大正追奏曲 大正浪漫は、あはは〜っ、ですよ〜

ふぁいぶっ、ですよ〜

「ゆういちさ〜〜〜〜んっ、」
「ちょっと、こんな所で大声をあげないでよ・・・」

つい校舎をながめていたら校舎の方から声が聞こえて来た 
教室の窓からまぶしい笑顔を見せてを振る彼女、
まだ実感が湧かないのだが、許嫁の佐祐理さん。

「ちょっと・・・佐祐理さん・・・」
「はぇ?」
「・・・倉田さん・・・窓から大声だなんて、はしたないですよ・・・・」

奥から教師らしき声が聞こえる・・・
いっしょに居た少女も、やれやれといった表情をしているな・・・
さて、どうしようか・・・っと考えている間もなく、佐祐理さんは、
玄関から駆けてきた、どうやら、教室で一緒だった娘も一緒だ。

「祐一さん、迎えに来てくれたんですね?」
「まぁ・・・そういう事になるかな?」
「あはは〜っ、佐祐理、とっても嬉しいですよ。」
「あの・・・佐祐理さん?紹介して下さらない?」
「あ、あははは〜っ、こちらが、海軍少尉の相沢祐一さんですよ〜
そして・・・佐祐理の許嫁さんです・・・
「相沢祐一海軍少尉です、着任してきたばかりなので色々教えてください。」
「あたしは、美坂香里、佐祐理さんの同級生よ。」
「よろしく、美坂さん。」

祐一は、海軍仕込みの白い歯を見せる笑顔と、さりげなく右手を差し出す。
思わずその手を握り、握手しながら、香里はうっすらと頬を染める

「よ、よろしくお願いいたします、あの・・・あたしの事は香里と呼んで下さい・・・」
「そうもいきませんよ、でも香里さんと呼ばせて貰いましょうか、私のことも祐一と気軽に呼んで下さい。」
「そんな・・・あの・・・相沢さ・・・いえ、少尉さんと呼ばせてください・・・」

この時代、面と向かって男性との接触が少ない事が、
香里にも赤面を余儀なくされた

「仕方ないですね・・・」
「あはは〜っ、これでお二人はお友達ですね〜」
「そうなるかな?佐祐理さん。」
「では、今日はどうします?祐一さんっ、」
「そうだね、この街を案内してくれるかな?」
「いいですよ〜、香里さんも一緒に行きましょうね〜」
「え?あたしもご一緒してよろしいのですか?」
「当たり前ですよ〜っ、祐一さんもいいですよね?」
「あぁ、かまわない、と言うより、可愛い娘二人と一緒なんて嬉しいですよ。」
「あ、あははは〜っ、可愛いだなんて・・・照れちゃいますよ〜」

結果的には、女の子が好きそうなお店中心に引き回された祐一だが、
男だらけの軍にいたので、それでも十分に楽しんでいた。


「うぐぅっ〜〜〜〜どいてどいて!!〜」

突如聞こえて来たその声は、商店街の向こうから
二条の雪煙を立てて突入してくる

ひょいっ、

祐一は、佐祐理と香里を抱え、すっと避ける
しっかり片足は残しておきながら。

がしっ、ずしゃぁぁぁぁぁ

その足に引っかかり、見事にその物体は滑って転んで、
雪まみれになって停止した。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、・・・か・・・海軍さん、ありがとよ。」
「どうしたのですか?」
「おうっ、食い逃げじゃち、やっとつかまえたぜよ。」
「うぐぅ・・・違うよ・・・」

捕まった、雪まみれの物体が声を出した

「ほぅ・・・何が違うんだ?」
「仕方なかったんだよ・・・」
「どう仕方なかったんだ?」
「・・・すっごくお腹がすいてたんだよ・・・」
「で?」
「たいやきを注文して支払おうと思ったら・・・」
「思ったら?」
「巾着を忘れて来たんだよ・・・」
「それで逃げたのか?」
「うぐぅ・・・仕方なかったんだよ・・・」

情状酌量か、と思いきやたいやき屋のおやじの拳が炸裂した。
脳天からのげんこつ・・・

「せからしか!こんで何度目やと思うちゅうがぜ!!」
「うぐぅ・・・」
「ええかげんにせや!次こそは思うて待っとったら、何度もしよる。」
「な・・・何度も・・・ですか・・・」
「はぇ〜・・・たいやき屋さんっていい人なんですね〜」
「そうね、」
「官憲に突きだしちゃるぜよ・・・」
「まぁ、待って下さい。」

その物体・・・

「うぐぅ・・・物体じゃないよぅ・・・」

雪まみれでぼろぼろの少女は・・・

「うぐぅ・・・酷いよ・・・」

・・・・・・・が、連れ去られようとしたとき。

「うぐぅ・・・読んでる人にもバレバレなんだからちゃんと説明してよ・・・」

・・・・・・

「いくらなんですか?」
「ん?あぁ・・・全部で65円だ。」
「げ・・・・」

祐一は、出会ったのも縁と考え、立て替えようと思ったが、
その金額に引いた・・・

「うぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・・・」

連れ去られる少女を3人がぽか〜んと見ていたら、

「あの・・・祐一さん・・・」
「はい?」
「そろそろ離して貰えませんか?・・・」
「そうよ、少尉・・・」

佐祐理と香里の言葉に、落ち着いて周りを見ると・・・
たいやきうぐぅを避けた時に、二人の腰を抱きかかえたままだった・・・

「あはは・・・」
「あはは〜っ、・・・」
「はぁ・・・」

端から見れば、海軍少尉が女学生二人を侍らせて、MMK状態にしか見えない。
香里と別れた後も、寄り添いながらの言葉少ない二人でした。

「あはは〜っ、佐祐理、照れてしまってお話出来ませんでした〜。」



続く

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