「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
玄関で祐一と、お母さんの声がした。
どうしたんだろ?
今日は日曜日だよね。
時間は…、十時。
いつもなら起きる時間なのに…。
私は祐一が出掛けた理由を聞くために、着替えてから下に降りて行った…。
「おはようございます…」
「おはよう、名雪」
台所ではお母さんが私の朝ご飯を用意してくれていた。
「お母さん、祐一はどうしたの? 」
「あゆちゃんとデートにいったわよ」
デート………。
デート!!!
「お母さん! 何処で待ち合わせするか知ってる? 」
「え〜と、確か駅前のベンチだって行ってたような…」
「駅前のベンチだね。行ってくる! 」
「気を付けてね」
「あゆって、確か羽の付いたリュックを背負ったやつよね」
くそっ、ガキだと思って油断した。
まさか、祐一がロリ○ンだったとは…。
十分ほどぶつぶつ言いながら歩くと、駅に出た。
ちょうどあゆが来たみたいだ。
祐一が楽しそうに笑ってる。
「むかつく」
声に出てしまったのか、私の周りに人がいなくなった。
広くなってちょうど良い。
どうする?
追いかけるか?
それとも、偶然通りかかった振りをするか?
私の中の、三つのスーパーコンピュータ『マ○』が出した答えは、2対1で偶然を装う。
すぐさま行動に移る。
「あれ? 祐一にあゆちゃんじゃない? どうしたの? 」
きわめて自然に、顔は笑顔。
しかし、祐一を見る目は、笑ってない。
「なっ、名雪………」
「あっ、名雪さん。おはよう」
「おはよう、あゆちゃん」
あきらかにうろたえてる、祐一。
とりあえずは作戦成功。
だが、本番はこれからだ。
「もしかして、デート? 良いなぁ」
「そっ、そんな事無いぞ名雪」
「うぐぅ、違うの? 」
くっ、涙目で祐一を見てやがる。
「そんな事言ったら、あゆちゃんがかわいそうでしょ、祐一」
「いや、その…」
「うぐぅ…」
うぐぅ、うぐぅ、うるせぇよ!
てめぇは、動物か!?
「邪魔しちゃ悪いから、私は帰るね。今度は私ともデートしてね〜 」
「あっ、ああ…」
「じゃあね〜 」
「ばいばい、あゆちゃん」
数日後…
商店街にイチゴサンデーを5杯食べる女の子と、それをおごっている男の子の姿が確認された…。
おわり