「公のバカー!!! 」
パシーッン
「光………」
「けんかの後…」
「ひっく、ひっく…。公のばかぁ…」
私は何処へ行くともなくただ歩いていた。
公とけんかをしてしまった、そのことで頭が、胸がいっぱいだった。
原因は些細な事。
最近、公が冷たい。
大学が終わり一緒に帰ろうと言っても、かならず「忙しい」の一言で帰ってしまう。
それが一ヶ月も続いたことで、我慢が出来なくなってしまった。
そして、別れる前のビンタ…。
もう、公とは終わりだろうか?
高校の卒業式から付き合いはじめ、すでに1年が経とうとしている。
その間色々あった。
公と同じ大学に進み、一緒に通学したり、一緒に講義を受けたり、一緒にバイトをしたり、一緒に旅行に行ったり…。
楽しかった。
嬉しかった。
いつも私だけに向けてくれる、優しい笑顔。
私を気遣ってくれる公のやさしさ。
それも、もう見ることは無いだろう。
私が悪いのだから…。
「あれ? 陽ノ下さん? どうしたの? 」
泣きながら歩いていると、穂刈君が声をかけてきた。
「穂刈君? どうしてここに? 」
「どうしてって、そこ俺のバイト先だよ」
そう言われ辺りを見渡すと、穂刈君がバイトをしている、ガソリンスタンドが見えた。
「あっ、本当だ…」
「それよりどうしたの? なんかそのっ、泣いていたみたいだけど…」
「うん…。公とけんかしちゃった…」
人に言うことじゃないかも知れないけど、私はすべて話した。
けんかの理由、私がビンタをしたことまで…。
だれかに心のもやもやを話してしまいたかった。
話してすっきりしたかった。
「そう、そんなことが…」
喋り終わって穂刈君はそう言った。
「うん。もう駄目だね、私達…」
「そんな事無いと思うよ。今ごろ公の奴、走り回ってると思うよ。陽ノ下さんに謝るために」
「ううん。そんなこと無い。こんなわがままな子、公だって嫌だろうから…」
ただ寂しいからって公のことをたたいてしまうような私を好きでいてくれる人なんかいないよね。
なんか情けなくってまた泣けてきた…。
「…ふぅ。しょうがないな。公に黙ってろって言われてたんだけど、最近公が忙しいのはここでバイトをしてるからなんだ。もうすぐ付き合い出してから1年だからって指輪を送りたいんだって」
「えっ、そんな。私の為に? 」
「うん」
公………。
私に指輪を送るためにバイトを増やしてくれたのに、私たっら、公のことたたいちゃった。
どうしよう?
「どうしよう? 私、私…」
「大丈夫だから。公の奴怒ってないから。むしろ寂しい思いさせたことを悔やんでると思うよ。だから公の所に行ってくれないかな? 」
「うん…。ありがとう穂刈君! 」
そう言って私は公に会うために、謝るために走って行った。
「おい、あの子、お前が好きだった子じゃないのか? 」
「ええ、そうですよ」
「お前、本当に良い奴だな。よし、今日は奢ってやるから飲みに行こう」
「はい。ありがとうございます」
「はぁ、はぁ、はぁ」
ごめんね、ごめんね。
「…かり! …光! 」
遠くから公の呼ぶ声が聞こえる。
「公! 公! 」
「光っ! 」
私達は抱き合った。
「ごめんね、ごめんね…」
「良いんだ、俺がいけなかったんだから。ごめんな、寂しい思いをさせちゃって…」
「ううん、私こそ…。いたくなかった? 」
「大丈夫。それより、指出してくれないかな? 」
そう言って公は、私の指を取る。
「指輪…」
「うん。付き合い始めて1年のお祝い。本当は3日後に渡したかったんだけどね」
「ごめんね。この為に忙しかったんなら言ってくれれば良いのに」
「驚かせたかったんだけど、光を悲しませるぐらいなら言った方が良かったね」
「ううん、ありがとう、公。大好き」
私は泣きながら公にキスをした…
Fin
あとがき
ど〜も、BASARAです。
この話は、15000HITを踏んでくれた、WingZeroさんからのリクエストで書きました。
光の可愛さを出してみたかったんですが、どうやら失敗のようです(爆)
それと友情出演の穂刈純一郎君。
純がこんなことできるわけ無いだろうと言うツッコミは勘弁してください。
彼も大人になってるんですよ<いい訳(^^;;
まあ、懲りずにこれからも挑戦してみるので見捨てないでくださいね(核爆)