コロニー・ベストラ
ここは軍の総合士官学校のみの島3型コロニーであり、
9.3.4制度を取り、軍関係者の子弟を育てる。
7〜15歳までは寮において共同生活をたたき込まれ、その後一般居住区に各個居住し、
自活を強いられる。
9年を小学校、中学校のカリキュラム+軍の基礎訓練に当てられて、
3年を通常の士官学校と高校を混ぜ合わせた教育を受けて配属される、
さらに4年、軍の首脳や艦隊指揮官を育てる高等士官学校があるが、こちらは試験によって選抜される。
もちろん、高等士官学校への進学は志願でsる。
軍の学校であるものの、通常の教育機関としても機能しているので生徒は戦時下であるのにもかかわらず、
のんびりとした学生生活を送っていた。
巨大学園都市でもあるので、商店などの一般市民も存在し、その子弟も成績によっては学校に在籍する事が出来るが、
ほとんどの一般市民は退役軍人なのでその数は少ない。






「207各機、乱戦訓練を始める。準備は良いか?」

演習母艦から、教官である神宮司軍曹の声が207クラスに所属する12機の機体に届く、

「代表して榊、全機準備良し!」
「相手は210だ・・・・・みんな負けないでねぇ〜・・・・・」

軍人らしくキリッとしゃべっていた教官だが、最後に本音と本性に変わり、
207の全員がズコッっとシートからずり落ちたが、
そのおかげか、初めての標的でない実戦訓練の緊張がほぐれている。

「まりも・・・・そんな風だと今期もあたしに勝てないわよ?」

隣のブースで自分の担当する210クラスと通信していた香月教官が神宮司教官の姿に一言もらした。


「相沢君、あの作戦でいいの??」

訓練機はスタートの合図を待つあいだ、作戦の最終確認をしていた。

「一番確実だろ?榊」
「それはそうなんだけど・・・・」
「俺の分隊が切り込み役で、武の分隊で攪乱、陽動、」
「私の隊が混乱する敵機を狙撃で数を減らす・・・・でいいのよね?」
「そうだ、榊の隊にはたまがいる、たまに狙撃をまかせて、榊達は護衛と迎撃に集中すればいいぞ。」
「解ったわ。」
「頼むよ、207筆頭!」
「はいはい・・・・通信終了」

207クラス、
高校で言えば2年7組と言う所だ、
総合軍学校でもあるここは、専科ごとにクラス分けされているのではなく、
クラス対抗模擬戦というイベントの為に、
パイロット、整備、陸戦、戦術指揮などのそれぞれのコースの人間がバランス良く振り分けられ一つのクラスを形成している。
母艦の207クラスに割り当てられたデッキにも、戦闘管制オペレータ室にもクラスメイトが居て、
訓練ではクラス全員で管制、修理などのサポートを行う。
今回は潜入白兵戦訓練が無いので陸戦のメンバーは修理班の助っ人だ。
榊千鶴が一応の筆頭となっているが、実質リーダーシップを発揮する相沢祐一がクラスをまとめている・・・・・
いや、白銀武や桜井舞人などのクセのある人物をかろうじて制御出来るのが祐一なだけ・・・・・とも言える

207第2分隊の白銀武から祐一に通信が入った。

「祐一、大丈夫か?」
「何が?」
「ガンナーが純夏だからな。」

武のモニター全面にいきなり純夏の顔が映る。

「酷いよ〜タケルちゃん!」
「うわっ、いきなりアップで出てくるな!」
「まぁまぁ、鑑、結果で示せば良いではないか、この前タケルと組んで標的をすべて外したのはそなただぞ?」
「うっ、でもでもぉ〜」

武のガンナーシートに座る御剣瞑夜が武のフォローに突っ込んでくる。

「おまえら・・・・・」

痴話喧嘩に発展しそうな雰囲気に祐一が止めようと思ったが、

「あれはタケルちゃんがわざと機体を揺らしたからだよぅ〜」
「あのな・・・・・戦場でそんな言い訳は効かないぞ?純夏。」
「う〜〜〜〜タケルちゃんが悪いんだよ〜〜」

いつもこうなると人の話を聞かないのであきらめてしまった。

「そろそろはじまるぞ?白銀も鑑も今はそのへんにしておけよ。」

鑑と同じくアンテナ付き一号北川の通信に、

「タケルちゃん、あとで覚えてなさいよ〜〜・・・・・プツッ」
「うるせー、覚えているかっつーの・・・・・プツッ」

通信が切れて一瞬の静けさに、開始のカウントダウンのブザーが鳴る。

「鑑・・・・」
「何?相沢君。」
「俺は鑑のアンテナを信じてるぞ。」
「アンテナちゃう〜〜〜〜はぷっ!」

祐一は言い終わるやいなやアクセルを踏み込み加速を始めた。
祐一に続く久瀬や北川の機体も加速を始めてその軌跡を追いかける。



















一目で複座とわかる航宙機が漆黒の宇宙を高速で移動している。

「T325番機、敵機全滅を確認、訓練終了帰投せよ。」
「T325、相沢、鑑、了解」

銀色に輝く機体が翻り、演習母艦に機体を進める。

「相沢君、今日は大人しかったね。」

ガンナーシートの少女がヘルメットのバイザーを開けて前のパイロットに話しかける。

「まぁな、こうも簡単に失神されては、成績に響く。」

着艦シークエンスの作業をしながら、パイロットシートに座る相沢祐一はガンナーシートの少女に答えた。

「15Gに耐えられる人はそう居ないよぉ・・・・」
「楽しいのに・・・・」
「タケルちゃんなら耐えられるけど、パイロットコースだしね。」

わざとらしく肩をすくめる祐一だが、
実際、祐一が本気で操縦すると、機体の運用限界でもある30Gで機動しまくるので、
耐えられるガンナーが居ないのも事実だ。
格闘戦実習の際、成績TOPになったものの、失神したガンナーを置いて、
パイロットが操作出来る機首機関砲のみで勝利しまくったのだ、。
その後、ガンナーキラーの異名を付けられている。

「着艦するぞ。」
「了解」

ビィービィービィー

エマージェンシーコールがコックピットに響く

「なっ・・・・」
「進路に侵入者!」
「仕方ない・・・・鑑スマン」
「へ?・・・・きゃぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」

衝突を避ける為に祐一が取った行動は、ガンナーシートの少女を余裕で失神させるに十分だった。







「ふぅ・・・・・」

気絶した鑑純夏をおぶってデッキに降りる祐一。
無重量空間故に楽な作業ではあるが、ニアミスによる衝突回避は祐一に精神的疲労をもたらしていた。

「さっきの機体・・・・・誰だ?」

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