夢追い人達の黄昏・序章
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一年戦争





地球の周りには数百基の巨大なスペースコロニーが浮かび、人々がその内壁を第二の故郷として半世紀
人類の半数が宇宙生活者となった、宇宙世紀0079・・・・・・・
サイド3がジオン公国を名乗り連邦政府に独立戦争を挑んできた、大戦当初に総人口の半数は死に自らの行為に恐怖した。

ジオンのブリティッシュ作戦により地球規模の災害が起こり、
東亜、日本関東地区横浜基地を中心にあった連邦軍のニュートーキョーベースは、津波などによって被害を被り
その混乱に乗じて攻撃をしかけてきたジオン軍により壊滅した。

地球連邦軍極東方面士官学校日本支部煌校舎の生存者は響校舎の生徒と合流して、ジャブローに逃れる。
土地柄日系の訓練兵の割合が多いのが特徴だった士官学校である。

地球連邦軍総本部ジャブロー 
南米の天然の地下大空洞を利用して作られた、地球上の軍事施設としては最大級の物である。
その総敷地面積は42平方km。通常45万人もの人員が生活する、ちょっとした市に匹敵するサイズなのだ。
ここには連邦軍最高指令本部が置かれ、さらに軍工廠、宇宙艦艇建造ドックなどがひしめきあっている。
そんな大規模な施設だった。
そんなジャブローの端にいかにも小規模基地ですと言わんばかりな風景な航空基地があった。
その空港に、一機の輸送機と護衛戦闘機が着陸した。

「結構風が強いな・・・・今日は・・・・」

タラップを降りてきた地球連邦軍中尉、コウ・ヌシビトは呟く。
連邦軍の量産型モビルスーツ、RGM−79 ジムの実戦テストでオデッサ作戦に参加していたコウは、
その後の残敵掃討を終えて参謀本部に呼ばれ、麾下の小隊人員ごとジャブローに戻って来たのだった。

「暑さを感じないですむから良かったじゃないですか、先輩。」

同じくタラップを降りてきたウェーブの女性、
見た目はまだ高校生で通るくらいに童顔だが、24歳の准尉
スズネ・ミサキが風にあおられる髪を押さえながら聞いた。

「少しは休暇を貰えるんですか?先輩。」
「無くても奪うさ、」

ミデアより搬出されるRGM−79Xを眺めていたが振り返り、笑顔で答えるコウ。

「そうですよねっ、」

小走りにコウに追いついたスズネは、コウの左腕に腕をからませる、

「お買い物に付き合って下さいねっ、」

ジャブローは軍属、家族も居住する基地である、故にPXみたいな売店レベルではなく商店街ブロックも存在する。
非番の兵士が溢れる一瞬でも戦争を忘れる事が出来る希有な空間である。
逆を言えば後方で甘く考える連邦軍の堕落かもしれない・・・

「あぁ、そうだね・・・いいよ。」

同じく試験部隊の仲間もタラップで降りてくる前で、寄り添って建物へ入っていった。

「ふぅ・・・侘びしい独り者にはやってらんないなぁ・・・」

タラップを降りてきた少尉の階級章を付けている兵士が一緒に降りてきた兵士に呟く。
彼らも転属の為に戻って来ていたのだ、

「あはは・・・・やけ酒に付き合ってやるよ、」
「飲み比べだな、アイザワ、負けた方が奢るってヤツで。」
「受けたっ」

4人は建物の中に入りエレベータに乗り込み地下に降りていった。





新型試作戦闘機「FF−X−7bst コアブースター」のパイロットになった地球連邦空軍マサキ・ゴトウ中尉は
確実にジオンのMSを葬っていったが、
一人の勝利は全体の勝利にならないのは、いつの時代も同じであった。

「自分がMSのパイロットに、でありますか?」
「そうだ、マサキ・ゴトウ中尉、本日1200をもって昇進、マサキ・ゴトウ大尉に連邦宇宙軍ヘスペロス級強襲揚陸艦ハイペリオンへの転属を命ずる。
「拝命します。」
「移動はコアブースターで自力移動だ、残念だがデータなどの問題で回収するそうだ。」
「空輸も兼ねてと言う事ですね?」

再構成されつつあるとはいえ、ジオンのブリティッシュ作戦の影響で連邦空軍は壊滅状態のままである。
ほぼ壊滅だった連邦軍は、陸軍と海軍を合併して「連邦地上軍」、海軍と宇宙軍とで「航空宇宙軍」と一時的に再編され、
各旧国家(行政区として各国家は一応存続してはいる)の州政府直轄の州軍が正規軍として格上げされた。
ヘスペロス級は開戦前に建造開始された簡易ペガサス級とも言える艦である、設計自体はペガサス級よりも先に提出されたマゼラン級の強化プランで、
その後の初期構想としては61式などを搭載してコロニーへの強襲揚陸であったがTMM構想により新型宇宙戦闘機専用母艦、
MSの存在がMS強襲揚陸艦と設計が変更になった。
建造は連邦軍ギリシア基地の宇宙船造船所とノルウェー基地の宇宙船造船所、ジオン侵攻後はノルウェーのみで建造された。
ネームシップのヘスペロスは艤装途中でギリシアを脱出、連邦海軍ベルファスト基地で補修後ジャブローで艤装を完了させた。
随伴艦として再設計されたサラミス級はヘスペロスの子供の意も含めてヘスペリスと命名、以後同型艦をヘスペリス級と呼称
宇宙戦闘機中隊搭載の防空巡洋艦として計画され、開戦後はMS搭載に変更された、ヘスペリスなどの既存艦も全て改装。
双方奇数艦がギリシア神話、偶数艦が北欧神話より命名されたが、ギリシア、ノルウェー造船所以外で建造された艦は独自に命名、
竣工引き渡し時に改名された艦もある。

オデッサ作戦の頃には連邦軍再編も終了し、4軍体勢は整っていた。
反抗作戦は宇宙であるという考えから、陸、海、空軍から、
MSパイロットの適正がある将兵はどんどん引き抜かれて、陸、空軍の共同作戦であるオデッサ作戦において、
戦闘機でMSを7機撃破したマサキ中尉は宇宙軍に引き抜かれ、MSのパイロットとなることになったのである。

「宇宙軍か・・・」

自室の荷物をまとめて、マサキはもらった資料に目を通していた。

「ティアンム中将麾下、第二連合艦隊、13戦隊か・・・」

そのとき来訪を告げるブザーが鳴った。

「マサキ大尉、いらっしゃいますか?」
「開いている、はいりたまえ。」
「大尉、昇進おめでとうございます、」
「フランチェスカか、CICはどうした?」

そこにいたのは小柄な、少女の面影を残す女性、フランチェスカ・シャトー伍長だった
この基地で情報管理センターのオペレーションをしている。
マサキが着任そうそう昼寝用の場所を探していたときに知り合い
非番にデートしたりしていた。


「もう勤務時間は終わりました、あの・・・転属されるのですね・・・それで・・・その・・・」
「フランチェスカ・・・」
「・・・」

涙、男から見れば好きな女性の涙は最強の精神攻撃といえるかも知れない
マサキは胸の中で泣く彼女の左手の薬指に隠し持っていた指輪をはめた。
驚くフランチェスカ。
そのまま二人は唇を重ね、マサキはフランチェスカを無言で抱きしめベットへ倒れていった

「待てるか?」
「ハイ?」

自分の胸の中に微睡むフランチェスカの髪を撫でながら
マサキは言った

「戦争が終わるまで待っていられるか?」
「は、ハイ!」

翌日、敬礼し合い、マサキのコアブースターは離陸していった。




ベルファスト海軍軍港ではマサキ達MSのパイロットに選抜されたメンバーが連日激しい訓練を重ねていた
この基地でジャブローからのMSを受領して、ノルウェーに向かう予定だったのだが
MSの到着は遅れていた

「大尉!我々はいつまでここにいるのでありましょうか?」

ハイペリオンMS中隊第三小隊隊長のリィ・ハンシュー少尉は一週間のシュミレーターずくめに
もう飽きているのか、搬入されないMSにイラだちを隠せないでいた。

「そうあせるな、さすがのミナセ准将もそう簡単に事が進まないのだろう。」

そうなだめるマサキだがジオンへの反攻に燃えるパイロット達には
速くMSに乗って戦いたいという思いにかられ焦りも見えていた

「たいいー!」
「ん?」

何度も転びそうになりながら、赤い制服がこちらに走ってくる、

「コラ!ファイレックス軍曹!あわてるんじゃない!!」
「ハンシュー、まあいいではないか。」
「エヘヘ、」

チェリーは汗だくになりながらも笑みを浮かべる。

「で?軍曹、どうした?」
「ハイ!本日 1800ミデアが到着します!」
「おい!それは・・」
「ハイ!!モビルスーツの到着です!!!」
「隊長!小隊長を集めます!!」

いうやいなや、ハンシューは駆け出していってしまった、よほど嬉しかったのだろう
しかしそれは前線に出る事になることだ。

「ここの生活もそれなりに楽しかったのだがな・・・」
「そんなに適応力の高いのは大尉だけです、あたしは速く宇宙に帰りたいです、」
「ほう・・・なら生き残れる様に、思いっきりシゴいてやるぞ!!」
「ふみゅー!」

マサキの反射速度を鍛える為のシゴキは容赦がなかったが彼自身も一緒にメニューをこなすので
誰も不満は無かった。

「模擬戦を開始する、各機、バルーン弾装備、総当たりで行くぞペアを組みたければ好きにしろ!」

空間戦に地上での模擬戦がどれだけ有効か、それでもクタクタになるまで続けるのは焦りからなのか
隊長だけに許された識別マーカー表示でマサキは各員の動きを見ていた。

「フム、オオガミ、ファイレックスでペアを組んだか、公私ともにいいコンビだからな、」

足下に着弾、真っ先に彼をねらえるパイロットは一人しかいない。

「ハンシューか?」

とっさに回避させたマサキのジムに、物陰から一機のジムが現れた

「大尉!先にかたずけさせてもらいますよ!」
「一番嫌なヤツが来たな、」

リ・ハンシューは 連邦空軍においてマサキと戦術・戦技団でペアを組んでいた
戦争で別々の部隊に配属されていたが、お互いの手の内を知り尽くしているというマサキにとって厄介な相手である

双方走りまくり有効打があたらない、しかもその間に他機を次々と撃破するという二人ともかなりのベテランぶりだ、ホントに乗りこなすのが速い。

「大尉!現在残数4機、1−1、2−1、2−3、3−1です」

CPよりの入電

「オオガミとファイレックスか、ハンシュー!奴らはペアだこちらもペアでやるぞ!」
「了解!」
「オオガミさん!」
「マイッタな今まで二人に勝った事無いんだ」
「あたしがいます!オオガミさん!!」
「よし!チェリーくん!行くぞ!」
「ハイ!」

信頼がもたらす自信、それはベテラン二人にとっても手強い相手となった、結果
オオガミ少尉の囮でチェリーがハンシューを撃破、マサキとオオガミが相打ちとなり
模擬戦は終了した。

「ファイレックス軍曹、確か甘いものが好きだったな、帰ったらケーキを食べ放題させてやる、」
「ありがとうございます、大尉、オオガミ少尉のおかげです、」
「そうだな、オオガミには秘蔵の酒を飲ませてやる、」
「あの・・・自分は酒が飲めないのですが・・・」


ミデア数機がノルウェー基地に向けて発進している機中から、
ベルファストに向かう一隻の白い艦が見え、

「大尉!一時の方向にペガサス級が見えます、」
「我々と入れ違いか、会ってみたかったな、パイロット達に、」

機種転換訓練を終えて18名はノルウェーに向かう、
ミデアに積載したのはEタイプジムとジムキャノン、Bタイプジムはすでに艦にも用意してあるので残してゆく
せっかく残して行った機体も、支給前のオーバーホールでWBに絡む戦闘に参加できなかった

「大尉、知ってましたか?」
「何をだ?」
「大尉は基地のウェーブに人気があったんですよ、空軍のエースパイロットでリベラル派
堅っ苦しさを嫌いふつうにしゃべらせる、気楽な雰囲気がいいってね。」
「知らなかったな、うーむ惜しかったなそれは、」
「大尉がそれだからな、かなりモーション掛けられていたのもわからないのですからね、」
「おまえら、シゴキ決定。」
「「そんなー」」
「ラスター准尉にスタンレー曹長、大尉にはちゃんと婚約者がいるんですからね!」

さすが女の子、情報が早い。ハイペリオン隊には女性パイロットが二人いるが
チェリーの他もう一人のレイン・タイラント曹長は陸軍出身でこの気楽な雰囲気にいまだ
なじめずにいた。


ノルウェー宇宙軍宇宙船ドック 早朝

「マサキ・ゴトウ大尉以下18名、
RGM−79E 4機、RGC−79G 1機、RGC−80 2機、
と共に着任いたしました、乗船許可願います!」
「許可する、私が艦長のフリードリヒ・タキマだ期待している、大尉、」

第二連合艦隊 第十戦隊 、ホワイトベースの遅れにより予定していた十三戦隊は再編
ハイペリオン以下の艦艇は第十戦隊として編成された。それにより第十一〜十四戦隊より
一足先に出港することとなった。

「ペンタで全艦集結、1122 0400発進」

タキマ大佐の言葉は簡単であったが全員に緊張を走らせるに十分だった。

「メインエンジン始動、各部装甲最終チェック、」
「エンジン始動、機関、赤!」
「装甲チェックOK」
「発進位置固定、進路クリアー、カタパルト電源入りました、」
「ハイペリオン発進!」
「ハイペリオン発進します。」
「ついに宇宙ですね、あぁ、やっと帰れるんだ・・・」

待機シートの窓側に座るチェリーが外を見ながら呟いた



ジャブローの宿舎、腕をスズネの枕に貸していたコウはベットの中でインターフォンを取った。

ジャブローに戻って二週間がすぎ、週末の3日を休暇に貰った(奪った)コウは3日目に情報部に勤務する友人サオトメ少尉と会っていた。
ティーラウンジでコーヒーを飲むコウとヨシオ、コウの隣りには
パフェをほおばるスズネもいた。

「コウ、横浜基地の煌校舎は完全に破壊されたみたいだ・・・」

失った母校の現状、懐かしい場所が失われその象徴だったものを気にかける。

「そうか・・・樹はどうなったんだろう?」
「流石に情報がはいらないな・・」

何が書いてあるのか不明な分厚い手帳を見ながらサオトメはコウに答える。

「ヨシオでもだめか・・・」

コウ・ヌシビト中尉は地球連邦軍極東横浜基地士官学校を卒業したあと、TMM専科コースを出て新兵器MSの実働試験を行っていて
RX−78の起動テスト、RX−79でのジブラルタル上陸作戦などに参加、
先日もオデッサにおいて正規量産型RGM−79ジムのデータ収集機で戦闘に参加していた。
サオトメは情報部と言っても戦場での情報管制などを任務とする部署に配属されており、
普通思いつくスパイ活動の様な行為はしておらず、今は志願してMSパイロット課程も終えている。
士官学校の後輩、スズネ・ミサキ准尉は部隊のCPとして指揮戦闘車両のオペレーターをしている。
軍務だけでなく、私的に行動する時にもスズネはコウの側にいる。
本人達は否定しているが、端からみれば恋人の様な二人だった。

「イジュウインが何かやらかしたみたいだぜ、」
「ふぅん?」

士官学校卒業以後会っていない仲間の名前ではあるが、あまり気にとめず、いつもの事とコウは軽く返す。

「573戦隊って知ってるか?」
「あぁ、今度新編される部隊だろ?名前は広報で知ってる」
「司令はイジュウインだ、」
「そうなのか、」

それがどうした?といった表情でコウはコーヒーカップを口にする。

「そうなのかって、俺達もそこの所属になるんだぜ!」
「ホントなのか?」

今回、ジャブローに転属命令で呼ばれたもののまだ辞令が降りていない情報に少し驚きを隠せないでいるコウ。

「あぁ、煌校舎と響校舎の出身者だけで編成される、唯一と言って良い日系だけの部隊だ。MSパイロットは各地から招集中だからだとかで編成式はとっくに終わってるらしいぞ」
「いつのまに・・・・ん?と、言うことは・・・」

コウの言いたい事をさっちしたサオトメは、ニヤリと笑ってコウが気にした事を伝えた 。

「当然、参謀本部のシオリちゃんも所属になる。」
「そうか・・・」

もう半年も会っては居ない、心に住み着く幼なじみを想い笑みをこぼした。
そんなコウを横目で見て少し寂しそうな表情を見せるスズネ。

「うれしそうだな・・・」
「まぁね。」
「ハイハイ・・・」

カップに残る珈琲を飲み干してサオトメはこの後の予定を尋ねた。

「で、コウはこれからどこに行くんだい?」
「例のホワイトベースさ、」
「お、俺もつきあうぜ、スズネちゃんも行くでしょ?」
「ハイ!!当然です、ヨシオ先輩!」

会話内容に参加せず、ストロベリーサンデーを美味しく食べたスズネはこれ以上は無い笑顔で答えた。
今コウに一番近いのは自分だとの意図を見せる様に。




ジャブロー最大の宇宙船ドック、A−1号ドックには素人だけで、戦火をくぐり抜けてきた
ペガサス級強襲揚陸艦ホワイトベースがその体を休めていた・・・

「こりゃあすごいな・・・」
「竣工僅かながら歴戦の艦だからな・・・」

その傷だらけの巨艦を見上げて三人は息を飲む

「コラ!貴様!!そこでなにをやっている!!」

ロープを乗り越えて側に来ていた三人に怒声が響く。

「ウ、ウッディ大尉・・・」

慌てて三人は敬礼をした

「ん?ヌシビト中尉じゃないか、ははぁガンダムを見に来たな?」
「はは・・・そんなとこです。」
「残念だがダメだ、それよりBブロック1号ドックを見てこい、貴様らの乗るヘスペロスが竣工しているぞ。」
「本当でありますか?大尉。」
「あぁ、昨日まで俺が点検の指揮をしていたんだ、嘘を言ってどうする?」
「わかりました、見てきます」

ごまかしも兼ねてサオトメは即答し、コウの背中を押してその場から逃げた。

「お、おい!ヨシオ・・・」

実戦を乗り越えて来たガンダムを見たい、と思っていたコウの足は鈍く、繕ってから追いかけてきたスズネに腕を引きずるようにその場をはなれた。

「おまえ、夕べのジオンの侵入があった様にスクランブルがかかったらガンダムに乗ってしまおうと考えていただろ。」
「まぁね、ま、アレの起動試験をしたのは俺だぜ?どれだけ成長したのか確認もしたかったからな。」
「フフ、先輩らしいです。」
「さあ、我が家となる艦を見にいきますか、ブリッジや整備クルーはもう居るだろ。」
「そうだな・・・・?」

どこからか大きな爆発の音がすると、サイレンが鳴り響く

「何っ?」

とっさにコウは通りすがりのエレカを止めた。

「貴様達、そのエレカを貸してくれ、」
「ハ!中尉殿、今の爆発と何か関係があるのでしょうか?」
「今の爆発はMS工場の方角だ、様子を見に行く!」
「了解であります!あの、自分達も同行してもよろしいでしょうか?」

コウは二人を良く見た、どうやら士官学校の生徒らしい、しかもTMM専科(MSパイロット訓練課程)の部隊章を着けている。

「よし乗れ、貴様ら名前は?」
「リン・ツチミ士官候補生であります。」
「カリスト・マノメノン士官候補生であります。」

コウ達はエレカを発進させ工廠の方に向かった

「何処の訓練兵だ?」
「バーベナ士官学校です。」
「キャリホルニア士官学校です。」
「そうか・・・」

キャリホルニアはジオンに占領されジオン地球攻撃軍の拠点となり。
バーベナはジオンが侵攻した際に壊滅している、つまり二人も母校を失っているのだ、

「俺とコイツの母校もジオンに潰されている、君達の気持ちは解るよ。」
「口が軽いなぁヨシオは・・・」

今このジャブローに居ると言う事はジオンの攻撃に撤退して来たからこその事だ
その戦場の悲惨さは三人とも解っていた

「おっと、俺の名を言ってなかったな。コウ・ヌシビト中尉だ。」
「スズネ・ミサキ准尉よ」
「ヨシオ・サオトメ少尉だ、女の子の情報ならまかしと・・・」

ガスッ!

「うぐぅ・・・」
「二人とも、気にするな。」
「あの、中尉殿はあのコウ・ヌシビト中尉なのですか?」
「お、おいやめろよカリスト・・・」
「このジャブローではコウ・ヌシビトというのは先輩だけです。」

誇らしげに横からスズネが答えた。

「ちゅ中尉は我々TMM専科のあこがれです、・・・」
「さて、おしゃべりはここまでだ、着いたぞ」

MS工場は休息していた作業員があわただしく駆け回り、コウはそのうちの一人を捕まえた。

「どうなっている?!!」
「ジオンに爆弾を仕掛けられましたがホワイトベースのレイ少尉に除去していただき、今は点検をしています。」
「解った、行っていいぞ。ヨシオ、ヘスペロスと連絡できるか?」

整備員を作業に戻らせるとMSに向かおうとしていたヨシオを呼び止めた。

「繰艦メンバーはもう乗船しているハズだ、おい!ここの通信機借りるぞ!」
「空襲の警報まで鳴りやがる、くそぅ情報が欲しい・・・」

ヨシオは慣れた手つきで艦への直通回線をひらいた。

「出たぞ、コウ」
「OK」

爆撃の影響かノイズの走るモニターに通信士の少女が写った。

「はい、こちらヘスペロス・・・コ、コウくん?」
「サキちゃんか、ひさしぶり・・・じゃなくって、ニジノ少尉、ジャブローに潜入した工作員と空襲の情報を回してくれ。」
「・・・了解です、ヌシビト大尉。」

コウとサキは士官学校の頃に使っていた”またあとで”の合図をかわすと軍人の顔になった。

「工作員はドックで交戦中、空襲はガウ18機他航空機多数の爆撃中、MS約30が降下しました。」
「お・・おい、コウ?どうする?」

戦闘が始めてのヨシオが不安気味にコウに聞く。

「そこのメカニック!!ジムは出撃できるな?」
「ただいま起動中です。」

コウと整備員が問答してる間に他のパイロット達がエレカで駆けつけて来た
エレカから飛び降りたケイ・シジョウ中尉がコウに声をかける。

「さすがに速いな、コウ。」
「行けるな?」
「当たり前だろ?」
「とても大怪我で後方送りになったヤツの言葉じゃ無いな。」
「言ってろっ、」

二人は拳をたたき合い、シジョウはリフトに乗り作業員に装備の話を始めていた

「・・・・広いジャブローなのに知ってるのが集まるとは・・・・」
「みんなホワイトベースを見に来ていたんじゃないかな?」

スズネは手早く端末から情報をディスクに写して片方をコウに渡した。
コウ達は各々そばのMSに走った、

「中尉!自分達も出撃します!!」

ツチミとマノメノンの志願に、コウは二人の目を見て

「そうだな、よし!!連いて来い!!」
「ハイ!!」

慌ただしく準備するコウを、スズネは不安げに見つめながら自分もホバートラックに乗る準備を進めている。

「心配するな、大丈夫だよ、スズネちゃん!・・・そうだな、天使の祝福でも貰おうかな?」
「えっ?」

言うがやな、コウはスズネの唇を奪うとそのままMSのタラップを駆け上っていった。

「もう!!センパイったら!!」

真っ赤になり叫ぶスズネだが、表情は嬉しそうだった

「コウ、シオリちゃんに言いつけるぞ?」
「そう言うことを言うか〜?ヨシオ、・・・後ろからの攻撃に注意しろよ・・・」
「ジョ〜ダンだってば、(笑)」

コウは慣れた手つきでジムをチェックして動かした。

「これがB型量産タイプか・・・陸ジムより非力だな、オデッサでのトラブルが直っていれば良いが・・・出力から言ってビームライフルはどうにか使えるな。」

スズネから貰ったディスクをインストールすると機体パラメータが次々と陸戦に適化していった

「流石、でもどこからデータを引っ張り出したのやら・・・・」

コウはジムの手にガンダムと同タイプのビームライフルと100ミリマシンガンを持たせ、機体を動かした。
シジョウはマシンガンを両手に装備、ヨシオとリン、カリストはビームライフルを装備していた。
スズネは指揮車両に乗り込みインカムを取った。
遅れて参上したセリザワ少尉は指揮車両のコックピットに座る。

「行くぞ!!この部隊は俺が預かるっ!!コールは各自のファーストネーム、573臨時中隊出撃!」
「「「了解!!!!」」」
「ヘスペロス!本部は混乱しているので情報を頼む!こちらのCPは59号移動指揮車」
「了解です、大尉、」

サキはコウを先ほども「大尉」と呼んだ。

「俺はまだ中尉だぜ?」
「まだ辞令を受け取ってないのですね?わかりました、中尉」
「敵の目標は、解るか?」
「Aブロックの第一宇宙ドックと思われます。」
「ホワイトベースか・・・」
「敵さんの評価はかなり高そうだな、コウ。」

モニターにスズネが写る

「本部より指令、573臨時中隊承認、Aブロックに侵入した敵を迎撃後追撃せよです。」
「了解、Aブロックへ行くぞ」

Aブロックに向かう途中、コウは一人で行動しようとする一機のRGM−79X−eG ジム・エッグに声をかけた

「貴様の官姓名は?」
「ユウイチ・アイザワ少尉です。」
「なんだ貴様か・・・俺達に付いて来い、ジムは単独戦に向かない。」
「了解です、しかしなんだは酷いじゃないですか、先輩。」
「そうか?」
「そうですよ。」
「ようし、ユウイチとリンは俺とA小隊、ケイ、ヨシオ、カリストでB小隊だ」
「了解!」

TMM専科での二年後輩のユーイチ・アイザワ少尉はコウに散々シゴかれたパイロットの一人であり
オデッサでのRGM−79Aの実働試験部隊のメンバーでもあった。

「いいか?リンとカリストは出来るだけ援護に専念しろ、接近戦は避けろ。」
「了解」

6機のジムと一台の指揮車両は展開しながらAブロックへ急いだ。

「CPより573リーダー!二時、地下水路方面に敵、音紋で3機確認です!!」

開けた場所に出るとホバートラックのスズネから通信が入った。
スズネの声にコウが確認すると
そこには脱出しようとしている3機のジオンMSが1機の白いMSに追われていた

「赤いMS?」
「中尉、行きます!!」
「ま、待てカリスト!!」

カリストはビームを連射して展開したが不運にも赤いMSの進行方向となってしまい、ズゴックに素早い動きでコックピットを貫かれた。

「は、速い・・・うわぁ!!!!!!!!!」
「カリスト!!!」
「リン!出るな!!」

コウはシールドでリンの動きを封じる

「しかし・・・」
「貴様は離れた位置で狙撃しろ!」
「・・・了解・・・」

コウはビームでアッガイを撃破するが、赤いMSはガンダムに追われ姿を消していた。

「ガンダムか・・・そしておそらくあれが赤い彗星・・・」
「赤い彗星・・・」
「潜水艦隊に所属したって噂は本当だったよ〜だな。」
「CPより573リーダー、配置変更、リフト使用で地上のMSを迎撃して下さい。」
「カリストは後続にまかせるぞ、573リーダーから全機、俺達は地上の敵を迎撃する。」
「了解」

物資搬入用のリフトを使いコウ達5機とホバートラックは地上に出る。

「一番近い敵は?」
「5時の方向、熱源探知不可、音紋でザクとグフらしき音を確認です。」
「全員兵器使用自由、各個撃破しろ!!」

コウが振り向きざまにビームを放つと同時にユーイチもビームを放つ、
そのビームはそこに姿を出したザクとグフに直撃し、光球と変える

「鈍ってはいないみたいだな、ユーイチ。」
「とーぜんですよ先輩、って、一週間で鈍ってたまりますかっ、」
「「そこっ!!」」

二人の放ったビームが一機のズゴックを貫いた。

「はぇ〜、俺達の出番はなさそうだな、ツチミ。」
「そうですね。」
「喋ってないで貴様らも撃て!」

あっけに取られていた二人にマシンガンでザクを粉砕したシジョウが叫ぶ。

コウ達以外は初めてMSでの戦闘故に苦戦を強いられた連邦軍のMS部隊だがコウ達は獅子奮迅の働きでMSを10機は撃墜した
戦闘終結の信号にリンはドムに突き刺したビームサーベルのビームを切った

「よくやったな、リン。」
「ありがとうございます。しかし・・・」

初撃墜の興奮も醒め、友人であるカリストの死にリンは表情を落とした。

「運がなかった、としか言えないな、」
「・・・」

そんあリンの肩を力強く叩くと

「カリストの為にも生き残れ、」

戦時中によくある無責任な勝ての言葉でなく、未来を繋げと意味を込めてコウはリンに生き残れと伝えた。

「ハイ・・・」
「生きていたら酒でも飲もうぜ、」
「はい、サオトメ少尉」
「エースになれたらお茶にでもさそってね、」
「はい。」

戦闘終了後、戻ってゆくリン・ツチミを見送るとコウとその仲間達
リンにとって理想とも出来るパイロット達との出会いは、この戦争を終わらせたいという決意の力にもなった

「リン様!無事だったのですね?」

生き残ったリンを士官学校の仲間達が出迎えてくれた

「ネリネも、みんなも無事で良かった・・・」
「私達は避難組だったんだよ〜リン君、
「リンちゃん、MSで戦ったんだって?その話聞かせてよ〜」





「コウ・ヌシビト中尉以下、第一MS起動実験小隊出頭致しました。」

ジャブローの地球連邦軍統括本部、予告されていた出頭命令にコウ達はオフィスのドアを開いた。

「ご苦労、私は統括本部人事のジャック・ホーソン大佐だ、楽にしたまえ。」
「全員休めっ、」

ずらっと並ぶ面々、こういう場での規律はしっかりしてるメンバーに大佐は苦笑してソファーを薦めた。

「まぁ、とりあえず座ってくれ。」

促され座るコウ達、スズネはちゃっかりコウの隣に座っていた。

「まず、クロッカ・オリハラ少尉は連邦陸軍に所属する事になるので辞令はこの後別棟の方で受け取る事になる。」
「了解しました。」

大佐は次に持っていた書類の一つをユーイチ・アイザワ少尉に渡した。

「何ですか?是は・・・」
「まぁ・・・見て見れば解る・・・・」

そこにはユウイチが士官学校で仲が良かったメンバーの状況が書いてあった、
例をたとえれば、マイ・カワスミ少尉が命令無視で降格、軍曹に、ナユキ・ミナセ少尉が上官反攻、服務規程違反などでやはり降格、伍長に、
シオリ・ミサカ少尉が偽証罪で降格、上等兵に、など良い内容では無かったが・・・・

「何故にこれを私に?」」

ユーイチの疑問ももっともだっただろう
大佐は肩をすくめて一言言った。

「宇宙軍のミナセ准将からだ。」

ユーイチはその一言で納得してしまった、納得せざる得なかった。

「さてコウ・ヌシビト中尉は大尉に昇進、スズネ・ミサキ准尉は少尉に昇進してそれぞれ新編された第五七三遊撃戦隊のMS大隊隊長とCPとして着任して貰う。」
「了解しました」
「了解です」
「表のデスクから書類を受け取ってくれ、量は多いぞ。」
「はい。」

コウの横で、ヨシオに聞いていたとはいえ、実際に一緒の部隊への転属命令にスズネは安堵していた。

「さて、ユーイチ・アイザワ少尉。」
「はい。」
「少尉も宇宙軍に所属となり、第二一宙雷戦隊所属のMS小隊に配属となる。」
「了解致しました。」
「以上だ、各自辞令と書類の受け取りを忘れずに。」
「敬礼!」





ホワイトベースが出港した当日。

「コウ・ヌシビト大尉以下MSパイロット10名、強襲揚陸艦ヘスペロスに配属になりました。乗船許可を。」
「許可します。・・・お久しぶりですね、コウ・ヌシビト大尉」

返礼を返し司令兼艦長のレイ・イジュウイン少佐は微笑んだ。

「おいおい、しおらしいなイジュウイン。」
「あいかわらずだな!・・・フフフ、この口調の方が良かったかしら?」

士官学校を男装で通っていたレイはその当時に無理に使用していた言葉遣いを少ししてみる
コウも懐かしさに笑いが出てくるのだった。
が、今は女性用の士官服である。
デザインこそ通常の女史士官服だが純白である、
相変わらずとコウは苦笑した。

「いや、その格好だと最初の方がいいぞ、イジュウイン。」
「戦闘中でなければ、学校の時と同じでいいですからね、」
「じゃあ、イジュウイン、俺達のねぐらはどこだい?」
「サオトメくんも変わらないわね。」

荷物を持ってエレベータに埜炉込むヨシオを見て、レイは懐かしげに微笑んだ。

「出港は明日だ、モビルスーツの搬入とチェックを急がせろ!」

搬入後固定されるMSをチェックしているとコウは後ろに視線を感じた

「コウ・・・」
「シオリか・・・」
「又、一緒になれたね。」
「そうだな、士官学校以来だからもう二年か・・・」
「なんか、言葉が出ないね・・・いっぱいいっぱい話したい事があったのに・・・」
「俺もそうだよ、シオリ・・・」

最後のジムが搬入された頃にレイの放送が準備中の各艦に流れた。

「573遊撃艦隊司令、レイ・イジュウイン少佐である
我が部隊は来るジオンへの反攻作戦の先駆けとして明朝0500抜錨、宇宙へ上がるものである、
残念な事に僚艦であるレジェンドスロープが先日のジオンの攻撃によって大破し、我々は3艦で任務に当たる事となった。
同行出来ない戦友に誇れる様、一層の努力を期待する。」



翌日
「スペースゲートへ移動」
「リニアカタパルト、システムチェック」
「進路クリアー」
「ヘスペロス、主機関1番、2番、3番始動、各部装甲最終チェック、」
「主機関始動します。機関、赤!」
「装甲チェックOK」
「主機関始動確認、機関赤まで60秒。」
「係留フック、ロックオープン」
「ミノフスキークラフト起動、出力安定。」
「全乗員着座固定。」
「ミノフスキークラフト出力全開!」
「ヘスペリス浮上します」
「カタパルトスタンバイ!」
「カタパルト電源入りました、」
「発進位置固定、進路クリアー、」
「カタパルトスタートまで10、9、8、・・・」
「主動力解放、噴射係数安定、ヘスペロス出港します。」
「4,3,2,1・・・」
「ヘスペロス、発進!!」

ホワイトベースを追うように573戦隊強襲揚陸艦ヘスペロスは、ジャブローを後にした、その20分後には同僚の
防空巡洋艦レジェンドベルとレジェンドウッドもブースターで宇宙へ出撃した。

コウが宇宙に出てすぐに行ったのは鬼のような空間戦闘の特訓だった。

「ヨシオ〜〜!!この後腕立て300!!」
「うげっ・・・」





ミデアタイプの大型輸送機の窓から少尉の階級をつけている士官は霧の空を眺めていた
オデッサ作戦で、TMM専科〜

(タクティカル・モビル・マニュピレータ、MS登場以前の次期宇宙用機動兵器開発とそのパイロット育成の
スペシャルエリートコース、のちにモビルスーツ教導団と改名MSパイロット養成機関となる。)

〜の戦友と共に新兵器モビルスーツの実働試験と実戦を終えて、隊長のヌシビト中尉と共にジャブローに戻り
アフリカ戦線でのMS小隊の隊長の辞令を貰い、部下と合流するために、彼らの乗るMSとともに機上の人になっていた。
・・・・・が。

「失敗だ・・・・」

その少尉は辞令を受け取った時に

「会ってテストしますから大丈夫ですよ。MSは新兵器ですから過去の戦闘記録はあまり役にたちませんので。」
「そうか、解った。戦果を期待している、クロッカ・オリハラ少尉。」

失敗だった、カッコつけないで素直にメンバーのファイルを貰っておけば良かった・・・
暇でしょうがない・・・・と暇をもてあましていた。
地中海のバレアレス基地において小隊のメンバーと合流しアフリカ戦線に向かう。
アフリカで最初に配備されるMS隊だからなのか、機内で俺はVIPみたいな扱いを受け何もする事が無かった。

「あはは〜っ少尉さん、もうすぐ到着ですよ〜」
「あと3世紀寝かせてくれ〜」
「はぇ〜、300年も生きてられませんよ〜」

テーブルの向こうから聞こえるのは他の部隊に配属になる予定のウェーブのパイロットだ、
クロッカがTMM専科出身と聞いて色々と話を聞いてきていたのだ。
彼女の笑顔を見ると故郷で士官学校に入る為に街をでる俺を見送ってくれた少女達の顔を思い出す・・・
ジオンの爆撃でその街はもう無いと話に聞いた・・・

「どうしました?〜」
「あぁ、今行く。」

クロッカはウェーブにうながされラウンジから自分のシートへと向かった




到着の報告をする為に担当事務官の所に行こうと廊下の角を曲がった・・・
何かが俺の背中にしがみつき・・・

ごいん!!!!

クロッカは唐突に目の前が真っ暗になり、ものすごい衝撃を顔に受けた。

「ううっ、いたいよ〜眼がちかちかする・・・」

?????なんか懐かしい衝撃と声・・・・
そこには眼に涙を浮かべて額に手を当てている漆黒の髪の女性がいた

「ひどいよ〜・・・・?????」
「あ・・・えっとごめ・・・ひょっとして・・・エルザ先輩?」
「あ〜!クロッカ君!!」

・・・何か懐かしい・・・・
と、いうことは・・・

 ぶん!!

背中に乗っているものが体を振ったが離れない

 ぶん!!!

さらに強く振っても離れない
おそらくこの後ろにしがみついているのは・・・・

「やっぱり・・・ミオ、・・・」
「・・・・・」

しゃべれないミオは俺にしがみついているから返事が出来ない・・・
戦場に散らばり、もう会えないと思っていた軍学校での友人が目の前にいる。
うれしさにクロッカの目から涙がこぼれたが気にしなかった

『めがまわったの』

指で背中にそう書きつつ、ミオはぽてっ、と背中から転げた




「そうか・・・あのあとみんなパイロット志願したのか・・・」

食堂で軽く食事を取りながら3人は談笑している

「うん、でもみんなバラバラだから、輸送部隊でミオちゃんと一緒だったのが奇跡だよ〜、」
「って、しゃべれないのによく審査に通ったものだ・・・」
「本当なら書類審査で落ちてるはずだと思うよ、でも・・・」
『面接がミナセ准将さんだったの。』
「なるほど、一秒で了承されたのか。」
『どうしてわかったの?』
「俺もそうだったからな。」
「でもミオちゃんはパイロットでは無く、ホバートラックの運転と整備担当だよ。」
「まぁ、それは無理も無いなぁ・・・」

ミナセ准将は連邦軍の中でもイジュウイン、クラタ、デューダーなどの財閥系とパイプを持つ謎な人だ、
人物を見る直感は外れた事が無いそうな・・・
ミオは入隊後の訓練課程中に起こったジオンのシンパによるテロで民間人を誘導中、至近弾と、その被害を目の前で見てから声を失った。
車両の運転技術の点数など優秀な方の成績であったが為特別に後方輸送隊勤務で任官できたのだ。
一期下で、すぐ背中に飛び乗ってくる可愛い妹分だったのだ。
クロッカは到着の挨拶を済ますと明日にの部隊結成式までの時間が貰えたので二人と食堂で昼食をとっていて、
士官学校の面接時、専科の希望を聴かれ、答えたクロッカに一秒で返事をした不思議な女性士官を思い出していた。

「謎な人だったな・・・」
「そうなんだ。」

すでにエルザの横にはカツカレーの皿が5枚重なってる

「・・・しかし・・・相変わらずだね・・・でもそれでこそエルザ先輩だ。」
『補給がいつも足りなくなるの。』
「・・・なんか酷い事言われた気がするよ・・・」
「気のせいだ。」
「う〜」
「そういえば二人は今はこの基地の所属なのか?」
「違うよっ、今度新編される部隊に配属されたんだよ〜、ミオちゃんも一緒に。」
『そうなの』
「へぇ、なんて部隊だい?」
「え〜とね、第1機甲師団機械化機動中隊第2小隊だよ。」
「えっ?」

それって俺の小隊じゃないか・・・

「クロッカ君は?」
「俺は・・・まだ聴いて無い・・・」
「そうなんだ〜」

内緒にしていたほうが面白そうだ、その時クロッカはそう思ったのだったが・・・

「コーヘイ・オリハラ少尉入ります」

呼ばれて入った部屋には俺の叔母、ユキコ・マーヴェル中佐がいた。

「ユ、ユキコさん、何故ここに・・・」
「クロッカ、公私をわきまえなさい、ま、ここには二人だけですからいいですが。」
「すいません、中佐、で、貴官に何の用でありましょうか?」
「普通でいいと言ったでしょ・・・まったく・・・」
「久しぶりです、叔母さん。」
「・・・」
「・・・」

マーヴェルは「おばさん」と呼ばれる事を嫌う、一触即発な空気が流れた。

「今度新編される機械化機動中隊隊長に私が任命されました。ただいまよりクロッカは私の部下、となりますからね。」
「ユキコさんが上司なら賛成こそすれ文句などないですよ。」
「ありがとう、結成式前ですがあなたの部下を呼んでありますから、紹介しましょう。」
「二人は知ってますけどね。」
「あら、ファイルを受け取らなかったと聴いていたのですが。」
「先ほど会いましたよ。」
「では、クロッカが隊長というのは・・・」
「言ってません、驚かしたいから。」
「驚くのはどっちかしらね。」

クスリと含み笑いをするユキコ。

「へ?」
「あ、来たみたいね。」

ノックの音と声が聞こえる

「エルザ・ロウアース曹長以下、入ります。」

そこに入ってきた面々は十二分に俺を驚かせた。
知ってるもなにもそこには軍学校以来の少女達、いや今は立派な女性と言うべきか、
とにかく彼女達がいた。

「クロッカ!!!!」
「見事なカウンターだ・・・」

クロッカは嬉しそうな声でつぶやいた

「副隊長を拝命したスノゥ・ミャマ曹長です。」
「エルザ・ロウアース曹長、ソナー手担当だよ〜」
「・・・アカネ・グロワール軍曹・・・MSパイロットです。」
「ミズカ・ミルキーウェイ軍曹だよ、CP担当だよ、」
「ルミナ・ゼイヴィン軍曹、MSパイロットよ。」
「リタ・ファーメイ軍曹、MSパイロットだからよろしく〜」
『ミオ・ルゥフォン上等兵なの。』

ユキコさんが号令をかけると彼女達は一人一人きちんと敬礼してゆく

「俺が第二小隊隊長になったクロッカ・オリハラ少尉だ、しっかり着いてこいよ。」

クロッカはぴしっと陸軍式敬礼で俺は彼女達に返礼した

「と、形式的にはこんなもんでいいでしょ?ユキコさん。」
「そうね、明日結成式が済んだら装備確認と輸送艦への搬入、早速明後日の朝0500出発だから、休んでおいてね。以上解散!」
「了解」

5時か・・・起きれるかね?

結局起こしに来た全員が誰が起こすかを目の前で大騒ぎしたものだからどうにか目覚めて遅刻は免れたクロッカだった。




「クルップラーだ、第5地区に敵影無し。」
「了解、そのまま偵察を続行せよ・・・」

アラメインに進軍したクロッカ達はそのまま部隊を展開し、砂漠のオアシスにキャンプを張り、
随行してきたヘリ部隊の偵察による情報を待つ。

「こちらマンゴスチン、第4地区に野営の跡を発見、前回確認されていないから近場にジオンが潜んでいるぞ。」
「了解、」
「師団長、どうします?」
「第2小隊を向かわせろ。」

師団本部でそういった事が起こっている事も知らずに、俺達はメンバー全員でモビルスーツの整備をしていた。

「こんな、地道な掃除なんて・・・乙女のなせる技よね〜」
「ふぅ・・・油まみれだよ、終わったらシャワー浴びるんだもん・・・」
「だ〜〜〜〜〜試作機なんて嫌いだ〜〜〜〜」
「・・・・・クロッカ、手を進めて下さい。」

いくら、防塵仕様にしてあっても、MSの関節部には砂が入り込む、
特にコーヘイの機体は実験機という事もあって、機構が複雑故、その作業は難航していた。
砂の除去作業に一息ついた所に出撃の指令がクロッカ達に送られて来た。

「みんな出撃だ、」

こうしてクロッカ達は激戦のまっただ中に突入する事になった。





ジオン公国ズムシティ

「ツキムラぁ〜」

卒業式を終えたケイ・ツキムラが校舎を眺めていると、親友のエリチャフツ・ミヤウチが声をかけてきた

「なに?」
「何?って・・・みんな待ってるぞ、俺らTOP10はグラナダに決まってるけど他の連中はバラバラだからな、」
「そうだね・・・・あ〜〜〜・・・」
「どうした?」
「エミリにプロム誘われていたんだ・・・」
「・・・相手はオマエだったのか・・・」





13独立戦隊の様に陽動を主任務とする部隊は10にも及び、
東亜地区にあった士官学校の同期生を中心とする573機動戦隊もその一つであり、現在サイド2方面にオンステージ中であった。
編成は強襲揚陸艦ヘスペロス、防空巡洋艦レジェンドウッド、レジェンドベルの3艦、
一年戦争の最中、連邦寄りだったサイド2は政庁コロニーの破壊、G2ガスや核の攻撃で全滅と言われてはいたが、
実際は通信手段を遮断されただけで、生き残ってるコロニーも存在していたのだ、
ジオン統治下に置かれたコロニーはその工場ブロックなどでモビルスーツの生産を行っており、その目的の為の労働力確保が理由だ。
サイド2残存コロニーでは開戦直後からMS−06Fの生産ラインを構築し、リック・ドムへの生産ライン換装を計画していた。
ルナUに帰還したウロボロス隊の情報によりジオンのMS工場の存在をキャッチした連邦軍は、
オンステージ中の573戦隊へ偵察とソロモンへの強行偵察任務を終えた、第10戦隊に攻略を命じた。

しかしジオンにすでに捕捉されていた573戦隊は先制攻撃をされることになった。

「第一種戦闘体勢発令!」

カタパルトデッキよりモニターにMS隊隊長の声が聞こえた。

「レイ、ジオンか?」
「そのようだな、新型だらけだ10機すべてアンノウンの表示だな。」
「10戦隊はあとどのくらいで合流する?」

ヘスペロスの艦長、レイ・イジュウイン少佐はオペレーターのミオ・キサラギ少尉に聞いた

「あと約一時間です」

ミオの声にシオリが苦渋に満ちた声を発する

「間に合わないわね」
「573戦隊のモビルスーツだけで行くぞ、、ヌシビト大尉!!」

レイはモニターのコウに向かって指示を出した。

「了解、」

すでにコウ・ヌシビト大尉とカツマ・セリザワ少尉、ジュン・エビスダニ少尉など、
TMM専科出身のメンバーはジムのコックピットで暖気運転を開始していた。

「アサヒナ少尉、コシキ少尉、準備はいいか?」
「もち、オーケー」
「だいじょうぶでございます。」
「ようし出るぞ!!2機連携を忘れるな!!」

コウ達第一陣はモビルスーツをカタパルトに運んだ。

「シジョウ大尉達は第二陣として待機。」
「了解」
「直援はベルから出ろ!」

右舷デッキカタパルトにせり上がって来たジムが発進の姿勢をとった。

「みんな!根性でがんばって!!」
「わかってるよ、サキちゃん!」

コウは通信オペレーターのサキ・ニジノ少尉に向かってウインクと輝く白い歯をみせた
・・・一瞬にして真っ赤になるサキ・・・

(もう・・・コウくんったら、照れちゃうじゃない・・・)

カウントダウンと共に射出されて行くMS。

6機のジムのノズル光を見ながら傍らにいるシオリ・フジサキ大尉にレイは聞いた

「どう見る?フジサキ大尉、」
「・・・・(もう、コウったら・・・)」
「ん?!」
「や、やはりジオンは占拠した工業コロニーでMSを生産していた様ですね・・・。」

コウへのヤキモチで一瞬軍務を忘れていたシオリは焦ってうろたえた。

「提督の読みは当たったということか・・・」
「サキ、直援を急ぎ展開させるんだ。」

「艦長、わかりました。レジェンドベルレジェンドウッド直援MS隊展開を急いでください」

直援をメインとしてMSが配備されているヘスペリス級レジェンドベルやレジェンドウッドはMSを発進させているが、
慣れていないパイロット達の展開は遅い。

加速をしながらコウはつぶやいた。

「ドムタイプ3、ザクタイプ3、あれは完全新型か・・・3機、支援機1・・・ちょっと荷が重いか・・・」

すべてがデータの無い新型、しかもビーム兵器を装備していた。

「どうだ状況は?・・・やはり数がちがうからな・・・」

レイは隣りのシオリに聞いた。

「新型相手に6機でよくもってますね・・・」

(コウくんすごい、もう3機落としてる。)

「サオトメ中尉にも発進させるんだ、メンバーはカタギリ少尉、キヨカワ少尉、サワタリ少尉」
「了解、第三小隊、発進です!」
「あいよ!」

もともとコウは士官学校卒業直前に新たに開設されるTMM(タクティカルモビルマニュピレーター)講座に参加
するために卒業を半年遅らせたのだ、主席卒業という肩書きをシオリに譲ってまで。
それだけに操縦技術は並外れたものがある、

「さすがにジオンの新型、ザクとは全然違う、」

そうコウが呟いたとき、スピーカーに悲鳴が聞こえた。

「キャア!!」
「ユウコ!!」

ガルバルディと白兵戦を行っていたユウコの機体は右腕を失っていた。
その死角を狙ってガルバルディのビームサーベルがコックピットに肉薄する
やられる、そうユウコが思った時一機のジムが眼前に躍り出てユウコのジムを突き飛ばす。

「させない!!」

そのジムはガルバルディのビームサーベルをシールドで受けると至近距離からビームスプレーガンを発射した。
爆発、
そして至近距離の爆発と、ビームサーベルに触れてしまったビームスプレーガンの誘爆によりボロボロになったジムがそこにいた。
ビームスプレーガンの爆発はM粒子をメガ粒子に押さえていたE−CAP崩壊もあってその電磁波がヨシオのジムをフリーズさせていた。

「アサヒナ、だいじょうぶか?・・・あっちゃあ動かないぜこのジムは」
「ヨッシー・・・」

コウとタテバヤシ少尉が二人の前にカバーする

「ヨシオ、動けるか?」
「ダメだこりゃ、スマン増援にならなくて。」

左腕をシールドごと失い、右腕からはスパークを発しているジムはショートし、操作を受け入れずに動く気配が無い

「十分だよ、ユウコ、二人で艦に戻れるね?」
「うん・・・」
「じゃあコイツを引きずっていってくれるかい?」
「ん、わかった。」
「ユカリはノゾミとペアを組め。」」
「はい、わかりましたぁ〜」

シオリやサキ達が戦況を見守る中ミオの声がきこえた

「サオトメ機、アサヒナ機、損傷により帰還します。戦力後退、あ!!!一機こちらに向かってきます!」

レイよりもシオリが早くに反応した

「直援部隊!迎撃して!!」

レジェンドベル所属のボールの砲口が火を放つ、ボール8機に紛れて一機のガンタンクがいた。
ジャブローに残されていた試作機の一つだが後方支援用として部隊に配備されていたのだ。

「ヒカリ、落ち着いて狙うんだよ。」

ガンタンクの胴体部のコアブロックから操縦担当のコウジが頭部のヒカリに声をかける

「うん、コウジ、了解、了解!!」

接近するガルバルディの攻撃にボール部隊は一機を残して大破してしまう、

「あぁっ!ユカ!アイ!!」
「落ち着け!ヒカリ!!」

コウジの声に励まされたヒカリと、2機のガンキャノンから攻撃にガルバルディは四散した。

「当たった?」
「やったネ!ヒカリ、」

しかし第二派も予想出来る現状では対空に対する防衛力は低い、敵が高性能な新型ならなおさらであった。
モニターに大破した機体から脱出出来たパイロットが近づいて来るのが見えた。

「勝手に殺さないでよねっ、ヒカリ。」
「そうよ〜ヒカリと同じで私達もしぶといのよ♪」

コウジはそのボールの側に寄ってパイロットをガンタンクに取り付かせる。

「ユカとアイはガンタンクに捕まって、数が足りないな・・・一度戻るか、カスミさん!僕はジムに乗り換える」

ベルに通信したコウジは案を伝えた。

「いいわよ、MSデッキ用意してちょうだい。」

待機していたコトコも交えてコウジはヒカリのジムとコトコのガンキャノンとで再度編隊を組んだ、生き残ったボールパイロットのユカとアイもガンタンクに乗り換えて再び発進する。




ヘスペロスの中央にある作業デッキでは・・・

「サオトメ中尉、又アナタの機体はボロボロね、もっと大事に乗れない?」
「うぐぅ・・・」
「アナタ自信を改造しないとダメかしら。」
「・・・・・・・・」
「あの・・・中尉・・・」
「なにかしら?アサヒナ少尉」
「・・・・」

メカニックのチーフ、ユイナ・ヒモオ中尉は一瞬だけ優しい目をするといつもの様なニラミをきかせて

「サオトメ中尉、敵新型機撃墜と彼女を救出したことに免じて今回は多目に見てあげるわ」
「すまない」
「ジムの右腕は組あがっている?その、中破したジムはC整備するから後回しよ!!」
「中尉!右肩部品が融解してるので、交換出来ませんっ!!」
「解ったわ、そのジムからC整備入って!!」
「了解!」

ユイナは二人から離れて、忙しく動き回っているメカマン達の方へ体を動かした

「ヨッシー、待機BOXへ行こ、」
「あぁ」

二人はリフトをつかんでその場から流れた

ジュンとカズマが牽制をかけ、ユカリのビームサーベルが最後の一機、ペズンドワッジを沈めた。




「MS隊、全滅」
「練度の差だな、連邦にも腕の良いパイロットがいるようだ・・・全スタッフと新型MSはトラキアに乗せ終わってるな?、この基地を放棄する」
「了解」




「艦長、ザンジバル級とパプア級と思われる熱源確認、2バンチのあった区域です、」

オペレーターのメグミ・ミキハラ少尉の声がブリッジを流れ続けてミオが、

「2バンチはガスにより住民が全滅、人は存在していないはずです。」
「実験場にはもってこいね、サイド7と同じで。」

シオリが続く

「よし、ベルは外で警戒、ウッドは反対側のベイブロックから、ヘスペロスはザンジバルの使ったベイブロックへ!MSは先行して偵察、潜入の人選はフジサキ大尉にまかせる。」
「了解。」

「こちらA00コウ、以下4機は補給に帰還したいが、」
「OK、第四小隊発進、シジョウ中尉、MS隊の指揮をヌシビト大尉と交代。」
「こちらシジョウ、了解、D00ジム発進します。」

左舷のデッキからケイ・シジョウ中尉とミラ・カガミ少尉、マサオ・オオコウチ准尉、が発進すると
待機していたユカリ、ジュン、カツマ、コウは右舷のデッキに着艦した。

「全機の被弾状況チェック、プロペラントは9割、弾薬はFULLで、E−CAP充電開始、
大尉の機体は・・・何?!これビームによる小さい穴だらけじゃない、装甲一式用意しておいて!」
「そんなにひどいか?」
「出撃には問題ないけど、装甲の耐久値は半分ね、もうジオンにもビーム兵器が存在するのは大変ね」
「受け止めるでなきゃ避ける方向で改修プランを頼む。戦術としても使えるなこれは・・・・」
「了解。」

突然アラートブザーが鳴る

「何だ?中尉、整備を頼む!!」
「それが私の仕事よ、」

待機BOXへ駆け込むコウ

「なにがあった?」
「トラップだ、ウッドの艦首がもぎ取られた。」
「ジュン、確かだな?」
「ああ、ハッチに爆薬が仕掛けてあったようだな。」
「補給は?」
「あと3分ってトコだな、」

「ウッド、聞こえますか?被害状況を教えて下さい。」

マイクに叫ぶサキに応信がはいった。

「こちらレジェンドウッドアカギだ、MSデッキ損壊、現状での修理不能。人員の被害が大きい、MSは2機小破残存のみ。」

ブロックビルドだった事が幸いして沈没するほどの被害にはどうにかならなかった。

「近くにいるベルの偵察隊にウッドに向かわせろ。」

レジェンド・ベルより発進して偵察していたコウジは、ウッドに一番近い位置にいた。

「ジュン、タクミ、ウッドに合流するぞ」
「わかった。」
「了解」





トラップにより中破したレジェンドウッドはベイブロック内に停止、
残されていた港内ドックにおいて応急修理を行うことになった。

「通路閉鎖完了、応急気密作業に入ります。」
「わかった、配線方面の処理はどうなってる?・・・・」

そこに一機のRGM−79Eと2機のRX−77Dがブリッジに接近した

「レジェンドベルのヌシビト少尉です偵察任務を代行します。」
「すまない、少尉、できればこちらの2機を預かって欲しいのだが。」
「了解です。MSで手伝える作業はありますか?」
「それはこちらの人員でなんとかなる、大丈夫だ。」

そこに応急処置していた艦首から左手を失ったジムと肩の装甲を失ったジムが接近してきた

「ナオミ・ムナカタ少尉です、よろしくお願いします。」
「パトリシア・マクグラス少尉デ〜ス、頼リニシテマ〜ス。」
「そんな・・・」
「照れない照れない、」
「タクミ、五月蠅い」
「少尉、残ったのは二人だけですか?・・・」
「機体を失ったけどもう一人います、」



反対側のベイブロックでは脱出を急ぐジオンの部隊が発進を待っていた。

「連邦軍のMS進入してきます、少佐」
「そうか、残ったかいがあったな。」

ザンジバルに乗せることができなかったMS−09Rリック・ドムが6機、これが彼らの戦力である

「我々の発進と同時に基地を爆破、艦は後回しでMSをたたく」
「「「「「了解であります」」」」」




「どうやらあの建物が製造工場らしいな、」

コウジたちは市街地を抜け、建物を盾にして進んでいたが
殺気を感じたコウジは言い放った

「全機散開!迎撃!」

しかし警報により、コウジの意図した行動を取らない機体がいた。

「コウジにばかり苦労はかけられないからね、」

ジャンプして高度より肩のキャノン砲と手にしているマシンガンを撃ちまくるタクミ

「フン、ドシロウトが・・・」

ドムのパイロットがそう呟いた時にはタクミのガンキャノンは5機のドムの集中砲火を受け四散した、

「タクミ!!!!」
「あのバカ・・・」
「「・・・・・・」」
「ジュン、ムナカタ少尉、マクグラス少尉、援護頼むよ、」
「コウジ!!」

タクミの攻撃は一機のドムに直撃し、位置の特定できたコウジも一機ビームライフルで撃破していた。
ホバリング機能を最大源に活用してリックドムが姿を見せ始め、コウジは一機の緑のドムに突撃した
隊長機なのだろう、紙一重でコウジの攻撃をよけてゆく、ライフルを収束モードにしているコウジは
拡散モードに切り替え、とにかくダメージを負わせることにしたのだが・・・

「ホウ、連邦にしてはよくやる。」

コウジのジムのビームを余裕を持って避けるリックドム、
シールドを上手く使ってジャイアントバズの弾頭をそらすコウジだがお互い決定打には欠けていた。

「強い・・・僕の腕ではかなわないのか・・・」

ビームライフルを犠牲にしてリックドムUのバズーカは破壊したが白兵戦となると
重装甲なドム相手では分が悪い、ジュン達3人は協力して一機のドムを撃破したようだが・・・
ビームサーベルをかわしたリックドムがヒートサーベルを真横に振るってきた。

「ヒカリ・・・ごめん・・・」

コウジが死を覚悟したとき、

「コウジ、無事か?」

一機のジムが間に入り込み、ヒートサーベルごと右腕を切断し、ビームサーベルの一閃、そのまま蹴飛ばしてリックドムを倒した。
核融合炉を避けているので爆発もしなかった。

「アニキ!」
「間に合いましたですね〜」

残りのドムは増援のメンバーによって撃破されていた。
しかし工場のあちらこちらから火の手が上がると

「全機警戒態勢、!!コウジ、動けるな?」
「あぁ大丈夫だアニキ、」
「大尉、タクミが・・・」

ジュンイチロウがコウに声をかける

「生存の可能性はあるのか?」
「いいえ・・・」
「なら、諦めろこれが戦争だ・・・」
「了解しました・・・」
「ジュン、戦争が終わったらここに来よう」

コウジも未練を残した表情でジュンイチロウに言う。

「そうだな・・・骨を拾いに来ないとな・・・」
 

基地は自爆により何も情報を得られず、
MS部隊の1/3を失い、573戦隊としての初陣は、戦略としては敗北であった。

暗礁空域において第十戦隊とルナUより先発してきた第一機動艦隊と合流、
船首部分が完全に残ったサラミス級を発見したことにより
第一機動艦隊が連れてきた工作部隊の手でレジェンドウッドは2日で修理を終え艦隊に復帰することが出来た。
艦首単装砲は撤去し100mm三連装機銃を増強という、対空砲力は維持させる改造を移動しながら平行作業していた

「あれは機動MS母艦タイホウ、完成していたんだ。」

コロンブス改アンティータム級特設MS母艦では航行速度の問題から正規のMS母艦建造が急がれた。
その為にビンソン計画予算からマゼラン数隻分の予算で建造されたのがヨークタウン級機動MS母艦である。
現時点で2隻が竣工している

「ヌシビト大尉、フジサキ大尉、我々573戦隊は第二連合艦隊から第一機動艦隊所属になった。」
「攻略の為の機動部隊という事か・・・」
「ソロモンかグラナダよね、ここからだと・・・」
「タイムロックの命令書が開かないと・・・だけどソロモンだと思いますね。」

重要な話をする前にはレイは皆をファミリーネームで呼んでいた

「楽に話したいので後ほど私の私室へ」
「了解」




10戦隊と合流した573戦隊に渡された命令書は「チェンバロ作戦、星一号作戦」についてであった。
考えられるだけのグラナダやソロモン攻略案を出していざと言うときの対処を用意する。
ヘスペロスの艦長室にはレイ、コウ、シオリの他アカギ少佐とアソウ少佐も集まっていた。

「レイ、忙しくなるな・・・」
「ソロモン攻略となるとかなり大規模な艦隊戦がメインだな。」
「第三艦隊との共同作戦になるのか・・・」
「あ!あのホワイトベースも参加のようね、」
「アムロとかいう少年兵の戦い方、みせてもらうか。」
「問題はソーラシステム使用までの時間稼ぎか、」
「あら?コウ、自信無い?」

唸るコウにいたずらげにシオリがのぞき込む。

「連邦軍のMSパイロットはほとんどが初心者だ、囮部隊として一足先に宇宙に出た部隊だけが実戦を経験しているにすぎないからね。かなりの被害が予想される」
「レビル将軍のジオンに兵無しの言葉はどうとる?」
「決戦あたりにその結果がわかると思うが、現時点での情報では真実かは不明としか言えないわね、カスミさん」
「MSの補給が来てもジムパイロットは補充されていない、573戦隊の予備パイロットの総動員で数を揃えただけですから・・・」
「ウッドが3人しか生き残らなかったのはイタイな・・・手練れには数でしか対応出来ない・・・それが今の連邦だな」
「一応ボール8機がパイロットと一緒に配属になったが、あれはまだまだだな・・・」
「そうね、ソロモンは艦艇メインだから割合で数少ないMSは万能かもしれないわね。」
「ボールの随伴は考えないで対空砲台専任で考えましょう、アカギ少佐。」
「そうだな、予備のマシンガンなども装着させよう。」
「グラナダってMS中心で編成されているって話よね・・・」
「そうだ、情報部の資料だとMSを戦力の中心にしてるキシリア・ザビ直轄の突撃機動軍の拠点だからな・・・」
「希望する乗組員にはMSシュミレーターの使用を許可するでいいかな?ヌシビト少佐。」
「そうだな、しかしウチの隊で元気のあるのは女の子ばかりだからな・・・」

(まさか、コウ目当ての娘ばかりだったらどうしよう・・・)

ちょっと思考がずれ始めたシオリだった・・・

「さて、各自戻って、」
「ん?もうそんな時間か?」

ここではコウもシオリも昔の様に気楽に喋っていた。
これから激戦が待っている、外では573戦隊と10戦隊のMS隊で模擬戦を行っていた。
これは新たに573戦隊で志願したMSパイロットの訓練も兼ねていた。

「さすがTMMスクールのトップクラスがそろっているだけはあるな、しかもチームワークも抜群だ。」

10戦隊のマサキ・ゴトウ大尉はその息のあった行動に舌をまいていた。
ケイとカツマ、ジュン、コウジが突撃しユウコ、アヤコ、ユカリ、ノゾミ、ナオミ、パット、キョウコが続く
ミハル、ミラ、トオル、ジュンイチロウ、ヒカリ、ホムラが支援の砲撃を加える。

「ヌシビトがいなくてもこれだけの行動がとれるのか、あのケイ・シジョウ、なかなかな指揮官ぶりだな
・・・ハンシュー!!全力で向かうぞ!!」
「了解、大尉」

ヨシオはつぶやいた、

「オレだけ初心者の世話かい・・・」
「まあまあ中尉、嘆かない嘆かない」
「マホ・・・ようし!!ゴトウ少佐の隊に攻撃をしかけるぞ!フォーメーションCでみんな連いて来い!」

ブリッジに戻った3人に旗艦タイホウのマーティン准将より通信が入る。

「みんな、久しいな、サイド2での活躍は聞いているぞ、」
「ありがとうございます、提督。」
「さて、届け物は受け取ってもらえたかな?少佐。」
「RX−79の宇宙仕様機ですね?砲撃仕様の機体は組み立てを急がせています。」
「いい土産だろ?」
「ですがアレを使いこなせそうなのは私とシジョウ中尉くらいで残り3機は・・・・・・」
「キミの横にもいるじゃないか?」
「ハイ?」

コウは横にいる人物を見た、そこにいたのは唖然としたシオリ・フジサキ大尉だった。

「提督!シオリはパイロットとしての訓練を正規に受けていません!!」
「キミがレクチャーしているんだろ?シュミレーションデータは見せてもらったぞ」
「う゛・・・そうでありますが・・・」
「それにキミの機体はゴトウ少佐と同じ特別仕様なのでペアを組むなら息が合った相手のほうがよい」
「RX−79NTですね・・・」
「コウ!私やる!提督!志願致します!!」
「え?」




ヘスペロスの士官食堂、ここではパイロット達があつまって談笑していた。

「ひゃーマイッタ、ゴトウ大尉達はつえーぜ」
「ぼやくなぼやくな、」

シャワー後のタオルを首にかけたままのヨシオが着席しドリンクを銜える

「オレの仕入れた情報だとソロモン攻略になる様だな。」
「マホ達はどうだ?おそらく次は実戦だが・・・」
「不安はありますけど、全力を出すだけですね、」

ジュンの問いかけにへばりながらちょこんと座るマホが答えた。

「さて、メシを食いながら始めるか、」

食事のワゴンが到着した所でケイは皆に促した。

「ケイ、もう少し休ませろよ、」

口ではそういいながらも573戦隊のパイロット達はケイを中心に集まった
模擬戦についての意見交換である。各自の感じたことを言い合い始めた。

「みんなそろっているのか・・・」
「コウ!遅いぞ」
「すまんな、」
「ごめんなさい、みんな」

コウとシオリがブリッジより降りてきたのでミーティングは本格的になってきた。
そしてコウに促され戦術士官でもあるシオリの話が始まった。

「みんな一人一人の戦技レベルは高いけど、各自の突出が目立つわね、とくにユウコは先行しすぎよ、ユカリのフォローが無ければとっくに死んでいるわ。」
「あははは・・・それは相方を信頼しているからってゆーか・・・」
「乱戦ではあまり期待出来ないわよ。」
「うぐぅ・・・」

・・・

・・・

・・・

シオリが全員に意見を言い終えた所でコウが口を開いた

「ボール隊は艦隊直援専任だ、あまり華々しくは無いが、みんなの帰る所を守るのだから一番重要とも言えるんだぞ?」
「隊長〜解ってますよ〜」
「編成としては、ナオミ、パット、キョウコにはこのままヘスペロス隊に編入、ケイの指揮下に入る。荷物を纏めてこっちに移動だ。」
「了解シマシタ。」
「小隊編成としては、
A小隊、オレ、ミハル、シオリ、カオリ。
B小隊、カツマ、ユウコ、ユカリ、アカネ。
C小隊、ケイ、ナオミ、パット、キョウコ、
D小隊、ヨシオ、アヤコ、ノゾミ、ミラ、
E小隊、ジュン、マホ、ミホ、トオル。
F小隊、コウジ、ジュンイチロウ、ヒカル、コトコ。
G小隊、スミレ、アイ、ユカ、ホムラ、サクヤ、カズマ。
H小隊、カツミ以下ウッドのボール隊
F、G、H小隊は直援が主任務になる、以後訓練は一番厳しいから覚悟しとけよ?
以上だ。」
「なるほど・・・・ってシオリも出撃するのか!?」
「まあね、」

驚くカツマに肩をすくめてコウは答えた。

「おいおい、さらっと言うなよ。」
「マーティン准将のご指名だ、文句は提督に言え。」
「半分は私の希望なの・・・」
「はいはい、了解。」
「ではアラートのメンバー以外は休息だが、シュミレーターは好きなだけ使っていていいぞ、
ベル、ウッドのメンバーは各自MSで移動だ。トレーニングマニュアルSを戻ってもしておく様に。」
「あぅ・・・了解」
「カツマ、アラートよろしく、」
「へいへい、」



コウは自室でベッドに寝ころび久々にぼーっとしていた、考えても考えてもソロモンでへの不安が無くならないからだ、そのうち考えるのをやめた。

ビィー

ブザーが鳴り、誰か来たようなので体を起こしてインカムを取った

「少佐、よろしいでしょうか?」
「ん?サキちゃんか、いま開けるよ。」

コウの部屋を訪ねたのはサキ、たしか半舷休息中のハズだった。

「入っていいかな?コウくん」
「あぁ、どうぞ散らかっているけど。」
「・・・」

士官学校時代、数々の浮き名を立てたコウだが、その中でもサキは側にいた一人だった。
配属が違ったので二人っきりになるのはもう二年ぶりくらいである。
コウはスコアを増やしていたものの、サキにとっては唯一の人だったりする。

「どうしたんだい?サキちゃん。」
「わたし・・・」
「?」
「私、不安なの、」
「不安?」
「士官学校で一緒だったみんながどんどん戦死していく・・・別の部隊だったらこんなに間近に感じなかったのでしょうけど・・・」

(サキちゃんは通信士だから一番にそれを聞くのか・・・)

「無理に言わなくてもいいよ、サキちゃん、たぶん同じ事を今考えていたから・・・」
「ありがと・・・」
「この部隊はほとんどがあの頃の知り合いばからだからなぁ・・・」
「そうなのよね。」
「俺に出来ることだったら力になるから言ってごらん?あるんだろ?」
「うん、あの・・・あのね・・・・」
「・・・」



「あー湯船のある船っていいなぁ、極楽極楽、練習艦はシャワーだけだったからね!」
「シオリちゃん、出たらまたすぐにシュミレーションなんでしょ?」
「う・・・メグったらせっかく気分転換しているんだから。」
「あははは、ごっめーん」
「けっこう疲れるのよ、メグも一度やってみる?」
「遠慮しておきます・・・」

大浴場の二人は短い休憩を満喫していた。


そのころ、
ジオン軍のザンジバル級を旗艦として新編成された艦隊が訓練途中でが第一機動艦隊を発見していた。

「連邦軍の艦隊のようです。」
「例のサイド2を強襲した部隊か?」

キャプテンシートの司令がオペレータに聞き返した

「合流して増えていますが、間違いありません。」
「06Eからの画像は来るか?」
「画像来ました、ソロモンに強行偵察を仕掛けた部隊もいますね。」
「フム・・・ゲルググの慣熟訓練にはいい相手になりそうだ。」
「では・・・」
「全機発進!!連邦の艦隊を激滅する!!!近くに第三艦隊もいたはずだな、増援要請!!」


−ヘスペロス中央MSデッキ−
「はじめまして、ヘスペロスでMSの整備を任されている、ユイナ・ヒモオ中尉です。」
「RX−79整備担当として配属された、ユリウス・ハヤカワ中尉であります。以後よろしくおねがいします。」
「早速だけど、RX−79NTに関して教えてちょうだい。」
「はい、」


火照った顔をしてコウの部屋を出てくるサキ

「悔しいな・・・コウ君上手くなってる・・・・」



ビィー!!ビィー!!!

「警報?!」

「第1種警戒令発令、全員戦闘配置」

スピーカーよりスズネの緊張した声が響く。

第三艦隊との合流予定のL1、サイド4の残骸が浮かぶこの空域で、まさかのジオン軍との接触に第一機動艦隊は騒然となっていた。


「敵艦隊総数6、ザンジバル級1、ディマンシュ級3、ムサイ級パトロール型2・・・あっ、別方向より9隻の熱源確認」
「573戦隊は発進して待機、10戦隊とタイホウのMS隊で迎撃するんだ。」
「艦長、敵MS確認!総数32?」

数えたオペレーターがその数に息を飲んだ。

「32機だと?ダミーではないのか?」

バクレツザン大佐が聞き直す

「熱源スキャンでも32機です、データに此の熱量はありません、新型と思われます。」
「タイホウの全MS発進急げ!!援護射撃開始しろ!!」
「まずいな・・・」
「司令・・・」
「おそらくゲルググとか言う新型だ、・・・573戦隊に防衛ラインを引かせろ」
「了解、通信士、ヘスペロスに回線開け!!」


「連邦の艦よりMSの発進を確認しました。」
「そうか、グズヌフのグラードル大尉に連絡、ディマンシュと共に敵の側面を攻撃せよ!」
「MS隊、連邦のMSと接触!交戦に入ります!」

ジオンの艦隊が二手に別れ、ザクやドムを搭載したディマンシュと
前線の補給艦となる為のディマンシュ級グズヌフは、艦隊の側面に攻撃をしかけた。
ザクといってもエース部隊の一環、MS−06RZと06FZRである、そのサポートには06KRである。

「チャイカ中尉、健闘を、」
「いつも通りよ、」

ゲルググのパイロットは本国と突撃機動軍、地球攻撃軍よりの生え抜きで構成されている。
宇宙攻撃軍のエースパイロットは状況が許さず召集出来ておらず、機体を輸送中である。
又、このチャイカ中尉の様にザクタイプにこだわり乗り続けるパイロットもいるのだ。

「連邦のMS、たしかジムとか言ったな・・・フ、恐れるに足らん。」
「ライデン少佐!時間制限に気を付けて下さい!」

ザンジバル級のCPから釘を刺されてしまうが、その程度では士気に変化は無い。

「ようし、まずビームのシャワーを浴びせてやれ!」
「了解!!」
「ツキムラ少尉、貴様は私に連いてくればいい!」
「はいっ、!」

この中で唯一の新人パイロットであるケイ・ツキムラは士官学校を繰り上げで卒業したばかりだが
士官学校においてTOPの成績を収め、YMS−14Fに最初から乗っているので操縦だけは他のエースよりもゲルググに慣れていたが
実戦経験が皆無だったので、ジョニー・ライデンに連いて行くのがやっとだった。

「訓練とは違う物だな、こりゃ」

32機のゲルググが放ったビームは不慣れな連邦のMS数機を光に変えた

「烏合の衆が!!!」

誰の言葉か、ジムは次々と撃破されていく
その中には姿勢制御に推進剤を使い果たし行動不能に陥った者もあった。
エースと初陣のひよっこの差が大きく出てしまっていたが、だが確実にスコアをあげている部隊が二つあった。
マサキ・ゴトウ少佐率いる10戦隊のメンバーと元10戦隊のロボ・オオガミ中尉率いる第19中隊である。
フォーメーションを中心に展開する10戦隊と臨機応変に指示をあたえる第19中隊、10戦隊の方には残念ながら戦死者が出はじめているが、
TMM専科出身以外では練度の高い部隊だ。

「敵はエースだ、止めろ!第二線に艦隊をカバー出来るだけの数は無い!!」

マサキの機体はガンダムであるが故に攻撃は集中する、応戦しながらも指示を出すマサキ。

「マサキ少佐!!」
「ハンシュー、来るな!!持ち場に戻れ!!」
「・・・了解・・・」

隙をついたゲルググがマサキのガンダムに迫るが右腕のガトリングガンで粉砕、光球に変える。

「マサキ少佐!合流します。」

第19中隊のロボ・オオガミはそう通信すると穴の空いたフォーメーションに部下を配置した。

「残存は我々だけの様です、共同でラインを・・・」

言葉の途中でオオガミはゲルググの両腕を切断、そのまま蹴飛ばした。

「隊長!残弾がもうありません!!」

マリアの声がミノフスキー粒子の雑音の中聞こえる。


「ライデン少佐!!」
「頃合いか・・・全機後退!!」

戦況は大半のMSを撃破された第一機動艦隊が不利だったが、残ったMS隊が難攻不落の集団だった為、
ジオンのジョニーライデン少佐は艦隊への攻撃を諦めて21機残ったゲルググを後退させた。


「敵が撤退していきます、マサキ少佐!」
「こちらも艦隊へ戻る、オオガミ中尉!しんがりを頼む!!別働隊に注意しろ!」
「了解!!」


グズヌフとディマンシュは本隊と第一機動艦隊と正三角形に位置するポイントにてMS隊を発進させた
ディマンシュはMS−06RZ(FZR)4機、06KR3機、09RU3機、14C3、1機の11機、
グズヌフはMS−09RUが11機、である。

「グラードル大尉、ディマンシュのオリビア大尉からの入電です。」
「なんでありましょうか?大尉。」
「相変わらずカタイわね、ヴィリィ。」
「そんな事を言うための通信ですか?大尉。」
「フフ、ごめんなさい、私も出撃するので指揮をお願い。」
「又ですか?アナタも・・・まあいいでしょう戦果を期待しております。」
「もう!ホントにカタイんだから・・・」

ディマンシュから発進したのはペズン・ドワッジと呼ばれる試作MSだった。

「ツィマッドの社長も娘には甘い様ですね・・・艦はここに固定、残骸に潜んでMSの戻りを待つ!」
「了解」
「キリアキのMSは直援で残して下さい。」

対艦攻撃能力が皆無なディマンシュ級は防衛もMSに依存しているので、手元の全MSが発進してしまうと無防御になってしまう。
それでもそこで停止と言うのはかなり自殺行為なのだが・・・


ヘスペロスのMSデッキは準備の完了したMSから順に発進していた。

「ハヤカワ中尉、マニュアルは読んだが俺に使えるか?ニュータイプ用とあるぞ?」
「そんなもんはプレゼンにすぎません、少佐の今までのデータを見る限り十分使いこなせるでしょう。」
「ふぅん」
「あ、信じてませんね?」
「まぁね、そんなに能力があるとは思って無いからね。」
「そんなことないよ、コウはそれだけの力を持っているんだよ!」
「シオリ・・・どうした?」

もうすぐに発進だぞ、の言葉をコウは飲み込み不安そうなシオリを側に引き寄せヘルメットのシールドにくっつけた、
ドアップなコウの顔に顔を真っ赤にするシオリだが、スモークシールドだったのでシオリの反応にコウは気づかなかった。

「今回は戦場の空気を感じるだけでいいんだ、俺の後ろに居ろ、絶対に守ってやるから・・・」
「うん、絶対守ってね、コウ。」
「しかし、いきなり実戦だからな・・・慣熟テストする時間くらいよこせってんだジオンめ。」
「ぼやかないの、フフフ。」

気を利かせたのか、ふとみるとハヤカワ中尉の姿は無く、下の方でメカニックに怒鳴っていた。

「ミケ!!!このボケ!!こんな事も知らんのか!!ちゃんと勉強しとったんか?ミケ!!!これはメカマンなら常識やで!!!!」
「はぅ〜、すみません!!」
「又かい、ミケは・・・まったく懲りないな・・・」
「グラジャーノン!!!オマエも口より手を動かせろ!!」
「うひゃぁ、ヤブヘビ、ハイィ!!!」
「仕事は寡黙に・・・」

ボソボソと突っ込むなよキンケルド・・・

「艦長、E方向に艦影をキャッチ、MSらしき熱源23機確認しました。」

アキホが敵の接近をレイに告げる

「誰が向かっている?」
「ジュンとヨシオの小隊です、艦長。」
「・・・コウとシオリは?」
「調整に手間取りまだ発進していません。」

レイは通信機を手に取り、ガンダムのコウを呼び出した

「ヌシビト少佐、どうだ?」
「あぁ、すぐに出られる。」
「E方向より敵MSが接近している。ヨシオとジュンが向かっているが、二人でそっちに合流してくれ。」
「了解」

二人のMSがカタパルトに乗り、カウントがはじまった。

「しっかり俺についてこいよ!シオリ!!コナミ01発進する!!」
「ハイ!!(この言葉、愛の言葉としてコウから聞きたいな・・・)コナミ10発進します!!」

シオリの妄想を砕く様にカタパルトがうごいた。

「きゃん!!訓練よりもGがキツイ・・・」

「大丈夫か?」

機体を安定させたコウはシオリの機体と接触回線を開いた
ありすぎるパワーにコウはかなり苦労したのだが、シオリの目には自在に操っている様に見えた。

「(・・・コウってホントに凄い)あ・・・うん、大丈夫だよ!」
「そうか?なんか悲鳴が聞こえた様な気がしたが・・・」
「もう・・・イジワル・・・」

待機していたミハルとカオリも合流してシオリは戦場へ向かった。

スパーン!
「いたたたたた、痛いですよ中尉、」
「やかましい!!おんどりゃあなぜこんな事も知らんのや!どついたろか?」
「もうどついてます・・・」
スパーン!
「つべこべ言うな!!」
「うぐぅ・・・」
「なあ、キンケルド、中尉のハリセン、どっから持って来たんだ?」
「フジサキ大尉が貸してくれたらしいぞ、グラ。」

メカニックの控え室、哀れミケの回りには機械整備の初歩の本が積み上がっている、一体何回はたかれているのだろうか・・・
ハリセンを振るうハヤカワ中尉も段々と力がこもっている、そこへ・・・

「何をしてるの?」
「あ、ヒモオ中尉。」
「いや、この整備をろくすっぽ知らんと整備をしようとするアホを修正してますねん。」
「中尉、訛ってる訛ってる・・・」
「ぐ・・・」
スパーン!!!
「あぅ・・・」
「グラ・・・口は災いの元って言葉知ってるか?」
「あぅぅ・・・すいません・・・」
「で?彼をどうしようって言うの?良かったら私が・・・」
「「「「私が?」」」」
「脳改造しましょうか?」
がびーん!!!
「ややややややや、やだ!だだだだだだだだ、だめ!!」
「良かったなミケ。」
「ちゅうい〜」
「しっかりと整備のデータをインプットしてこい」
「グラジャーノン!貴様!!」
「僕には何も言えないよ・・・」
「キンケルドぉ・・・」
「・・・・・・冗談よ、そんなこと出来ないわよ、やってみたいけどね。」
「ミケくん、根性でがんばって!!」
「ニジノ少尉・・・ハイ!!頑張ります!!」
「・・・現金なやっちゃ・・・」
スパーン!!!!
「きゅう・・・・・・・」
「あ、沈没した・・・」
「ご冥福を祈っております。」
「死んでない死んでない・・・」
「ニジノ少尉、なんでこんなところに・・・」

サキの来た方にはMSシュミレーターがあったのだがそれに気づいたのはいなかった。





「もうすぐ戦闘空域だ、シオリ、どうだ?」
[大丈夫よ、コウ。」

ガンダムの加速力ではもう到達していても良いのだが、不慣れなシオリを気遣いコウは加速を控えていたが、
相手がエース部隊な事に内心焦りを感じていた。
そんなコウを気遣ってシオリはガンダムを加速した。

「・・・シオリ・・・」

コウはフっと微笑むとフットペダルをさらに踏み込んだ。
ズウンとガンダムの加速が上がってゆく

「さすがに反応がいい、ハヤカワ中尉の言葉信じるか・・・」

戦場にたどり着いたコウとシオリが見たのは行動不能にされた、マホ、ミホ、ノゾミ、トオル、アヤコ、ミラの機体だった。

「何?!みんな!!無事か?」
「・・・・・」

シオリも言葉が出ない、はじめてでいきなりこんな状況なのだから無理もないが・・・

「ソーリー、どうにか無事よ、みんな行動不能にされただけだから・・・」

沈んだアヤコの声だが、無事な様子に二人は安堵した。
ジュンから通信が入る

「スマン、コウ!一機のザクにやられた・・・赤いザクだ・・・」
「赤?まさか彗星か?」
「違う、だがエースには違いない・・・」

接近してきたジュンの機体もよくみるとかなり被弾している、かなりの凄腕のようだ。

「一撃離脱で一気にこれだ・・・俺は装甲が良かったおかげで一端引き上げさせることができたが・・・」

シオリはセンサーにMSの影を発見した。

「コウ!敵影を発見、1機がこちらに向かってくる!!」
「わかった、ジュンはみんなを連れて戻れ!シオリ、行くぞ!!ミハルとカオリはヨシオを援護してくれ!」
「ハイ!!」
「了解!」

「こちらに向かって来るのは2機ね・・・この熱反応はグースじゃないわ、まさか?ガンダム?」

チャイカは向かって来るMSが自分達でジムに付けたコード、「グース」でない事に気がついた。

「あれは木馬だけではなかったの?・・・兵器だから当たり前か・・・」

チャイカはためしに軽く斉射したが簡単に避けられた。

「さすがに動きがいいわね・・・動きについてこれるかしら?」

チャイカはザクを限界近くまで加速させる、エンジンの振動がビリビリとコクピットに響き、チャイカはその
振動のハーモニーを楽しんでいた。


ヨシオ、ミハル、カオリはMS−06RZ3機と交戦していたがお互いに有効打を与えられずにいた

「くっそー、うろちょろしやがって!」
「04!そっちに追い込むから狙撃して!!」
「簡単に言うなよミハル!」
「黙ってやるの!!」
「えぇい、やってやる!!」

ヨシオの機体はスナイパータイプなので強力なビームライフルを装備しているが接近戦だと
無用の長物となる、だから連携プレーが必要なのだが、カオリがザクキャノンと牽制しあって
それが出来ず、ミハルの負担は大きい。

「当たれ!!!」

ヨシオの撃ったビームは見事にミハルに気を取られたザクに直撃した。

「やればできるじゃん。」
「まぐれだよ、まぐれ。」
「わかっているよ。」
「がくぅ・・・」


「コウ!ビームが当たらない!!」
「慌てるなシオリ、動きを予測するんだ!」

シオリの射撃が下手なのではなく、正確なのだがそれ故に避けられてしまうのだ。
いつしかコウとチャイカの高機動な戦闘にシオリはついていけなくなっていた。

「さすがエースということか・・・」

コウは相手のパイロットを誉めると意識を全開にした、ライフルの残弾はあと一回、
移動するザクに照準を定めるとちょっとずらして発射したあと、ライフルを腰のラックに付け、ビームサーベルを引き抜く。
ビームは見事、避けたザクの左腕に当たり破壊した。


「うっ・・・私の動きを読んだの?・・・まさか、ニュータイプ?そんな馬鹿なことって、」

素早く機体をチェックするが左半身は警告灯の赤ランプで埋まっている。
距離を縮めたコウのビームサーベルがザクのアサルトライフルを破壊する。
まだやれる!と思ったチャイカだが、本隊の撤退の信号弾を確認するやきびすをかえす様に素早く撤退した。

「ガンダム・・・次に会った時には・・・」


「撤退したの?コウ・・・」
「その様だな・・・」

同じ様に敵が撤退したヨシオ達がコウに合流してきた。

「コウ・・・」
「ヨシオ、一機撃墜おめでとう。」
「よせやい、三機の共同戦果だぜ、」

同じ区域にいた他のメンバーも次々に合流してきた、

「敵機一機撃墜、一機中破、こちらが六機大破か・・・」
「コウ・・・」
「ここではしょうがない、ヘスペロスと合流するぞ!」
「了解!!」

MS空母タイホウ、そのブリッジでは

「敵MS、敵艦隊撤退していきます」
「周辺に反応ナシ」
「艦隊はほぼ無事だが、我が方の負けだな・・・」
「司令・・・」
「MSの半分が撃破されたのだ・・・」
「573戦隊が全機残存しております。破損した機体も有る様ですが現状では練度の高い部隊と言えるでしょう。」
「・・・予備の機体を573戦隊に回せ、艦隊のMSも急いで再編するんだ。」
「了解であります。」
「10戦隊と19中隊主導で新規パイロットを短期養育させるか・・・・」

573戦隊のMSで大破した機体はユイナ達の努力の結果、4機は完全に修理できたが
ホムラのRB−79は使用不能、しかもホムラは重傷で戦線から離脱する事になった。

「Oh!Good!!これが私の機体ね?」

機体が修理不可能だったアヤコには新たにRGM−79GSジムコマンドが与えられた。
ジムの最新鋭機である、艦隊でも19中隊や133戦隊にしか配備されていない機体であるが、その予備機の一機がアヤコが乗る事になったのだ。

「以外とつかれたな・・・」

気分転換の為に、展望室にやってきたシオリだったが、そこにコウの姿を見つけた。

「コウ!」
「・・・シオリか・・・」
「どうしたの?」
「ちょっとね・・・」

シオリはすっとコウの横に来た。

「私に話して楽になるなら話して?」

さっきから展望室の影でこそこそしている二人がいた

「ほら、スズネ、ボヤボヤしてるから、フジサキ大尉が来ちゃったじゃない。」
「だぁってぇ、ミノリちゃん・・・」
「つきあってって言ったのはスズネだよ?」
「うぅ・・・」
「は〜しょうがないなぁ・・・」
「な・・・何をするつもり?」
「私が大尉を連れ出すから、後はうまくやんなさいよ!」
「いいよ、今日はやめるから・・・」
「ホントにいいの?」
「うん・・・あの二人の間には入れそうも無いから・・・」

シオリはコウの肩に頭を傾けると呟いた。

「コウの隣っていつも私が元気になれるな、」
「そうかな?俺はシオリがいると勇気が沸いてくるよ。」

君が(あなたが)いるから前に進んでいける、この戦争という極限状態でも。
そう伝えたくとも言ってしまえば死ぬかもしれない・・・そんな思いが言い出せなくなっていた。
浮き名を馳せたコウも、本命には奥手であった・・・・が。

「シオリ・・・」
「何?コウ」
「シュミレーションルームへ行くぞ。」
「え?」
「みっちりシゴいてあげるよ。」

今の雰囲気は何?と言いたげなシオリだがコウの

「シオリに死んで欲しくないからな。」

の一言で従うことにした。

「今出来ることをやらなくっちゃね。」



チャイカ中尉らMS隊を回収したディマンシュは第三連隊の艦隊と合流していた。

「ソロモンへは行かないのですか?」
「私達はこのままグラナダへ向かいます。」

ノーマルスーツのままブリッジに上がって来たチャイカは開口一番オリビアに聞いた、
このままソロモンで連邦の迎撃に出ると思っていたからだ。

「オリビア大尉、ソロモンを本国は捨てるつもりなんですか?」
「配備状況を見ると総帥はその様ね。」

ディマンシュはア・バオア・クーに向かうキマイラらと別れグラナダへ進路を取っていた。





地球連邦軍アラスカ基地
アフリカでの激戦をくぐり抜けたクロッカ・オリハラ少尉は麾下の小隊と共に第1機甲師団機械化機動中隊を離れ、
キャリホルニアベース奪還の為にアラスカ基地に入った。

「熱い所から今度は極寒かよ・・・忙しいなぁ・・・・」
「命令だからしょうがないでしょ?隊長。」

エルザ軍曹も寒さに震えながらタラップを降りた。

「隊長、早速ですけど司令部への出頭命令が出ていますよ。」
「わ〜った、行って来る。ミオ、運転頼むな〜」

スノゥ曹長の伝言にクロッカは手をひらひらさせて司令部へと向かった。

「アカネはエルザとミズカでクロッカのMSの改修チェックして頂戴、ルミナ、リタはMSの受領があるから一緒に連いてきて。」
「りょ〜かい、」
「・・・・甘いものが欲しい・・・・」
「ほらほら、さっさと受け取ればPX行く時間も増えるからぁ〜」

残りメンバーはエルザとジープで倉庫へ向かった。

「第一機甲師団機械化機動大隊ですか・・・」
「そうだ、すでに先発したそのうちの一個中隊へと増援で合流して欲しい。」
「その中隊とは別働隊の方が良いのでは無いでしょうか?」
「ふむ、少尉がそう思うのは当然だが、その中隊の進路上に大隊規模のMSを有するジオンの基地が発見されたのだ。」
「なるほど・・・編成が終わった本隊から増援出来ないという事ですね?」
「そういう事だ、行ってくれ。」
「了解しました、してその中隊の名称は?」
「単純に北米南下走破中隊と呼んでいる。中隊指揮はトーマス・ホイットレー中尉だ。」
「我が小隊の編成は同じで良いのでしょうか?」
「任せる。」

こうしてクロッカ以下はアラスカを出発して雪のカナダへと向かった。




L5空域

「司令、作戦開始まで30分です。」
「わかった、第三艦隊、第一機動艦隊、全艦横一文字隊形に移動。」
「了解」

最大加速故に艦体がビリビリと振動を起こしているがパブリク型突撃挺の編隊は全面にソロモンで埋まる距離まで進んでいた。

「最終加速まで20!」

乗組員に緊張が走る

「最終加速!」
「了解!最終加速!」

突入する突撃艇のノズルに吹き出るプロペラントの量が増大し、燃焼爆発の炎が強くなり、パブリクは加速してゆく。
が、ソロモンからの迎撃も激しく、撃破される数も増えて行く

「2号挺被弾、落後します!」
「102号挺、爆沈!!」

ブザーの音がポイント到達を伝える

「よし!ここだ!!ミサイル同時発射!!」

挺長の声に水雷長が大きなレバーを引き下げる。
挺体とほぼ同じ大きさのミサイルが2発発射され、後続のパブリク型突撃挺も次々とミサイルを発射する。

「やった!!」

離脱を指示する間も無くパブリク1号挺はミサイルによって爆発し、光と化した。


「敵は強力なビーム攪乱膜を張ったようです。」
「ザク、リックドムの部隊は敵の進行に備えろ!!敵は数が少ない!ミサイル攻撃に切り替えろ!ミルバ隊は左翼に展開、
ハーバード隊は後方から動くな!ティアンムはどの方向から来るかわからんぞ!!」
「敵艦隊は横一文字に展開。」

ソロモンではドズル・ザビ中将の声が響いていた。





「ワッケイン司令、ビーム攪乱膜成功です。」

コウ達、MS部隊はは艦隊の頭上で編隊を組んで待機していた、

「各艦、任意に突撃!各モビルスーツ隊発進!!」

総司令ワッケイン少佐の声が通信機に響く

「ようし!行くぞみんな!!」
「「「了解!!!」」」

向かって来るリックドムの部隊に突撃した。

「全機武器使用自由!573戦隊の力を見せ付けてやれ!!」
「前衛はコウのA、Bに任せろ!C、Dは支援だ、といっても白兵もあるぞ!」

対MS戦になれていないジオンの兵士は連邦のMSに苦戦するがそこは腕でカバーしていた。

「おのれ!連邦の雑魚どもがぁ!!」

アナベル・ガトー大尉は叫びながらもジムを次々と撃破していった。

横一文字では味方の被害が増えるのを見て、レイはサキに指示を出した。

「ヘスペロス前進、突出させる!573、133でアローヘッド1で展開!」

レイが突撃の指示をだす。

「52サンチ砲、右門3式弾!左門通常弾で斉射!」
「艦長、ミサイルです、」
「20サンチ砲、斉射!撃て!!」

ビーム兵器主体な連邦艦隊において実体弾兵器が主武装にあるのはペガサス級とヘスペロス級とヘスペリス級なので
自らのビーム攪乱膜で主砲が使えない艦隊の前に出ざるおえない

「3本の槍か・・・」
「?ワッケイン司令?」

ワッケインは中央のヴァルハラ、左翼のハイペリオン、右翼のヘスペロスの突出をこう例えた。

「みんな、あと5分だ後5分がんばれ!」

コウの声がモニターより流れる。

「まだだ!まだ沈んではならん!!ミサイルを撃ち尽くすまでは!!!」

「23戦隊、壊滅!」

戦場は激戦を極め、人の命の輝きは数を増すばかりだった。





「なにィーっ!?ばかな!サイド1の残骸に隠れていたのがわかりましたァ?」
「ラコット!どうしたか?」
「ティアンムの主力艦隊です」
「ふむ・・・衛星ミサイルだ!!」

ドズルの命令で隕石にエンジンを取り付けただけの衛星ミサイルに火がついた・・・

「戦艦グワランとムサイを向かわせろ!」

ドズルが次々と命令をする。
副官のラコットがコーヒーをドズルに手渡しながら尋ねた

「第七師団に援軍を求められては・・・」
「すまん・・・キシリアにか?」

グラナダかア・バオア・クーの戦力が追加されればこの戦闘の勝利は確実なのだが・・・

「これしきのことで!国中の物笑いの種になるわ」

エゴがソロモンの将兵の命運を決定した瞬間だった・・・・





「キャア!!」
「ミラ!!」
「大丈夫か?」

ミラの機体に背後からバズーカの弾頭が直撃する。
炸裂弾では無かった事が幸いし、推進剤の誘爆は免れている。
ヒートサーベルで止めを刺そうとしたリックドムはアヤコが狙撃し撃墜した。

「くっ・・・ど、どうにか大丈夫・・・」
「アヤコ、艦まで護衛してくれ」
「了解」
「大丈夫よ・・・」
「んなワケねーだろ!損傷度C中破だ、ミラ・カガミ少尉、帰還せよ!」
「ヨシオ・・・まだ戦える・・・」
「命令だ!」
「うぅ・・・了解・・・」

二人を戻したヨシオは、ノゾミとドムの部隊と戦闘を再開した。
ヨシオが命令するのはほとんどないのだ、それだけミラの損傷は酷かった。

「コウ!!」

衛星ミサイルを撃破して、カウンターを見たシオリが叫んだ。

「時間だ・・・」

ソーラーシステム、400万枚を越える鏡の集合体である。ティアンム艦隊はこれの展開の為に残骸に隠れていたのだった。

「迎撃機接近、各艦注意!」

旗艦タイタンではティアンムが冷静に言い放つ

「構うな!照準合わせ急げ!!」

制御の為にタイタンのコンピュータは限界で可動していた。

「これよりソーラーシステムの照射を開始します。焦点軸上から退避して下さい。防眩フィルター用意、」
「目標ソロモン右翼、スペースゲート。」

ソロモン攻略戦は後半に入った。





「第6ゲート消えました!敵の新兵器です。」
「な、なんだぁ!」
「レーダー反応無し!エネルギー粒子反応無し!」
「レ、レーザーとでも言うのか?方位は?」
「敵、主力艦隊です。」
「グワラン隊が向かっているはずだな?」
「ハッ!」


「すごい・・・これが連邦の新兵器なのか・・」

「ソロモンが焼かれてゆく・・・」

通信にパイロット達のつぶやきが混じって聞こえた・・・

「指令、全MS交戦にはいりました。」
「よし、タイホウ前進、艦隊の前に!」
「敵MS右前方より飛来!」
「前進止めるな!迎撃!!」



「全機いったん戻って補給するぞ」
「了解だ、コウ!」
「コウジ!ジュン!交代だ前に出ろ!!」

艦隊の直衛に残っていたコウジの小隊とジュンの小隊がノズルをふかして前線に向かう

「少佐、」
「なんだ?ミサキ少尉、」
「タイホウが沈みました・・・」
「な・・・」

コウだけでなく、待機BOXにいた全員の動きが止まった・・・

「マーティン准将はどうした?!」
「艦橋に直撃して・・・」
「そうか・・・」

恩師の死に一同は震えた

「D小隊、補給完了」
「ようし、先に行くぞ!コウ!」
「ミラはどうなった?」
「救護ルームで絶対安静だ・・・」
「そうか・・・」

ミケを含む下僕の献身の中、ミラは眠っていた。

「この戦争、早く終わらさないとな・・・」
「何か行った?コウ。」
「ん、なんでもないよ、シオリ。」

ヨシオ、アヤコ、ノゾミ、アカネのテールノズルがソロモンへ向かって行く

「コウも何か食べておく?」
「あぁ・・・」
「なんだぁコウ、沈むのは後にしろ、後に。」
「ケイ・・・そうだな。シオリ、俺はチキンバーガーね、」
「まったぁ?コウってチキンバーガー好きね、」
「そうですね〜コウさんがそれ以外を食しているのを見たことありませんわね〜」
「シオリも、ユカリまで・・・いいだろ?好きなんだから。」
「フフフフ」
「ハハハハハ」

待機BOXに笑いがあふれた

「ジム補給完了、ガンダムは2分の補給遅れ」
「な、」

自分の機体の補給遅れに気がはやるコウ。

「仕方ないな、コウ。」
「カツマ、頼むぞ。」
「了解。」

先にデッキに向かったカツマ達を見送り、コウは残っていたコーヒーのパックに口を付けた

「あとはソロモンに取り付くだけだ、ゆっくりいちゃついてから来い。」
「な・・・ケイ!何言ってるんだ!!」
「そうよ、ケイ、私達はまだそんなんじゃ・・・」
「ふぅん・・・まだ、ねえ・・・」
「あ・・・」

つい言ってしまって、真っ赤になるシオリだがコウは気づかずにケイを捕まえてデッキへ漂った

「馬鹿・・・こんな時に何言うんだ、俺の計画が・・・」
「ほぅ、計画ねぇ・・・」
「が・・・」
「ま、いいでしょう、ガンバレよ」
「ぐぅ・・・そ、そういうケイもナオミとしっかりやれよ。」

ぐわん!!
フイをつかれたケイは見事柱にぶつかった

「ぐはぁ・・・い、痛え・・・」
「俺は知ってるぞ、毎晩ナオミがケイの部屋に行っているのを。」
「な、なぜ知っている?」
「極秘情報だ。」
「そうか、ヨシオだな・・・戻ったら覚えてろよ・・・」
「まぁまぁ、お互い様って事だよ。」
「フ、そうだな。」
「ケイ大尉、補給完了です。」
「そら!先に行って来い!!」
「了解、隊長殿。」

ケイは先に編隊を組んで待っていたナオミ、パット、キョウコ、トオルに声を掛けた。

「待たせたな、行くぞ!」
「了解!」

カツマ達はすでにソロモンの輝きの中にいた。

「コウ・・・」
「あぁ・・・」
「みんな生きて戻って来れるかな・・・」
「大丈夫、戻って来るさ・・・と、言いたいが解らないよ、シオリ。」
「そうだよね・・・」
「シオリは俺が守る、そして生きて戻る。約束するよシオリ。」
「うん・・・」
「ガンダム、補給完了。」
「行くよ、」
「はい。」

その物陰には・・・

「いいなぁ・・・少佐・・・」

ハヤカワ中尉がいた・・・

ソロモンでは大混戦状態になっていて先行した573戦隊のみんなは各個ばらばらに行動していて、そのなかで
ケイ達はジオンのMSを撃破しながらソロモンのスペースゲートの一つにたどり着いた

「そこのジム、状況知らせ!」

通信モニターには階級を提示出来るようになっているために戦場でも階級のトラブルはあまりなかった。

「ハ、このゲートにいる敵が強く、侵攻できません。」
「そうか、どんな奴だ?」
「隊長らしき機体は水色のスカート付きです。」
「な・・・水色?・・・」





ケイはTMM専科コースを出てから宇宙軍に配属されていて、フライアロー制空戦闘機の宇宙型、スペースアローに乗っていた。
12月、開戦直前ケイは政府要人の乗ったシャトルの護衛任務に母艦とサイド2にあった。

出発までの短い半舷休息、スペースポートにてケイは予想もしない人物に会った。

「お兄ちゃん!」
「な、なんでここに、」
「へへへ、今度のシャトルには私も乗って行くんだよ!」
「そうなのか?」

ケイの妹ノアは政府の植物観察官として研修の為にサイド2に来ていたのだった。
短い正月休みを一緒にすごし、サイド2から移動する日がやってきた。
その時にジオンの部隊が近くに潜んでいるのを気付いた者はいなかった。

「帰ったら、母さん達によろしくな。」
「うん、わかったよシジョウ中尉さん!」
「コラ!」
「きゃははは!」

元々再婚同士の親の為、周りからは恋人に見える兄妹だった。

「お兄ちゃん・・・会えてよかった。」

ケイの母艦を見つめてノアは呟いた

「今度会った時は告白するね、ケイ・・・」

シャトルが発進してケイも母艦から発進した。

「中尉、カタパルトOK、進路クリアー、発進どうぞ!」
「了解、237番機、シジョウ出るぞ、」

グン!Gを受けながらケイはシャトルのノアを思った。が・・・

「ミノフスキー粒子急速上昇」
「通信・・・ガガガ・・・敵・・・ガガガ・・・ビームが・・・」

ジオンのムサイの攻撃でケイの後ろにいた空母が轟沈した。

「何?ジオンなのか?」

ケイは機体を攻撃のあった方に向けた、

「クライムの隊はシャトルを守れ!残りはついてこい!!」

ケイは仲間と共にジオン艦隊にたった5機で向かっていった。しかし・・・

「中尉!一つ目がぁ・・・」

僚機がザクによって次々に撃破されていった。
ケイは水色のザクと交戦しつつシャトルに近づいてしまった。

「くそ!シャトルのそばに来ちまった・・・クライムは?」

ケイの眼には撃破されるクライムが映った。

「俺だけか?サイドの駐留部隊は?・・・」

核の光

「サイドが崩壊している・・・」

自分を的にしつつシャトルを守り、サイド2を離れようとするケイを水色のザクのマシンガンが火を噴いた。

機体後方に弾を喰らいケイは衝撃でコンソールに顔をぶつけ割れたシールドの破片が左目に刺さった。
気を失う直前、残った右目には爆発するシャトルとそれを狙撃した水色のザクが見えた・・・

「・・・ノ・・・ア・・・」

ルナUから偵察に来た潜宙艦に救われて一命をとりとめたケイは無理を押して、シローアマダ少尉らの乗るシャトルで
ジャブローへ降りた、そこでコウ達に再会する。





「まさか、奴なのか?」
「ケイ!どうしたの?」
「あ・・・あぁ、ナオミすまない・・・」

ケイは動揺をおさえると一気に突進した、

一方、コウとシオリは

「コウ、なにか感じない?」
「あぁ、11時の方向だな、」
「なにか悪い予感がするの・・・」
「俺もだ、行ってみるか・・・」

そこに仲間の何機かが近づいてきた

「コウ!」
「ユウコ、とユカリか、無事な様だね、よかった。」
「他のみんなは?」
「はぐれてしまいましたの・・・」
「そう・・・」

後退の発光信号を確認すると、コウ達は攻撃対象を戦闘を仕掛けてくるジオン兵に絞り大型MAのいる空域にむかった。
しかしたどり着いた時にはガンダムによってビグザムは爆発の閃光の中だった

「すごいな・・・ガンダムとはいえたった1機で・・・」

コウ達は武器を失ったガンダムがジオン残存MSに攻撃されぬ様に護衛する形で取り囲んだ

「燃料の残量はどのくらいだ?」
「ガンダムはあと3分は戦闘行動がとれます、少佐。」

コウは自分の機体から増漕を外すとガンダムに取り付けた

「規格は合っているハズだ。」

そして予備のマシンガンを渡した

「ありがとうございます」
「敵は後退を始めている、追撃戦になるだろうから母艦に戻った方がいい」
「ホワイトベースはヘスペロスの向こう側に位置してるわ、コウ」

5機は編隊を組んで母艦の空域に向かった

「ジオンの脱出艦艇がこっちに向かっているだって?」
「はい、艦長。」

573戦隊が展開する空域はまともにジオンの艦隊の前にあった。

「近くの友軍は?」
「10戦隊と13戦隊です、あとは単艦で合計20隻。」
「全艦に通達、砲撃戦準備、縦列体型で頭を押さえる。」
「了解」

周辺の艦艇は右舷をジオン艦隊に向けると稼働する砲塔を向けた
レイは指揮を10戦隊ハイペリオンのタキマ大佐に渡した

「コウジの部隊は突入させろ、艦隊直援は気にさせるな、」
「主砲、有効射程距離に入りました!!」
「斉射!!」

マゼランなどの戦艦は自然と大型のドロワに火線が集中するがその防御力に有効打を与えられずにいた

「ムサイにかまうな!あの大型艦を沈めれば今後有利になる!!」

そう叫んだマゼランの艦長は直後にブリッジごとリックドムによって粉砕された、

「カリウス!敵はまだいるのだ!気を抜くな!!」
「ハイ!大尉!!」
「306に手柄を持って行かれるなよ。」

一方コウジ達は大物に手を出さずに確実にムサイを一隻づつ沈めていった

「まずい!全機ヘスペロスの援護に戻るぞ!」
「了解!!」

死にものぐるいで突入してくるジオン艦隊は一点に攻撃を集中させ、その牙はヘスペロスにも及んできた

「右舷エンジン被弾、燃料パイプ付近です。」
「誘爆の危険があるので回路を切り離します。」
「艦の左舷を敵に向けるんだ!」
「メガ粒子砲、エネルギー供給弁大破、52サンチ砲、射撃は可能ですが自動旋回は不能です」
「退艦の準備を・・・」
「MSに52サンチ砲を旋回させろっ!」

 ズゥゥゥゥン

「キャァァァァ!!」
「右舷MSデッキ直撃、大破」
「レジェンドウッドが艦の前に・・・」
「アカギ艦長!!」

すでにウッドの乗員は半数が脱出し始めている、ウッド所属のボールも残存は1機で脱出するランチを守っていた。

「レイ、早く離脱しろ、こちらはもう持たない。」

ノイズが入るモニターにウッドのアカギ艦長が写った。

「そんな・・・」
「ヘスペロス、損傷度50%、右舷火器沈黙!このままでは行動がとれなくなります!!」
「グズグズするな!!」
「でも・・」
「でもじゃない!!みんなの戻ってくる場所を確保するのもレイの役目だ。」

アカギはブリッジクルーも退艦させていて一人で操艦していた
モニターの中にもブリッジの炎がしっかりと見える

「ケイスケさん、アナタも早く!」

この瞬間、レイは軍人ではなく一人の女に戻ってしまっていた。

「君をを守って死ぬなら本望だよ、レイ。」





一機のザクがウッド目がけて突入して行く

「奴はソロモンの死神だ、あの06Rを止めるんだ!!」

コウジはザクに描かれた死神を確認するや叫ぶ

「そんな事言ったって!!!」

ジュンイチロウはキャノンを連射するが牽制にもならない・・・
MS−06R−1、残存するすべてのR−1型がR−1A型に改修されたはずだったのだがこの機体はR−1のままだった

「バズーカの残弾は一発、目標はあの木馬タイプだな、」

パイロットのユージはつぶやく

「チッ!!」

アカギはウッドをザクバズーカの射線上に飛び込ませ
弾頭はウッドの艦首に吸い込まれ爆発した

「くそっ、失敗か!!」

ザクは一撃離脱のスピードだったので仕方無くそのまま通り過ぎていった

「クッ!!まだだ、まだ沈むな!!」

誰かがアカギを殴り倒した

「グッ・・・だ、誰だ・・・」

崩れ落ちるアカギ

「レイ様、」
「ソトイ?いつのまに?」
「このままアカギ様をライフボートで射出します、拾ってください」
「ソトイはどうする?」
「もう脱出は不可能でしょう・・・このまま砲撃しつつ敵に突入します」
「・・・」
「さらばです、レイ様」

ライフボートを射出した直後、レジェンドウッドは爆沈した

「ヘスペロス、戦域より離脱、レジェンドベルに援護を!」

ジオンの艦隊は自らの被害も省みず強引に突破していった
後から合流した艦隊が追撃したがジオンのアナベル・ガトー大尉のYMS−14が放った試作ビームバズーカの前に
藻屑と散った、「悪夢」の言葉を残して・・・

「ソトイ!なぜ死なせなかった!!」

アカギはライフボートからレジェンドウッドの残骸を見ながら嗚咽をもらした




「くそぅ!!!」

わらわらとあつまるジオンのMSにケイは水色のドムに有効打をあたえることが出来ずにいた

「大尉、ザコはまかせて下さい」
「トオルか?よしっ頼むぞ!」
「私がバックアップに付きます。」
「ナオミ、頼む。」

ケイはナオミを伴い、再度突入する

「何だってんだ、あのガンダム、俺ばかりを狙ってきやがる・・・?・・・あのエンブレムは・・・」

ドムのパイロット、マサム・ベイラ大尉には見覚えがあった、一週間戦争の際、サイド2の首都コロニーを核攻撃した時
最後まで抵抗していた連邦の空間戦闘機部隊の部隊章だ。

「なるほど、あの部隊の生き残りか。ならば相手をしてやらんとな。」

マサムはドムにバズーカではなくマシンガンを両手に持たせガンダムに向かった

「ほう、あのスカート付き出てきたな。」
「ケイ!」
「ナオミ、雑魚を寄せないでくれ。」
「解った。」

ケイはビームライフルを連射モードにして撃つがわずかにドムはかわす
元々ケイはビームを当てるつもりは無く、拡散したビームは目的通りにドムの装甲に小さな穴を開けていったのだ。

「何だ?ヤツは・・・白兵狙いか!」

ビームライフルを捨てたケイはサーベルを抜き突進してきたのでマサムはマシンガンを連射するが
ガンダムの装甲はルナチタニウムでありマシンガンクラスでは貫くことが出来ないのだ
無駄を悟ったマサムはヒートブレードに切り替えて横殴りに振るった、
スピードを殺せなかったケイのガンダムは腹部に衝撃が走る

「グッ!!!」

ガンダムの右側面のモニターが破裂し、その破片はケイの体に刺さった
しかし先ほどのビームによって装甲、関節の強度が極度に低下していたドムの腕は肘から折れた。

「何だと?リック・ドムの装甲はこんなに脆いはずがな・・・」

マサラの意識はそこで消えた、コックピットを貫いたビームサーベルで消滅したのだ。

「・・・ノア、仇はとったぞ・・・」

コックピットに火花が飛び散る中、そう呟きケイはどうにかノーマルスーツの穴を応急処置していた。
隊長機を失い混乱し始めたジオンのMSに近辺にいたジムやボールが殺到してそのゲートの制圧は完了した。




「かなり酷い状態だな・・・」

573所属MSがコウを中心に警戒態勢を取る

「レジェンドウッド、撃沈、ヘスペロス、中破、レジェンドベル、小破・・・か・・・」
「直援のボールも3機しか残って居ないわ・・・・」

帰還してきたコウがヘスペロスを見た第一声がこれだった
戦闘が終了してコウ達573戦隊のMSが次々と帰還してきたのだが、傷ついていない機体はほぼ無い。
一番に傷ついた機体、それはアヤコの機体だった、

「そうか・・・ノゾミが・・・」

早くにビグザムを捕捉していたノゾミはそのビームの直撃を受けアヤコの目の前で消滅していて、アヤコの機体もその余波で大破していた、
他には右舷MSデッキの大破により整備員の半分が死傷、ナツミもユミもベッドの上だった
コウ達は中央デッキと左舷デッキに分散して着艦する、損傷軽微なMSは補給して直援として残った。




大破したヘスペロスはコンペイ島(旧ソロモン)に入港し修理を開始、再編成された第一機動艦隊の中核となる
追加で配備される予定だったサラミス級が「ソロモンの亡霊」によって撃沈され573戦隊は2艦のみのままだった

「ケイスケさん・・・」
「レイ、何しに来た?」
「私は・・・」
「艦長たる者、艦と運命を共にする・・・これはキミのおじいさんの教えだ・・・」
「ごめんなさい・・・」
「・・・すまない・・・レイにあたっても仕方が無い事だったな・・・」
「・・・いいえ・・・ソトイの独断とはいえ、私の希望でもありましたから・・・」
「で・・・話は艦長就任の話か?」
「はい、」
「ウッドの乗組員の処遇は?」
「全員ヘスペロスとベルに編入よ、」
「・・・・解った、生有る限り最善を尽くせ・・・これも教訓だったな・・・・・・・」
「ケイスケさん・・・」

レイはアカギの頭を胸に抱え込みアカギが生きている事の喜びを噛みしめた

レイは兼任していたヘスペロスの艦長を退き、アカギ少佐が後任に指名され、レイの説得に応じて就任。
レビル将軍の第一連合艦隊がコンペイ島に上陸する喧噪のさなか573戦隊には短い休息が与えられ
部隊は修理の間、半舷上陸で休息を取りコウは自室で休息していた所にシオリが訪れた

「コウ・・・」
「なんだ、シオリか、そんな所に立っていないで入りなよ、汚いところだけどな。」
「うん・・・ノゾミも逝っちゃったね・・・」
「あぁ・・・そうだね・・」
「戦争だからって、わかってはいるんだけど・・・」
「まあね、でもそれに拘っていると、次はシオリが死ぬかもしれないよ。」

シオリは後ろ手で扉をロックした

「シオリ?」
「私は・・・私は生き残る為にも支えが欲しい・・・」
「シオリ・・・」
「私はアナタが好きです、小さい頃から・・・ずっと・・・」
「僕もシオリが好きだ、よ争終ったら、結婚を申し込もうと思っていたくらいに・・・」
「ほ、ほんとうに?・・・」
「あぁ・・・」
「嬉しい・・・何でだろ・・・嬉しいのに涙が・・・涙が溢れて・・・」

コウはその姿にすでにサキやスズネとも関係を持っている言えなくなってしまい、そして
声を出せず震えるシオリの顎を上げて唇を重ね、涙を舐め取った

「コウ!!」

シオリはコウの胸に飛びついた、

(今はシオリのことだけ・・・)

シオリは想いをさらけ出しコウを受け止めた
コウの腕を枕にして微睡むシオリは

「二人で絶対に生きて帰ろうね。」
「あぁ、しかし二人でじゃないな。」
「?」
「みんなで帰るんだ、故郷へ。」
「・・・そうだねっ!」

第一機動艦隊は、レビル将軍の第一連合艦隊とは行動を別にしてグラナダ方面に進路をとっていた。
ジオンに行動を読ませない為である、
連邦軍は大きく3つに艦隊を分けて進行中である、主力の第一連合艦隊、その支援に第二連合艦隊残存艦隊、
速力の早い第一機動艦隊である。
ヘスペロスは旧ソロモン、コンペイトウ鎮守府で応急修理を行い、少し遅れて進軍していた。
工作艦を付随させ修理を続行しながらの強行軍である

「レビル将軍の作戦指示はまだか?レイ。」
「コウ、あせるな。」
「艦長、補給艦が接舷を求めています。」
「解った、サツキ、各員半舷休息、今のうちに休息をとらせろ。」
「了解、」
「艦長、グラナダから出たジオン艦隊が第二連合艦隊と交戦を始めたみたいです。」
「なんだと?」
「この距離では、応援は出せないわね。」
「大丈夫だよ、シオリ、あの艦隊にはホワイトベースがいる。」





一方、ジオン突撃機動軍第十一師団所属第三艦隊が進路上の残骸の中で第一機動艦隊を待ち伏せしていた
先発隊はカタパルトを使用せずに、艦を蹴る様にして発艦、ガトルやジッコの牽引で展開していった。
左右からの挟撃の為に反対側に廻るのだ、対艦攻撃能力の無いディマンシュ級は残骸から離れられない。

「チャイカ中尉、発進10分前です。」
「わかった、RZの状態はいいようだ、」
「ありがとうございます、でもいいんですか?ゲルググの方が性能がよいのでは・・・」
「私にはこの機体の方が慣れているのよ、」

チャイカはコウのガンダムに負けたあと自機のMS−06RZを強化し、スコアを上げていた
艦隊でもザクを使用しているのはディマンシュの隊だけであとは、ドムやゲルググに換装されていた

「CPよりツキムラ少尉、白い炎隊発進です、」
「了解、各機、発進後ポイント13で待機、」
「了解です、隊長。」
「ケイ、今日も勝負だ、」
「何を賭ける?エリチャフス。」
「そうだな・・・エミリ少尉とデートってのはどうだい?」
「ちょ、ちょっと、ツキムラ少尉にミヤウチ少尉、勝手に決めないでよ。」

ブリッジの通信オペレーター席に座る、エミリ・ブロッサ少尉は二人の会話にあわてて入り込んだ
この3人は小さい頃からの幼なじみで艦内でもいつも大騒ぎして艦の名物の一つだった。
艦長もすでにあきらめ白髪を増やしていた・・

「ケイ・ツキムラ、マリーネフレイム出ます!!」
「エリチャフス・ミヤウチ、マリーネシュツルム発進!!」
「ちょっと!待ちなさい!!・・・もう・・・」
「ブロッサ少尉、マリーネドランケ発進してよろしいですか?」
「え?・・あっ・・はい、どうぞ。」
「アルベルト・ラインゴルト、マリーネドランケ発進します!」

ケイ・ツキムラはゲルググをカタパルトに移動させ発進した。
少尉はジオン公国最後の士官学校卒業生で、首席卒業という成績優秀だったのと、
ジョニー・ライデンらの推薦もあって小隊長に任命されていた。

「小隊の指揮官ってガラじゃないよな・・・」

スロットルを入れるとゲルググはケイの思う様に加速する、

「CPより第六中隊、カンザキ大尉発進どうぞ・・・・」

ケイ・ツキムラの所属する第十一師団第三連隊ディマンシュ級キリアキはMS−14が配備されている
搭載機のうち残りもゲルググだが量産のA型とB型、C型などである。
若い彼らには、広報の意味もあって、最新鋭の機体が配備され、
しかも白を基本としたカラーリングがされている、選抜された卒業生10人で構成される白い炎隊はプロパガンダも兼ねる部隊である。
グズヌフの方はMS−09RUなどのリックドムがメインで配備されていて
末期によくある混成部隊である、あと艦隊には実用試験の名目で一隻の新造艦がいた
「ラグナ・ヴァルキュリア(最後の戦乙女)」
そう名付けられた艦は前半分にムサイ、後ろにガウが付いていた。
本国の工廠で製造されたガウのうち地上に降ろせなくなった一機を、
エンジンを宇宙用に換装してムサイの後部に接合して作った改装重巡洋艦である、
ガウに装備されていたメガ粒子砲はそのまま装備されているので艦砲戦力だけでも2.5倍の強化
MS搭載量もガウ本体部分がまるまるMSデッキになったことで10機以上搭載可能になっている。
同様に作られた数隻は「バルキリー級」としてジオン軍に認可されていて
ムサイのタイプごとに種類が存在する。
翼部分の航空機デッキはそのままガトル空間戦闘爆撃機を3機づつ搭載しているが、
この艦は戦闘機に変わりにある物を搭載している。
そのブリッジの指揮官席の前に立ち戦場を想定せ眺める少女と言ってもいい容貌の女性士官を
後ろから落ち着かせるかのように背の高い士官の男が抱きしめる、彼女も安心して身を任せていた。

「メイ、いいのか?あの艦隊は君のお姉さんがいる艦隊だぞ?」

男は耳元で優しく、なれど厳しさを含んだ声でささやいた

「いいのだ、ナオト、連邦とジオンのどちらが勝ってもいいようにメイがジオン軍に所属しているのだから・・・」

少女も甘えて、なれど決意を込めた声で答える。

「メイ・・・」

抱きしめる腕に力が籠もる。

「ナオト・・・出撃してくれ・・・」

その腕を掴む手にありったけの力が籠もる。

「解った・・・A・B小隊で強襲する、C・D小隊は直援だ、指揮はサクノシン。」
「そうしよう・・・」
「メイ様、ナオト様のラピス・ラズリの用意は出来ております。」
「解った、サクノシン、ご苦労。」
「ブースターにビームカノンを接続させておいてくれ。」
「了解です。」

ナオトがブリッジから出るのを見送ったあと、メイは指揮官席に座り

「我がラグナ・ヴァルキュリアは艦隊の前方に固定、アローヘッド!第一MS中隊はナオト・タカミ大尉を中心に敵艦隊に強襲。」
「了解です、メイ様。」
「システムの準備は?」
「はい、いつでも行けますが、起動にはタカミ様のコードも必要ですので・・・」
「解ったのだ。」

メイ・イジュウイン、ジオンの軍人としては中尉にすぎないが身分上この艦の司令に収まっていた、
レイ・イジュウインの実妹である
この戦いが彼女の初陣なので、この戦闘が終われば二階級特進で少佐の地位が用意されていた
ナオト・タカミはメイの士官学校の先輩で同期にシャア・アズナブルやガルマ・ザビがいた為3番手より上に上がれなかった
さらに本国防空隊に所属していたので、ルウム戦役などに参加していなかった。





「アカギ艦長!!ジオン艦隊発見、残骸に隠れていました!」
「まずい、第一波が来るぞ、第一種戦闘態勢発動、MS隊スクランブル!!」
「ジュン、発進だ!すぐに俺達も行く!!」」
「了解!」
「573戦隊各機スクランブル、準備出来しだいに発進!!」
「コウ!」
「出るぞ、シオリ!」
「わかったわ!」

副艦長兼任と、副司令兼任の立場のコウとシオリは戦闘配備でもパイロット待機室でなく
ブリッジかサブブリッジに待機しなければならない。

「艦はこのまま直進、対空監視おこたるな!!」

スクランブルのブザーが鳴り響き
MSデッキの人員が慌ただしく動きまわり、発進に備える

「連邦がこちらに気付いた様だな、全機攻撃開始!!」

キリアキの艦長が命令を発すると各MSの火器から炎が上がった

「ジオンは左右に分かれて攻撃してきます。」
「索敵はなにをしていたんだ?敵の展開に気付かないとは・・・」

後続するサラミスの一艦が爆沈する。

「誰が沈んだ?」
「六戦隊のミョウコウです!」
「573戦隊は敵艦の方向に前進!バクレツザン司令官に打電!!
テキはワレがひきうける、合流地点へ急がれたし!!!以上」
「了解!!」

レイが命令せずとも、彼女の意向はアカギが素早く命令するので、レイは安心して先の事を考えていられた
戦場のどこかに妹のメイが戦っている、自分の為でなく家のために、
できれば戦いたく無い、それが本心だったのだが・・・

「連邦め、二手に分かれたか、あの2隻がこちらに突っ込んで来るから、陣形が崩れたな・・・」
「タカミ大尉、」
「我らはこのままあの2隻に強襲する、あくまで一撃離脱だ、白兵は極力控えよ。」

つきそう6機のパイロットは訓練ではかなりの成績だが実戦は初めて、そんなパイロットに
熟練を必要とする白兵戦をさせるワケにはいかないのだ。

「了解です。」
「・・・メイにFARGOの連中が作ったシステムを使わせるワケにはいかないからな・・・」

タカミの機体に従うのはドム・フュンフの宇宙用6機、一応最新鋭の機体である。

「こちら、以下第21宙雷戦隊、573戦隊を援護します。」
「了解した、レジェンドベルを先頭に円陣形をとれ!」
「了解!」

別れた本隊の最後尾に位置していた第21宙雷戦隊がヘスペロスの護衛に接近、
アカギはバクレツザン大佐の差し金と解っていたのでそのまま陣形を組んだ

「フっ、まるで大和の陣形だな・・・」
「ダババからMSの増援3機来ますっ!!」

旧世紀、当時世界最大の戦艦が最後の作戦に向かう際の陣形をアカギは思い出し自らを嘲笑した

「コウ君!」
「サキちゃん、行けるな?」
「まかせて!ぶいっ」

サキが明るくVサインをするのでコウもつられて

「ぶいっ」

と、返す。

ココまでの行程の間にサキは哨戒任務にかこつけた特訓で
コウとシオリとのフォーメーションをばっちしとれる様にはなっていた
が、あくまで非戦闘時でのことだ。

「コウ!早く。」
「解った、シオリ。」

二人の仲の良さに少しムっとしたシオリはわざとコウの腕にしがみついて呼ぶ

バチッ!

シオリとサキの間に一瞬稲妻が走った気がしたコウは両手で二人を抱えデッキに飛び出した
そして二人のバイザーを自分のバイザーに付けると

「いいね、絶対に生きて戻ること。」
「了解、コウ君」
「解ったわ、コウ。」

二人はコウに抱きかかえられてほにゃ〜んとなり、素直にコウの言葉に従い
それぞれのコックピットに潜り込んだ

「・・・戦争が終わってからって事よね、コウくん・・・」

サキはすでにアイドリング状態のガンキャノン・アサルトのコックピットに座ると機体のチェックを始めた

「え〜と、E−CAP充填OK、推進剤満タン、ニードル・ミサイル接続OK・・・・・・」

ガンキャノン・アサルトは背部にガンダムのビームライフルと同出力のビームキャノン2門と
左腕には連装ビームキャノンを装備して両肩にはニードル・ミサイルポッドを装備する支援用MSだ、
一方シオリのガンダムではシステムエンジニアのユウカ・ハヤカワ少尉がまだコンソールをいじっていた。

「え?まだ終わってなかったの?ユウカ。」
「あ〜ごめんなさい、今終わった所です〜ばっちし希望どおりにできてますよ〜」
「リミッターの解除はどれ?」
「このレバーを引いて〜90度ひねってください〜」
「ありがとう、ユウカ。」
「シオリさん、ちゃんと帰って来てデータくれないと嫌だよっ」
「まかせてっ」

コウがコックピットに入ると、ハヤカワ中尉がそばに来た

「少佐〜あんま無茶せんといて下さいなっ、ただでさえコイツ整備メンドイんやから・・・」
「はは・・覚えておくよ、調整は?」
「ハードリミッターもソフトリミッターも解除してありますわ、しかしこんなにはよう限界まで使いこなすとは思わなんだな。」
「性能がいいからつい無茶しちゃうんだよね、はは・・・」
「あと、例のトレースシステムやけど、このスイッチで切り替えて音声入力で起動します。」
「音声入力?」
「つまり名前を叫ぶんですわ。」
「叫ぶ・・・恥ずかしくないかな?」
「テストしたんやけど、ごっつう萌えまっせ。」

使わない様にしよう、心でつぶやくコウだった。

「A小隊出るぞ。」
「進路クリアー、発進どうぞ、少佐。」
「この状況でクリアーか・・・」
「スイマセン、少佐・・・」

サツキのまだ固さのとれない声と表情に苦笑しながらコウはガンダムを発進させた

「さて、敵は3方向に展開してるのか、」
「アニキ、」

コウジのジムが接近してきていた

「ん?」
「ケイさんは右翼、カツマさんが左翼に展開、ジュンさんが正面でボクが直衛。」
「OKだ、行くぞ。」
「了解!」

573戦隊の正面に位置したタカミは号令をかけスロットルを全開にした

「いくぞ、突撃。」

先陣を切ったのは、タカミ率いる部隊だった
機体よりも大型なブースターをマウントしているタカミのMS−18G ラピス・ラズリはかなりの加速で突進するが
コウ達のパルス状のビームの雨に進路を変更せざるおえず、
その強力なビームは盾となったレジェンド・ベルに突き刺さった。

「前方、大出力ビーム来ます!!」
「回頭!急げ!!」
「キャァァァ!!!間に合いません!!!」

艦首に直撃したビームは前半分を削り取っただけでなく、
メインエンジンをショックで停止させ全電気系統を使い物にならなくさせた
エンジンの停止は暴走しなかっただけ運が良かったのだが、ハッチが開かないなど脱出は困難な状態であった
総員退艦の声も伝えるすべがなく、脱出に成功したのはわずかであった。

「シオリ、」
「ハイ。」
「サキちゃん。」
「はい!」

コウは一言しか発しなかったが二人はそれだけでちゃんとフォーメーションを組み攻撃をしかける

「やるな、さすがメイの姉上の部隊だ・・・残念だが、この角度だと艦に戻るしかないか、
ミサカ、アマノ、キタガワ、ウォルフ、俺のブースターに取り付け、」

残った4機のドムがフックを掴むとタカミはラグナ・ヴァルキュリアへ向かった

「試作品だからな・・・このビームバズーカはもう使えないか・・・」

一回の発射でビームバズーカはメカニカルトラブルを起こし使用不可能になっていたので、
ナオトは切り離した。

左右からの波状攻撃の中、573戦隊のMSはこの段階では一機の離脱も無く良く戦っていた。

「コッセル、どうした?」
「はい、シーマ様、前方で友軍が戦闘中でさ。」
「進路は?」
「そこを突っ切らないとキシリア様の艦隊には合流できませんな、どうしやす?」
「出るに決まってるだろ、せっかく新型を貰ったんだテストしないでどうする。」
「しかし準備が出来ているのはこの艦だけですぜ?」
「トロいね、リリーマルレーンだけで行く!」
「了解しやした、オイ!MS発進だ!!」

チャイカのザクも防御ラインを突破することが出来ず弾薬、燃料不足の為に後退、
ケイ・ツキムラの隊もアルベルトが戦死し、自体も被弾して流れていた、
駆逐艦をすべて沈められた573戦隊のどうにかの勝利が見えたとき、後方からのゲルググ4機の強襲に混乱した

「新しい艦隊だと?」

アカギが驚いて叫ぶ、赤外線センサーでも目視でも後方には敵を確認できなかったからだった。

「潜宙ガスを使用したと思われます、4隻の艦隊です、」
「MSは?」
「4機確認です。」
「迎撃!急げ!」
「ヨシオの小隊が向かっています。」

シーマのMS−14Fsゲルググ・マリーネと部下の4機を出迎える位置に居たのはヨシオの小隊だった、

「また新型かいな、そっちの新米共、ついてこいよ!」

最初(はなっ)からシーマの目標は艦隊なのでヨシオ達のビームを避けると
簡単に突破していったがジムを2機墜として行ったのは
技量によるものでしかない。

「畜生!追うぞ、貴様は大丈夫か?」

ヨシオは生き残りのジムに声をかけた

「アイザワ少尉です、大丈夫行けます」
「ユーイチか、着いてこい!」
「了解」
「いや、コウジがいるから俺達は敵艦を叩くぞ。」

ナオト・タカミは「ラグナ・ヴァルキュリア」に帰還していた

「ブースターをはずせ!すぐに出るぞ、装備はB装備だ、急げ!」
「待つのだ、ナオト、」
「何故だ?メイ」
「時間だ、撤退するぞ。」
「解った・・・モビルスーツはいつでも出せる様にしておけ!」

ケイ・ツキムラは偶然にも「リリーマルレーン」に収容されどうにか機体の応急修理をして貰っていた

「コッセル大尉、敵MS3機接近してきます!」
「MSは?」
「まだ組上がっていません、ザクならあと5分で出せます。」」
「チッ!なんてこった・・・そうだ、さっき収容した奴はどうだ?」
「モニター出します」
「ケイ・ツキムラ少尉です、何か?」
「悪いが敵が来やがった、補給と修理分をチャラにしてやるから出ろ。」
「了解です。」

応急修理されたツキムラの機体がカタパルトに移動している

「NI CONP、SET。」
「SET!」
「AIR BLEED、SET。」
「SET!」
「ENGINE ANTIICE。」
「カウントダウン開始!」
「了解、マリーネ・フレイム、行きます!!」

射出されるゲルググ

「坊主、死ぬなよ・・・、ザクの発進を急げ!野郎共!!」

「敵はグース3機か・・・」

ツキムラはビームマシンガンを連射して牽制をかける

「敵は一機だ、アヤコ、ユーイチ、気を抜くなよ。」
「OK、」
「了解」

ツキムラの放ったビームは、ヨシオの左腕を貫き、アヤコの右足を破壊した、

「チッ、いい腕だ。」
「Oh,バランサーの調子が・・・」

ケイは動きの鈍った一機にビームを集中させながら後方に下がった

「危ない!!」

ユーイチが声を上げるがバランサーの調子が狂ったアヤコは機体をうまく制御出来ずに
ゲルググのビームにコックピットを直撃された、

「・・・・ソー・・・リー・・・・」

爆発、飛散するアヤコの機体。

「参ったな・・・・」

ビームを避けつつ、ヨシオは歯ぎしりしてつぶやいた。
ユーイチも後続のザクが発進してきたのを見て

「ヨシオさん、ここは引いて母艦の護衛に・・・」
「・・・そうだな、・・・・」

ジムが下がったのを見て、コッセルは。

「少尉、わざわざ追うな、後退の発光信号が上がった、味方の艦隊と合流してシーマ様を待つんだ!」

シーマの方も迎撃に立ちふさがったスミレ、ホムラ、アカネを撃破した所で発光信号を確認し
リリーマルレーンへ帰還した。
ヨシオも頭部を失ったカオリを回収しヘスペロスに帰投した

「ジオン艦隊離脱して行きます。」
「そうか・・・わかった、生存者の収容を急げ!MSにはベルの救助を。」
「了解しました。」
「被害状況チェックだ、ミオ!」
「はい、ヘスペロスの損傷は軽微ですが居住ブロック近くに被弾、2名死亡、MSは識別確認20、5機は反応在りません。」
「精鋭部隊とぶつかった・・・と言う事か・・・」

コウ達は外からレジェンドベルのエンジンを切り離し、ヘスペロスからの電源を使用、
ブリッジなどの閉じこめられていたクルーの救出に成功していた、
居住ブロック近くの被弾で、怪我によって療養していたミラ・カガミとユミ・サオトメは不運にも何回も壁に叩き付けられ
命を落とした。
妹の死にヨシオは錯乱したが、ユウコの献身で表面上は元に戻っている。

「そうか、キョウコも戦死か・・・」

ケイから報告を受けコウは声を落とした

「結果、又仲間を俺達は失ったのか・・・」

感情のないコウの声、全員彼は一人になったときに悔しがるのを知っているので
声をかけずにいた。

「コウジ、すまんが待機していてくれ、あとは休息を・・・」

レビル将軍のア・バオア・クー侵攻が発表されたのはその直後だった。





ソーラ・レイの一撃はデギン公王とレビル将軍を巻き込み、第一連合艦隊を襲い、
無傷の艦はほぼ無い状況に陥らせた
ギレンがア・バオア・クーで演説をしている頃、
コウ達の居るヘスペロスはレビル艦隊とは正反対の第三防衛ライン上に集結しつつあり。
そこで遭遇戦による損傷の修理に工作艦を接舷させていた。

「サツキ!状況は?」」

もう何度目だろうか、アカギは通信オペレータのサツキに聞き直す
作戦の司令部が消失したことに、連邦軍艦隊は混乱を極め、
レビル将軍率いていた第一連合艦隊のみならず
別働隊である、第二連合艦隊残存艦隊、第一機動艦隊をも歩調を合わせる為に奔走していた

「旗艦をルザルに移してホワイトベースを基点に再集結中です、」

だいぶオペレーションに慣れたのか、ハッキリした言い方でサツキは答える
マゼラン級とはいえ、ルザルには、フェーベ(レビル将軍の乗艦、マゼラン級戦艦)
ほどの旗艦設備は整っていない、アカギはこの戦いがいくつもの司令系統による混乱を予想した

「第一機動艦隊の行動は?」
「予定通りに開始せよ、です。」

アカギの顔がしかめる、
予定通りと言うことは、本隊の再集結を待たずに攻撃を開始しろと言うことだ、
当然、各個撃破される事があり得る・・・

「艦長。」

第一機動艦隊旗艦に出向いていたレイがブリッジの戻ってきてアカギに声を掛ける

「我が艦は、応急修理が済み次第、戦列に復帰、MSは直援を除いて先行して出撃。」
「了解、」

アカギはMSデッキのコウをモニターで呼び出す
整備人員の被害が大きいヘスペロスでは、ソフトウェアなどの調整はパイロットが自分から行っていたのだ、
作業着姿のコウがモニターに写る。

「状況は今そちらに転送した、」
「了解、艦長。」

主力たるMSも、そのパイロットも満身創痍である、
編成時から比べて、パイロットの数も大きく減り
573戦隊では、21人となる。

「ちょっとみんな集まってくれ。」

コウは左舷デッキにいるメンバーを集めた。

カタカタカタ・・・

画面に現在状況が映し出され、指揮官用の命令書もプリントアウトされる。

「う〜〜ん・・・厳しいなぁ・・・」

データを見ながらコウが呟く

「そうなのか?コウ。」

ヨシオの問いに振り向かずに答えるコウ、

「戦力不足は否めないな・・」
「・・・」
「編成を少し変更しよう、」

モニターのデータを一通り見た後、
ブリーフィングルームに揃った面々の前で、コウは切り出した、

「A小隊は、俺と、シオリ、サキの3人、」

「解ったわ、」
「うん、解った。」

「B小隊、カツマ、ユウコ、ユカリ。」

RGM−79NSとRGM−79Bが二機

「C小隊、ケイ、ナオミ、パット、カオリ。」

RX−79EX−2とRGM−79Bが二機、RGC−80が一機

「D小隊、ジュン、マホ、ミホ、ミハル。爆装も追加」

RGM−79NSとRX−77B、RGM−79(E)、RGC−80

「E小隊、コウジ、ジュンイチロウ、ヒカル、コトコ、」

RGM−79NSとRGM−79L、RX−77DとRX−77B

「F小隊、ヨシオ、サクヤ、タツコ、アイ、ユカ。」

RGM−79SCとRX−75、RB−79K、RB−79

読み上げられる編成に各自が頷いてゆく

「直援指揮はヨシオに頼む、」
「了解だ、コウ。」
「そして、ヘスペロスの直援に、133戦隊のクマノが合流する予定なのでそこのMSもヨシオの指揮下に入る。」
「何機だ?」

カツマが聞いてくる、味方は多い方が良いのだ。

「残念ながら、3機だ、」
「少ないな・・・」
「戦闘で消耗したみたいだからな。それでも79GSだ、期待出来る。」
「発艦したあと、パブリク改造の揚陸艇に小隊ごとに接続、ビーム攪乱膜の内側に突入するから、注意だ。」

シオリが続ける

「ビームが無効なのは向こうも一緒だから、多分ミサイルで対抗してくると思うの、
誘導は出来ないはずだから、当たらなければ大丈夫ね。」

各自の顔には緊張が走り、目はだんだんと真剣になっていた。

「では、20分後にコックピットで待機だ、食事なり、シャワーなりして来たらいいよ。」

途中で言葉遣いを変え、学生の頃に使っていた言い方で声をかける。

「生き残るのが優先だ。」
「戦力が厳しいのはジオンも一緒だと思うの。」

皆に顔には笑みが戻り、各自行動を開始した。



「準備はいいかしら?」

レジェンドベルが沈んだあと、カスミ・アソウ少佐は
第11駆逐隊所属フユヅキ級護衛駆逐艦「モエギノ」の艦長に就任
まだ訓練途上の新兵を指揮する事となった、第11駆逐隊は第21宙雷戦隊を離れてヘスペロスの護衛が任務となり、
カスミの着任でモエギノが旗艦となる。

「ハ、ハイ!」

まだ危なっかしさの残る操舵担当のウェーブ、ユキコ・マキハラ曹長が答える。

「艦長、ヘスペロスは機関部の修理が遅れているそうです。」

通信オペレータのエミ・タチバナ曹長がカスミに伝える

「解ったわ、リカ曹長、エンジンはアイドリングで待機。」
「了解。エンジンアイドリングモード。」

モエギノは自動化のテストを兼ねて改装され、ブリッジに居る7人だけで操艦、攻撃が可能な様になっている、
故に非力な少女兵ばかりがクルーとして配置されていた、
(機関室には、それなりに技術を持つ兵が乗船してはいるが・・・)
その機関調整席にいるリカ・カワイ曹長が答える。




「修理終了、工作艦離れます。」

接続チューブの切り離しを確認をしつつ、ミノリが報告の声を出す

「よしわかった、第二種礼文で通信を送っておけっ、」

それを聞いてアカギはスズネに命令する

「了解。」
「増援の状況は?」
「あと、一個戦隊の合流で集結完了です、旗艦よりの戦闘陣形A−30、00に移動の指示がきました!」

アカギはそれを聞いてタムラに指示を出す

「よし!艦を移動させろ!!」
「了解!」
「メインエンジン出力80%、上昇中!」
「リニアカタパルトに火を入れろ!」
「了解!」
「主砲、弾頭七九式対空炸裂弾、装填!」
「第12駆逐隊展開開始します。」

姿勢制御用のバーニアを上手く使い、位置を固定するヘスペロス
射撃前のテストで砲身を上下に動かす主砲、
巡洋艦クマノと駆逐艦8隻が周辺を護衛に囲む。

「時間合わせっ、3・・2・・1・・作戦スタート!!」

通信のオペレーションは現在二人、
大混乱の状況から、情報収集と、戦隊内の通信と担当を分けたのだ、
そこで頑張るスズネにアカギは声をかける。

「あ・・・スズネ。」
「はい、艦長。」
「すまんがこのディスクをコウに届けて来てくれないか?渡すのを忘れた・・・」
「えっ?・・・・あ、はいっ、」
「慌てないでいいからな。」

ブリッジを出たスズネに慌てるななんて、大切なディスクじゃないのかな?
などと、スズネは疑問に思いながらも、エレベータに消えた。

「お優しい事・・・」

キャプテンシートの反対に設けられた司令用のシートに座り、
レイ・イジュウインはジト目でしかし優しくアカギを見つめた。
アカギの意図はバレバレだった。


ノーマルスーツルーム、きらめきのみんなと写っている写真をポケットにしまい込むコウ、
出ようと顔を上げると、そこにはシオリ、サキ、スズネが立っていた。

「どうした?」

無言の3人、写真を見つめるコウに何か感じたのだろうか・・・

「もう出撃だ、デッキに行くんだ、スズネも早くブリッジに戻らないとレイに怒られるぞ。」

わざと普通に応対するコウ、
3人はそんなコウにしがみつきコウの瞳を見つめた。




艦内に警報が鳴り響き、食堂などの生活業務担当の人間も、仮設され増備された銃座に駆け込む。
カタパルトから、攻撃担当のモビルスーツが次々と発艦して行く。
クマノからも、同じ配色の青とピンクのジムコマンドが発進してゆく。

「MS隊、揚陸艇に合流!」

コウから通信が入る。

「主砲、メガ粒子砲、照準は任せる!味方に当たらなければいい!!」
「了解!」

パブリク突撃艇が先行して加速に入り、その後を追う様に、MSが3〜4機掴まっている揚陸艇が続く
そのパブリクの道を空ける様に砲弾とビームがア・バオア・クーに降り注ぐ。
そしてア・バオア・クーからも、ビームとミサイルの雨が降り注ぐ。

「ソロモンとは比較にならないほどミサイルが来るね、コウ・・」

パブリクに向かい飛んで来る、ミサイルとビームにシオリは不安を隠す様にコウに声を掛ける
ソロモンの時は、ソーラシステムによって出来た死角から進行した事もあって、
シオリは、ミサイルのシャワーは経験していなかった・・・

「(不味いな、ビーム攪乱膜が予定の1/3以下だ・・・)」

コウはモニターを見据え、戦況を読んでいた。




ジオン突撃機動軍所属、ディマンシュ級ディマンシュ・・・

「チャイカ、出撃はいいかしら?」

艦長のオリビアが待機室のチャイカに声を掛ける、

「そうね、私のザクも強化して貰ったし、今度こそあのガンダムを落とすわ。」

ノーマルスーツのチェックを終えて、本から目を離さないで答えるチャイカ

「頼もしいわ、じゃ、10分後に出撃してくれる?」
「ア・バオア・クーに行くんじゃないの?」

そこではじめてチャイカは顔を上げてオリビアを見る

「挟撃よ、連邦の艦隊に一撃離脱、そのままア・バオア・クーで補給を受けて防衛戦ね。」
「・・・ハードね・・・」

栞を本に挟み、ロッカーに入れるとチャイカは立ち上がりMSデッキへと流れて行った。

「続きを読みたいから、帰って来るし、沈まないでよ、オリビア艦長!」
「当たり前じゃないっ、」

チャイカはコックピットに座ると、一人呟いた・・

「ほんと、ここはもう私の家だからね・・・」



艦隊戦が始まった・・
両軍ともにありったけの兵器で攻撃を開始
ビーム攪乱膜により、ミサイルが嵐と降り注ぐ




ラグナ・ヴァルキュリアのブリッジ・・・

「メイ・・・システムは稼働出来る様にはしてある・・・が出来れば使って欲しく無いな・・・」

ノーマルスーツを着た二人は軽い抱擁をしながら言葉を交わす

「ん・・・ナオト・・・」
「じゃ、行って来る。」

軽くキスを交わして、ナオト・タカミ大尉はブリッジを後にする。

「・・・いってらっしゃい・・・・なのだ・・・」


待機していた2人の部下がナオトに続く

「なぁ、ミサカ、俺達も出撃のキスしようぜ。」
「嫌。」
「え?」
「嫌、お断り・・・もっと言ってほしい?」
「つれないなぁ・・・。」

後ろから聞こえるふたりのいつものやり取りに、つい顔が笑うナオトだった。




ケイ・ツキムラはまだリリーマルレーンに居た・・・

「一人で守ってくれたって言うから、どんなパイロットかと思えば、こんなボウヤだったとはねぇ・・・」
「す、すいません・・・」
「(シーマ様は年下趣味もあったのか・・・)」

頬を撫でられ翻弄するケイを眺めて、コッセルは苦笑していた。




戦端が開始されて10分後、すでに猛攻撃の中、艦艇は1/4が沈んでいる。
そんな中から、モビルスーツが両軍から出撃していった。
コウ達は先行したものの、
空母ドロスやその周辺のモビルアーマーに行く手を遮られていた。
モビルスーツの敵では無いとは言え、空間戦闘機ガトルの団体を吐き出し続けるドロスは
的であり、巨大な壁だった、
そんな状況で奮戦するコウ達だが、転記が訪れる。
Sフィールドの空母ドロワが沈んだのだ、
その穴埋めに大きくMSの移動があり、
その隙を突いて連邦のMSがア・バオア・クーに取り付き始めたのだ。
この時点でギレンはキシリアに射殺されていた。
コウ達も、橋頭堡の確保に、と次々に対空砲座やドックを潰して、
友軍の援護をする。

「ん・・・・」

コウになにかインスピレーションが湧いた、「来る・・・」
機体を翻し、プレッシャーのある方向にガンダムを向かわせた。

「ケイっ!後の指揮はまかせたっ!!」

「どうしたの?コウっ」
「コウくん?」

慌ててシオリとサキも後を追う。

3機の行動にナオミがケイの機体に接触した。

「どうするの?ケイ。」
「しょうがないな、状況は混戦しているから、各小隊ごとに分散しよう。
予定だとヘスペリスも接舷してくるはずだから、集合はそこだ。」

各個散開したあと、ケイはケイで、コウが向かった方向とは逆に向かって行った。



「あの機体はあのガンダムの仲間・・・・」

ケイのガンダムを見つけたチャイカは、周辺のジムを無視してスロットルを吹かせた。




「整備ありがとうございます。」

リリーマルレーンのMSデッキ、ようやくシーマから開放されたツキムラは、
ノーマルスーツを着込んで自らのモビルスーツに向かい、整備兵に挨拶をした。

「な〜に、シーマ様の命令だけでなく、おめえみたいな純なヤツは好きだからな、頑張って来い!」
「はいっ」
「おや?坊主、搭乗前のチェックはしないのか?」
「はいっ、みなさんを信じてますからっ」
「そんな事言わねえで見てってくれや。」
「は、はぁ・・・・」

ケイは言われるままに機体の周囲を廻った。

「あれ?・・・」
「どうだ、坊主、パーツの交換ついでに強化してやったぜぃ。」

ケイのゲルググ・マリーネは胸部や脹ら脛が被弾していたのだが、
なんとシーマ機の予備部品で修理されていたのだ。
頭部バルカンの有無以外に、シーマのFs型と同型になったと言える。

「坊主の機体データを見たらな、こっちの方がもっと使いやすくなるぜ。」
「いいのですか?」
「良いって事よ、さ、行け。」
「はいっ」

ツキムラがゲルググにビームマシンガンを持たせてハッチに向かおうとしたとき、
管制官が声をかけた。

「坊主、シーマ様がコレを持って行けってよ。」

キャリアーで運ばれて来たのは、シーマのゲルググが使うビームライフルと同型だが、
大きく、さらに長いものだった。

「これは?」
「ロングライフルだ、モード選択で、マシンガンも、高出力ビームの両方が使える。」
「いいんですか?」
「長すぎてシーマ様は使いづらいとよっ、その分威力は十分あるから持ってけ。」

ツキムラはビームマシンガンを腰にマウントして、ロングライフルを掴んだ。

「ありがとうございます、使わせてもらいます。」

ツキムラはキリアキの居る空域に向けて発進した。
その姿をノーマルスーツを着込んだシーマが見送る。

「シーマ様・・・」
「ボウヤもマハル出身だってさ、終わったらみんな一緒に帰りましょうだとよ・・・」
「頼もしいボウヤですな、シーマ様。」
「あぁ・・・ああいう子が居ると、アタシらの行為も少しは報われるってもんさね。」
「そうですな・・・さ、シーマ様。」
「うむ、・・・・・野郎共!!出撃だっ!!!!」

シーマ艦隊からも、全機発進し、戦場へ向かって行った、




「ツキムラ少尉機、リリーマルレーンで修理を終えて発艦してきました。」

キリアキのブリッジにエミリ少尉の嬉しそうな声が響く、
ツキムラの相棒のミヤウチは、それを待っていましたと言わんばかりに、
MSデッキに躍り出て、ゲルググを発進させた。。

「ケイ・ツキムラ少尉、ただいま復帰します。」
「何やってたのよっ、ケイっ、あたし心配してたんだからねっ、」
「修理が大がかりになっただけさ、それよりエミリ、デート忘れるなよ?」
「わっ・・わかったわよ、そのまま出撃、OK?」

ボンッと真っ赤になりながらエミリは応答した。
MSデッキに着艦したゲルググに整備員が取り付いて燃料などをチェックし、補給を開始する。
エミリはパイロット用のノーマルスーツに着替えて、待機ボックスでツキムラを待って居た。

「あれ?エミリ・・・」
「えへへ・・・わたしも予備パイロットだからね、」
「そ、そうなの?」
「よろしくね、ツキムラ中尉。」
「へ?」
「3人とも少尉だから戦時階級だって、ケイ。」
「機体は?」
「ゲルググ・マリーネ304よ、キャノンパックを付けて貰っちゃった、てへっ」
「そうか・・・じゃ行くかっ・・・ん?」

デッキに向かおうとするツキムラの袖を掴んで、エミリは何か期待する目をツキムラに向ける。

「そうだね・・・・」

軽いキス、そして深いキス・・・・

揃って発進してきた二人は、ミヤウチに追いかけられる様に戦場に向かった。



バシュゥゥゥゥ・・・・

一機のゲルググをビームサーベルで一刀両断したコウは、
その爆発の光の向こうにナオト・タカミのMS−18Gラピスラズリを発見した。

「あいつか・・・」

リックドムを撃破したシオリとサキが追いついた。

「あの機体は・・・」
「サキ、知ってるのか?」
「メイちゃんの所のモビルスーツよね・・・確か・・・」

コウの機体はもうビームライフルのエネルギーが無い、
ビームサーベルの出力を最大にするや、シールドを構えて突進した。

「ほう・・・さすがメイの姉上の配下だ・・・相手にとって不足は無いっ!
ミサカとキタガワは、後方の2機を牽制して援護だっ」

ナオトも、ビームマシンガンを捨て、ビームサーベルでコウを迎え撃つ。

ギュインッ

ビームが干渉で弾け合い、二人は幾度もぶつかって行く。

「やるなっ、」
「貴様こそっ、」


シオリは右のドム・フュンフにライフルを撃つと同時に左のドム・フュンフにサーベルで斬りつける。
背後を取ろうと右のドムが廻ろうとする所にサキのビームが飛ぶ。

「ミサカっ、」
「アナタはあのキャノンをっ!」

シオリのサーベルを寸前で避けてミサカはヒート剣で突く、

ズギュンッ・・・ジジジジ・・・・

シオリはわざとそれをシールドで受け、バルカンでカメラを狙った。

ドゥルゥゥゥゥゥゥ・・・・

頭一つ下げてバルカンを避ける
すくい上げる様にバズーカをコックピットに向けようとするが、
手首を回転させたシオリにビームサーベルで右腕ごと切られてしまった。

「やったわね、」

ミサカも、シールドに刺さったままのヒート剣を真上に切り上げて、
左肩の関節を融解させ動作不能に持ち込んだ。


「不味いな・・・」

サキが放つビームのシャワーに接近する事が叶わないキタガワは、
ミサカの機体の戦闘能力が皆無に近いと知るや、機体をひるがえし、
救出に向かった、
ミサカもそれをみて、胸部のビームスポットガンを発射し、シオリとの距離を開ける。


コウとナオトは何十回と切り結ぶものの、お互いに有効打が得られない、
ガンダムの隠し兵器のガトリングやビームスポットガンですら、
瞬間最大推力に勝るラピスラズリに避けられてしまうのだ、
逆にナオトが斬りつけても、その反応速度にさらりとかわされてしまうのだった。

6人の戦闘の終焉は、数機のミサイル状の物体の乱入で終わる。

「なっ・・・」
「とんがり帽子の付録??」

それの動きはエルメスのビットとほぼ同じ行動をするのであった。

「メイかっ、システムを使ったのか!!」

このビットはラグナ・ヴァルキュリアに搭載され、メイがシステムに入ると可動するサイコミュであった、
システムの使用によって、ラグナ・ヴァルキュリアは巡洋艦ではなく、
モビルアーマーへと変貌する、システムは無理矢理に能力を被験者から絞り出す事もあり、
精神だけでなく、生命すら危険に落とすのだ。

「ミサカ、動けるな?艦に戻るぞ、付いて来い!」
「りょ・・了解・・」
「キタガワは後方援護、そのまま艦の援護に付け!」
「了解」

ビットの攻撃に翻弄されつつ、コウは被弾しながらもビームサーベルで2機撃墜していた。

「やれるかな?・・・えぇいっ、根性!」

有効な攻撃手段を失ったコウとシオリを庇い、サキはビームを拡散モードにし、
エネルギーが尽きるまで連射する事によって、6機のビットを葬り去った。

サキが一息入れると、ナオト達はラグナ・ヴァルキュリアに戻る為に離脱していた。

「仕方無い・・・一端戻って補給だな・・・」
「「了解」」




タタタタタタタタタタタタタタタタタタ

「この赤いザクは見覚えがあるっ!」

銃弾の雨をまき散らし襲いかかってきたMS−06RZのの部隊、
その隊長機「赤い妖精」のふたつ名を持つ、チャイカ中尉の接近に、
ケイは叫んで、ナオミとパトリシア、カオリを展開させる。




「二時の方向から、ガトルの編隊多数接近!」
「対空砲火!弾幕薄いぞっ!」

ア・バオア・クーに接近しているヘスペロスは、対艦砲座などの猛威にさらされ、
さらにインターセプターの標的にもなっていた。

ズン・・・

ブリッジの上部にヨシオのジムスナイパーが乗る。

「ブリッジ、最大出力モードで狙撃する、冷却パイプのハッチを・・・」

開いたハッチからパイプをビームライフルに接続、

「へへ、見事な爆撃体勢で来やがるぜ・・・」

ガトルが一直線に並んだ瞬間、ヨシオはトリガーを引いた。

「A小隊帰艦、ガンダムNT、ガンキャノンアサルトは補給、ガンダムEX−4は損傷度C、第一デッキへっ!」
「了解、第一ハッチを開けてくれっ」

コウと、サキは前方の第一ハッチより着艦、冷却に整備員が2機に取り付く、
シオリは側舷の第二ハッチから入るが、重量がかかったとたんにガンダムの右膝が崩壊し、床に崩れ落ちた。

「しまった・・・・」

その振動はブリッジにも響き、スズネはシートから滑り落ちた

「EX−4、大破、再出撃不能!」
「予備の機体は?」
「修理が完了したジムが残っています」

レイは、モニターにMSデッキを出した。

「シオリ、」
「はい・・・」
「中央デッキにジムが残ってる、済まないがそれで再度出撃を頼めるか?」
「・・了解しました・・・」
「NTとアサルトの補給は5分で終わらせろっ、」

ガンダムNTから降りて来たコウがシオリの側に来て、サキも合流して待機ボックスに入る。

「大丈夫?シオリ・・・」
「・・・・壊れちゃった・・・・」

そうシオリが呟いた時、後ろから声が掛かった。

「そうだな、見事に関節がイカレちまった・・・が、安心しろや、30分で交換してやる。」
「え・・・・」
「イザと言うときに備えて予備の部品で一機組んでいた所だ、足を丸ごと交換で済む。」

右舷デッキ主任のミシュラン曹長だった、

「お願いします・・・」
「それまではジムで艦を守ってくれよなっ」

そう言ってミシュランはシオリのガンダムへ流れていった。

「・・・・あれって・・・上半身はジムよね・・・・」
「とりあえずの戦力でありったけのパーツででっち上げたって所だな・・・・」

窓からデッキを見てサキとコウが呟いた・・・・



通常の着艦よりも、ナオトは素早く着艦すると、機体をメカニックに任せてブリッジへ急いだ。
その後方、ミサカが見事な操作で着艦していた。

「ナオト様・・・」
「メイはまだシステムか?」
「はい・・・まだ出ていらっしゃいません・・・」

ナオトがパスワードを使ってシステムルームを開くと
そこにはぐったりとしたメイが意識を失っていた。
ナオトは、配線の繋がったヘルメットを外して放り投げて、メイを抱え上げた。

「う・・・・ぁ・・・・・」

かすかに呻くメイ。

「安心しろ、今メディカルルームに連れて行くからなっ、」

メイを寝かせたナオトは護衛しているキタガワに命令した、

「ラグナ・ヴァルキュリアは戦場から撤退する、今教えた場所をヒートサーベルで貫け!」
「了解」

キタガワはシステムのあるブロックを正確に貫き、システムを鉄屑と変えた。




「ヒビキノ、キラメキに直撃!」
「左舷メガ粒子砲に直撃!」

悲痛なメグミやミオの声がアカギの上で響く、護衛の駆逐艦ヒビキノとキラメキは乗組員が脱出する前に爆発、轟沈した。
同期リンクで繋いでいた両艦の艦橋映像には敬礼しつつ炎に消える艦長の姿があった・・・

「右舷をア・バオア・クーに向けるんだ、直援MSは?」
「かなり損傷が見られますが健在です!」

スズネの解答にホッとする間もなく、再びメグミの悲痛な声が聞こえる

「ムサイ一隻が突撃してきます!!」
「回避!急げ!!」
「体当たりしてきます!間に合いません!!!」

接近するムサイは遮ったイズミノを中央から分断、さらにヘスペロスに突っ込んで来る。
ムサイに対して、コウジ達は残りのエネルギー全てを投入してビームを放つ。
激突直前で間一髪で撃沈したものの・・・・直前すぎた・・・・
分断されたイズミノも直後爆発した。

「右舷デッキ、大破!」
「被害状況把握急げ!!」
「右舷第一主機関っ衝撃で停止っ!主副回路断線により再起動出来ませんっ!」
「右舷メガ粒子砲旋回不能ですっ!」

あまりに近い爆発は、ヘスペロスの右舷デッキの半分をもぎり取ったのだ、
右舷デッキの前半分が失われたのは、ブリッジからもはっきりと見えた。

「・・・・こ・・ちら・・・右舷デッキ・・・・」

血を流すミシュランがモニターに写った。

「嬢ちゃん・・のガンダ・・ムは直した・・・取りにこさせて・・・く・・・れ・・・・」

そう言って、ミシュランは崩れ落ちた・・・・・

「おい!ミシュラン!しっかりしろ!!」

そのモニターにユイナが現れた。

「艦長・・・気密デッキにいた私以下4名を除いて、開放デッキにいたメカニックは全滅しました・・・・」
「そうか・・・」
「曹長も、EX−4を組んだあと、武器を用意しに開放デッキに・・・・」
「わかった・・・・・間もなくシオリが戻る、」
「了解・・・」

モニターが消えて、振り払う様にアカギは指示を出す。

「ヘスペロス、揚陸準備!陸戦隊!出番だっ、!」
「D小隊、補給に帰艦します!」
「先に直援を補給させろ、F小隊!戻れ!!」
「了解!」
「B小隊も戻ります。C小隊・・・・反応が二つしかありません・・・・」
「誰が残ってる?」
「C00と、C04の2機です・・・・」
「おいおい・・・パイロットは無事だぜ?」

通信が届いたのか、スピーカーからケイの声が聞こえた。

「予備の機体は残っているか?カオリは負傷しているが、ナオミは大丈夫だ。」
「カオリを先に収容だ、ナオミはシオリが戻るまで待て。」
「了解」

ヘスペロスがア・バオア・クーに着底し陸戦隊が侵入する中、戻って来たモビルスーツがヘスペロスを守る様に展開する。
その上方には、クマノとモエギノ、ツムギノが防衛の弾幕を張っていた。
ヘスペロスの横にダババが大破、着底してきた。

「MS上陸部隊全て上陸完了しました、ア・バオア・クーの傘の柄のドックはすべて占領です。」
「ようしっ、A、B、D、Eは残敵掃討、C、F小隊と133小隊は直援だ。」
「了解、」

ア・バオア・クーからの降伏信号はその直後だった・・・・・












「大佐、前方に救難信号を発する友軍機がありますが・・・・」
「回収できるか?ハスラー艦長。」
「当然です。」

ア・バオア・クーから脱出する艦のブリッジ、
額に包帯を巻いた大佐は、出来うるだけの救助に、まだ可動状態にあるモビルスーツを出動させていた。





「まいったわね・・・モニターは死んでるし、脱出装置も動かないわ・・・・」

大破し、浮游するチャイカのザクに、片腕のドムが接近する。





戦乱はまだ終わらない・・・・・



この作品は機動戦士ガンダム関連の公式設定から「めぐりあい宇宙」を主軸として矛盾してる部分もめぐりあい宇宙に近い方を優先、
その空白部分に個人設定をぶち込んでみました。
原型は5年以上前のもので追加した設定、シチュエーションなども盛り込んで改訂です。
キャラはその当時に書いていた二次創作でもあるのでそのままとしています、何の作品からは・・・・まぁ・・・・ね(笑)。
キャラの男性名は私がゲームで使用した名前だったりしますので似たものが多くなってるのはご愛敬と言う事で・・・(苦笑

設定にかなりオリジナルな部分を含んでいますので、
艦艇やMSの設定はこちらにある573戦隊設定を参考にして下さい

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