第三章
第8話「伝えられた真実」






 ※この第8話から、物語は核心へと向かって行きます。
おおよその事実が、この8話と、次の9話で語られます。
戦いのシーンは、意外と少ないかも知れません。
ただ、これを書き始めた当初から、この物語は、全部で多くて3部、
少なくても2部にすると決めていました。
この8話と、次の9話を読んで、興味を無くす方もいらっしゃると思います。
あえてその事に対して何かと言う事は有りません。
ただ、8話と9話で語られる真実こそが、この物語のタイトルに直接強く結びついている
事だけは、最初に申し上げます。
それでは、物語へと……。
ちなみに、この文は下書きには有りませんでした。
急遽、wordを立ち上げた際、脳裏に浮かんだので、継ぎ足しました。






「 今、 政務室には数名の男女が集まっていた。
「 話とは何ですか? 」

秋子が尋ねる。
同様に、 祐巳、 アルクェイド、 アシュタロト、 佐祐理が頷く。
フェリシアは無表情のまま。
只一人、 志貴だけは普通のままだった。

「 …………今度の休日に、 ものみの丘に来て欲しい。 」

祐一はただ一言、 それだけ言うと、 皆の返事を待った。

「 ……今ここでは、 話せない内容なのですか? 」

秋子が尋ね、 それに対して祐一は黙したまま頷いた。

「 ……解りました。 佐祐理は行きます。 」
「 佐祐理王女……。 」

秋子が呟く。

「では、 私も参ります。 」

秋子も頷いた。

「祐一さんが理由なくそんな事を言うとは思えません。 だから、 私も行きます。 」
「右に同じ。 」
「私も♪ 」

これで志貴以外、 全員が同意した。

「勿論、 俺も行く。 」

最後に志貴が締めた。



部屋から何人かが去り、 祐一と志貴、 アシュタロト、 アルクェイドが残った。

「いいのか? 祐一。 彼女達が全てを受け止められるか、 解らないぞ? 」
「五分五分ってところね。 」
「そうだな。 」

3人が祐一を心配する。

「……だが、 話さない訳にはいかない。 今のままじゃ、 俺はみんなを騙したまんまだ。 
……全員に打ち明けるのは無理なのは解ってる。 なら、 心のおけない人達だけでも、 全てを知っていて欲しいんだ。 」
「それは…、 そうだけど……。 」
「彼女達なら、 きっと受け入れてくれる。 俺はそう信じる。 」
「……祐一がそう言うなら、 祐一のしたい様にすればいい。 俺は共に祐一と同じ道を行くだけだ。 」
「済まないな、 志貴。 」
「謝りっこなしだ。 ここにいる皆は、 全てを知った上で、 今ここにいるんだ。 アルクェイドも、アシュタロトも、 そして俺もな。 」

志貴の言葉に、 アシュタロト、 アルクェイドの両名も頷いた。

「 大丈夫よ、 祐一。 例え皆が離れて行ったとしても、 私や志貴、 引いてはアルテミス王国だけは、祐一と運命を共にするから。 」
「 ……ありがとう。 」






そして、 休日の日がやって来た。

佐祐理から話が広まったのだろう、 舞や浩之、 祥子が行きたいと申し出たが、 祐一は厳しく断った。
特に舞は不満顔を浮かべていたが、 祐一の命には逆らえず、 大人しく待つ事にした。
各人が正門前に集合し、 徒歩で移動。

小一時間後、 皆は標高500メートル程の小山の開けた場所、 王都華音を一望出来る丘、 ものみの丘に到着した。



しばらくは皆自由に遊んだり談笑したりしていたが、 祐一が一人、 10以上もの立体魔法陣を展開した途端、
談笑していた真実を知らない物達、 秋子、 フェリシア、 祐巳、 佐祐理は押し黙り、 不思議そうに、 
少し恐怖心を抱きながら祐一を見つめ、 知る物達も厳しい表情をしていた。
皆が見守る中、 立体魔法陣は一つの型を成し、 そして大きな門扉を出現させた。

「 ……なんて禍々しい……。 」

呟いたのはフェリシア。
現れた扉は、 誰の目から見ても趣が悪く、 醜く見えた。

「 祐一さん、 これは? 」

秋子が尋ねた。

「 ……これは、 『デモンズディメンションゲート』、 パンデモニウムにある本当の扉の、 これは簡易板です。 」
「 ……えっ? 」

聞いた秋子自身が、 今祐一が言った『真実の始まり』の意味を、 解釈出来ないでいた。

「 この門は、 パンデモニウムの本物のデモンズディメンションゲートと繋がっている。 」

アシュタロトが、 知らなかった者達に、 補足説明をする。

「 今日、 今ここに集まって貰った人達は、 祐一が誰よりも信じる事が出来る人達。 
だから、 祐一は今まで誰にも語らなかった、 普通なら信じられない真実を、 秋子、 祐巳、 佐祐理、 フェリシアの4人に話す機会を作ったのよ。 」

アルクェイドが、 続いて補足する。

「俺を含め、アルテミスの皆は、その事を知っている。 同盟を組む前から、アルテミスは祐一と運命を共にする決意をしていた。 」

志貴が続けて補足。

「 ……では、 内戦の時にはもう……。 」
「 知っていました。 ただし、 その時点では、 俺とアルクェイドだけでしたけど。 」

志貴の台詞が終わったのが合図だったかの様に、 言い終えた途端、 ギギギッと軋む音を立てながら、ゆっくりと、 ゆっくりと、 扉が開き始めた。





ブワッ!!!!!!!!!!!!!!!






「 キャッ!? 」
「 キャアッ!! 」
「 ……!! 」
「 ア …アアア …。 」

知らざる者達が、 扉が少し開いた瞬間に、 向こう側から溢れ出てきた、 とてつもなく強大な魔力の奔流に、
ある者は腰を抜かし、 ある者は固まり、 ただ一人、 秋子だけが冷静に、 足が震えているが、 事を見守っていた。
ゆっくり、 ゆっくりと扉が開き、 90度まで開いたところで、 複数の足音が扉の向こう側から聞こえ、 そして…。



 二人の女性と、 一人の男性が、 姿を現した。
外見が二十歳代に見える男女二人が前に立ち、 残るもう一人の、 祐巳と同年齢位に見える少女を守る形で。
秋子が、 祐巳が、 フェリシアが、 佐祐理が、 3人を恐怖と共に見ていた。

「……人間の、祐一様が選んだ方々、お初にお目にかけます。私の名は、ローズレッド ・ ストラウス。以後、お見知りおきを。 」

そう言って、 貴族風の礼をする。

「 同じく、 ローズレッドの妻、アーデルハイト ・ ストラウスと申します。 」

ローズレッドに、アーデルハイトも倣った。

そして、その後ろにいた少女は、4人の方を見ず、最初からずっと、祐一だけを見つめていた。

「……祐一……。」

少女が呟く。

その言葉に、祐一は少女に向かって、両腕を広げた。

途端、少女は祐一の下へと駆け出し、知らざる4人の中央をすり抜け、そして…………。





































祐一の腕の中へ、吸い込まれて行った。

「……会いたかった ……。会いたかった、 祐一。 」
「……ああ、 俺も会いたかった、……神魔。 」
「「「「 !!!!!!! 」」」」



寝耳に水とは、 正にこの事だろう。

今、 祐一の腕の中にいる少女を、 祐一が神魔と。
祐一自身が、 皆に大魔王の娘で、 同じく大魔王の地位におり、 尚かつ人間界パンデモニウムにいると言った、その大魔王の名を。



「 志 …志貴さん、これは……いったい ……。 」

秋子ですら、 正常な判断が出来なくなっていた。

「 ……俺も当人を見るのは、これが初めてです。ですが、教えられていましたから、こうして普通でいられます。 
……彼女は、貴女達4人が今思っている通り、祐一が以前話した、大魔王 神魔その人です。
ですが、 更に話してない事が有ります。 ……祐一と神魔は、深く愛し合っている夫婦で有り、一人子供がいます。
その子こそ、 3人目の大魔王 ラフェルデリートであり、 そして今、 皆さんに、 真の計画が話されます。 」
「 祐一さんと……、 大魔王 神魔が …… 夫婦……。 」

フェリシアが呟き、 二人を見つめる。
二人はお互いにきつく抱きしめ合いながら、ずっと唇を重ね続けていた。






一方、 ローズレッドとアーデルハイトは、アシュタロト、アルクェイド、志貴の傍まで歩み寄り、アルクェイドを見つめていた。

「 久し振りだね? アルクェイド。 」
「 …… お父様……。 」
「 本当に、 こんなに美人さんになって。 」
「 お母様……。 」

アルクェイドは、 いてもたってもいられず、 二人に抱きついた。

「 おやおや♪ 」
「 甘えん坊ね♪ 」
「 ……だって、 ついさっきまでは、 敵になると思ってたから……。 」
「 大丈夫よ アルク。 」
「 …うん。 」

アルクェイドは、 二人から体を離して、 ニコッと微笑んだ。



「 ……あの。 」

アシュタロトと志貴に、どうにか落ち着いた秋子が、何か尋ねようとしていた。

「 何かな? 」

アシュタロトが応える。

「 これはいったい……。 どういう事なんですか? 私にはもう何が何だか……。 」
「 混乱するのは解る。だが、これが真実なのだ。一つは、祐一と神魔様が、愛し合う夫婦と言う事。
一つは、 今この場に、 両軍のTOPが一同に会している事。
そして真実とは、祐一も、神魔様も、人間と魔族が共存出来る世界を作る、そのたった一つの願いを叶える為に、動いていると言う事だ。 」
「……そんな、そんな奇跡とも言える願いの為に……。 」

秋子が、 信じられないと言う表情をする。

「では、 何故世界を……? 」
「……いきなり仲良くしましょうと言ったところで、人間側が快くは受け入れてくれまい。
あまりにも長い年月、我等と人間達は互いに憎しみ合って来たからな。 だから二人は考えた。
再び戦争を起こし キッチリ勝敗をつけたところで、共存を望む。人間側の祐一が勝っても、 魔族側の神魔様が勝ってもな。 」

「なっ!? そ …それでは!? 」
「……あの二人、特に祐一は、すでに死を覚悟している。自分が勝っても死、負けても死、どちらを取っても、祐一には死しか待っていない。
神魔様からの魔力供給の御陰で、 辛うじて生きているのだから。 」

「…… そんな……、 では …では!!! 」
「願いを叶えた後の世界に、祐一は生きてはいない。全てを自分の信じた我々に託して、逝く決心をしている。 」

ヘナヘナと座り込む秋子。

「どうして…… どうして祐一さんばかりが……。 」

そう言葉を発したのは、 傍で聞いていた祐巳だった。

隣にはフェリシアと佐祐理もいる。

「……運命…としか言えまい。祐一は世界に愛されている。だからこそ、世界に大いなる変革をもたらす為に、運命を授けられ、使命を与えられた。 」
「 ……祐一さんは、後の世界を、今この場にいる人達に任せよう、そう思っているんですね? 」

その問いに、アシュタロトが黙ったまま頷いた。

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