大正追奏曲 大正浪漫は、あはは〜っ、ですよ〜

せぶんっ、ですよ〜

「今日は本当に面白かったですね〜っ、」

今日は倉田議員に貰ったチケットで、佐祐理さんと二人
帝國歌劇団の地方巡業特別公演を見に行った。

「パリからのゲストの方々がいらっしゃる公演なんて、もう見れないかもしれませんしね。」
「あはは〜っ、祐一さんとご一緒ですから、どんなものでもすっごく、すっごく楽しめるんですよ〜っ。」
「そう言って貰えると、嬉しいですね、佐祐理さん。」

手を胸の前で合わせて、満面の笑顔を見せる佐祐理さんに、俺も笑顔で返す。

「そういえば、もぎりの方を見た祐一さん、なにか変な顔をしていましたが?」
「いや・・・・知り合いの先輩に良く似ていたもので・・・」
「どういう方なのです?」
「海軍兵学校首席の先輩で、剣の兄弟子にあたる人ですよ。」
「それはすごい人ですね〜っ、」
「極秘特務部隊の隊長になったと噂だから、あんな所に居るハズ無いんですけどね。」

それが本人だったと言う事は、祐一は知らなかった。

「さて・・・・結構遅くなってしまいましたが、何処かで何か美味しい物でも食べて行きますか?」

ちょっと思案した表情の後、佐祐理さんはあっけらかんと言い放った。

「そうですね、どうせこの街にお泊まりですから・・・」
「へっ?」
「あれ?お父様から聞いていませんでしたか?」
「いえ・・・何も・・・」
「もう、私たちの街へ行く汽車は有りませんよ?」
「・・・しまった・・・時刻表を読み間違えた・・・・」
「祐一さんが見たのはこの時刻表ですか?」

佐祐理さんはぴらっと、紙を取り出した。

「そうです、コレですね。倉田議員から渡された時刻表です。」
「コレは嘘の時刻表です。」
「へっ?」
「祐一さんが乗ろうと思っていたこの時間の汽車は、無いんです。」

やられた・・・・倉田議員はけっこうこういう悪戯が好きだった事を忘れていた・・・・

「まさか・・・・佐祐理さん・・・」
「はいっ、ちゃんと知っていましたし、ホテルの予約も取っておきました。」
「はぁ・・・」

そんな俺の腕に佐祐理さんはしがみついて来て。

「お父様が、早く孫の顔を見せろと、毎日佐祐理に言うんですよ。」

と、真っ赤になって耳元に囁いてきた。




[PR]動画