二人の四季・The departure to the future connects a hand.

出会った最初からその悲しみを秘めた瞳に惹かれた。
栞と出会い、その関係を知るとよけいに香里を視線で追っている事に気付いてしまった。
名雪や北川と共に笑った後に一瞬目を伏せる事とか、
ちょっとした時間に校内のどこかで物思いに更けているのを何度も見かけた。
まだ客観的に見れる状態の時に先にフォローが必要に思った栞に肩入れしてしまったが、
深夜の告白が俺の恋愛元素すべてを香里に向けさせる・・・・
栞よりも弱いのだ、心が。
2月1日がタイムリミットなら行動を起こすのは速攻で行くしかない。
後で嫌われる事になったとしても、俺はそう行動する事にとまどいは無かったのだ。
結果は今、俺と香里が産まれたままの姿で一つの布団に居る事が現している。
栞もどうにか留年したが4月中盤から学校に復帰していた。

・・・夏に香里のお父さんに書かされた婚姻届けは大学卒業まで待って貰う事で決着していた。
さすがに学生では・・・





「さて・・・どうしたものか・・・」

祐一はベットに寝ころんで天上を見上げながら考えていた。

「何が?」

もぞもぞと布団の中に埋まっていた香里が顔を出してきた、
夕べ抱きしめ合う形で終えた後、香里は抱きしめたまま眠ってしまったのだ、
やりすぎた(汗)からか全然起きない香里が風邪を引かない様にそのまま布団を被って寝たと言うわけだ。
そのまま上半身を上げると胸が丸見えだってば・・・・

「んふふ〜〜」

ついその豊な胸に目線が行ったのに気づくと香里は俺胸に頬を擦り寄せながらわざと胸をも擦り付ける。

「いや、さすがに卒業式まで学校に行かなくていいからと言っても・・・」

一つになったまま眠ったワケで、朝のアレもあってかなりヤバイ状態なのでして・・・

「冗談よ。それで何がどうしたの?」

上気した顔をして冗談と言われましても・・・・

「駄目だ・・・相沢祐一吶喊しますっ!」
「きゃっ!」


・・・・・・・・・・・・・・・・


「あらあら・・・朝から激しいわねぇ・・・・」

カップに埃が入らない様に手で押さえた秋子さんがリビングでいつもの笑顔で紅茶を飲んでいた。
当然名雪がこの程度で起きる訳も無く、
いつの間にか秋子さんが防音工事をした部屋で、目覚ましのベルが鳴り響く中・・・

「だぉ〜じしんだぉ〜〜・・・・」

と爆睡していた・・・



「でも名雪・・・補習あるのに起きないでいいのかしら・・・・」

祐一と学校からの苦言で春から秋子もついに名雪を起こすことは放棄している。
おかげで陸上での良い成績を持っても推薦が取れなかったのだ。
さらに授業はほぼ寝ている。
入試も卒業式後の二次募集組だ・・・・
北川でさえ赤点は免れ、補欠ではあるものの俺達と同じ大学に合格出来たと言うのに
名雪は赤点をいくつか取ってしまい補習に出ないと卒業すら危ういと言うのに・・・・

「く〜〜〜〜けろぴーはここぉ・・・・」

祐一と香里は佐祐理と舞が進学した大学にすでに合格しており、
それぞれ大学に近い佐祐理の住んでいるアパートに部屋を借りる、
同棲では無いが隣り合わせの部屋なので実質同じだろう・・・
荷造りという名目で昨日から香里は結果泊まり込んでいるのだが・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・

名雪が寝ながら暴露した公表スペックで言うと、
名雪とほぼ同等のスペックだが名雪よりもウエストが引き締まっているのに1kg重い。
その1kgを気にしているみたいだが、同じサイズでもトップとアンダーで見て香里のが大きいし、
なによりも仰向けになっても崩れないほど身が詰まってる・・・・
同居のお約束で見てしまった名雪の胸は重力に負けていた。


行為を終えて上半身を起こした祐一は背後から香里を抱きしめる形で微睡んでいた。
右手が香里のシャツ(祐一の)に入り込んで香里の左の胸に在る事以外が恋人同士の睦み合いの風景だった。

「で、さっき聞いた事だけど・・・」
「あぁ・・・もうじき香里の誕生日だなぁ・・・と」

去年の誕生日はカレッジリング程度の金額の代物だったが指輪を贈った。
それは今も香里の左手の薬指に輝いている。
さて今年は・・・という事を考えているわけだ。

「栞達みたいなのはイヤよ・・・」
「あれはあいつらのみだ・・・」

まぁ・・・いいかげん奢れと集るあいつら、特に名雪に嫌気がさした俺は
香里、佐祐理さん、美汐、の協力もあって夏に結論を言い渡していた。
それで簡単に引き下がる連中では無かったが・・・

さらに誕生日に渡したのは

納品書の紙切れ一枚。

密かに書き記していた明細を納品書として明記して渡したのだ。
名雪のなど生涯の先渡し分とまで明記して、だ。
まぁその後に起こった騒動は・・・いや、秋子さんの「了承♪」で最終的には解決したのだが・・・

3月1日・・・・・
美坂香里の誕生日であり、高校の卒業式の日でもあった。

シルバーリングは19歳の誕生日と約束しているし・・・・
これから住む予定のアパートの合い鍵はすでに渡してある・・・・

「つまり去年はインパクト在りすぎるプレゼントだったから悩んでる・・・と?」
「まぁ、ぶっちゃけ。」
「そうねぇ・・・・あたしは心さえこもっていればいいけど・・・」

だから悩むのですよ、香里さん。

「こど・・・」
「結婚するまで作る気無いぞ。」
「えぅ・・・」

それは12月6日に使われた手だぞ、香里。

「さっきからずっとあたしの胸触ってるから早く欲しいかと思ったんだけど・・・」
「うぐぅ・・・」
「何がいいと思う?」
「いや、だからそれを考えて居るんだってば。」
「う〜〜ん・・・・現時点では十分に満たされているしぃ・・・心だけでなく、ここも・・・」

そういって香里は自分のお腹を撫でた。
安全日も使っていたら近藤さんの代金でアイツらに奢らされていた時と同じですってば、香里さん。

「うぁ・・・そろそろタイムリミットだな。」
「もうそんな時間?」
「あぁ、そろそろ佐祐理さんと美汐が引っ越しの手伝いに来てしまう・・・」
「えぅ、あたしシャワーしたかった。」
「なら急いで、俺は布団を纏めておくから。」


甘い空間が一気にドタバタの空間と化してゆく。

「はうっ、」
「どうした?」
「今頃出てきた・・・」
「ぐはぁっ!」



これが卒業式というイベントを目前にした二人の風景。

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