そしてD.C.Al Fine 第四話

「おはよ〜〜」

玄関ではそんな声が響いている。

「その階段を上って右側廊下の突き当たりが職員室よ。」
「あぁ、さんきゅ。」

用意していた上履きに履き替えて、今はとりあえず靴は来賓用に置く。

「同じクラスだといいわね。」
「せやね。」

そう言うと香里は同じクラスの娘であろう生徒に声を掛けて短いスカートを翻して教室へと向かっていった。




「失礼しま〜す、転校生の相沢夫婦ですが〜」
「はわわっ、」
「いきなりボケんでもよかろう・・・」

早速に側にいた教師に突っ込まれた・・・

「ふむ・・・転校生の相沢祐一に相沢祐唯だね?・・・ふむ・・・」
「あの・・・何か?」
「いや・・・ウチの制服よりもこういうのがいいなぁ・・・なんて・・・・」

その教師、(石橋と言う名らしい)は今の女子のみ奇抜な制服が気に入っていないみたいだった・・・
・・・祐唯の袴スタイルはいいのか?

「相沢祐一は俺のクラスで相沢祐唯はそこの雛山先生のクラスになる。」

名前を呼ばれて雛山先生が近寄ってきた。
見た目女子高生、雰囲気も女子高生・・・若すぎじゃないか?・・・

「始めまして、雛山雲雀よ、気軽に雲雀先生って呼んでね。」
「よろしくお願いします。雲雀先生。」

俺は祐唯と別れて一足先に石橋先生に連れられて教室へ。
祐唯と別々かぁ・・・・面倒だなぁ・・・・




「HR始めるぞ〜日直〜」

教室の中から石橋の声が聞こえる、
体育の教師では無いと言っていたが良く通る声だ。



「早速だが今日は転校生が来た。女子は期待していいぞ〜〜」

石橋の声に女生徒の歓声が上がった。
騒がれてもなぁ・・・・

入って来いと声がかかって俺は教室に入った。
さっと教室を見回すと、香里が手を振っていた。
俺も目線を送って軽く口元を動かす、香里の事だからこれで十分だろう・・・

「相沢祐一です、都合でこちらに引っ越してきました。」

どうせ騒がれる、そう俺の直感が警告を発したので無難な挨拶にしておく。

「相沢の席は窓際の一番後ろに用意して・・・・・・」
「?」

石橋の語尾が切断された、何だ?
と見て見ると、席は後ろから二番目が空いており、
石橋が指名した場所には金髪でアンテナを生やした男が座っていた。

「北川、勝手に席を変えるな、戻れ。」

一瞬だった。
いや、初めて見るかもしれない・・・
電光石火のチョーク投げというものは・・・・

「ぐはっ・・・」

見事眉間にチョークを喰らったその北川と呼ばれた生徒は昏倒し、周囲の有志が机ごと位置を直す。

「無難な挨拶だったわね。」
「まぁな、どうせ騒動に巻き込まれると相沢第七の感性が告げるんだ・・・」
「そうね・・・」

教室の外から聞こえてきた隣の教室の「可愛〜」とか男の雄叫びを聞きながら香里も苦笑していた。

「ま、隣になったんだ、よろしく頼む。」
「頼まれたわ。」

「さて、このままLHRなんだが・・・・特に無い・・・でも無いか・・・水瀬は又遅刻みたいだな、
水瀬の席を教壇の真ん前にするから該当する列の人間はずれてくれ。」
「は〜〜い」

香里の前にあった空席が名雪の場所だったのだろう・・・
皆一糸乱れずに移動して席を移っていった。

「う・・・」

チョークで撃墜されたアンテナが再起動した様だ。
もぞもぞと動き始める。

「紹介しておくわ、アンテナとか隊長と呼ばれてる北川君よ。」
「その紹介は無いんじゃ無いか?美坂・・・っていつの間にかもとの場所に戻ってる?」
「相沢だ、よろしく、アンテナ。」
「アンテナ言うな〜〜っ、」
「北川煩いぞ。」

再びチョークが放たれて、北川は直撃に沈んだ。

「まぁいい、あまり騒がない様にするなら相沢への質問タイムにしてやる。」
「マジっすか?」
「早く終わった方がいいだろ?」
「まぁ・・・そうですが・・・」
「決まりだ、授業の質問も受け付けるから静かにやれよ〜・・・あ、委員長、先に通知票集めてくれ〜」

ゆらっと静かに席を立って俺の周囲に集まる生徒達、
ちょっと怖いじゃねーか・・・・

「相沢君、前は何処に住んでいたの?」
「京都だ。」
「それにしては訛り無いね。」
「TVや本は標準語だからな、皆が思ってるほど都言葉100%でもないさ。」
「どんな女の子が好み?」
「そうだな・・・守ってあげたくなる感じの心の脆さを持ってるとか・・・か・・・」
「名雪が言っていた従兄弟って貴方の事?」
「そうみたいだが、苺喰睡眠魔人だお〜の言っている事は完全に嘘か妄想だ。」
「そうなの?じゃ、同棲って言うのも?」
「当然だ、何であんなのと。」
「じゃ、いつもの天然思いこみな訳ね・・・」
「そんなに酷いのか?」
「もううんざりするほどよ、男共はそれが可愛いって言うけど何でだか・・・」
「そうだな、実際に被害に遭えば嫌になるさ・・・」
「・・・もう何かされたの?」
「あぁ、この街に来た時、一方的に一時に迎えに来るって言うから待ってやったら二時間遅刻してきた。寒さで死ぬかと思ったぞ。」
「又寝ていたのか・・・苺が止まらなくなったのでしょうね・・・」
「さぁ?興味すら無いよ。」
「名雪も可哀相に・・・」
「苺喰睡眠魔人だお〜か・・・・眠り姫、寝雪、苺ジャンキーに続く新しい名前ね・・・みんなにも教えておこっと・・・」
「美坂とは知り合いなのかっ!」
「あぁ・・・東京での合宿講習で1年、2年と同じクラスだった・・・・へ?」

いつのまにか復活していた北川が祐一に肉薄して聞いてきたのだ。

「何っ、香里ってば何時の間に〜」
「ちょっ、あたし達は只の友達よ〜」
「あ〜〜赤くなってる〜」
「なっ、美坂っ!そうなのかっ!!俺の美坂がぁ〜〜っ!」

ベキっ!

「誰が俺のなのよ、殴るわよ?」
「いや、もう殴ってるぞ、香里。」

祐一の言葉にクラスメイトがこそっと教えた。

「祐一、北川君にはこれが普通なのよ。」
「そ、そうなのか?」

一部の女子には、あるキーワードで同盟が結ばれていた。

「いや〜〜香里だって、香里、」
「あの男子には誰には名前で呼ばせていなかった香里が・・・」
「しかも祐一って名前で呼んでるわ・・・」
「あ・・・あのね、その・・・・」

きゅぴ〜ん

「これは・・・・」

きら〜ん

「そうね、香里の尋問ね・・・」

がしっ

「ちょ、・・・・」

こうして香里は女子一同に連れ去られてしまった・・・
しかし・・・・北川の声以外みんな静かに話すなんて・・・

何事もなかった様に北川が復活してきた・・・

「・・・・死ぬかと思った・・・」
「普通すでに死んでるかもな・・・・北川とやら。」
「伊達に不死身と呼ばれて無いぞっ、」
「そうか、実は俺も不死身と呼ばれていたりする。」
「ふふふふふふふ・・・」
「ははははははは・・・」
「おまえら・・・気が合うかもな・・・」




「ご苦労さん。」
「もう・・・なんであたしが・・・」

女子の尋問に机にへばっている香里

「珍しいだけさ、こういうのも感冒と一緒ですぐに冷めるさ。」
「そうだといいけどね・・・」

「そろそろ時間だな、ちょっと早いがこれで終わりだ、日直っ!」

そう言って石橋は北川を引っ張って教室を出て行った。
やはり一人で大騒ぎしていたのがいけなかったのだろう。
おれは祐唯の様子を見に行くかと香里に声を掛けようとした所、
いきなり教室の扉がひらいた。

「おおおおおおおおおっ!!」

教室が唸るのも仕方ない。
そこには小柄で可愛い、しかも袴姿の祐唯が居たのだ。

「祐一〜〜っ、!」

どこっ!!

「うおっ!」

いきなり祐唯が俺の胸に飛び込んで来た。
質問攻めなどが怖かったのだろう・・・
すでに涙目・・・・

「だ、誰だ?あの可愛い娘は・・・」
「隣のクラスの転校生らしいぞ?」
「か〜わい〜〜っ!!」

そんな同級生の声が聞こえる。

「はいはい、大丈夫だから・・・」

祐一は優しく祐唯の髪を撫でてあげる。

「はぅ〜・・・・」

撫でていると段々落ち着いて来たのか、祐唯の震えが収まってきた。

「香里、頼む。」
「仕方無いわね・・・」

そう言うと香里も祐唯を守る形で前に立った。

「この子は相沢祐唯、祐一の父方の従姉妹で同じく合宿講習で出会ったの、
同じ相沢だったから名前で呼んでいるって訳よ、それだと何だからあたしも名前で呼んでもらっているんだけど・・・・
ちょっと人見知りで男性恐怖症な所があるから、ちょっかい出したら・・・・潰すわ・・・」
「ごく・・・」

ぽきぽきと指を鳴らした香里に声をかけようとしていた男子と、追いかけてきた隣のクラスの男子が黙った。

「なるほどね〜だから雲雀先生が用意してくれた質問タイムで答えて貰えなかったんだ・・・」
「え〜〜と・・・・?」

祐唯と同じクラスの娘だろう・・・
ちょっと華やかな感じの女の子が側に来ていた。

「あ、私は深海花織、相沢さんと同じクラスよ、美坂さんと二人でWかおりんって呼ばれてるわ。」
「Wかおりん?」

祐一はちらっと香里を見ると、不本意ですっって表情をしていた。

「あぁ、天のかおりんと地のかおりんという名もあるぞ?」
「北川・・・いつ戻ってきたんだ?」
「ふははは、今だ。」
「・・・・その天地と言うのは?」

その質問に待っていましたとばかりに胸を張る北川。

「我がAクラスの美坂は学年TOP、対してBクラスの深海は赤点ギリギリの・・・」
「わ〜わ〜わ〜わ〜わ〜・・・」
「なるほど・・・・」

香里を見るとニコっと微笑んだ、信用に値する人物と言う所だろう・・・

「深海さんだったか、」
「花織でいいよ〜」
「いや、香里と混同してしまうから遠慮するよ、深海さん。」
「ま、仕方ないか・・・・」
「祐唯の友達になってやってな。」

祐一がそう言うと花織はきょとんとして祐一を見た。

「・・・変な事言ったかな?」
「な〜に言ってるのよ、私達はもう友達よん♪」

そう言うと祐一の胸にまだしがみついてる祐唯を引きはがして自分の胸に包んだ。

「ひゃうっ!」
「こ〜〜んな可愛いんですものっ、祐唯ちゃんは私が守ってあげるわっ!」
「ちょ、深海さぁ〜〜ん・・・」
「しかし・・・ちーちゃん並にちっこいのに・・・・何でこう香里のミニマムって言っていいほど良いバランスなの?」
「だ、駄目ぇ・・・そんな所・・・あかんん〜・・・」

もふもふ抱きしめられて困っている祐唯。
でも本当に嫌がっていないので止めることはしない・・・・
なにせ祐唯が香里にしている事だしなぁ・・・・

「ん〜〜暖かいし、ふかふか〜」
「はうぅ〜っ・・・・」

周囲を遠巻きに見てる男どもが前屈みになって教室から出て行った、
まぁ・・・前でもそうだったが想像するのは一億歩譲って仕方ない、実際可愛いんだから・・・
手を出したら潰すのみだ・・・・

「そういえば、ちーちゃんって誰?」

祐一は香里に聞いた。

「学園長の桐丘千歳先生の事よ。あたし達はちーちゃんって呼ぶわ。」
「学園長?そんな呼び方でいいのか?香里。」
「えぇ、とっても気さくな人よ、自分からそう呼んでくれって言うほどに。」
「ほう・・・・香里の言葉からは好意と敬意も感じられる、良い先生なんだろうな・・・」
「にゃははは、そう言われると照れてしまうのですよ。」
「へっ?」

いきなり背後からそう声がかかって祐一が振り向いた先には、

「可愛らしい小学生の女の子が立っていた。」
「小学生じゃ無いもん。」
「って、ちーちゃん?!」
「へ?」
「君達が噂の転校生だね?私が理事長兼学園長の桐丘千歳だよ、気軽にちーちゃんって呼んでね。」
「は、はい・・・」

・・・祐一の一言はスルーされてしまっていた・・・
ツッコミを期待していた祐一はちょっとショック・・・・

「はいはい〜そろそろ休み時間が終わるよ〜〜みんな教室に戻ってね〜」

いつのまにか祐唯を見に集まっていた廊下のギャラリーにそういってちーちゃんは教室を出て行った。

「・・・・」
「たんに顔を見に来ただけだと思うわよ・・・・あたしは・・・」
「そういえば朝会わなかったな・・・」
「わたしよりも背が小さいけど・・・年上なんですね・・・」
「祐唯・・・」
「なに?」
「とりあえずだが・・・」
「うん。」
「がんばれ。」
「はうぅ〜〜・・・・」







つづく







[PR]動画