「うぇ〜ん、うぇ〜ん…」
子供とも大人ともつかない泣き声
鳴き声の主は少女だった
いや、少女と言うほど、幼くない
女性、その言葉がぴったりだろう
その女性が子供のように泣いていた
まだ、朝には早い早朝の風景だった…
幸せの形
「どうしたんだ? 」
「どうしたの、舞? 」
泣いている舞に、声をかける
「ひっく、ひっく。あのね、怖い夢を見たの。とてもとても怖い夢。ひっく、祐一と佐右理がね何処にもいないの。舞が、舞がいくら呼んでもいないの」
そう言うとまた泣き出してしまった
祐一はパジャマのままで、舞の頭に手を置き、そして撫でる
佐右理は舞を抱き寄せ、優しく言う
「舞。私達はここにいるよ。ずうっ〜と、一緒にいるよ」
「そうだぞ。俺達は家族なんだから。ずっと一緒だ」
舞はようやく泣き止み、しゃくりあげながら聞く
「ほんとう? 」
「ああ、本当だ」
「佐右理達が舞に嘘をついたことある? 」
舞は大きく頭をふる
「ない」
「そうだろ。だったらもう大丈夫だな? 」
「うん」
「佐右理がミルクを温めてくるから一緒に飲む? 」
「うん♪ 」
目をごしごしこすりながら、舞は元気良くうなずいた
「じゃあ、ちょっと待っててね? 」
「うん」
いつもの風景
いつもの会話
毎日のように続く出来事
周りから見れば滑稽かもしれない
実際、近所では舞のことを知的障害者だとか言う噂もある
しかし、俺達にとってそんな事は些細な事だ
俺達は幸せなのだから
誰がなんと言おうと幸せなのだから
ここには家族と言う絆がある
ここには二人の大切な人がいる
俺はそれだけで満足だ…
Fin