会議はこの後、毎日行われ、次々と物事が決められて行った。
帰国後、 3日目に志貴が、5日目にAIRから神奈を伴い、柳也他6人が、御音からは茜が、華音へと来国した。




























第三章
華音編第2話 「全員集合 そして北川へ…」











「 …… 祐一 ……なのか? 」

 謁見の間に通され、 国王と謁見した後に、 秋子に案内された政務室で、 柳也率いるAIR一行は、祐一と再会した。
祐一を見るなり、 神奈は祐一の目の前へと飛び出し、 思いっきり祐一を見つめて、 先の言葉を発した。
書類を作成していた手を止めて、 祐一は神奈を見つめる。

「 …10年振り…だな、 神奈。 」
「 ……… 祐一!! 」

神奈は翼をはためかせ、 机を飛び越えると、 祐一にしっかりと抱きついた。

「 何で、 一度も便りをくれないんじゃ!? さすれば、 ここまで心配など、 しなかったと言うに!! 」
「 …… 済まなかった。 だが、 とても手紙を出す様な、 そんな甘い10年ではなかったんだ。 」
「 …解っておる。 柳也から、 全て聞いておる。 これは、 わらわの甘え。 10年前、 もっと一緒にいたかった、 わらわの甘えじゃ。 」
「 …戦いに出るまでは、 俺はここにいる。 それまで、 好きなだけ甘えればいい。 10年間を、出来るだけ取り戻そう。 」
「 …約束じゃぞ! 」

二人は、 軽く抱き締め合い、 10年振りの再会を喜び合った。













しばらくして、 柳也が間に入った。

「 神奈、 そろそろいいか? 他の者が、 自己紹介出来ぬ。 」
「 ……解ったのじゃ。 」

神奈は素直に頷き、 祐一から離れた。 そして柳也が、 他の者に自己紹介を促す。

「 じゃあ、 俺からだ。 俺の名は 国崎 往人。 法術士だが、 今は騎士団の団長を任されている。SS+ / SS だ。 」
「 次、 私。 私は 神尾 観鈴。 騎士団の副団長を任されてます。 S+ / S です。 」
「 次は佳乃だよ〜♪ 佳乃はね、 霧島 佳乃 って言うんだよ♪ 魔術師団の、 治療隊副隊長を任されてるよ。 S / S− だよ♪ 」
「 私は霧島 聖。 佳乃の姉だ。 魔術師団団長兼治療隊の隊長を任されている。 SS / SS だ。 」
「 ウチの番か? ウチは、 神尾 晴子。 観鈴の義母や。 一応、 AIRの宰相を務めてるで。SS+ / SS+ やで。 」
「 …… 遠野 美凪 。 美凪と呼んで下さい。 魔術師団の、 副団長を務めています。 SS / SSです。 」
「 ぴこ〜!!! ぴこぴこ、 ぴっこり!! 」
「 …… 」

祐一が、 珍しく目を見開いて、 驚いていた。 ヒョイと抱き上げて、 しげしげとそれを見た。

「 …これは何だ?犬か?いや、犬にしては、外見があまりにもおかし過ぎる。
そもそも、と言うか、犬に失礼な様な気がする。そもそもこれは生命体なのか?ケセランパサランの一種か? 」
「 …ふっ、そいつの名はぽてと。命名者及び現飼い主は、佳乃だ。佳乃曰く、こいつは犬だそうだ。聖は解剖したがってたがな。 」
「 …犬か。…あまり納得はしたくないが、そう言う事にしておこう。聖さんの興味も理解出来るがな。 」
「 ふむ、 君とは気が合いそうだ。だが、私は君にも興味を持っている。どうだい?今度解剖させてくれないか? 」
「 それは断る。だが、医術に関してなら、今より進んだ知識も有る。それなら喜んで、伝授するが? 」
「 ほう? 例えば、 どんな内容かな? 」
「 …外科的知識、 薬学、 麻酔学等だ。 外科手術の知識を習得出来れば、 体の中で発症する病気の、約7割は完治する。 」
「 ……大いに興味が有るな。 是非、 私に伝授してくれ。 」
「 解った。 」

祐一は聖と握手した。 そして、 すぐに柳也の方を向く。

「 柳也殿、これから、美坂香里の方から話が有ると思うが、華音は御音、東鳩、そして貴方達AIRと同盟を組む事にした。 」
「 ふむ。それは願ってもない申し出だな。
世界情勢が情勢なだけに、我等AIRの有る大陸でも、不穏な動きをしている国が、幾つか有る。
それらに対する牽制の意味において、華音と同盟を結んだと言う事実は、何よりも効果が望める。 」
「 詳しい事は、 後で香里に聞いてくれ。 それと、 このメンバーは、 例のアレの志願者と見ていいのか? 」
「 神奈以外は、そうだ。騎士やハンターからの募集は、後から来る。
大半が祐一、お主の強さに半信半疑だったのでな。私以上に強いと言ったら、群がって来おったぞ。 」
「 …… 」
「 解るさ。剣だけの勝負なら、もしかしたら互角かも知れん。
だが、真の実力とは、自分の出来る事全てをひっくるめた力の事だ。祐一、お主は剣士としても、魔術師としても、恐らく最強だろう。
なら、魔術が使えぬだけ、私の方が弱い。それに、お主はまだまだ力を隠している。それでは敵うと思う方がおかしい。 」
「 …… 」
「 良いのだよ。何処かの、「 俺様が最強 」と、いつも叫んでいる侍ではあるまいし、別段最強に固執している訳ではない。
ただ、親しき者を守りきる力を、常に維持しておきたい。 それが、唯一の望みだ。 」
「 …… 舞と一緒に、俺の我流の剣術を学んでみるか? 柳也殿なら、一刀流も、二刀流も伝授出来そうだ。 」
「 …それはありがたい申し出だ。 だが、華音にはもう一人、 どうやら祐一から剣を学びたい者がいる様だぞ。 」
「 …? 」

思い至らない祐一から離れて、 柳也がドアの前まで行き、 勢い良くドアを開けた。 そこには、 宮廷騎士団長の、 北川 潤 が立っていた。

「 …… 北川? 」
「 … 失 …… 失礼します。 」

いたずらが見つかった子供の様に、 少し恥しがりながら、 北川が政務室に入る。

「 どうした? 北川。 」
「 … 相沢将軍に、 お願いが有り、 参上致しました。 」
「 …… 剣を…、 学びたいのか? 」

祐一の言葉に、 北川はコクンと頷いた。

「 俺は、二刀流の道場で、剣を学びました。
そして、ハンターをしている時に、華音の騎士団と一緒に仕事をする機会が有って、
その時の団長、美坂と手合わせして、互角の勝負をした事で、美坂に王様へと推薦されて、今の宮廷騎士団長へと任命されました。
そして、その事で俺は、自分の強さに自惚れてしまったんです。美坂と互角、 舞さんともいい勝負。 
俺の強さは、 今高みを極めようとしている…と。だけど、そんな小さい自信は、すぐに秋子様に崩され、今に至ります。
二刀流を極めたい、そう強く願う様になりましたが、華音や近隣諸国には、俺より強い二刀流の使い手がいなかった。
俺は途方にくれました。そんな時、将軍の事が情報として入って来たんです。
同じ二刀流の使い手、秋子様にさえ勝つ実力。俺は、どうしても相沢将軍に師事して頂きたいと、帰国をずっと待っていたんです。 」

「 …そうか、解った。北川、舞と柳也殿と一緒に、俺の二刀流を伝授する。
合同修練は、一週間後を予定している。それまで、柳也殿と一緒に、舞に以前課した試練を受けろ。
内容は、 舞に聞いてくれ。俺の武器は今、 舞に預けてあるんでな。 」
「 あ …… ありがとう御座います!! 」

北川の表情が、 みるみるうちに、 明るいものになった。 

「 あい解った。 では、 参ろうか、 北川殿。 」
「 はい。 私が案内します。 」

 そう言って、 北川と柳也は、 北川の案内で舞の下へと向かった。












 一方、 アルクェイド、アシュタロト、藤田 浩之、フェリシア、志貴は、それぞれ来賓室を宛がわれ、
丁重なおもてなしを受けていた。 3日目に志貴が来てからは、 華音国軍の兵士・騎士用の修練場へと顔を出していた。
団長が日替わりで修練の様子を見る制度になっているのだが、 今は香里がそのサイクルから抜けて、
名雪、 舞、 北川の3人でローテーションをしていた。
名雪がアルクェイド達に気付き、 声をかける。

「 どうしたの? こんなところに。 」
「 う〜ん、あのね、3日間、何もしないで部屋にいるのに、退屈しちゃってね〜♪ 
で、皆と一緒に城内を散歩してたら、剣を打ち付けあう、いい音がして来たから、見に行こうって事になってね♪ 」
「 …なら、参加してみる?香里がローテーションから抜けて、今の私、第二騎士団の方も見なくちゃならないんだよ。
アルクェイド達が参加してくれれば、少しは私の負担も、軽くなるんだけどな。 」
「 私はいいけど、 アシュタロトは? 」
「 構わん。 騎士団の方々にとっては、 良い経験になる筈だ。 」
「 勿論、 俺も参加するぜ。 」
「 …必然的に、 俺もと言う事になるんだろうな。 」

そう言いつつも、 志貴はやる気満々だった。

「 ありがとう、 みんな。 じゃあ、 部下達に伝えて来るね。 」

名雪は兵士、 騎士達に中断の号令をかけ、 アルクェイド達が参加する旨を伝える。
途端、 期待と歓喜の視線が、 5人に注がれた。

「 これは、 相手しがいが有りそうね♪ 」
「 うむ。 久々に、 良い鍛錬が出来そうだ。 」
「 よし、 行こうぜ! 」
「 そうだな。 」

5人は、 修練場へと降り立った。












一方、 祐一は香里と同盟に関する事で、 話し込んでいた。

「 では、 同盟に関する内容は、 これでいいわね。 」
「  ああ、 これでいい。 これなら、 どちらの国にとっても、 有益な筈だ。 」
「 では、 これで話を進めるわね。 」
「 よろしく頼んだ。 」

そう言うと、香里は書類をケースの中にひとまとめにすると、政務室を後にした。
この3日後、東鳩から 藤田 あかり と 保科 智子 が、御音からは代理と称して茜が、
アルテミスからも秋葉が、華音へと極秘裏に来訪し、後に聖戦同盟と言われる様になる、 5カ国同盟が締結された。












時は戻って、 華音王国の修練場。

今、 闘技台の上には、 アルクェイドと、 二人の女の子が立っていた。

「 あぅ〜、 みしお〜。 あの人、 すっごく強そうだよ〜。 」
「 強そう… ではなく、 本当に強いんですよ、 真琴。 相手は、 上級魔族なんですから。 」

沢渡 真琴 と、 天野 美汐 だった。
何故この二人が騎士団の修練に参加しているのか、それは主に名雪から魔術の手解きを受けているからである。
以前は、 秋子から直接受けていたのだから、 今は国政や軍事の事で、 秋子が忙しくなってしまったので、
元々魔術師でもあった、 名雪から手解きを受けていたのだ。

「 ねぇ〜、 まだ〜? 来ないなら、 私の方から行くけど? 」
「 真琴、 これは修練です。 死にはしません。 ですから、 覚悟を決めましょう。 」
「 あぅ〜、 解ったわよぅ。 」

二人は覚悟を決め、 真琴は素手で、 美汐は詠唱に入った。

「 では…、 始め!! 」

志貴が審判となり、 開始の合図を送った。
開始の合図と同時に、 真琴がアルクェイドの目前にまで、 瞬時に迫る。
と、 アルクェイドの顔、 鳩尾、 脇腹へと、パンチとキックの連携技を繰り出し、 アルクェイドをに迫る。
アルクェイドは、片手でパンチをいなし、 キックを半身ずらす事で、 回避した。
と、 アルクェイドへ向けて、 光の矢が数本、 アルクェイドへ向けて、 飛来する!!
と、 アルクェイドはニヤリと笑い、 片腕で真琴の胸倉を掴み、 そのまま持ち上げ、
もう片腕をブンっと振った。
と、 風の衝撃波が生まれ、 美汐の放ったシャイニングアローを消滅させた。
そして、 掴み上げたままの真琴を思いっきりぶん投げ、 美汐目掛けて素っ飛ばした。
美汐は何とか回避しようとしたが、 美汐の足に真琴の肩が当たり、 二人はもんどりうって倒れた。

「 あ ……あぅ〜〜〜…… 」
「 あたたたたた…… 」

真琴は目を廻しており、 美汐は真琴が当たったせいでくじいたのであろう、 足を摩りながら、上半身を起こしていた。
アルクェイドが二人の傍まで歩み寄り、 しゃがみ込む。

「 まだまだね〜♪ でも、 コンビネーションはなかなか良かったわよ♪ 」

そして、 この中で唯一魔術師でもあるフェリシアも傍に来て、 回復魔法を二人にかける。

「 魔術士としての基礎を、もっとたくさん積みましょう。そして、魔力を一度空にして、そこから更に魔術を放ち、限界を引き伸ばす訓練もしましょうね。
後は、詠唱をもっと早く出来る様に、これも積み重ねが大事です。後は、精神の強化も。座禅や瞑想が一番いいですよ。 」
「 …ありがとうございます。 アルクェイドさん、 フェリシア様。 ご指摘の点、 真琴と二人で改善しようと思います。 」

美汐は、 素直に二人の指摘を聞き入れ、美汐が真琴を背負い、闘舞台を降りた。
アルクェイドはこの後30人程の相手を、 アシュタロトと志貴は50人づつ、 藤田 浩之 は40人、
そして、 フェリシアも20人程を相手にし、 騎士や兵士達に、 弱点や改善すべき点を指摘し、名雪と共に修練の面倒を見た。

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