第三章
華音編第3話 「 5カ国(聖戦)同盟 」












アルクェイドやアシュタロト達が、修練場に出入りする様になってから3日後、華音の王城・白鍵( ホワイトキー )の会議室では、同盟締結の為の会議が行われていた。
魔術士団の協力のお蔭で、
御音より代理として、里村 茜
東鳩からは、王妃 藤田 あかり と 保科 智子
アルテミスからは、女王 遠野 秋葉
AIRからは、神奈と柳也が、
AIR以外極秘裏に来日、一同に会していた。






「 お初にお目にかかる。私はAIR王国将軍、柳也と言う。何人かの名や顔は見知っているのだが、お互い顔も名も知らない者同士もいる筈。
そこで、自己紹介といこうと思うのだが…、 如何だろうか。 」
「 …… そうですわね。私も、東鳩の方は存知ませんし、これから手を組む者同士、そうした方がいいでしょう。私はアルテミス王国女王 遠野 秋葉 です。 」

物腰を上品に、頭を垂れる秋葉。

「 私は、東鳩連合王国国王 藤田浩之の妃、 藤田あかりです。そして、こちらは私の国の宰相、保科智子です。 」
「 保科 です。 よろしく。 」
「 AIR皇帝 神奈 じゃ。 」
「 御音帝国皇帝、 折原 浩平 の代理で来ました、 里村 茜 です。 」









一通り紹介が終わったところで、タイミング良くドアが開き、祐一と香里、国王 倉田 典善 に佐祐理と一弥、秋子に久瀬が、会議室に入って来た。

「 皆、 待たせたな。 」

祐一が一言呟き、 軽く謝罪する。
その場の全員が起立し、 全員が一斉に敬意を、 国王に対し表した。

「 私に敬意は不要だ。一国の王、もしくは代理同士、今これよりはどの国も対等の立場として、接して欲しい。
同盟締結の為の条項にも、そう盛り込まれているからね。 」

国王の一言に、 皆が敬意を解いた。

「 では、 これより五カ国による同盟締結の為の、 条件、 条項の取り纏め及び、 同盟の為に掲げる誓言を決定する会議を始めます。 」

香里の凛とした声が、 会議室に響き渡り、 各人が一斉に頷いた。

「 まず始めに、この同盟には、盟主国と言うものは存在しません。
有るのは、五カ国がすべからく平等であり、一国は他4カ国の為に、4カ国は一国の為に、その精神の下、締結されるものです。 」

香里は、 用意していた書類と、 同盟に関する内容を詳細に纏めたプリントを、 各人へと配った。

「 おおまかな事は、 事前にお伝えしましたが、
詳細な内容は、今お配りしましたプリントに、全て纏めて有りますので 会議期間は後2日御座いますので、ご検討下さい。
今日はこれだけですが、 質問等は有りますでしょうか? 」

香里の言葉に、 秋葉と茜、 智子が手を挙げる。

「 では、 秋葉様から。 」
「 はい。 私からの質問は簡単なものです。 この同盟は、 私達アルテミスと華音が以前結んだものとは、別物と考えていいのでしょうか? 」

秋葉の質問に、 香里は祐一と国王の方を見る。
想定の範囲内だったのだろう、 祐一と国王は顔を見合わせると、 香里を見て、 二人して頷いた。
それを見て、 香里は再び秋葉を見た。

「 同盟を二つ別に結んだままにするか、それとも更新と言う形にするかは、秋葉様のご判断にお任せします。
前者の場合は、駐留軍はお互いそのまま、新しい同盟の条件で、互助義務と物資救援等の義務が発生します。後者ですと、お互いの駐留軍を引き上げ、後は同じです。 」
「 解りました。 少し考える事にします。 」
「 では、 次に 保科 智子 様。 」
「 ほな。このプリントに書かれてる、交換留学生の事なんやけどな、これは定員は決まってるん?
ウチはこれ、大いに賛成なんやけど、文化交流、国交面での友好活動、一人一人の才能育成、 どれを取ってもプラスになるし。
プリント一通り目を通したけど、ウチと王妃が気になったのは、そこだけやねん。見て早々だけど、東鳩はこの同盟、 賛成するで。 」
「 賛成ありがとう御座います。交換留学生に関しては、一年目は各国100人づつを考えています。
そうすると、 一国に400人が集合する事になります。 それが五カ国で2000人。 大いに意味が有る事と思います。 」
「 …そやね。それだけ多くの人が、他国の文化や他色々な物を見て、聞いて、理解してくれれば、そう簡単に戦いなんか起こらんやろうし。 」
「 はい。それが本当の目的でも有ります。今まで私達は、お互いが敵、いつかは侵略し、我が領土にと、常に緊張した状態のまま、お互いに睨みを効かせてばかりいました。
昔は国交が有った国とも、すでに百年単位で断絶状態が続いていた。
それでは、今現在の、国の文化や考え方なんて、まったく解らない。
だからこそ、お互いに相手の国を理解し、親しみを持つ様になれば、 きっと戦いはなくなる筈です。
人は、自分に理解出来ない、受け入れられない事を、一番恐怖しますから。
怖い事はなくす、 滅ぼす。そうやって恐怖を排除する。
その為の方法が戦になる。理解し合えれば、絶対に戦いなんて起こらない。私は、 そう信じています。 」

香里の言葉に、 各国の代表も感心しながら頷いた。

「 了解や。 後は何もない。 ウチからは以上や。 」
「 解りました。 では最後に、 茜さん。 」
「 はい。 と言っても、 私達御音は、 少し違う提案が有ります。 」

香里は、 再び祐一と国王を見た。
と、 今度は祐一が立ち上がり、 香里の隣りに立つ。

「 ……続けてくれ、 茜。 」
「 はい。 提案は二つ。

一つは、 同盟の条件は、今ここに示されたものと、華音とアルテミスが交わした内容を、合わせて一つにし、
先程言われた互助義務、物資救援義務、各国への駐留軍の派遣義務を、平等に背負う案。
二つ目は、幸い我々5カ国の陸地は、AIRや一部島を除き、全て陸繋がりになっています。
そこで、 国境を全て廃止。共和制を敷き、各国持ち回りで総統を任せ、強大な一国と成して、共に歩んで行くと言う案。

これらは、折原浩平陛下御自身の考案です。 」

祐一は、浩平が出して来た案に、珍しく感心していた。
一巨大帝国の皇帝が、帝国と言う形をなくしてでも平和を望もうと言う心が、見て取れたからだ。

だが……、

「 今は、 二つ目の案は却下だ、 茜。 」

祐一が、 即座に案を却下する。

「 理由を説明して頂けますか? 」
「 ……そこまでの大改革をする為には、年単位での調整期間が必要だ。
簡単に言うと、それを行う時間がない。更に言うと、さっき茜が言った通り、AIRは陸繋がりではない。
どうしても、 陸続きの4国とAIRでは、 制度の施行等で、 タイムラグが発生してしまう。
それに、 まずはその国に生きる民同士の交流から始めなければ、 急な体制変化は、いらぬ混乱を招く。 それだけは、 今は避けなければならない。 」
「 ……やはり、 そう言いますか。 私も、 結論はそう考えていました。
秋子師姉も、私共の陛下も、それは重々承知しています。
ですが、 御音は本気でそれを考えている事を、皆様に解って頂きたく、折原陛下より、案件を出す様、言われていましたので……。 」
 
茜は、 スッと頭を下げた。

「 ……全ての決着がついた後、 俺達人々が勝利を収めた後、 ゆっくり話し合ってくれ。 」
「 ……そうですね。 」

茜はそう言うと、 少し微笑んで、 席に着席した。

「 AIRからは、 何か有りませんか? 」

香里が、 話題転換の為に、 AIRへと話の矛先を変えた。

「 我等に依存はない。どの項目を見ても、公明正大で、互いの国にとってプラスになる様になっている。
ハッキリ言って、こんな好条件が提示されるとは、思っていなかったのだ。
最低でも、 同盟さえ結べればいい。 そう思っていたからな。 」
「 それは、私達東鳩も同じです。私達は、祐一様に対して、凄く失礼な事をしてしまいました。
ですが、 それを一切問わず、 こうして同じ席につく事を、許して下さった。
それに、 こうして敵対を続けていた国々と、 今度は手を取り合って共に生きる道を示して頂いた。
それは何よりも素晴らしい事だと、 私は思います。 」

あかりの言葉に、 隣りに座る智子が、 ウンウンと頷く。

「 ……俺はお膳立てをしたに過ぎない。俺一人では、今日こうして5カ国が一同に会する場を作る事は、出来なかった。
仲間がいたから、今こうして皆が一同に会している。皆の力だ。 俺だけの力じゃない。 」

「 祐一さんの言う通りですよ、 皆さん。 例え一人が強大な力を持っていても、 それだけでは、人は動いてはれません。 
力の他に、 信じる心を持っていなければ……。 皆さんは、その両方を祐一さんに感じた。
だからこそ、今ここにいる。でもそれは、祐一さん一人の力で成されたのでは有りません。 祐一さんを信じ、 共に同じ道を歩んで来た皆さんの力で成されたのです。 」

秋子の言葉に、 皆少し赤くなった。
でも、 心は何処か嬉しさを感じていた。
が、 そのほんわかムードは、 街からの爆発音で、 いっきに霧散する。
祐一が窓へと駆け寄り、 街を見下ろす。
と、 その直後、 窓を開け、 両手を横へと伸ばしながら叫んだ。


「 アデアット!! 我が心の友よ! 今その御身を、 我が下に!! 」


叫んだ直後、 祐一の伸ばされた両手の少し先が輝き、 2本の剣が祐一の両手へと納まった。

 その2剣を両脇へ差し、 祐一は後ろを振り返る。

「 秋子さん! 大急ぎで皆の指揮を!! 街中に上級が3体、 中級以下が数十体乱入しています。 」
「 解りました! 祐一さん、 先行して下さい。 」

秋子の言葉に祐一は頷き、 空へとその身を躍らせた。

「 秋子師姉、 私も行きます。 」
「 茜さん……、 ええ、 お願いします。 」

茜も頷くと、 祐一を追って窓から外へと飛び出した。



「 久瀬さん、 第一、 第二団長へ、 王都内の魔族の掃討命令を。 魔術士団は……、 佐祐理様。 」
「 ふぇ? ……は、 はい。 」
「 私の代理で、 その指揮をお願いします。 」
「 ……佐祐理で大丈夫でしょうか……。 」
「 佐祐理様なら出来ます。 」
「 ……解りました。 」
「 了解。 」

佐祐理と久瀬は、 会議室から走って出て行った。

「 国王様、 一弥様、 各国の皆様は、 至急避難を。 」

国王と一弥、 あかりと智子、 神奈は頷いたが、 秋葉と柳也は一歩前へ出て、 秋子に戦うと、 目で語った。
秋子も二人の意思を感じ取ったのだろう。
コクンと頷き、 それを見た二人が、 室内から出て行くのを見守る。

「 ……皆さん、 頑張って下さいね。 」






( 王都内 )
祐一と茜は、 街の中心の広場へと、 すでに来ていた。

「 …茜、 お前はすぐに来る騎士団と共に、 中級以下を倒してくれ。 俺は、 あの上級を倒す。 」
「 解りました。 祐一、 気を付けて。 」
「 ……ああ。 」

茜は祐一と離れ、 街中へと走って行った。






「 …… お前等は見た事がない。 …アイツの手の者じゃないな? 」

祐一の言葉に、 3人の上級魔族がニヤリと笑い、地上へと降りて来る。

「 お初にお目にかかる。 私の名はベルゼヴヴ。 以後、 お見知りおきを。 」
「 俺はリンドブルム。 お前があの有名な男か……。 実力の程、 見せて貰うぜ? 」
「 …… レミリア。 」
「 ……サタン配下の者だな? ベルゼヴヴ……、 蠅の王か。 」
「 私の事をご存知で。 」
「 知らない者はいないだろう? 実質サタン勢力のNo.2だろうが。 」
「 では話は早い。何、たった一つ私共の願いを聞き入れてくれれば、今すぐ手勢は引き上げますし、今後人間界への侵略を二度と行わない。如何ですか? 」
「 …… アイツと手を切れ。 俺とアイツの目指す世界の構築をやめろ。 そう言いたいのだろう? 」
「 話の解る人は好きですよ♪ 」
「 なら、 俺の答えももう解っている筈だ。 」
「 はい♪ ですから、 力尽くでやめさせるしかないですね♪ と言う訳で、私達3人と楽しい楽しい、死への輪舞を踊りましょう♪ …… 相沢祐一 !!! 」

今までのヘラヘラした顔から一転、祐一を睨み、ベルゼヴヴ達は戦闘態勢に入った。

「 …… 解った。 だが、ここではダメだ。せめて、場所を変えろ。 」
「 いいでしょう♪ 」

 そう言って、ベルゼヴヴはいったん構えを解き、キョロキョロと遠くの景色を見廻した。

「 …… そうですねぇ……。ここから10km離れた、平原なんてどうでしょうか? 」
「 リグレット平原か……。解った。では行こう。 」

そう言って、祐一は飛翔魔術を唱えると、ベルゼヴヴ達3人と共に、平原へと飛んで行った。



一方、 茜は中級魔族を相手に、少し苦戦を強いられながらも、 一体づつ、 確実に魔族を屠っていた。
少しして、 秋葉と柳也も合流し、残り後2体にまで減っていた。

「 秋葉様、 柳也さん、 後は、 華音軍にお任せしましょう。他の皆さんも来た様ですし、皆で祐一さんの援護へ行きましょう。 」
「 解った。 」
「 解りましたわ。 」
「 あ! 茜ちゃん!! 」

茜は、 声のした方へ向いた。 そこには、 丁度戦乱から出て来た名雪がいた。

「 名雪さん……、丁度良かった。名雪さん、私と華音軍以外の皆さんは、これから祐一さんの援護に向かいます。その旨、秋子師姉や軍の皆さんに伝えて下さい。 」
「 うん、 解ったよ! 気を付けてね!! 」
「 はい。 」

二人はすぐに別れ、名雪は皆へと伝えに、茜達は祐一と上級魔族の、 高速で移動している気配を追って、 走り出した。

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