎える。
第二章
第18話 「 祐一&浩平 」
今、 祐一達は、 宛がわれた来賓室に集まっている。 全員が正武装、 もしくは礼服のまま、沈黙していた。
あゆの事については、 後から来た志貴達にも説明され、 今は仲間として受け入れられていた。
純一達夫婦は、 浩平と共に来てからこっち、 浩平や七瀬と共に、 明日行われる国主会議の為に、 事務的な事に忙殺されていた。
すでに、 今日までに在国90ヶ国のうち、 70ヶ国以上の国主やその代理が、 御音へと極秘来国していた。
「 祐一、 本当に私が、 正式に表舞台に出ちゃっていいの? 」
アルクェイドが、 今日何度目かの同じ質問を、 祐一に投げかける。
「 …ああ、 構わない。 正式にお前の存在を打ち明ける。 どう言う評価が下るかは解らない。
だが、 お前の性格上、 いつまでもコソコソしてるのは、 性に合わないだろう? 」「 うん、 まあね♪ 」
アルクェイドは、 ニパァッと笑った。
「祐一、七夜から知らせだ。今日の夜には、藤田 浩之 と魔族が、御音に到着する。一端は初音に着いたものの、皆御音にいると知って、急遽引き返して来たそうだ。 」
「 そうか…。 秋子さん、 その藤田 浩之 とは、 顔見知りですか? 」
「 はい、 私の魔術面での教え子でしたから。 」
「 では、 今夜迎えに行って貰っていいですか? 」
「 了承。 」
「 お願いします。 」
祐一は、 秋子の承諾を得ると、 今度は香里や名雪の傍へと歩み寄った。
「 あら? 祐一くん。 」
「 祐一。 」
「 名雪、 香里、 この会議が終わったら、 俺は一度華音へ帰ろうと思っている。 その旨を、 文書で華音に報せてくれ。 」
いきなりの帰国宣言に、 香里や名雪だけではなく、 一同が面喰らったが、 すぐに喜びに変わった。
「 解ったわ。 議会後、 すぐに送るわね。 」
「 頼んだ。 」
そして、 今度は茜とフェリシア、 佐祐理の傍へと歩み寄る。
「 やっと、 華音に帰国して頂けるんですね♪ 」
佐祐理は上機嫌だった。
「 私も、 一緒に行ってよろしいでしょうか? 」
フェリシアは、 おずおずと申し出た。
「 それは、 佐祐理さんに聞いてくれ。 俺の一存じゃ、 決められない。 」
「 あはは〜♪ フェリシアさんなら、 いつでもOKですよ〜♪ 」
「 …だそうだ。 」
「 ありがとう御座います。 」
「 祐一、 私は御音に一端戻り、 色々調整してから、 改めて華音に伺います。 」
「 そうだな。 」
祐一は頷くと、 椅子に座った。
「 ……、皆、 あゆから聞いたな。 」
「 …… 」 × 7
皆が頷く。
「……そうか。……その通り、俺は一度死んでいる。ことりが見たのも、その場面だったんだろう。
正直、知られたくはなかった。この脳と、心臓以外は、全て紛い物だと言う事は……。 」
祐一の表情に、 少し翳りが出た。
秋子は、 そんな祐一を見て、 傍へ歩み寄り、 そっと、 祐一を抱きしめた。
「…秋子さん… 」
「痛かったでしょう……。辛かったでしょう……。いいえ、こんな言葉では、到底言い表せないでしょうね……。
でも、皆さんは例えどんな残酷な真実を突き付けられても、祐一さんを、祐一さんとして受け入れますよ。
祐一さんは、自分の肉体を紛い物なんて言いますが、皆さんにとっては、 今の祐一さんが、 本当の祐一さんなんですから。 」
「 …… 」
その時……
祐一の両目から……
この七年間……
一度も流れる事のなかった涙が……
頬を伝った。
「 祐一さん… 」
佐祐理は、 祐一の傍まで歩み寄り、 秋子同様、祐一を抱き締めた。
「 祐一… 」
舞が佐祐理に続き、 フェリシア、 茜、 香里、 アルクェイドと続き、 最後は志貴も加わり、全員で祐一を抱き締めた。
「祐一、お前には、これだけの心許せる仲間が、親友がいる。一人で、何もかもを背負おうとするな。
少しは、 手伝わせてくれ。俺達が出来る事なら、何でも任せてくれ。仲間じゃないか。 」
「 ……志貴 ……。 」
祐一は涙を拭うと、 みんなを一度体から離した。
「 ……ありがとう。 」
そう言うと、 祐一は少し照れた様に、 そっぽを向いた。
そんな祐一を見て、 パーティーとして、 初めて大笑いが起きた。
( 御音 エターナル城 大会議室 )
円形に造られた、 ドーム型の部屋は、 かつてない程の賑わいを見せていた。
座席も円形に設置されていて、 中心に議長や書記を一望出来る様になっていた。
浩平と純一が中心となり、 ことりや音夢、 七将軍達も兵士達への采配の為に大会議室につめ、各国の国主や代表を、 決められた座席へと案内していた。
そして、 昼を過ぎた頃、 全ての準備が整い、 各国の、 出席の有った国主や代表達も、全員が着席し、 会議の始まりの時を待った。
しばらくして、 一人の女性が、 中心の議長達の座るサークルへ現れた。
「 皆様、 今日はこの御音に、 遠路遥々お越し頂き、 ありがとう御座います。
私は、 フェリシア・ B ・ エテリーテ。 現 統一神教の、 法皇を勤めさせて頂いております。 」
一度言葉を切って、 おじぎをする。
「国主会議を開くに辺り、幾つか、事前に申し上げる事が御座います。まず一つ、本日の会議では、教会から一つの試みを試しています。
それが、魔術による会議状況の映像化及びその配信。この会議は、全世界の国民の皆さんも、御覧になっています。 」
法皇による驚きの発言に、各国国主達の間で、 どよめきが起きた。
世界中の人達が見ている。それは、政治的に下手な発言、暴言が出来ないと言う事だ。中には、よからぬ企みをしていた者も、いたのであろう。
「2つ目ですが、今私や御音、華音、アルテミスが持つ、最新の情報を、皆様に公表致します。
これは、各国の国王様の了解を得ていますので、皆様も国へと持ち帰り、御考察下さい。私からは、以上です。 」
フェリシアは、 そう言い切ると浩平へと司会をバトンタッチした。
「 ……各国国主殿、 及び国を代表して来られた方々、 御音の要請に応じて下さり、 多大に感謝します。
本日は、 御音皇帝の、 私自らが、 議長として会議を司会・進行させて頂きます。 」
浩平の威厳に満ちた態度、 それでいて礼儀を弁えた姿を、 御音の面々はポカーンとしながら見ていた。
国主達から、 拍手が起こる。
「 静粛に。 では、 議題に入ります。 議題は、 大きく分けて3つ、
1つは、 先日の世界魔族大急襲の件について。
2つ目は、 今後の対魔族の為の、 手段について。
3つ目は、 皆が一番知りたいであろう、 『 災いを招く者 』 について。 」
浩平は、 祐一の事について、 国主達を煽る様に言ったが、 それは秋子を挟んで事前に祐一自身の承諾を得ていた。
『 災いを招く者 』 と言う言葉が出て、 会議場内はいっきにざわめき立った。
中には、 一番最初に3つ目をやれと言う、 野次まで飛んだ。
「 静粛に。 皆様の興味が、 一番そこに有るだろう事は、予測していました。
そして、『 災いを招く者 』 と、彼と旅を共にする方々を、最初に出さないと、後の二つの議題も、議論する事が出来ません。 」
浩平の言葉に、 先程よりも大きなどよめきが起きた。
中には、 早く出せと言う、 野次まで飛ぶ。
「 静粛に。 ( 3度目だぞ… ) では、 入って頂きましょう。 」
浩平が、 中心サークルへと続く、 正面の通路の先に有る扉を指し示した。
国主&代表総勢70名が、 一斉に扉の方に注目する。
扉前の兵士二人が、 扉をゆっくりと開いた。
戦闘で入って来たのは、 蒼い髪をストレートに下ろし、 水色の軽鎧に正武装をした、水瀬 名雪だった。
「 なっ!? 華音の第一騎士団長!? 」
何処からともなく、 声が上がる。
続いて、 ロングヘアーにウェーヴのかかった、 知的美人で、 赤い軽鎧に正武装をした、 美坂 香里が入って来た。
「 …第二騎士団長まで… 」
声の主に、浩平は見覚えが有った。
『 …あれは…、AIRの大将軍、柳也じゃないか… 』
AIR…、 キー大陸の南東にある大陸で、最強を誇る大国。
国王、 神奈備ノ命は、 滅多に人前には現れず、 大抵公の場には、柳也かもう一人の側近で、柳也の妻、 裏葉が出席していた。
続いて3人目には、 金髪のロングヘアーを、 両分けにして、 3つ編みにしたヘアーを前面に垂らした、正装をした里村 茜が入って来た。
「 …絶対の金… 」
柳也の呟きを、 浩平は聞き逃さなかった。
4人目には、 グレイの髪に、 大きなストライプグリーンのリボンを付け、 華音王家の正武装をした、
倉田 佐祐理が、5人目の、藍色の髪を、同系色のリボンで一つにまとめ、華音近衛の正武装をした、川澄 舞と一緒に入って来た。
「 …… 」
柳也は何も言わなかったが、浩平には柳也が、登場した人物の身分素性を知っていると見えた。
6人目の人物が現れた時、 場内は今までで一番、 騒然とした。
「 なっ…。 水瀬 秋子!!? 」
発したのは柳也ではなかった。
浩平は柳也ではないのを確認すると、 素早く場内を見回した。
声の主は、 東鳩からの代表で来ていた、 保科 智子だった。
7人目には、 最初に登場した、 フェリシアが入って来た。
「「 法皇もだと!!? 」」
各国の代表数人が、 同じ叫び声を上げる。
8人目に、 アルテミス王国王子、 遠野 志貴が入った。
「 一国の王子までが… 」
柳也が、 唖然とした表情で、 入って来た人物を見る。
9人目、 それは、 金髪を肩辺りで揃え、 白いドレス姿、 紅い燃える様な瞳をした、 アルクェイドが入って来た。
「 …… 」
浩平は、 柳也の動向を見たが、 何も発せず、 ただ入って来る人物を見る柳也を見て、 一応視線を逸らした。
そして…、 10人目に、 黒い軽鎧に、 銀色の髪、 緑色の瞳、 2振りの剣を腰の両脇に射し、
女性っぽい顔立ち、 反面鍛え上げられた肉体、 今まで未知の存在だった、 『 災いを招く者 』相沢 祐一 が入った。
さっきまでとは違い、 うってかわって静まり返る場内。
その肩には、 見た目ですぐに魔族と解る、 あゆを乗せていた。
中心サークルに、 10人(プラス1)全員が揃った。
祐一は、 浩平と相向かって立ち、 どちらともなく、 右手をお互いに差し出した。
「 初めてお目にかかる。 御音帝国皇帝、 折原 浩平 だ。 」
「 …華音王国、 相沢 祐貴の一子、 相沢 祐一… 」
二人は、 ガッチリと握手を交わし、 初顔合わせを果たした。