二人の四季・秋





雪の街の秋は短く、そんな街が見える丘。

ものみの丘に二人は来て風景を眺めていた。

傍らには香里お手製のお弁当。

「この街の秋ははじめてだが、結構いいものだな、」
「そうね・・こんなにおだやかな気持ちで眺めるのはあたしもはじめて・・・」

全国的に言えばちょっと遅い紅葉。

「今日はこのままここでひなたぼっこはどうだ?」

ごろんと寝転がり香里に笑みを浮かべる。

「いいわね、今日はここでのんびりしましょう。」

寝雪達の邪魔も入らず、のんびりとした一日をすごす。

暖かい日差しと気持ちよい風が吹く中、祐一はいつしか眠ってしまった。
目を閉じて木々のざわめきなどを感じていた香里だったが、
ふと祐一の顔と自分の膝を見比べる。

ちらちらと見比べる。

だんだんと顔を赤くしながら決断に迷っている様だが、
その時にくるくると表情も変わった香里を祐一が見ていたらからかう良い材料になった事だろう。
すこしづつ身体を祐一の頭の近くに移動していた。

そして起こさない様にゆっくりと祐一の頭を持ち上げると、
自分の膝の上に乗せた。
祐一の顔にかかる前髪を流す香里。
愛しい者を見る優しい笑顔は祐一が起きるまで続いたのであった。

・・・・ん?何か頭の後ろがふにふにしているな・・・・
・・・・暖かい・・・・
・・・・何だ?・・・・

さわっ、

「あんっ、」

・・・?・・・・

さわさわっ、

「あんあんっ、」

ぱちっ、と祐一が目を開けると

「逆さまだが美少女が俺の顔を覗き込んで居た。」
「なっ、何言ってるよのっ、」

瞬間湯沸かし器の様に真っ赤になる香里を見て、祐一はさらに楽しむ事にした。

ぐりぐりぐりぐり

後頭部をこすりつける。

「や、やめてぇっ、くすぐったいぃ・・・・」

さわさわさわさわさわ・・・・・

「ひゃん、あああああ・・あんっ、・・」

ニッっと香里を見上げて笑う。

「む〜〜〜〜・・・・・えいっ、」

香里の逆襲。
と、言っても上半身を前に倒しただけだが、

「ふごっ、むがむがむがむが・・・・・」

香里の胸に押しつぶされ息が出来なくなる。

「ほうふぁんしまふ、かほりふぁん・・・・」
「よしっ、」

大きく息を吸う祐一に、香里はイタズラっ気に笑みを見せた。

「ふぅ・・・・死ぬかと思った、な・・・」
「祐一が大きくしたんだからね、」
「うっ・・・」
「まぁ、栞には出来ない技よね。」

(そんな事言うお姉ちゃんなんて嫌いですぅ・・・・)

「な・・・・何か聞こえなかったか?」
「い、いいえ、何も聞こえなかったわ。」

(・・・・帰りにアイスのお土産がいるかもね・・・・)

と、香里が考えてる間に祐一は名残惜しいと思いつつも身体を起こした。

「悪いな、眠ってしまって。」
「いいのよ、祐一の寝顔はめったに見れないから。」
「そうか?」
「言葉通りよ。」

納得いかない顔の祐一に、香里はいつもの言葉で返した。

「そろそろ、お昼にしない?」
「そうだな、腹減ってきたし。」

香里の作って来た弁当を堪能し
お互いで「あ〜〜ん」をしてらぶらぶふぁいや〜だったのは
特筆する事でも無いだろう。
午後は二人、木陰で寄り添い微睡む。
帰りは手を繋いで、
夕暮れの喧噪に包まれる商店街を巡って帰路につく。


「祐一・・・」
「ん?」
「入試がんばりましょうねっ、」
「・・・・て言う事は、合格までデートは無しって意味か?」
「言葉通りよっ、」
「ぐはぁ・・・長いぞ。」















「でも一緒に勉強するんだから、ずっと側に居るわよ?」
「・・・・香里さん・・・何か背後に炎が見えるんですけど・・・・」
「そんなこと無いわよ(ちゅっ)」




二人の目指す大学はこの近辺でも超難関であり、各自の家からは通学出来る距離に無い。


9/25改訂



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