そしてD.C.Al Fine

「ふ〜〜ん・・・なるほどね・・・」

落ち着いた雰囲気の喫茶で祐一と祐唯は名前の事を香里に話していた。

「ごめんね、かおりん。」
「だから、かおりんってゆ〜なっ!」

づびしっ

「はぅっ・・・」

本日何回目かの「かおりん」発言に香里のでこぴんが祐唯に飛んだ。
まぁお互い笑ってやっているので、祐一もにこやかに眺めていた。

「でも・・・・」
「ん?」
「いぇ・・・・仲の良い友達が、学校で従兄弟が来るって宣伝してたのよね・・・・」
「そ、それってひょっとして・・・・」
「そう、『相沢祐一』という従兄弟が今度転校してくるとか・・・・一緒に住むだとか・・・・」
「・・・・」
「それ以前から従兄弟の話はエンドレスで聞かされたわ・・・」

三人で頭を抱えて無言な時間が流れる・・・・
学校で、と言う事は二週間は前から言いふらしていると言う事・・・
今は冬休みです・・・・


「・・・おしおきが必要だな・・・・」
「そうね・・・実に名雪と言えるけど・・・・」
「あはは・・・・我が従姉妹ながら恥ずかしい・・・」
「とにかくだ、香里も知っての通り、俺や親しい人が側にいないと祐唯はアレだからフォローを頼みたい。」
「そ、そうね・・・・解ったわ・・・」
「・・・ごめんね、香里ぃ・・・」

祐唯は一弥などの親しい人間がそばに居ないと極度の引っ込み思案に陥る。
そのギャップも人気だったのだが・・・
香里は一年の時に参加した合宿講習で同室だった事がきっかけで一弥共々仲良くなったのだ、
二年の夏にその絆は強くなり、祐唯も香里相手なら弾ける事も今は出来る。

「今日はこの後何かあるの?祐唯。」
「え〜とね、お買い物して家の片付けかな?」
「家?秋子さんの所じゃ無いの?」
「それは名雪の捏造だよ〜」
「香里も祐唯の片付けを手伝ってくれると嬉しいのだが?」
「いいわよ、余り家にも居たく無いからね・・・」
「?」

レシートを持って立ち上がった祐一はその金額にくらっときた。

(いつのまにこんなにケーキを食べたんだ?)

ちらと祐唯を見ると、照れた表情で可愛く舌を出していた。
まぁ、二人の財布は共同なので良しとする一弥だった。

「あ〜まず秋子さんに連絡だな、対応して貰わないと・・・」
「名雪の事?」
「そうだね、困った従姉妹だ・・・・」
「祐唯は知ってると思うケド、最強に天然よ、名雪は。」
「せめて違うクラスだといいなぁ・・・」





「普通の家ね・・・」
「どういう家を想像していたんだ?」

二人の住む家に着いて早々の香里の一言はそうだった。
先に玄関にはいった祐唯が振り返り、ちょっと恥ずかしそうに一言言った。

「おかえりなさい、旦那様♪」

祐唯も基本はからかうのが好きな明るい娘なのだ、

「ただいま、奥様。」

負けじと一弥もやり返す所、同質な所を持っているのかもしれない。

「あのね・・・・あたしが居るの忘れてない?」

予想はしていた香里の呆れた声が二人に投げかけられた。
だが香里の予想を上回った反撃が来るとは考えて居なかった様で・・・

「香里も一緒に住まない?」
「そうだぞ、別に側室が一緒でも構わないぞ。」
「そっ、側室って何時の時代よっ、」
「そうか、一緒に住むのはいいらしいぞ、祐唯。」
「そうだね、一緒に住むって所にはツッコミ無かったし。」
「もう、馬鹿言ってないで片づけるんでしょ?」
「う〜〜かおりん冷たい。」

う゛ぃしっ

「はぅっ」

元々多くは無い荷物を開封して整理する。

「一緒の部屋じゃ無いのね。」

とりあえず玄関にあった荷物を各自の部屋に運び込んでから香里は呟いた、何を期待していたのやら・・・・
祐唯としては一緒の部屋で良かったのだがそれは一弥の方で一人になれる場所も欲しいとの一言と、
部屋の構造から分かれる事を了承していた。

「ドレッサーはこんな感じでいい?」
「うん、ありがと〜」
「一つ聞いていい?」
「ん?何?」
「机、本棚、衣装箪笥・・・寝具が無いけど?」
「そこのドアを開ければ・・・」
「解るの?」

がちゃっと扉を開いたそこには

「あ・・・・」

そこには着替え途中の一弥が居た。

「・・・・」
「・・・・」

真っ赤になって硬直した香里の変わりに祐唯は扉を閉めた。

「まだ時間も早いしぃ・・・」
「な、何がっ?」
「久々にさんぴぃで楽しめるね♪」
「ひぅっ・・・」






二人の朝は早い、祐唯は食事の準備だが祐一は木刀を振るっていた。

「祐一〜朝御飯出来たよ〜〜」
「おぅ、今行く。」

祐唯は何故か袴姿で割烹着だった。

「本当にそれで行くのかい?」
「うん。」

前の学校では何故か女子の制服・・・・というか指定が袴の和装だったのだ、
男子は詰め襟黒のいわゆる学ラン。
明治から続く伝統校なので半分は意地もあったのだろう・・・
シャワーで汗を流し、祐一はこれから通う学園の制服を着ているのだが、
女子はオーダーメイドと言う事で制服が間に合わなかったのだ、
それで祐唯は袴姿でいる。
祐一の制服は既製サイズで間に合っただけだが・・・

「評判になるぞ・・・・確実に・・・」
「あ〜〜〜それは嫌だなぁ・・・・」
「香里か寝雪に借りるってのは駄目なのか?」
「え〜〜サイズが思いっきり合わないよぅ・・・わたし小さいし・・・」

安心しろ、胸は負けて無い。
内心そう断言した祐一だが、祐唯の方が全体的なスケールダウンは免れない。
ぶかぶかな制服を着る小柄で可愛い女の子・・・・・
よけいに可愛いと祐一は思った。

「ま、今週は仕方ないか・・・」

食後の食器を祐一が洗い、二人は家を出た。

「やっぱり・・・・」
「寒いね・・・・」

おそろいのコート、同じタイミングで首をすくめる二人だった。

場所はすでに地図でも確認している。
ゆっくりと二人は歩き出した。

「ここら辺は記憶に無いんだよなぁ・・・」
「私の記憶やとここらは当時畑やったと思う・・・」
「なら覚えて無くても仕方ないか・・・」
「学園がある場所は、昔麦畑だったかな?」
「ふ〜〜ん・・・・俺が覚えてるのは屋敷と病院くらいだな・・・」

「昨日に名雪が着ていたのはファッションでなく制服みたいだな・・・」
「せやな・・・ようあんなん着れるなぁ・・・」
「来週には祐唯も着るんだぞ?」
「あんな短いの嫌やわぁ・・・」
「仕方ないさ、あんなんでも制服だ。」
「はぅ・・・」

歩いていると、この街でも唯一見慣れた後ろ姿が見えた。

「あれは・・・・」
「香里だね・・・」
「どうする?」
「ん〜〜・・・・後ろから抱きつくってのはどう?」
「俺はしないぞ。」
「え〜〜〜けちぃ・・・」
「朝から何言ってるのよ・・・」

ふと二人が気付くと、香里が両手を抱えるいつものポーズでこちらを向いていた。

「あはははは・・・おはよう、香里。」

「♪〜」

呆れる香里の頬にもキス
真っ赤になった香里がかなり可愛い〜

「ま、親愛表現って事でいいじゃない。」
「まったく・・・さらりと言ってくれるわね・・・ま、いいわ行きましょう。」

合宿の時も散々してたので、香里ももう慣れたって所ね・・・
久々だったから赤くなっていたけど、明日からはそうもいかないね。

「おっと、おはよう、香里はいつもこのくらいの時間か?」
「あ・・・おはよう、祐唯、か・・・祐一。」

祐一を挟んで三人は並んで歩き始めた。


さすがに雪国、何度も足を滑らせる私に祐一が支えてくれるんだけど、
連鎖で結局は香里に助けてもらっちゃいました。

「靴も買わないと駄目ね・・・」
「そうだな、雪専用の靴底の革靴が必要だなこりゃ・・・」
「う〜〜わたしブーツだよ・・・」

確かに昨日までは真新しいシューズだったからかろうじて平気だったのかもね・・・


道行く学生がちらちら私を見てるよ・・・・

「・・・香里・・・私目立ってるよね・・・」
「そうね・・・一人大正浪漫一直線だし・・・」
「う〜〜・・・」
「今週は制服が出来ないからな・・・仕方ないさ・・・」
「そうね、頑張って。」





「どう?結構規模が大きい学園でしょ。」
「そうね・・・・凄い・・・」
「昔ここらにあった学園を吸収合併して小学校から高校までの巨大学園に生まれ変わったみたいよ、生徒手帳にわざわざ書いてあったから。」
「なるほど・・・合併した事を自慢したいみたいだな・・・理事長は・・・・」

そんなこんなで学園の校門に到着した。

「雪華学園へようこそっ!」
「・・・香里・・・」
「なんかキャラ違うぞ?」
「えぅ・・・・」






さぁ、プロローグは終わった、一弥と祐唯を待ち受けるのはドタバタか、シリアスか・・・・



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