大正追奏曲・大正浪漫は、あはは〜っ、ですよ〜

わんっ、ですよ〜



海軍の兵学校を上位で卒業した俺、相沢祐一海軍少尉は、
初任官がある北国の海岸警備隊隊長として配属された。
たまたま出席した舞踏会で出会った地元の政治家に気に入られて、
官舎でなくそこの家に下宿する事となったのはいいが・・・・

「寒い・・・」

もう駅に着いてから3時間、迎えの約束から2時間は過ぎている・・・
さらに再び降り始めた雪が体に積もってきてる・・・
ぼ〜っとなりかけた視界を綺麗な赤色が覆った

「桜?」

こんな雪の中、まだ桜など咲いているはずもなく、
それは俺の顔を覗いている袴姿の少女の服の色だった

「雪、積もってますよ〜」
「そうだな、もう2時間も待っているからな・・・」

少女は駅の時計を見て、少し呆然としてから
引き込まれそうな笑顔でこう言った。

「あ、あはは〜っ、佐祐理ちょっと遅れてしまいましたね〜」

どうやらこの娘が迎えの様だが、

「寒くないですか〜?」
「寒い・・・」

軍服にコートだけなんだ、寒くないはずがないのに・・・

「佐祐理、暖かい紅茶を持って来たんですよ〜飲んでください〜」
「・・・助かる・・・」

俺は紅茶を受け取り流し込む様に飲んだ、
保温の出来る魔法瓶はかなり高価だ、
こんな時にはありがたい。

「相沢祐一少尉さんですよね〜」
「そうだが、キミは?」
「佐祐理は、倉田佐祐理ですよ〜祐一さん、佐祐理って呼んで下さいね〜」

倉田ってことは・・・代議士の倉田さんのお嬢さんか。

「下宿させて貰うんだ、せめて佐祐理さんと呼ばせてくれないか?」
「むぅ〜っ、仕方がないですね〜しばらくは我慢してあげますよ〜」

う・・・この笑顔の前だと抵抗出来なくなりそうだ・・・

「ところで佐祐理さん。」
「はいっ、何ですか?」
「そろそろ案内して貰えないかな?寒さでそろそろ限界だ・・・・」








こうして俺の北国での生活が始まった













つづく







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