「さて、我らの戦うのは日本先住民族の鬼一族だ、その力は強大で、一般の人間では叶わない。」

遊ぶばかりにはさせて貰えない祐一達は座学の時間も必要であり、
祐一、香里、佐祐理、美汐、一弥は円卓を囲んでの勉強である。
まぁ共通の分野で皆が集まるのはこういった歴史関連のみであるのだ。
夏休みという時間はこういった勉強が半分、そして太古の知識を直接伝える宝珠を伝授されるのだ。
宝珠は引退する者が受け継いだ力と自身の知識を合わせて生成する。
この伝授方法は相沢の一族のみでの方法で一応門外不出。
三歳になった時点でまず二つ埋め込まれ、反応を見る。
栞みたいに拒絶反応を起こすと取り出されるのだが、上記の5人は耐えて、以後毎年二つ埋め込まれる。
霊的なものなのでレントゲンなど一般で確認する事は不可能。

「結局追い出された方が取り戻そうとしてるんだよなぁ・・・」
「そうね・・・イスラエルとパレスチナ問題に近いのかしら?」
「あれは宗教も絡んで居ますけど、共存の方向は無理なのでしょうか?」
「そうですね〜っ、人でも異質な存在は排除したがるじゃ無いですか〜、学校でも会社でも、それが世間ですよ〜っ、」
「業ってやつですね・・・」
「祐一様・・・・小学生の会話ではありませんよ・・・・」

聡明なメンバーに教育係は教える事が無さ過ぎて、隠れて涙していたらしい・・・


「さ〜〜てっ、逝きますよ〜」

もう一台の黒塗りの車を待ちかまえていた佐由理が配下の者に合図する。
倉田に属する東の一族、西南北の一族には滅んだとされていた者達である。
今回、佐祐理の目標は本命。

「皆さん、結界行きます。」

背後に陣を組む数人の詠唱が始まった。
佐祐理の言葉だけは言語として認識出来るものでは無かったが・・・

ぱんっ!

佐祐理は手を合わせてから腕を交差、そのまま何かを開く感じで両手を広げた。
周囲に光のボールがいくつも浮かんで来る。

「ちょっと佐祐理のだけでは足りないですね〜っ、」

佐祐理の下腹部に光が生まれ、周囲の光の輝きが増した。

「えいっ♪」

一瞬にして車の周囲に霊力弾が炸裂し、厚いアスファルトを抉った。
車は抉れた穴に引っかかり、ひっくり返った。

「・・・やってくれますね・・・」

ドアーを蹴破って一人の鬼が姿を現し、佐祐理が居た建物の屋上を見上げた。
見た目は人間の青年と変わらない、額に角が二本生えている以外は・・・

「何処を見ているのですか〜っ、」

周囲の土煙が晴れると、そこには自然体で佐祐理が立っていた。

「チッ・・・・」

鬼の右手の爪が伸びて刃と変わった。

「一応名を聞いておこうか・・・」
「倉田・・・佐祐理です。」
「我が名は殴、」
「早速ですけど、消えて下さいね〜っ、」

佐祐理が両手を水平に広げた、周囲に漂う霊力の固まりが鑓となり殴に襲いかかった。

「なっ、呪文も無しで?!」

佐祐理の周囲から放たれる何十本もの光の鑓。

「あはは〜っ、」

佐祐理は両手に長脇差しほどの刀を霊力で作り、鑓を追う様に殴にダッシュした

「あががががががっががががが・・・・」

無数に鑓が殴に突き刺さり、

「えいっ♪」

接近した佐祐理の両手が煌めいた。

「よっと・・・」

一蹴して間合いを取った佐祐理が両手の刀を消した瞬間、血を吹き出してバラバラになった殴が崩れ落ちた。

「くくく・・・・西南北でこんな手練れは皆無だったぞ・・・・」

首だけになった殴はさらに縦に分断されて息絶えた。
佐祐理は一滴の返り血を受けていない。
指で刀を現した佐祐理は空中に文様を描く、

「さゆりんぱ〜〜んちっ!」

とその光る文様を叩いた。

まるでビーム砲の様な光が文様から殴の死骸に放たれ、それが消えた跡に殴の痕跡は一切消滅していた。

「え〜〜と・・・」

佐祐理が周囲を確認すると、車に残っていた鬼達は、元々鬼の因子を持つ人間だったのか、あっけなく配下によって始末されていた。

「みっしょんこんぷり〜とですっ、」
「佐祐理様。」

配下の男が車に残されていたアタッシュケースを持って来た。

「いかがなさいますか?」
「う〜〜ん・・・・お金ですねぇ・・・・祐一さんに聞いてからにします。」
「承知いたしました、まもなく祐一様も到着なさいます。」
「聖と佳乃で車の処理と路面の修復をお願いします。結界はその後に解除。」
『はっ、』

配下の女性から受け取った紅茶を一口飲むと

「ちょっと奮発して祐一さんから貰った霊力まで使ってしまいました、今夜たぁ〜っぷり貰わないと・・・」

頬を染めて残りの紅茶を飲み干した。



佐祐理さんが使用していたのは四大文明以前に存在した幻の先史文明の言語であり普通は聞き取る事すら不可能、
単独に近い行動の際、多用される。
霊力そのものを変換する為にどんな形状にも出来る、祐一達も武器は霊力を使用して形成されるので持ち運びに苦労しないのが取り柄。
祐一と交わう事で佐祐理や香里は祐一の強大な霊力を受け取る、それは腹部に貯め込まれる。



この街に潜む鬼の主が倒した女の鬼狩で作った鬼、鬼狩の霊力も吸収して直系と同等の力を持っている。
今や純粋な鬼は封じられていた鬼だけであり、その繁殖に人の女性を使う、特に霊力を持つ鬼狩や巫女が狙われる。
妖魔と呼ばれるのは動植物が変化し、会話出来る知能を持つもの、知能の無いのは眷属と呼ばれる。

変化鬼
過去に鬼と交わった人間の子孫で、鬼との接触によって鬼の因子が復活して鬼と変化する。
体格、思考、嗜好は元の人間に準じる

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