外伝第3話「パンデモにウムでの、幸せな日々」






「 祐一我と共に、 街へと行くぞ!! 」

「 ……ボクはいいですけど……。 」

「 何じゃ? 」

「 ……ローズレッド様や、 ルシフェル様に見つかったら、 それこそ怒られますよ? 」

「 うっ……。 」

怒られるのがイヤな祐一。

 パンデモにウムに連れて来られてから、 三ヶ月が過ぎていた。

その間、 二日に一回は。

 多い時には毎日、 いや、 午前に一度、 午後に一度と、 神魔は祐一を共に、街へと内緒で出掛けるのに、 

誘う様になった。

 従者である為、 主人に命令には絶対服従なので、 祐一は始めのうちは黙って付き従っていた。

 だが、 何度目かの外出の時に、 ローズレッドに見つかってしまい、 祐一と神魔は、

 たまたまパンデモニウムに来ていた、 神魔の腹心である魔王、 ルシフェルから、 小一時間お説教を

 受けた。

 ルシフェル自身は、 祐一を気に入ったのか、 もっぱらガミガミ言われるのは、 神魔だったが……。

 だが、 それで外出癖が治る訳がなく、 それからも神魔は、 祐一を連れて外出を繰り返していた。

 2度目のお説教からは、 祐一も注意されたが……。






 「 だ ……だが、 祐一だって、 街へ出たいであろう? 」

 とても4000年以上生きてるとは思えない神魔の言い訳。

 「 …… それは …… 出たいですけど……。 」

 「 そうであろう!? そうであろう!!?? では!! 」

 「 ……ルシフェル様、 怒ると怖いんですよ……。 」

 「 グッ……、 仕方ないの……。 今日は、 我慢するか……。 」

 今日は何とか外出を防いだ祐一。

 神魔は祐一の膝にトサッと頭を乗せ、 横になった。






 いつからだろうか?

 パンデモニウムに来て、 しばらくした頃から、 神魔はこうして祐一の膝枕で、 無防備に眠る事が、

 多くなった。

 祐一は膝に頭を乗せ、 スースーと寝息を立てる神魔の寝顔を見つめた。

 祐一から見れば、 自分と10歳位離れたお姉さんに見える神魔。

 でも実際は、 4000年以上生きていて、 魔族の始祖たる、 初源祖大悪魔王 ・ サタン の一人娘。

 神族とのハーフで、 神族の神々しさと、 魔族の女性特有の、 妖艶さを併せ持つ。

 加えて、 幼い性格。

 祐一の幼心にも、 神魔は一緒にいて楽しい相手だった。






 そんなある日、 祐一はルシフェルとローズレッドに呼ばれ、 二人の待つ部屋へと向かった。

 かなり恐怖心を抱いてはいたが、 意を決して祐一は部屋に入った。

 「 失礼します。 」

 「 来たか、 祐一。 」

 「 待っていたよ。 」

 ルシフェルとローズレッドは、 祐一をソファに座らせた。

 「 ……あの、 ……御 ……御用件は、 何でしょうか? 」

 「 そう怖がる事はない。 私はこれでも祐一、 そなたの事を気に入ってるのだがな。 」

 少し残念そうに言うルシフェル。

 「 私もですね。 だけど、 怖がるのも仕方ないでしょう、 ルシフェル。 」

 「 ぬっ……、 少し口五月蝿く言い過ぎたか? 」

 「 それも一つの要因でしょう……。 話が逸れましたね。 ルシフェル、 本題に入りましょう。 」

 「 そうだったな。 祐一。 」

 「 はい。 」

 「 そなたを神魔様に内緒で呼んだのは、 ここ最近の神魔様の事を聞きたくてな。 」

 「 私達の前では、 本当の自分を見せる事は、 絶対にないですからね。 ですが祐一、 君の前だけでは、

 本当の自分を曝け出しているのではと思ってね。 」

 祐一は、 神魔の事を、 本心から心配している二人を見て、 怖いと言う印象を改めた。

 「 そなたの前ではどう言った物言いで、 どう言った態度なのか、 それを聞きたい。 話してくれるか? 」

 「 ……後で、 神魔様に怒られない様に、 してくれますか? 」

 その言葉に、 二人の魔王はコクンと頷いた。






 それから祐一は、 小一時間をかけて、 ここ最近の神魔の態度や行動や言動、 自分の抱いている印象を、

 二人に話した。






 祐一を下がらせて、 部屋に残ったルシフェルとローズレッドは、 少々、 いや、 かなり驚きで呆然としていた。

 「 あの神魔様が、 そんな子供染みた駄々をこねるとは……。 」

 信じられないと言う表情で、 床を見つめるルシフェル。

 「 ほぼ毎日、 祐一の膝枕で眠る……ですか。 」

 ローズレッドにとっても、 神魔が誰かの傍で、 無防備に眠るなんて、 信じられない事だった。

 神魔から絶大な信頼を置かれてる二人の前でさえも、 そんな事は絶対にしなかった事だ。



 「 どう思う? ローズレッド。 」

 「 ……今まで神魔様には、 同年代の者が一人も居なかった。 祐一はそんな中で初めての年下の者だった。

 だから、 神魔様にとっては大切な友人的存在なのでしょう。 それに、 祐一はまだ7才ですが、 精神年齢

 は実年齢より高い。 それが丁度、 神魔様に合ったのでしょうね。 」

 「 そうか……。 」

 「 今まで我侭の一つも言えない環境にいたのです。 その反動で、 祐一には言ってしまうのでしょう。

 神魔様は今、 幼少時代に経験出来なかった事を、 追体験しているのですよ。 」

 「 ……では、 しばらく暖かく見守る事にするか。 」

 「 そうですね。 外出も、 少しは甘く見る事にしましょう。 」

 二人は同時に頷くと、 二人して祐一の存在が、 自分達にとっても大きくなってきた事を、 実感していた。






 「 汝等、 祐一に何を聞いたのだ!!?? 」

 後日、 ルシフェルとローズレッドの様子が、 少し変なのに気付き、 祐一に何が有ったのか、 半ば無理矢理聞き出した神魔。

 聞かれた内容を話し、 神魔は顔を真っ赤にしながら、 ズンズンと部屋を出て、 二人をみつけ、唐突にそう叫んだ。

 「 最近の神魔様の甘えん坊振りを。 」

 しれっと答えるルシフェル。

 「 良い事を聞かせて貰えました。 」

 ニコニコしながらのたまったローズレッド。

 神魔は、 恥しさから顔を紅くして立ち去った。

 「 後で覚えておけえええぇぇぇぇぇぇ……。 」

 そういい残して。






 更に後日、 ルシフェルとローズレッドは、 神魔の仕掛けたイタズラに引っ掛かり、 踏んだり蹴ったりな思いを

 する事になったのは、 また別の話

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