愛惜の思い

 

そう言えば明日、私の誕生日よね。

私は部活帰りにそんな事を思いながら家に向かっている。

もう、日は落ちて辺りは暗くなっている。

去年は栞がアイスクリームを10kgほど、くれたわね。

どれくらい持つんだろうと思っていたけど、

1週間でみんな食べちゃったわね・・・栞が。

 

 

そんな事を考えていて、ふと道端の道路工事が目に入った。

こんな寒い日にやらなくてもいいのに・・・

・・・あれ?

そこに見知った顔がいた。

香里「あ、相沢君」

私がそう呼ぶと、彼も気付いてこちらを向く。

相沢「よう、香里。 今帰りか?」

彼は作業着を着ていて、顔は泥だらけだった。

香里「部活の帰りよ。 相沢君は何やってるの?」

相沢「・・・ダンスを踊ってる様に見えるか? バイトだよ」

そう言って彼は手に持っているシャベルを上げて見せた。

香里「なんでまた・・・この時期に?」

相沢「ああ、ちょっとほしいものがあってな」

ふ〜ん

栞へのプレゼントかしら?

香里「そう、じゃあがんばってね。 あと、栞泣かせちゃダメよ」

相沢「わかってるって。 じゃあ、香里も気を付けてな」

香里「ええ」

そう言って私たちはは別れた。

 

 

相沢君と栞は付き合っている。

次の誕生日まで生きられないと宣告された栞。

でも、栞は・・・今も生きている。

相沢君のおかげで。

 

 

私は・・・栞を拒絶し、そして泣いてただけ。

 

一生懸命自分の中から栞の存在を消そうとして・・・

 

栞の存在を消すなんて出来もしないのに・・・

 

そして栞を傷付け、自分も傷付いた。

 

はじめからやる事は判っていたはず。

 

それが出来なくて・・・

 

笑顔を見せられなくて・・・

 

でも、相沢君は笑顔でいて・・・

 

栞を助けてくれて・・・

 

私にも勇気をくれた。

 

そんな相沢君を、私は好きだと思う。

 

でも、いいの・・・

 

栞さえ幸せになってくれれば・・・

 

栞さえ笑顔でいてくれれば・・・

 

私はそれで幸せだから。

 

 

 

 

3月1日。

私の誕生日。

学校へ行くと、部活の先輩、後輩やクラスメートなどからプレゼントを貰った。

名雪「香里、はい、誕生日プレゼント」

香里「ありがとう、名雪」

嬉しいのに・・・

嬉しいはずなのに・・・

 

私は学校で、相沢君と言葉を交わす事は無かった。

 

放課後、相沢君と栞が仲良く学校から出て行くのが見えた。

・・・そうよ、これでよかったのよ。

相沢君は栞を救ってくれた。

もし、相沢君がいなかったら、

・・・栞がいなくなったら、

私は誕生日を迎える事が無かったかもしれない。

 

だから、相沢君にお礼を言いたい。

 

「栞を救ってくれてありがとう」

 

「私を救ってくれてありがとう」

 

私の内に眠る愛惜の思いと共に・・・

 

 


あとがき

どうも、和井です。

今回は、香里の誕生日SSを、

KAIEIさんのHPの1万HIT記念として

贈らせて戴きました。

本当は、はだ○エプロンで行くつもりだったんですが、

急きょ変更しました。

時間が無かったもので・・・

とにかく、1万HITおめでとう!


ありがとうございます、

なんか、この後に家に帰った香里は

栞と祐一の豪快なパーティー&プレゼントに見舞われる

予感がしますね、

私のHPもみなさんのおかげで10,000HITです、今後ともよろしくおねがいします

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