「アレグロ・ヴィヴァーチェ」

「店高く、名雪肥ゆる冬かな・・・・」

「何言ってるのよ、相沢君・・・・」

暖冬か、まだ雪が降らない北の街、おだやかな日差しが嬉しい昼休み。
一人裏庭で寝そべって一人を堪能していた所、
俺の顔をのぞき込む様に、まぶしい白の美少女が立っていた・・・・

ばっ、

顔を真っ赤にしてスカートを押さえて後ずさる可愛らしい美少女

「な、な、な・・・・・見たわね?相沢君・・・・」
「どうしたんだ香里、こんな所に。」

上半身を起こし、やれやれといった表情で香里を見上げる祐一。

「話をそらさないで、相沢君。」
「?」
「見たでしょ・・・・」

香里の顔は真っ赤、怒るというよりも、恥ずかしさで祐一をにらむ

「何を?」
「あたしの・・・・・・」

アゴに手を当ててちょっと考えて、祐一は手をポンっと叩いた。
なにか思い合った様だ。

「あぁ、ひょっとしてレースにワンポイントのピンクのリボンか・・・・・なるほど。」
「なるほどじゃないわよ、覚悟はいい?」

言うやいなや顔面に香里の蹴りが飛ぶが、
簡単に受け止めてしまう祐一、
多少の手加減はあるものの、金髪アンテナを一撃で沈める蹴りだ。

「おぃおぃ・・・・香里が立った場所が悪いんじゃないか・・・・」

(何故、又自分から見せる行為をするんだか・・・・)

「うっ、・・・・そ、そうだけど・・・・そういうのは黙ってるものでしょ?」
「へっ?まさか・・・・」
「そう、まさかよ。」
「しょっぱなからこの癖か・・・・」
「はぁ・・・
まぁ、相沢君だからいいか・・・・・

わざとらしく肩をすくめため息をもらす香里。
自分を美少女と呼んでくれた事で帳消しにするつもりなのか。

・・・実際香里は心臓どっくんどっくんばっくんばっくん、かおまっかっか〜
の状態のまま、乙女回路暴走中なものだ。

「で、何か用か?」
「用って・・・・栞や名雪が探していたわよ?」

(ものすごく嫌な顔をする祐一。
みんなの前で見せない、
あたしだけに見せてくれる本当の祐一の表情の一つ、
あたしだけの前で見せてくれる事がちょっと嬉しい。)

祐一のどんな表情でも、香里のメモリに記録し
夜に思い出しながら眠る。
今はメモリよりも一応の用事を済ませる

「お昼はもう食べた。」
「え?」
「ほれ、」

祐一の示したのは、横にあるビニール袋、
購買のパンの袋や缶コーヒーが無造作に詰め込まれていた。

「どうして?栞のお弁当もあるのに・・・・」
「あんな致死量を超えたのは迷惑だからな、」
「うっ・・・・・・(汗)」

香里も知らない、栞の押しつける弁当を無理に食べたあと、トイレで吐き出してる事を・・・
それが続けば胃液で味覚も狂うものだ、
実際、謎邪夢だけが美味しく感じてしまう・・・・・
それほどに祐一の胃は限界を迎えていたのだ・・・・

「そうだったの・・・・ごめんなさい、栞が迷惑かけて・・・・」

香里は再び黄昏て空を見上げる祐一の頭を後ろから抱きしめた。

「香里・・・・」
「だからなの?最近栞や名雪と距離を置き始めたのは・・・・」
「ん〜〜そう見えるか?」
「うん・・・・」
「それだけじゃ無いさ・・・・こうやって一人の時間が無さ過ぎたのさ・・・・」
「あたしも・・・・迷惑かな・・・・」
「いや、そうでもないさ・・・・あいつらが騒がしいだけさ・・・・」

なにげに芝をちぎり風に流す祐一・・・・
香里は、抱きしめてる祐一の頭に顔を埋めた・・・・

「若いっていいなぁ・・・・・」

独身教師石橋は職員室からそんな二人を眺めていた。





その頃

「う〜〜〜〜〜祐一何処行ったんだお〜・・・・」
「うぐぅ・・・・食べきれないよ・・・・・」
「あぅ・・・・駄目・・・・」
「私にはちゃんとお弁当があります、これを食べろと?そんな酷なことはありません・・・・」
「えぅ〜〜〜祐一さぁ〜〜〜〜ん・・・・・・」





後頭部にかかる柔らかいふくらみ、
祐一は顔が赤くなり、ついに耐えきれなくなる、

「なぁ、香里・・・・」
「何?相沢君・・・・・」

顔を動かして香里を見る祐一と、
覗き込む香里。

二人の行動は重なる


CHU・・・・・・


「うわっ、・・・・」
「きゃっ、・・・・」

思わず飛び退く二人。

「あああああああ、あのあのあのあの・・・・・」
「ななななななな、なになになになに・・・・・」

突然の悪戯に慌てふためく二人・・・

「・・・・・・・」
「・・・・・・・」

「「くすっ、」」

お互いに黙ってしまったあと、軽く笑う二人。
そしてこつんとおでこを合わせると、

ゆっくりと二人の唇は重なった。





[PR]動画