華音編
第6話 「 大召喚士の資質 」









 『 我は命ずる、血の盟約を交わしし我が命の友よ、我汝の主として命ずる。相沢 祐一の名において、今ここに姿現さん!
出でよ、 カーバンクル! シルフ! ラムゥ!グラシャラボラス! 』



祐一の詠唱が終わった瞬間、 空中に展開された4つの立体魔方陣から、 4体の召喚獣がスーッと姿を現した。
と、 途端に反射的に身構えるリリアンの女生徒達。
だが、 4体の召喚獣が祐一に対して敬意を表したのを見て、 一同ポカーンとしてしまった。



( お久し振り♪ 祐一♪ )
< 祐一様、 ワシに何の用かのぅ。 >
〔 何なりと言っていいよ、 祐一〜♪ 〕
【 ……早く言え。 】



「 解った解った。 お前達に頼みたいのは、 四柱四聖結界陣を、 この学園全体に張って欲しい。 」

< それは多少てこずりますが、出来ます。ですが、大聖霊を一人、補助とこの地への認証の為、必要ですが……。 >
「 5人の内、 4人は契約した。 内一人、 アルテミスは仲間の一人に移した。 今いるのは、シヴァ、 イフリート、 ライトだが……。 」
( じゃ、 シヴァ様だね♪ 元々華音は、 水と氷の祝福を強く受けてるし♪ )
「 解った。 」

祐一は再び詠唱し、 大聖霊シヴァを呼び出した。

{ およ? どうしたの? 祐一? }
「 急で悪いんだが、 四柱四聖結界陣を、 この学園全体に張りたい。 そこでシヴァに大地への認証と、補助を頼みたい。 」
{ お安い御用だよ♪ じゃあ、 ちゃちゃっとやっちゃうね♪ }

シヴァはそう言うと、 4体の召喚獣に指示し、 東西南北へと召喚獣達を配置した。

「 祐一様……。 」
「 ……ん? 」
「 あの……、 魔物達は……。 」

祥子が、 怖る怖る祐一に尋ねる。

「 …… そう見えるのも仕方ないか。だが、あいつらは違う。召喚獣達だ。
召喚によって、この世界に呼び寄せる事が出来、本来の生きる世界は魔界だが、魔族と違うのは、一度主と認めた相手には、主が死ぬまで従い、共に生きる。
今のあいつらの主は、俺だ。で、 最後に出したのが、大聖霊シヴァ。 全聖霊&精霊を統括する、 5人の大聖霊の内の一人だ。 」
「 そうなのですか……。 私達には、 初めての事ばかりなので、 皆驚いてしまって……。 」
「 わ〜〜〜っ♪ 可愛い♪ 」

と、 祐巳がカーバンクルを見て、 一人はしゃいでいた。
見るとカーバンクルも祐巳を見て、 ニコッと笑っている。

「 ……あの祐巳って子は、 不思議な子だな。 誰とでも打ち解けられる、 そんな魅力が有る。 」
「 それは同感ですわ。この学園で、祐巳を嫌いな子はいません。いえ、 あの子の前だと、誰もが自然体の自分を、素直に出せるんです。
それをあの子は分け隔てなく受け止めて、必要に応じて必要な事を返してくれる。 だから、 嫌えないのですよ。 」
「 ……。 」

祐一は、佐祐理に似ているなと思った。あの王女も、同じ様な性格をしていると……。






と、 パシーンと言う音が聞こえ、 祐一は顔を上げた。

{ 終わったわよ♪ 祐一♪ }
「 ああ、 ありがとう。 」
{ カーくんが、 あの女の子の事、 気に入ったみたいね♪ }
「 ……。 」

見ると、 カーバンクルは祐巳の下へと降り、 祐巳に人形の様に抱き締められていた。
カーバンクルも、 機嫌良いのか、 大人しく抱き締められている。

「 あまり、 主人以外に懐く事はないんだがな。 」
「 祐巳……。 」

祐一は、 カーバンクルと祐巳の傍へ歩み寄り、 声をかけた。

「 カーバンクル、 祐巳の事、 気に入ったのか? 」
( うん♪ この子、 とっても気持ちいいんだ♪ ポカポカしてる。 祐一に似ているよ♪ )
「 そうか。 ……祐巳。 」
「 は…… はははははい。 」
「 この子を、 君の召喚獣にする気はないか? 」
「 え………… え〜〜〜〜〜〜!! 」

あまりにもの突飛な言葉に、 素で驚く祐巳。

「 カーバンクルは君を気に入っている。普通、主人が決まっている召喚獣は、主人以外には懐かない。
だが、 君は懐かれ気に入られてしまった。それは、主人の俺以上に、君との相性が良いと言う事を示している。 
恐らく君の守る力と、カーバンクルの能力である同じく守る力、そう言う所も惹かれ合った原因だろう。 」
「 えっ? えっ? えええ!? ででで、 でもでも……。 」
「 気にするな。俺は一人で強大な力を持ち過ぎている。それに、俺よりも君の方が、カーバンクルと相性が良いみたいだ。初対面で、ここまで召喚獣が懐く事は、殆どない。」
「 そ、そそそ、そうなんですか?私、ただこの子見てて、可愛いなって……。不思議と怖くなかったんです。 
祥子様や、令様が身構えたのが、何で?って思ってた位で……。この子と目が合った時、不思議と解ったんです。
この子や、この子の中間達は、祐一様の命令かも知れないけど、私達を心から守る為に、力を使おうとしてくれてるんだなって……。 」
「 ……。 」

祐一は、 祐巳の懐の深さを、 今改めて強く感じた。
この子は、本当に誰に対しても、人間以外の生物に対しても、分け隔てなく同じ心で接する事が出来る子なんだと。
そして、秋子さんが何故自分一人をここへ向かわせたのか、 その意図を今ハッキリと感じ取っていた。
この子は、 大いなる可能性を秘めていると。
祐一は、 祐巳の両肩を掴んだ。

「 祐巳、君には二つの道がある。一つは、あらゆる属性魔術を修得し、秋子さんや茜達と同じ、大魔術士、大魔導士と呼ばれる存在になる道。
そしてもう一つは、それにプラスして、多数の召喚獣や魔物と契約して、その場に応じて召喚獣を召喚し、共に戦う大召喚士への道。 」
「 そそそ、 そんな、 私なんかに、 そんな力なんて……。 」
「 ……自分に自信を持て。持てないんだったら、俺が持たせてやる。そして、ここリリアンのお前の仲間達が持たせてくれる。仲間達の顔を見て見るんだ。 」

言われて、 祐巳は廻りにいる仲間達を見た。

「 祐巳さん、 祐巳さんになら、 きっと出来るわ。 」

志摩子が。

「 祐一様が、 ここまで言ってるのよ? 祐巳さんには、 その可能性が有るのよ!駄目で元々じゃない。 やれるとこまで、 やってみるべきよ! 」

由乃が。

「 祐巳ちゃん、可能性を自分で閉じちゃ、勿体ないよ。最初は自信なんてなくてもいい。でも、挑戦してみる価値は、有ると思うから。 」

令が。

「お姉様、 正直私はお姉様が羨ましいです。 相沢家は、 私にとっては仏像と同じ位、 憧れの
対象でしたから。 でも、 不思議と悔しさは有りません。 きっと、 お姉様だからだと思います。 」
「 乃梨子ちゃん……。 」
「 祐一様が私達リリアンの女生徒達より、遥かな高みにいる方であると言うのは、先程の召喚魔術と言うものを見て、ハッキリしています。
お姉様は、そんな方に可能性を見出されたんです。ロサ・フェティダ様と同じく、挑戦してみるべきだと思います。 」

乃梨子が。

「 祐巳、 私もみんなと同じ思いでいてよ。 大丈夫、 私達も同じく華音王都へと行くのだから。挫けそうになっても、 すぐ傍には私達がいるわ。 」

祥子が。

「 そうね、 祐巳ちゃん。 」
「 祐巳ちゃんなら、 頑張れる筈よ。 」
「 ま、 私の愛しい妹だからね。 」

と、 突然ディパーティーションのゲートが開き、 中から3人の女性が現れた。

「「「 お姉様!!! 」」」

祥子が、 令が、 祐巳が、 驚いて思わず叫んだ。
3人は祐一の前まで来ると、 膝を付いて、 臣下の礼を取った。

「 秋子様の命令で馳せ参じました、 祥子の姉、 水野 蓉子です。 」
「 同じく令の姉、 鳥居 江利子です。 」
「 祐巳の姉、 佐藤 聖です。 」
「 ……秋子さん、 前もって用意していたな……。 」
「 はい。 実は今回の会議の折、 派遣された国々に対し、 一週間前から交渉が有り、国王様と共に、 すでに華音入りしていました。 」

江利子が、 事のあらましを祐一に説明した。

「 お姉様……。 」

祐巳が、 聖に抱きついた。

「 祐巳、貴女にはマジで可能性が有る。それは誰もが認める事だよ。
蓉子から聞いた話だと、祐一様は一度に数万人の怪我を治し、同時に魔族を滅ぼす、そんなとんでもない大魔術も使う程の力の持ち主だ。 
祐一様の言う事は信じられる。姉の私が信じてるのだから、祐巳も信じなさい。 」
「 お姉様……。 解りました。 お姉様が信じる人を、 私も信じます。 」

そう言って、 祐巳は祐一の方を向き、 頭を下げた。

「 祐一様、私、挑戦します。大魔術士だけではなく、大召喚士に。カーくんとも、祐一様がお許し下さるなら、契約したいです。
私に何処まで可能性が有るのか解りませんが、 私が吸収出来るだけ、 祐一様から学び吸収したいです。 」
「 ……解った。 」

祐一はそう言い、 剣を少し抜くと、 親指の先を少し斬り、 血を滴らせた。

「 まず、俺の血を一滴二滴程飲んでくれ。これは、召喚獣をより召喚し易くする為、また俺の血にはそう言う特質が有る為だ。
少々抵抗は有るだろうが、これだけは最初の試練と思い、受けて欲しい。 」

「 ……解りました。 」

祐巳は、一瞬躊躇したが、すぐに覚悟を決め、祐一の前に跪き、祐一の親指を口に含んだ。
そしてコクンと一口、 血を飲み込んだ。
と、 祐巳の体が緑色に輝き、そしてすぐに消えた。

「 これで良し。君はこれから、様々な事を知り、そして誰も、俺以外に誰も経験した事のない、召喚士としての道を歩く。 
カーバンクルとの契約は、その第一歩だ。カーバンクルは、召喚獣の中でも、人懐っこくて、優しい心根の持ち主だ。
でも、中には気性の荒い、 なかなか契約してくれない召喚獣もいる。 
それを、 召喚士としての最初の知識として、覚えておいてくれ。 」
「 はい。 」
「 では、 契約の移動をする。 」



祐一が、 長い詠唱に入る。
一度祐一とカーバンクルの間の契約を抹消して、カーバンクルが祐巳の前まで行き、祐巳の手にそっと口付けをする事で、新たに祐巳とカーバンクルの契約が発生した。



( よろしくね♪ 祐巳♪ )
「 うん♪ 私こそ、 よろしくね♪ カーくん! 」

祐巳はカーバンクルを抱き締め、 今ここに二人目の召喚士としての、 第一歩を歩み始めた。



「 では、 華音王都へと向かう。 」

そう言って、 祐一は自分を含めた47人全員を、 一度にディパーティーションで王都へ向けて送った。
余談だが、王都について、リリアンの女学生達は、一度にこんなに大勢の人間を転移させた祐一の力を垣間見て、改めてとんでもない人だと、祐一に対して思っていたり。
何故か秋子さんが出迎えに来ていたりもしていたり。

「 お帰りなさい、 祐一さん。 それと、いらっしゃい、リリアンの女生徒達。 」
「 ……ただいま。 」
「「「「「「「 学園長先生、 ご指導、 よろしくお願い致します。 」」」」」」」
「 はい、 私も祐一さんから扱かれる立場ですから、 一緒に頑張りましょうね、 皆さん。 」
「「「「「「「 はい!!! 」」」」」」」

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